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    見えてきたインバウンドの「食」の課題
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      JUGEMテーマ:国際社会

      JUGEMテーマ:沖縄

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      沖縄の離島で夏季限定のカフェ&レストランを開業して3年目。

       

      6月は家族が一緒に滞在しており、友人やカナダの親戚一家が訪ねてきたりしていたので昼のみの営業でしたが、今月に入ってからは夜のレストラン営業も再開し、朝から掃除に仕込みにそれなりに忙しい毎日を送っています。独りで切り盛りしているので体力的には大変ではありますが、新しく来ていただいたお客様や、一昨年、昨年にいらしていただいたお客様に再訪いただいてお話をするのが大きな楽しみです。

       

      土地柄、お客様は半分が地元のお客様で、残りの半分は観光客の方々。中でも観光客の方々は欧州を中心としたインバウンドのお客様が半分以上を占めるのが特徴です。

       

      看板やメニューをすべて日本語・英語表記にしていたのは最初からですが(香港や台湾からのお客様も多いので1年目は中国語も書いていましたが、さすがに大変すぎてギブアップ)、昨年からはメニューの内容も表記もかなり変えてきました。というのも、欧米や台湾からのお客様にベジタリアンやヴィーガンの方々が多いのに気がついたからです。

       

      主として欧米の方々は環境保護や動物愛護の観点から、台湾の方々は宗教的な理由から(インドの方々も含む)、ベジタリアンやヴィーガン食生活を実践している方が多く、肉や魚の入った料理を一切食べません。

       

      さすがにこの程度の知識はあったので当初からメニューにはベジタリアン対応の料理は入れていました。しかしこのような方々は他に食事できる場所がなく、毎日通ってくださるため、いつも同じ料理を出すわけにもいかなくなり、ベジタリアン/ヴィーガン対応メニューを増やした結果、半分程度が肉・魚(出汁や調味料も含めて)をいっさい使っていない料理となりました。

       

      昨年いらしたあるアメリカ人のお客様が話してくれたエピソード。

       

      ある普通の居酒屋さんに入って「ベジタリアンなので食べられる料理を出してください」とお願いしたところ、豆腐にハムの細切りが載ったものが出てきた。「これは肉が入っているのでダメです」と返したところ、今度は削り節が載って出てきたとのこと。さすがにそれ以上言うのも申し訳なく、仕方なく削り節を取り除いて食べたと言っていましたが、確かにありそうな話です。必死に対応しようとした居酒屋の方もお気の毒だなと思いました。

       

      もう一つ気がついたのは、欧州からの観光客の中に、中東などイスラム教国出身でヨーロッパに移住した人々の2世、3世の方々が増えてきているということです。

       

      たいていカップルや友人同士で来られるのですが、フランス語やドイツ語を流暢に話しているのでぱっと見ただけではそうとわかりません。しかし、よくよく顔つきや瞳の色を見ると、鼻が細くて高く、目の色は狼のような美しい金色をしていたりして、どこか純粋なゲルマンやラテンの方々とは違う容貌をしています。

       

      彼らは60年代や70年代にトルコやイランなどから移民してきた両親や祖父母の元に生まれた人々で、教育は欧州で受けているので考え方はほぼ欧州人と同じ。パートナーや友人はたいてい生粋の欧州人です。ただ、生まれながらの宗教や家庭環境のせいで、豚肉は決して食べず、醤油が入った料理も苦手なようで慎重にメニューを選んで注文されます。

       

      おかげで、今年メニューに加えた中東料理のファラフェル(ひよこ豆のコロッケ)入りピタサンドは人気メニューとなり、ピタパンを一回に焼く量も最初作っていたのから倍量に増やしました。意を決して購入したキッチンエイドの業務用ミキサーがフル回転しです。

       

      ベジタリアン/ヴィーガンや豚肉を使わないレストラン(欧州人のイスラム教徒2世、3世の方々の多くは、東南アジアの厳格なイスラム教徒と違い「ハラル」認証までは要求しません。「No pork or lard used/豚肉、ラード使っていません」で十分)はまだまだ日本では少なく、沖縄の離島ではもちろん、東京や大阪などの大都会でもけっこう食事に不自由しているようです。

       

      インバウンドの観光客を「アジア」や「ヨーロッパ」「北米」などという括りでみていると、このような一見マイノリティではあるけれど、じわじわと数が増えている人々のことが見逃されがち。しかし、「また日本に来たい」と思っていただくためには、食のおもてなしは不可欠。爆買いが一巡した後、このようなお客様たちにリピーターとなっていただくためには、ほんの少しのメニューや食材の工夫でも効果的があるのではないかと思います。

      | Yuriko Goto | グローバル社会と宗教 | 10:12 | - | - |
      シンガポールで驚きの自販機が増殖中。
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        ほんの1,2年前のこと。シンガポールの街角にフレッシュオレンジをそのまま絞ってジュースにしてくれる自販機が登場し、へーっ、と感心していたら、最近はそこここで見かけるようになりました。最初は場所によってまちまちだった価格も、現在は2ドル(約160円)に統一されたようで、ときどき買っている人もみかけます。

         

        ちょっと前にテレビで観たのは、シンガポール名物「チリクラブ」の自動販売機(Punggol)。1圓60ドル(約4,800円)と自動販売機で買うにしてはかなり高いですが、「これで24時間いつでも売れる」とオーナーは満面の笑みを浮かべていました(その後脱税容疑で逮捕されましたが)。場所もかなり辺鄙ですが、わざわざここに買いに来る人がいるんでしょうね。

         

        出てくるまで何の本を買ったのかわからない、本の自動販売機(The Art House)を見たときには「ブラック・ジョークか?」と思いました。売っているのはBooks Actuallyというお洒落雑貨&本屋の草分けのお店。ポップアップでこの場所で本屋もやっているので、閉店中に他のテナントに場所を取られない対策なのかもしれません。

         

        その他にもサラダの自動販売機(Suntec City)があったり、カップヌードルや冷凍弁当など自動販売機だけのコーナーのお店が劇場のショッピングモールにできたり(Esplanade)と、何か最近すごいことになってるなーと思っていたら、一昨日はこんなものを見つけてしまいました。

         

        世界初の冷凍ノルウェー・サーモン自動販売機(Rochor)。200g5.9ドル(約470円)。スーパーは朝早くから夜遅くまで開いてますし、サーモンは生のも冷凍のも普通に売っています。いったい誰が何のために自動販売機でわざわざサーモンを買うのか…。

         

        絶句。

         

        この近くには、クレーンでアイスクリームを吊って落とす自販機やクリーニングの自動ロッカー(一応手続きは必要らしい)もありました。うーん。

         

        www.asiaone.com

         

        さすがにシンガポール人もこれって変じゃない? と感じているようですが、地価&人件費高騰の折、まだまだスーパー変な自動販売機の数は増えそうな予感。自動販売機は日本のお家芸かと思っていたのですが、意外と足元から広まりそうです。

        JUGEMテーマ:シンガポール

        | Yuriko Goto | ビジネスのねた | 08:00 | - | - |
        住むところに影響される「好きな色」
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          石垣に戻る前に何とか完成したいと思っていたフランジパニ(日本ですとプリメリアのほうが一般的な呼び名のようです)の4枚をぎりぎりで描き上げました。

           

           

          www.mrs-lowe.com

           

          最初の絵を描いたときに「なんかパラナカン(マレー半島に住む華人)の色づかい」みたいだなーと自分で思ったのですが、次も無意識にそうなったので最終的にはピンク、ブルー、イエロー、グリーンの代表的なパラナカン色づかいに統一してみました。

           

          しかし、いくら私でも日本で暮らしていると(沖縄は除く)、絶対にこういう色づかいの発想にはなりません。基本はこういう感じ。

           

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          (こちらのお店から写真お借りしましたhttps://store.shopping.yahoo.co.jp/minoruen/chadougu-240702-1.html) 

           

          茶、ベージュ系のアースカラーが基本で、たまに差し色で赤や黄色、ブルーなどの鮮やかな色を入れるくらい。日本に住んでいたらいたって普通です。

           

          最近の発見は、アメリカ人好みの色。

           

          来月発売予定のKindle Fire7を予約注文したのですが、一緒に注文した純正カバーの色が、

           

          黒を除き、トワイライトブルー、セージ、プラム、サンドオレンジと、みんなどこかで聞いたことのあるような色名。どこだったかなー、と思い出してみたら、

           

          www.llbean.co.jp

           

          20年ほど愛用しているアメリカの普通のおばさん御用達ブランド、L.L.ビーンの色づかいにそっくりでした。

           

          ネットショップをのぞくとわかりますが、Kindle Fireカバーの類似色(最近は色名が若干違ってきていますが以前はまんまでした)は売り切れになっているものが多く、人気の高さがわかります。Amazonが選んだのも、最大公約数で売れる色、というところなのでしょう。

           

          シンガポールやバリ島などで販売されているオーストラリア人女性デザイナーの服は、だいたい白や黒を基調にして若干彩度にかける原色系の色をごちゃごちゃ使ったものが多いですし、フランス人の選ぶ色はどんな色でも少し黄味がかっているものが多い気がします。

           

          マレーシアとインドネシアは文化がとても似ているのですが、同じバティックでもマレーシアの方が色が暗く、インドネシアは明るめになるので、どちらの国のものかは見るとだいたいわかります。

           

          昔、香港に住んでいた頃、しばらく経ってから訪ねてきた父に「お前は顔が変わって日本人みたいに見えない。自分の娘じゃないみたいだ」と驚かれたことがあります。人は周囲にいる人の表情をどうもまねる傾向があるようで、この時には香港人の顔つきを身につけていたよう。

           

          それと同じで、色の好みも住むところに影響されて、みなだいたい同じような感じになるようです。今度、自分の描くものがどんな色になっていくのか楽しみです。

          | Yuriko Goto | ビジネスのねた | 12:32 | - | - |
          変わるライフスタイルと変わる飲食業界
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            イギリスの有名シェフ、ジェイミー・オリバーが経営するレストラン・チェーンが倒産しました。

             

            forbesjapan.com

             

            ジェイミーは20代前半でテレビ番組「The Necked Chef」に登場。コック服はおろかエプロンもせずに普通の家のキッチン(と思わせるようなスタジオ)で料理。普通に友人と会話するようにしゃべりながら数々の本格的な西洋料理を手際よく作る彼の腕前と、ゲストに有名人を迎えてもへつらったり媚びたりせず、田舎の一般人と同じ態度で接する飾らない人柄に多くの人々が魅了されてきました。

             

            特に彼の肉料理は絶品。私も日本に住んでいた頃はスカパー、シンガポールに移ってからは地元テレビでジェイミーの番組を観てはマネしてよく作りました。「英国料理はまずい」というそれまでの概念が時代遅れとなった理由の一つが、ジェイミー・オリバーの出現だったといっても過言ではないと思います。

             

            その結果、この20年間彼のテレビ番組出演は絶えることなく続き、料理本も次々と出版。記事にもあるように、大企業と組んでのキッチン用品販売やレシピ提供などの事業にも進出してきました。特に、レストラン事業は1,300人の従業員を抱える一大ビジネスになっていたそうです。

             

            しかし、時代は変わります。

             

            私は行ったことがないのですが、シンガポールにもあるJamie's Italianレストランのメニューを見てみたところ、看板メニューらしきジェイミーのイタリアン・バーガーが38.95ドル(日本円で約3,100円)。これにサービス料と消費税がプラスされると3,600円以上に。サラダか前菜をつけて、ワインやデザートをオーダーすれば、一人1万円近くになる計算です。

             

            確かに決して安くない金額ですが、素材にこだわる彼のことですから材料にはいいものを使っているでしょうし、ひと昔前だったら、普通のカップルがドレスアップして年に数回、こんなレストランで食事するのも当たり前だったでしょう。

             

            しかし、現在はファッションもファストファッションの時代。お金持ちでもH&Mやユニクロを着てIKEAに行くのが当たり前で、見栄をはるためのファッションは下火に。「食」にもこの影響が出てきています。

             

            記事でも触れられているように、最近、Delivaroo(デリバルー)というレストランの料理を自宅に宅配するサービスを提供する会社にAmazonが出資して話題になりましたが、ここ数年、この分野が急成長。シンガポールにもDelivarooの他に、Food PandaやGrabFoodなどの会社があり、利用者が年々増えています。

             

            昨年、私が中価格帯のレストランで働いていたときには、これらのデリバリーサービスのオーダーが5〜10件に1件くらいの割合とその数の多さに驚きました。

             

            普通のレストランでは店で食べる場合と価格は同じですが、家賃とサービススタッフの人件費が不要であれば、当然コストは下がりますので飲食店にとっては悪くないサービス。客席数が少ない店でもこのサービスを使えば大きな売り上げを上げることが可能です。

             

            また、デリバリー専門レストランであれば、より質の高い料理をよりリーゾナブルな価格で提供できますので、同クラスのレストランと比較して価格的に優位に立つことができるでしょう。

             

            しかし、このような消費者の傾向は、単に価格の問題というより、世界的なライフスタイルの変化の結果だと言えます。中価格帯レストランのデリバリーのみならず、高級料理分野においても、シェフが自宅を訪れて料理をしてくれる「プライベート・シェフ」サービスが台頭しつつあるのです(シェフのランクにもよりますが決して安くはありません)。

             

            www.mrs-lowe.com

             

            日本で引きこもりになる人の数が年々増加していたり、アメリカのショッピングモールに閑古鳥が鳴くようになったのと同じく、現在、ヨーロッパやアジアでも同じような現象が起きつつあります。

             

            豊かになるにつれ庶民の車の保有台数が激増したシンガポールでも、車を保有するための権利(COE)を買う価格が昨年末には8年ぶりの低水準(価格はオークションで需給バランスにより決まります)。一時持ち直しましたが、昨日のニュースによるとまた大幅に下がっているようです。

             

            これは単に景気の問題というより(シンガポール人の給与水準や物価水準は依然として決して低くありません)、車に乗って外出し、ショッピングや外食を楽しむ、というライフスタイル自体が変わっていると考えるほうが自然です。

             

            ジェイミーのお店で働いていた従業員の方々にはお気の毒ですが、レストラン・ビジネスは失敗に終わったとはいえ彼のレシピや料理の腕前にはまだまだ多くの需要があるはずですので、これを機会にまた新たなビジネスの方向をみつけて再出発してもらいたいと思います。

             

             

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            | Yuriko Goto | 世界経済 | 10:27 | - | - |
            現在の福祉制度が限界であるという日本の現実を直視し、自助保険制度への移行へ。
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              最近、87才になる義父が眼科で処方してもらってメガネを2組作りました。

               

              政府の補助がついたらしく、2組で払った費用が2ドル(約160円)だったと夫大喜び。その前にも要介護者の義父の杖を数百円で購入した他、昨年から住み込みで義父母の世話をしてもらっているミャンマー人のメイドさんにかかる費用も、彼女が政府主催の介護研修を受けてから1/3程度が補助金でまかなわれるようになりました。

               

              ちょっと前まではこういう仕組みがなかったため、高齢者が処方薬を買うのに物価が安いマレーシアのジョホール・バル―まで毎月出かけるのは当たり前(なぜかマレーシアの薬局では処方箋がなくても処方薬が買える)。

               

              我が家でも毎年恒例のマラッカ旅行の度に、1錠千円近くする義母の関節痛の薬を買ってきていました。現在ではこちらも政府補助がついてマレーシアで買うより全然安くなったため、もう買っていません。

               

              基本的にシンガポールの日常の医療はすべて自費診療です。

               

              風邪をひいてもお腹をこわしても、町医者や私立の病院にかかると100%自費。私立の病院は高額ですが、町医者になると庶民の懐事情がよくわかっていますので、よほどのことがなければレントゲンを撮ったりしませんし(そもそも高価な医療機器をほとんど置いていない)、薬も最低限必要なものしか出さず、患者も「これは要らない」と拒否することも多いので、実際に支払う金額は3割負担の日本で町医者にかかったときとほとんど同じか、むしろ安いくらいです。

               

              医療器械が必要な検査は外注が基本。

               

              私はHRT治療を受けているので、乳がん検査と子宮ガン検査に定期的に行っていますが、近所の婦人科クリニックでするのは内診のみで、超音波やマンモグラフィーは検査専門のセンター(検査技師がいるだけで診断はクリニックの医師)へ。分業が進んでいて、競争も激しいので「今回はここがプロモーションやってて安いから行ってね」と毎回別のセンターを紹介されたりします。

               

              しかし、歯医者だけはどうにもなりません。1本でも差し歯にしようものなら10万円単位で費用がかかります。つい最近も、10年以上前に神経取ったところが炎症を起こしてしまい、その治療だけでやはり10万円ほど支払いました。

               

              なので、できるだけそうならないように、半年に1回の歯科定期検診は欠かしませんし、娘の学校にも歯科医が定期的にやってきて子供たちの歯のチェックをしたり歯磨き指導をしたりしています。

               

              と、ここまでシンガポールの庶民の医療事情を少しだけご紹介しましたが(お金持ちはまた全然違い、ガンの最新治療を受けるためにアメリカの高名な病院に長期入院したりします)、その理由は、日本の医療負担がすでにサステナブルでないレッドゾーンに入っているという話をここのところ立て続けに読んだからです。

               

              https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45016470Q9A520C1SHA000/

               

              現在の日本では、国民健康保険で医療費がまかなえず、ほとんどの自治体で税金を投入せざるをえないという現実が厳然としてあります。そしてこの現実は、今年昭和24年生まれが75才を迎えるのに伴い、後期高齢者の数が激増してさらに過酷になっていくことが確実です。

               

              夏の参院選に向けて消費増税取りやめかどうかの議論が高まっていますが、下記の記事で指摘されているように、福祉と税の関係にあまり触れられていないのが気になるところ。もしも消費税が上がらなければ福祉にかかる保険料を上げざるをえず、勤労者世帯ばかりにしわ寄せがくるのは避けられません。

               

              diamond.jp

               

              年金や医療保険などについて、日本とシンガポールの一番の違いは他助なのか自助なのかです。

               

              冒頭に書いたように、現在のシンガポールでは義父母のような高齢者世代(1950年以前生まれ)を「パイオニア・ジェネレーション」と呼び、最近特に医療や介護に関する福祉を手厚く提供するようになりました。

               

              というのも、彼らが働き盛りだった頃にシンガポールは建国したばかりで、現在のようなCPF(セントラル・プロビデント・ファンド/中央将来安心基金)という財形貯蓄と個人年金と個人保険が合体したような制度がまだ確立していなかったため、平均的な世帯が高齢者になってから十分な医療を受けられないという問題が噴出したのです。

               

              さすがにそれはまずいと考えたのか、ここ数年で驚くばかりにこの世代への政府補助が拡大しましたが、その下のMerdeka世代以降(現在60代)はまた違ってきます。というのも、この頃になるとCPF制度が機能するようになり、庶民でもある程度の老後の蓄えができるようになってきたからです。

               

              シンガポールのCPF制度についてはあちこちで書かれていますので詳細は省きますが、政府による強制的な個人預金と覚えておくといいと思います。被雇用者が17%、雇用者が20%を出して、毎月給料の40%近くを積み立てていきます。給料が20万円の人であれば7万円4千円ですから、夫婦2人だったら年間180万円近く積み立てていることになりますから、いかにその額が大きいかわかるでしょう。

               

              このお金がCPFの自分の口座に入金されると、住宅購入資金及び子供の教育資金用口座(普通口座)、年金や老後資金のための口座(特別口座)、医療保険や入院費の口座(医療口座)に自動的に振り分けられ、政府が年利2.5%〜5%程度と民間の金融機関よりかなり高い金利で運用してくれます。

               

              私の場合はシンガポールではアルバイト程度しか働いていないのでスズメの涙ほどのCPF積立金しかありませんが、夫には数十年にわたる積み立てがあるため、現在家族全員分の医療保険は年に1回夫の医療口座から引き出されていますし(入院が必要な大きな病気をした場合、この保険を使うと公立病院の医療費がほぼ無料になります)、2人とも55才を過ぎていますので、一定金額までは引き出しも可能です。

               

              問題はシンガポールも平均寿命が伸び、CPFだけでは老後資金や医療費が不足がちになっていること(男性80.8才、女性85才でともに世界6位)。

               

              このため、例えばガンの化学療法や人工透析などの高額医療については、上記の医療保険に加えてメディシールドという任意保険が用意されたり(41才以上70才まで年額5万円程度と非常に安い)、民間病院で先端医療を受けたかったり差額ベッド代をカバーする政府の承認を受けた民間保険がいろいろと発売されています。

               

              また、前述のMerdeka世代の人々には、病院受診時のディスカウントや医療口座やメディシールドへの補助、来年以降本格的導入が決まっている介護保険「ケアシールド」への補助などのプログラムが用意されています。

               

              さらに最近では、CPFの年金部分を補う年金積立保険が政府系の保険会社をはじめいろいろな保険会社から販売されていて(私も入っています)、「贅沢をせずに節約して将来子供の世話を受けないように資金準備しておけば、きっと子供から感謝されるようになる」というテーマのCMもしきりに流れるようになりました(華人系の伝統として子供が老親の生活費をもつのは当たり前で、我が家の義父母も子ども3人が毎月仕送りをしています)。

               

              シンガポールも先進国の一員として国民に必要不可欠な医療が受けられない事態はさすがに避けていますが、過剰な医療費はいっさい払わないのが建前。後期高齢者にだけは若干やさしいですが、それ以外の世代に対しては「利用できる制度は作っておくから自分で何とかしてね」という姿勢が明白です。

               

              公団住宅購入のための貯金についても、自由意志に任せておくと貯金できない人はいつまでもできないので、強制的に給料から天引きした結果、約90%という驚異的な持ち家率になりました。当然、普通の人が老後住むところがない、という事態も滅多に発生しません。

               

              いっぽう、日本の医療保険や介護保険、年金制度の福祉パッケージは、世界でも有数の手厚く国民に優しい制度だと私は思います。特にシンガポールで歯医者の請求書を見るたびに「日本に住んでいれば…」とがっくり肩を落とします。

               

              数カ月前に帰国したときには数年にわたってガン治療をしている旧友と会って話をしたのですが、医療費はほぼ保険でまかなえ、厚生年金で家賃や生活費が払えて十分やっていける、ということを聞いて、こんな制度がある日本はつくづく素晴らしい国だと思いました。

               

              しかし、この素晴らしい制度もすでに限界に達しています。どこをどう考えても現在の日本の年金制度は「100年安心」ではありませんし、医療費も介護保険費もこのままの制度を維持していったら、若い勤労者世帯が自分たちのために貯蓄する余裕はまったくなくなり、生活は苦しくなる一方です。

               

              これでいいわけがありません。

               

              小さいところでいえば、現在すでに年金受給生活に入っている人でも、高齢者でも一定以上の収入や財産がある方々については年金を段階的にカットしていったり、医療費の自己負担率を上げるなどの対策を取り、医療機器のシェアなど医療におけるコストダウンを推進していくなど、まだまだできることはたくさんあるはずです。

               

              そして、最も重要なのはいつの間にか他助(私が若い頃は「支払った年金保険分は自分がもらえるというのが行政の決まり文句でしたが、その約束は果たされそうにありません)になってしまった社会福祉をできるだけ自助に戻し、そのための制度設計を一から作り直すことが必要ではないかと思います。

               

              www.mrs-lowe.com

               

              以前にこの記事で夫婦ともに日本でかけていた厚生年金は今後どうなるかわからないので計算外。支給されればラッキーと考えて使います」と書きましたが、これは私の偽らざる気持ちです。「ねんきん定期便」によると、2人でこれまでに支払った年金保険料は数千万円ありますが、これをすべて放棄して受給額がゼロ円でもかまいません。

               

              その代わり、今後、日本に居住しても国民年金保険と国民健康保険納付義務を免除していただきたい。自分の生活費や医療費はこれまでの蓄えや自分の保険で何とかしますし、そうでない方はこれまで通り、それが難しい方々には生活保護などで税金を投入していただければいい。その原資となる所得税や消費税を今後もきちんと支払うのは望むところです。

               

              しかし、ただ生きて日本に居住しているだけで支払い義務が発生し、しかも、収入は増えないのに毎年右肩上がりで保険料が上がっていく国民健康保険料や国民年金保険料はまるで人頭税のようで、消費税のように節約しようがなく、所得税と違い収入がなくても払わなくてはいけないので、リタイア世帯にとっては非常に厳しいのです。

               

              私のように「ゼロでもいい」というのは極論かもしれませんが、今後、私のような考えをもつ人々が支払わなくても良い分を支給予定の年金からマイナスしていく、というような制度であればいくらでも作れるはずです。

               

              現在の制度のように、現在の受給者のために毎月の保険料が利用され(受給者の方々も保険料を長年支払ってきたので受給は当然ですが)、自分たちが受給される側になるのは毎年引き延ばされて何年後になるかわからない、そして、いつまで保険料を払い続けなければなくなるのかわからない、では、勤労者世帯もリタイア世代も絶望的な気分になるだけです。

               

              「自助」のためには現在の保険料負担の軽減が大前提です。

               

              上記記事の筆者の方がおっしゃっているように、名目上は「保険料」でありながら実質的には「税」と同様になっている福祉に関わる保険料をどうするか、消費税と一体にして議論してほしいと思います。

              | Yuriko Goto | 老後と年金 | 20:35 | - | - |
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