ASIAN NOMAD LIFE

日本、香港、中国で生活・仕事をしてきてシンガポール在住7年目。
おばさんは加計問題に怒ってるのではなく、アベノミクスに失望しているのです。
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    JUGEMテーマ:経済全般

     

    娘の学校が前期休みに入った5月末から、新しいスモールビジネスの立ち上げのために2か月強、日本に滞在していました。

     

    沖縄県の離島。シンガポールでは籠の鳥で、学校ではきゅうきゅうに詰め込み教育を受け、放課後の私立学童保育では宿題の上にさらに用意されたプリントなどの勉強を日頃させられている娘が、地域の人々の温かい目に見守られながら、海でヤドカリを集めたり、そこら中走り回っては虫取り網を振り回してバッタを取ったりする姿を見て、ああ、こんなところで子育てができたら最高だな、と最初は思っていました。

     

    しかし、その最中に加計学園問題がクローズアップされ、先月の都議選では自民党が歴史に残る惨敗。仕事をしながらラジオで国会中継を聴いていても、ますます日本の国としての行方が危ぶまれ、とてもじゃないけど、今の状況では娘を日本に連れてくることなどできないと暗澹たる思いにさせられました。

     

    ■期待してきたアベノミクスの結末は・・・

    2015年の安保法、2017年のテロ防止法など、安倍政権には国民をきちんと納得させることなく強引な政治運営がめだちましたが、それでも私をはじめとする多くの国民は、多少のことには目をつぶっても、世界最悪の少子高齢化で将来が見えないこの国の現状を根底から変えてくれるのなら、と安倍首相と安倍首相が提唱するアベノミクスに期待してきました。

     

    しかし、その結果はといえば、悲惨の一言につきます。

     

    アベノミクスの第一の矢である、未曽有の金融緩和による経済活性化策。先日の黒田総裁の記者会見では、2年で達成するとした2%のインフレ・ターゲットは4年半が経過した現在でも達成できず、達成目標は2019年まで持ち越すとされました。2年でやるといったのに4年半かけてできなかったものがあと2年でできるという根拠はどこにあるのか? 疑問をもたざるをえません。

     

    第二の矢では、政府は国債を乱発、日銀がひたすら買い続けて、今や日本国の大株主は日銀です。長期金利がひとたび上がり始めたら日本国は破産じゃないですか? また、年金の運用をしているGPIFは日本企業の株を買い続け、民間の推計によると、ユニクロブランドのファーストリテイリングの16%近くの株をもっているそうです。ユニクロは国営企業だったんですか? ユニクロが倒産したら私たちの年金はどうなるんでしょうか?

     

    そして、私が最も期待していたのが第三の矢です。

     

    安倍首相が繰り返しおっしゃるように「岩盤規制」を取り除き、新しい産業を育成しつつ、再び日本が世界経済をけん引していくことができるような将来に大いに期待したのです。

     

    しかし、家計問題が中心議題となった先日の国会の閉会中審議では、前愛媛県知事の加戸氏が、「黒くても白くても」とか「正面玄関がだめなら通用口から」とか、田舎の支援者集会の場ならいざしらず、とても日本の最高立法府での発言とは信じられないロジックを繰り返し、5年になろうとする現在の安倍政権が、経済を刷新するどころか、従来通りの一部の人たちのなあなあで私たちの税金を使っていることが明らかになってしまいました。

     

    そして焦点の加計学園グループといえば、現在通っていらっしゃる学生さんたちには失礼かもしれませんが、偏差値や国家試験の合格率(学生数に対する)を鑑みるに、とてもこれからの日本の産業をリードする人材を輩出できる学校だとは思えません。

     

    大学の定員割れや、いわゆる「Fラン大学」運営問題が深刻になり、逆にiPS細胞のような地道な基礎研究を行っている研究室の資金不足や人文科学系学部への予算削減が議論される中、これ以上、このような大学の学部を新設してどうするのでしょうか? これがアベノミクスの第三の矢が目指してきたものだったのでしょうか?

     

    ■おばさんは失望しているのです。子どもたちのために、明るい未来像を見せてください。

    低下し続ける安倍政権の支持率ですが、中でも最も支持率が低くなっているのが、40代、50代の女性層だそうです。まさに私と同じ世代。その多くは子供の将来を案じる母親だと思います。

     

    結果も出口も見えない金融緩和や、これから社会に出ていく子どもたちに過大な負担がかかることが火の目を見るより明らかな年金の問題や、日本の産業の中核を担ってきたガソリン自動車の行く手に暗雲が立ち込めていて、それに代わって日本がイニシアティブを握ることのできる有望な産業が生まれていないことなどなど、日本の将来は難問が山積みです。

     

    それでも、母親は子どもたちが明るい未来を信じて毎日生きがいをもって働けるようになってほしいと、自分の洋服代や化粧品代を削っても子どもの教育に惜しみなくお金を使います。そのお金が加計学園のような大学の利益になっていくのだとしたら、いったい何のための教育でしょうか?

     

    ずっと期待してきたアベノミクスの馬脚が露呈してしまった今だからこそ、安倍首相でもそれ以外の方でも、ここでいったんこれまでの政策をきちんと検証し、反省すべきところを反省し、きちんとPDCAを回してもう一度原点に戻ってこの国の今後の在り方を考えてほしい。母親たちが何の心配もなく、安心して子どもを社会に送り出せるようにしてほしい。

     

    おばさんは、子どもたちのために、この国の明るい未来像を見せてもらいたいのです。

    | 後藤百合子 | 日本の将来 | 16:35 | - | - |
    45歳までに使うべきお金と使ってはいけないお金
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      ■学生時代より社会人になってからのほうが人材力に差がつく

      プレジデント・オンラインで「新社会人はスタバに寄ってはいけない」という記事を読みました。

       

      この記事の主旨は、住民税がなくて社会保険料も1か月は天引きされない新入社員だからこそ、貯蓄の習慣を身につけて無駄遣いを戒めよう、というもので、大いに賛同します。

       

      そもそも、仕事における質の向上とは、自分という人材の付加価値、つまり「人材力」をいかに高めていくか、の一言に尽きます。サラリーマンであっても経営者(起業家を含む)であっても、自分自身が成長しなければ、仕事人生での成功はかないません。

       

      そしてそのためには、時間とお金の投資が不可欠なのです。

       

      アリとキリギリスの喩えではないですが、学生時代、もともとそれほど成績がよくなかった同級生でも、こつこつと地道に勉強している学生は最終的に希望する大学に入れたり、大学や大学院では給付型の奨学金をもらえたりしていたはずです。いっぽう、とても頭が良い人でも自分を過信して努力をしないと正反対の結果になっていたのではないでしょうか。

       

      これは社会人になってからも同じです。むしろ社会人になってからのほうがいろいろな誘惑が増え、自分自身にすべての選択が委ねられる分、さらに差がつきやすくなるとも言えます。

       

      ■ランチェスター戦略を応用した人材力の磨き方

      中小企業が大企業など他社と競争するときによく用いられるのが、「ランチェスターの第二法則」です。

       

      軍の戦闘力=武器性能×(兵員数)2

       

      これは、「選択と集中」の経営戦略について使われることが多いのですが、個人にあてはめるときは、

       

      人材力=もともとの適性や能力を磨くために行った内容x(そのために費やした時間数)2

       

      と置き換えるとわかりやすいと思います。

       

      仕事人生の前半を生きる40代半ば、45歳くらいまでは、このように自分の人材力を磨いては仕事の現場で活かし、さらにその結果を下敷きとしてまた人材力を磨く、の繰り返しです。

       

      そのためには、できるだけ投資できるお金と時間を増やす、つまり毎日の生活の中で、徹底的にムダな時間と支出を省くことが必要なのです。

       

      毎日のように仕事帰りにスタバで同僚と何時間もおしゃべりしたり、必要もないのにコンビニに寄って売り場をさまよい、スィーツやドリンクを買っているようでは、時間もお金も自分自身の人材力の向上ために使うことはできません。お金がたまらないどころか、どんな人にも公平に与えられている時間さえも、無意味に浪費することになるのです。

       

      ■使わなくてはいけないお金、絶対に使ってはいけないお金

      逆に、例えば、家賃の安いシェアハウスに住んで、週に一度、休みの日に一日中スタバに居座って仕事で必要な勉強をするとか、毎日の努力目標を決め、それができたときのみコンビニで好きなお菓子を買っていいことにする、などは有効なお金の使い方だと思います。

       

      また、一生を通しての財産となる友人や家族のために使うお金もまた、「生き金」と言えるでしょう。

       

      いっぽう、絶対に使ってはいけないのは、「分不相応」なお金です。

       

      皇太子徳仁殿下が雅子妃と結婚される前に、理想の相手を聞かれて「ティファニーでしょっちゅう買い物をするような方では困る」とおっしゃっていましたが、将来天皇になる方でも、いえ、だからこそ、このようにしっかりと「分相応」ということをわきまえていらっしゃいます。

       

      ましてや、私たちのような庶民が、一番自分自身への投資のためにお金を使わなくてはいけない時期に、分不相応な服やら時計やら車やらに無駄なお金を費やしていたら、決して将来につながるお金と時間の使い方は身につかないでしょう。

       

      本当にそのような高級品が「分相応」となり、身につけても恥ずかしくなくなるのは、多くの場合、50代以上。

       

      ニューヨークやミラノなどでみかける紳士やマダムが、若い頃の質素な生活や苦労を乗り越えた気品と年輪を感じさせる表情で、いかにも高級そうな服やアクセサリーなどを身につけているのを見ると、こういう人たちのために高級品が存在するのだ、ということがよくわかります。

       

      それを若い人たちが表面だけ真似しようとすると、ちぐはぐな印象になり、大枚をはたいて残念な結果になるだけとなるのです。

       

      ■人生は長い。でも歳をとるのも早い。

      スタバもコンビニも、使い方さえ間違えなければ、これほど便利で快適なものはありません。

       

      しかし、使い方次第で、浪費になるのか、自分の将来にとって非常に有益な武器になるのかが変わってくるのです。

       

      人生は長い。

       

      けれど、ぼんやりしているとたちまち歳だけとってしまうというのもまた事実。

       

      新入社員への教訓を自分への教訓として一考してみるのもよいかもしれません。

      | 後藤百合子 | 家計管理 | 18:46 | - | - |
      民主主義という究極のポピュリズムを制す「かわいさ」
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        JUGEMテーマ:経営のヒントとなるニュースを読み解く

         

        ■冷血な人殺しでも人気絶大なプーチン大統領

        2000年3月、ボリス・エリツィン大統領の後任としてウラジミール・プーチンがロシアの第2代大統領に正式に選出されたとき、ある方が新大統領を評して「何十人も人を殺してきた目をしてる」と言われたのが今でも忘れられません。

         

        当時、プーチン氏は政治家としても大統領候補としても世界的にはほぼノーマークで、元KGBの優秀なスパイという以外ほとんど情報がありませんでした。プーチン大統領就任により、ゴルバチョフ、エリツィンと続いた民主主義ロシアがどうなってしまうのか、という危惧を多くの人々が抱いたと思います。

         

        しかしプーチン大統領は、現在世界を震撼させているトランプ大統領の「ロシア・ゲート」も含め、自らのスパイとしての経験と手腕を最大限活かして政権を維持。白昼堂々とホテルに核物質を送り付けたり、夜のニューヨークのビルから突き落としたりと、独創的かつ強引な手法で反対勢力陣営の人々を排除していく様子も、これまでの民主主義国家の政治家像を大きく逸脱しています。

         

        最近では、ウクライナ問題でプーチンを説得するためにわざわざクレムリンまで出向いた独メルケル首相に会う際、メルケル首相が大嫌いな大型犬連れで登場して威嚇するなど、ある意味、トランプ大統領にも通じるパフォーマンス政治家という側面ももっているようです。

         

        ただし、ソ連時代ならいざしらず、現在のロシアはいちおう民主主義国家で、大統領も国民選挙で選ばれます。強引かつ強圧的な手段で治世するプーチン大統領が国民に恐れられ忌み嫌われ、人気も低いかというとそれがまったくの逆で、2012年の大統領選挙時には、63.6%と約2/3の得票。現在の支持率は90%近いとも言われます。

         

        しかも毎年、「プーチンカレンダー」なるものが発売され大人気。上半身裸で釣りをしている写真や、映画スターさながらにサングラスにラフなジャケットで歩いている様子に混じって、花をもってポーズを決めたり、猫や犬と戯れていたり、まるでアイドルスターのようです。

         

        このカレンダーを誰が買っているかは写真を見れば一目瞭然でしょう。ロシアの女性たちに圧倒的な人気を誇るのもまた、プーチン大統領の一面なのです。

         

        ■「かわいい」政治家に投票してしまう私たち

        私たちが選挙で投票行動をする時、意識するかしないかの程度の違いはあっても、最も重点が置かれるのは「政策」ではなく、実は「政治家の人間性」であると私は思います。

         

        比例区では政策で政党を選ぶ人も多いかもしれませんが、小選挙区で所属政党の政策に共感はできても、外見や話し方に嫌な感じをもってしまう候補者より、支持政党ではなくても好感をもてる候補者に投票した経験のある方は決して少なくないのではないでしょうか。

         

        しかし、実際にはその候補者がどんな人間かは顔に書いてありません。もちろん本人や推薦人はいかに候補者の人間性が素晴らしいかを強調するでしょうが、その言葉が必ずしも事実とは限らないのです。

         

        そこで私たちが人間性を判断する基準は、性別を問わず、その候補者に「かわいさ」を感じられるかどうかになります。単にハンサムであるとか美人であるとか(もちろん容姿は良いに越したことはありませんが)にとらわれず、その人を「かわいい」=「人間として好ましい」と思えるかどうか、が問題となってくるのです。

         

        声や話し方、言葉の使い方、しぐさ、表情など、その人の内面からにじみ出てくるようなかわいらしさは、いくら頑張って作ろうと思っても決してマネできるものではありません。逆に、プーチン大統領のように実際には冷血な殺人者であっても、ふとした拍子にこぼれる笑顔などに、女性をはじめ一部の男性もかわいらしさをつい感じてしまうのです。

         

        ■「かわいい」政治家はしぶとい。

        そのような視点で世界の民主主義国家の政治家たちを見てみると、興味深い事実が浮かび上がります。

         

        つい先週の選挙でフランス大統領に選ばれたマクロン氏ですが、すでに欧州メディアが盛んに報道している情報によると、誰にでもすぐに好かれ(悪い言葉で言えば「取り入って」)相手の信頼を得ますが、それを裏切る場面も多々あったとされます。24歳年上の略奪愛妻と連れだって歩くマクロン氏の計算し尽くされた笑顔と、政党の創立者である実父を追放し、政党内で重責を担う姪との不仲も伝えられるル・ペン氏のドヤ顔とを比べたら、どちらが「かわいい」かは一目瞭然でした。

         

        同じことは、昨年の米大統領選のクリントン氏対トランプ氏との闘いにも言えます。どこにもつけいる隙のない完璧なクリントン氏と、暴言・放言には事欠かず、何度も自爆しながらも子どもっぽい野次を飛ばすトランプ氏。憎まれガキのようなその態度は、ある意味、「かわいい」と言えないこともありません。

         

        そして日本。

         

        小泉純一郎元首相が大変女性に人気があったのは周知の事実ですが、現在の安倍晋三首相と麻生太郎副首相兼財務大臣のコンビが、ここまで長く政権の中心に存在している理由がわからない、という男性にはぜひもう一度きちんと研究していただきたい。

         

        昭恵夫人も言っている通り、自民党の中には彼らより立派な経歴や学歴をもっている方々がごまんといますし、間違っても安倍総理や麻生副総理のような漢字の読み間違いはしないでしょう。しかし、この2人は、現在の自民党議員の中では際立って「かわいい」のです。恐らく小泉元首相が自分の後任に安倍首相を指名したのも、この「かわいさ」が大きな理由だったのではないかと私は推測しています。

         

        同じことは稲田防衛大臣にも言えます。

         

        彼女はウルトラ・ライトともいえる思想の持主ですが、まだ、当選一回目の頃の講演会で、あの舌ったらずの声で1時間以上にわたり「南京大虐殺はでっちあげ」「慰安婦の強制連行はなかった」との持論を滔々とぶつのを聞いたとき、私はただただ目が点になっていたのにもかかわらず、同じ会場で一緒に聴いていたおじ様たちは、まるで魔法にかかったようにうっとりと彼女の話に引き込まれていました。渡部昇一氏が会長を務める「ともみ組」という後援会組織もあり、まるで芸能人のファンクラブのように熱心に彼女を応援しています。

         

        国会で涙ぐんでさんざん叩かれた稲田大臣ですが、ともみ組の支援者たちにとっては、その涙さえ好ましいものに映っているでしょう。その意味で、かわいい政治家ほど叩かれても叩かれても強力な支援者たちの支えによって蘇る、打たれ強い、しぶとい政治生命をもつのだと思います。

         

        ■政治家は自分が有権者に与える印象についてもっと研究すべき

        SNS時代、「聡明な」「仕事ができる」「強い」だけの政治家がもはや大衆の共感を得ることができないのは、昨年のアメリカ大統領選、今年のフランス大統領選の結果をみても明らかです。(余談ですが、メルケル首相は恐らく再選を果たすと思います。彼女も非常に優秀な政治家ですが、難民問題にみせた情の厚さや、市井のおばさん然とした風貌がかわいらしさを醸し出しているからです)

         

        そんな中、多くの選挙民が求めるものは、現在のさまざまな問題を解決し、将来の日本を形成していくための政策のみならず、「この人なら信頼して政治を任せたい」と思える人柄、つまり「かわいさ」です。

         

        残念ながら、野党のみならず自民党の中にさえ、なかなかそれを真剣に考え実行している人がいないように思えます。(この点、マクロン大統領は非常に長けていると欧州マスコミは報道しています)

         

        民主主義とは、良くも悪くもポピュリズムの政治形態です。

         

        政策の立案は企業経営でいう「戦略」にあたりますが、それを実現させるための「戦術」の一環として、選挙ポスターのときだけ考えるのではなく、日ごろから自らの「かわいさ」をどうアピールしていくのか、真剣に研究して実践してほしいのです。それが最終的には最大の目標である政策の実現につながるのですから。

        | 後藤百合子 | グローバルビジネスと人材 | 18:03 | - | - |
        組織のDNAを変えるには 〜 香港フィルにみる再生の軌跡
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          ■予想を裏切られた20年ぶりの香港フィルの演奏

          シンガポールでも連休となったメーデーの今月1日、香港フィルハーモニック・オーケストラのシンガポール公演に行ってきました。(その前週は29年ぶりの日本公演に続き韓国、今週はオーストラリアと遠征しているので同じ演目で聴かれた方もいらっしゃるかもしれません)

           

          香港で暮らしていた1994年夏から97年末までの3年半、「香港フィル友の会」のメンバーになり、週末にはせっせとセントラルのシティ・ホールやツィムサチョイのカルチュラル・センターで開かれるコンサートに通っていたので、20年ぶりにこの昔馴染みのオーケストラの演奏を聴けると、たいへん楽しみにこの日を待っていたのです。

           

          そして、当日。

           

          私の予想は完全に裏切られました。

           

          しかし、良い方にです。20年ぶりに聴いた香港フィルの演奏は、同じ交響楽団とは思えないほど素晴らしいものだったのです。

           

          そう感じたのは私だけでない証拠に、マーラー交響曲第一番の演奏終了後、会場の聴衆の大部分が立ち上がり、いつまでも拍手を止めませんでした。香港フィルの公演でこんなふうに熱狂する聴衆を見たのは初めてですし、地元シンガポール交響楽団の定期公演でも経験がありません。強いて言えば、五嶋みどりさんがシンガポール公演でバッハのソナタを弾いて以来ではないかと思います。

           

          それほど感動的な演奏を香港フィルが聴かせてくれたのです。

           

          ■香港フィルの歴史と迷走の12年

          香港フィルは香港経済の発展と足並みをそろえるかのように、1974年に正式にプロ楽団として発足しました。当時はまだ英国領で、音楽監督にインドネシア系華人リム・ケッジャン氏を迎えてシティ・ホールで開催された初公演には当時の香港総督も足を運んだそうです。

           

          (余談ですが、私が香港に住んでいたときの香港フィル公演では香港最後の総督クリストファー・パッテン氏を見たことがありますし、シンガポール交響楽団の公演では実業家のジム・ロジャーズ氏や故ネイザン大統領もみかけました。実業家や政治家の有名人に会ってみたい人は、その土地の交響楽団の公演に出かけるのがお薦めです)

           

          設立当時は世界から著名な演奏家を招聘する資金もなく、「世界的ヴァイオリニストのイザーク・パールマンを呼びたかったが高すぎてギャラが払えず、思案の上『ギャラは規定しか払えないが、来てくれたら世界最高の中華料理を御馳走する』というオファーをしたところ2回も来てくれた」というエピソードまであるほど。

           

          できたばかりの無名オーケストラの道は厳しく、指揮者や経営責任者が次々と辞めて安定せず、1981年には招聘された華人系アメリカ人音楽監督に反発した62名の楽団員が罷免を要求する署名を集める事件が発生。1984年には米国人のシャーマーホーン氏が就任するまで3年間音楽監督が不在という異常事態となりました。

           

          しかしその後、シャーマーホーン氏の時代に中国や北米をはじめ海外遠征を行うなど中堅オーケストラとしての地歩を固め、英国人デヴィッド・アサートン氏が11年にわたって音楽監督を務めた期間にはアジアでも有数のオーケストラとしての評判を確立します。

           

          私が香港フィルを聴いていたのもこの頃。正確でスピーディーな演奏が持ち味で、安心して演奏を聴いていられました。外国人と香港人とではまだまだ外国人割合が多く、1997年の香港の中国返還前後にはさまざまな式典やコンサートに引っ張りだこで、出ずっぱりだったのをよく覚えています。

           

          ところが、2000年に初の香港生まれの音楽監督として期待されたサミュエル・ウォン氏が着任後、香港フィルは未曽有の危機を迎えます。

           

          中国政府の政策により、楽団設立以来スポンサーとなってきた香港政庁のアーバン・カウンシルが解体されて余暇文化サービス庁となった結果、理事会メンバーが総入れ替えとなり、アジア経済危機も相まって予算は大幅カット。団員の待遇改悪に手をつけ、強制解雇にも及ばざるをえない事態となりました。

           

          その結果、楽団員は次々と辞めていき、理事長も退任。チケット売り上げも漸減していきます。そんな中、理事会メンバーが再度入れ替わり、サミュエル・ウォン氏はわずか5年で香港フィルを去ることとなりました。

           

          次の8年を担当したオランダ人音楽監督エド・デ・ワールトは、著名な「オーケストラ・ビルダー」であり、プロチームを率いてぼろぼろになった楽団再建の望みをかけられて就任したものの、彼の在任期間にも事務局長が4人交代、コンサートマスターが3人交代など異常事態が続きます。

           

          そして2012年に現在の音楽監督であるオランダ人、ヤープ・ヴァン・ズヴェーデル氏が就任。ここにきてやっと団員やマネージメントの入れ替わりがなくなり、再び安定期を迎えるのみならず、アジア随一の交響楽団として飛躍のステップを踏み出したのです。

           

          ■「香港フィルをアジアのベルリン・フィルにする」と断言したズヴェーデルと香港フィルに残った楽団員

          香港フィルの歴史の中で、ズヴェーデル氏の期間を除き唯一の安定期ともいえるアサートン氏の音楽監督期間に私は香港フィルの演奏を聴いていたわけですが、この時も「プロ楽団」としての技術基準はクリアしていたものの、音楽にかけるパッションや理解といった一流の交響楽団に不可欠な素養をあまり感じることはありませんでした。

           

          一番印象に残っているのは、曲目が終了後、聴衆の拍手が一段落するのを待ちかねたようにさっと椅子から立ち上がり、燕尾服の裾を翻して楽屋に戻っていく団員たちの姿です。年間150回以上もの数のコンサートをこなす超がつくほど勤勉なオーケストラならではかと当時は思っていましたが、今振り返ると、音楽は彼らにとってプロとしてこなしていくべき「職業」であり、それ以上でもそれ以下でもなかったのではないかと思います。

           

          当時、唯一そのような姿勢を感じなかった楽団員が、チェロのリチャード・バンピングとクラリネットのジョン・シャートルで、彼らがソロパートを弾いたショスタコーヴィチの「チェロ協奏曲第一番」と、ドボルザークの「新世界より」の演奏は今でも思い出せるほどです。今回、20年前のメンバーをプログラムやネット探してみたところ10人もいなかったので驚きましたが、この2人は激動の時代も楽団を辞めることなく、香港フィルで音楽を続けていました。

           

          このようにもともとパッションを抱いて楽団に残り続けたほんの一握りの楽団員と、香港フィルの伝統も歴史も知らない新しい楽団員の寄せ集めの交響楽団にやってきたのがズヴェーデル氏でした。

           

          彼にも、10年以上にもわたり迷走を続けてきたこの楽団を正しい軌道に戻すのが用意な仕事でないことはわかっていたはずです。しかし、就任直後のインタビューでズヴェーデル氏は「香港フィルをアジアのベルリン・フィルにする」と宣言しました

           

          長年の内紛と相互不信、追い打ちをかけるような超過密スケジュールと「売り上げを上げろ」というマネージメントからのプレッシャー。疲弊に疲弊を重ねたメンバーの前に、ズヴェーデル氏が掲げたのは、「世界最高峰をめざす」という目標でした。正直なところ、プロとしては二軍どころの交響楽団だった香港フィルに「君たちは一流になれる」という希望をまず指し示したのです。

           

          そして、その夢を実現できるだけの具体的な方法論を彼はもっていました。

           

          19歳のときからオランダの交響楽団のコンサートマスターとして長く演奏家活動を行ってきたズヴェーデル氏は、指揮者としてだけではなく、団員の1人1人が演奏家として何をすべきかということを非常によくわかっているのではないかと思います。それは今回の交響曲の演奏を聴いていても明らかでした。それぞれのメンバーに個性的な音を奏でさせつつ、それをまとめたときに最大の音のパフォーマンスを引き出すことに大変長けていたのです。

           

          そして最後に、最も重要だったのは恐らく、「情熱のない」楽団員が去った後に彼が就任したことです。

           

          どれほど素晴らしいリーダーとやる気にあふれたメンバーがチームにいても、過半数のメンバーが無気力で後ろ向きで不平不満ばかり言っていたら、その組織が成功を掴むことは絶対にできません。それどころか、新たにやる気のある人が入ってきても「朱に染まれば赤くなる」式に、情熱は長続きせず無気力に流されていくでしょう。それほど人間は弱く、易きに流れるものなのです。

           

          香港フィル再生はこの3つが完全に揃ったときに初めて実現したのではないかと私は思います。

           

          ■最も大事なのは「情熱

          チームのリーダーになるにしても、メンバーになるにしても、最も大切なのは、パッション、つまりその仕事にかける情熱です。

           

          その情熱は結果となって表れ、ビジネスであったらクライアントや消費者を、音楽であったら聴衆を魅了し、感動させます。逆に、感動ができない、魅了されない商品やサービスをいくら作っても、相手に受け入られないばかりか、自分自身をも疲弊させて無気力の負のスパイラルに陥ってしまうだけでしょう。

           

          プロとして、職業人として、仕事とは何か、その仕事の中で自分は何をすべきなのか、を改めて考えさせてくれた香港フィルのコンサートでした。

          | 後藤百合子 | 企業経営 | 14:45 | - | - |
          電気自動車時代の先駆けで利用広がる電気スクーター
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            JUGEMテーマ:幸せなお金と時間の使い方

             

            テスラを筆頭にガソリン車から電気自動車への転換が世界中で一気に進みそうな昨今、都市国家シンガポールではその潮流に先駆けるように電気スクーターが流行中です。

             

            そもそも国土面積が東京23区内程度しかなく、渋滞や環境悪化を避けるため自家用車所有にはクォータ制、輸入には高い関税をかけるなど、国民に自家用車を極力保有させない政策をとってきたシンガポールですが、いっぽうで、ヨーロッパの諸都市と違い、南国特有のスコールが多く1年を通じて高温多湿な気候ゆえ、リクリエーション用バイク以外の自転車はあまり普及していませんでした。

             

            ところが、ここにきて一気に広まる様子を見せているのが、電動スクーター。といっても中国のようなバイク型ではなく、スケートボードにハンドルがついていて簡単に折りたたみができるものや、取っ手がついていて片手で持ち上げて運べる一輪車型など、軽量でコンパクトなものが主流です。

             

            価格はスーパーマーケットで気軽に買える3万円程度から、専門店で販売する高級品の10万円ほどまで。時速は普及品で15卍度、高価格帯のものになると50勸幣綵个襪發里發△蝓下手にバスや地下鉄を利用するより目的地に早く着ける可能性もあります。降雨時は公共交通機関やタクシーの利用も可能。折り畳み自転車のように他の乗客の邪魔になることもありません。

             

            さらに、この流れを加速するかのように「パークコネクター」という歩行者専用道路網の整備が進んでいます。

             

            もともとは国民の健康増進のため、国中に散らばる公園をジョギングやウォーキングコースとサイクリングコースでつないで余暇の利用に役立てる目的で始まったものですが、この地図で見る限り、各住宅地から都心までだいぶネットワークが広がってきていて、通勤にもじゅうぶん使えそう。

             

            シンガポール政府も電気スクーターのトレンドには注目しており、一部のコミュニティセンターにスクーター用のロッカーを整備したり、将来的には各地下鉄の駅に共用できる電気スクーターを配置して通勤や通学に使えるようにするという計画もあるようです。

             

            日本では法律上、私有地以外でこのような電気スクーターに乗ることはできないと思いますが、私が見る限り、高齢者の乗り物としても電動カートよりはずっと手軽ですし、歩道で走行できる分自転車より安全だと思います。

             

            高齢者の運転による交通事故の増加や、逆に、運転免許を返上して日常生活の足を失ってしまう高齢者も今後増える中、ぜひ電気スクーターの合法化を考えてみてはどうかと思います。

            | 後藤百合子 | シンガポール社会 | 19:11 | - | - |
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