ASIAN NOMAD LIFE

日本、香港、中国で生活・仕事をしてきてシンガポール在住7年目。
社長の住む街トレンドに見る、地方と都心二極化の未来。
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    ■高級住宅地から都心への回帰が鮮明に
    821日付の日経新聞電子版「田園調布→赤坂社長の住む街、都心シフトのワケ」という記事を興味深く読みました。
     
    東京商工リサーチが行った調査に基づき、2003年と2014年を比較して全国の市町村で社長が住んでいる街のランキングを掲載。これによると、田園調布(大田区 20031位→201418位)、成城(世田谷区 1位→13位)、奥沢(世田谷区 7位→15位)など、いわゆる東京の高級住宅地が大きく順位を落とし、代わりに赤坂(港区 20位→1位)、代々木(渋谷区 16位→2位)、西新宿(新宿区 100位圏外→3位)など、都心の、これまでなら住宅地というよりはオフィス街だった地域が上位に躍進しています。
     
    ■職住接近のメリットにいち早く気がついた社長たち
    記事中では、地価下落により都心の地価が下がったこと、都市部の再開発が進み交通アクセスがよくなったこと、居住性に優れた高層高級マンションが増加したことに加え、繁華街や文化・商業施設にも近く、職住接近のメリットを享受できる都心に社長たちが回帰しているのではないかと推測しています。
     
    確かに、戦前は都心の「山の手」といえば高級住宅地の代名詞。2003年ランキング上位の田園調布や成城などはどちらかというと新興高級住宅地というポジションで、再び高級住宅地の流れが都心に向かっているのかもしれません。このところChikirinさんやイケダハヤトさんなど著名ブロガーの方々が「長時間の通勤時間はムダ」と職住接近のメリットを力説されていますが、コスト感覚が発達した社長たちがいち早くそのトレンドを実践しているともいえるでしょう。
     
    ■社長居住地も東京一極集中に
    もう一つ気になるのは、2003年のランキングには入っていた東京都以外の街がすべて消え、2014年はすべて東京23区の街になっていること。
     
    神栖町(茨城県 20036位)、竜王町(山梨県 8位)、府中町(広島県 9位)、葉山町(神奈川県 11位)、神辺町(広島県 15位)、那珂川町(福岡県 17位)がすべて20位圏外に。n数が2003年は106万社、2014268万社とだいぶ違いますので単純に比較はできないとはいえ、それでも地方都市がゼロという結果は、いかに経済の東京一極集中が進んでいるかを如実に示す結果ではないでしょうか。
     
    この傾向は、「社長の住む市区郡」という別の表を見ても明らかで、2003年のベスト10の中に東京の区は世田谷、太田、練馬、杉並の4区しかありませんが、2014年は10位までをすべて東京の区が占めています。
     
    ■交通至便、低コストの穴場、東京イーストは地方の社長に人気?
    もう一つ意外なのは高輪(港区 20146位)や新宿(新宿区 8位)に交じって、大島(江東区 7位)や亀戸(江東区 9位)という、東京東部の下町がランクインしていることです。
     
    実は我が社も2009年に江東区の清澄白河に東京営業所を構えました。当時はブルーボトルコーヒーもお洒落なブティックもなく、お客様が多い日本橋から浅草にかけての問屋街に近く、下町らしいのどかな雰囲気が気にいって決めたのですが、実際ここを拠点にしてみると、地下鉄が何路線も使えたり、羽田や成田へのアクセスが非常によいことに気がつきました。東京の玄関口である東京駅までも車で15分程度、ちょっとがんばれば歩けない距離でもありません。さらに、東京ビッグサイトや幕張メッセなどの展示会場にも近く、便利なことこのうえありません。にもかかわらず、地価は東京駅から中央線で30分以上かかる西荻窪あたりとほぼ変わらないのです。
     
    また、最初の頃は、近くのビジネスホテルなどに宿泊していたのですが、だんだん東京での仕事が増加し過ごす時間が長くなっていくのと同時に、外国人観光客増加の影響かホテルの予約が難しくなり、数年前から営業所近くのマンションから通うようになりました。東京の地元採用スタッフの話によると、江東区(といっても豊洲近辺のタワーマンションではなくあくまで下町)には私のような地方企業の社長が増えているそうで、このところの新築マンションが売り出しと同時に完売という状態に一役買っているようです。
     
    ■会社も東京と地方の2本の軸足をもつ時代に
    繊維業界では最近、YKKが東京勤務の一部社員を富山本社へ異動させることを決め、話題になりました
     
    生産拠点がある地方に東京の優秀な人材を還流させ、また、地方ならでこその社員の生活の質の向上をめざすという意味で素晴らしい試みであると思いますが、かといってビジネス情報が集中する東京抜きですべてを済ませることは現実的に不可能です。繊維業界でも、地元の生産や物流機能はそのまま残し、東京に営業や情報収集の拠点を作る中小企業が増加しています。また、本社は地方のままで、社長は東京の拠点に常駐、という会社も少なくありません。
     
    地方と東京都心、この2つに軸足をもつ企業がこれからさらに増えていくのではないかと、この記事を読んで改めて考えさせられました。
    | 後藤百合子 | 日本経済 | 01:48 | - | - |
    子どもNISAは子どもの未来を拓くのか?
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      5日、子どもの日の日経新聞オンラインに『1.2兆円流入も 子どもNISA が未来開くという記事が掲載されていました。2016年から始まる子どもNISA(投資金額年間80万円までキャピタルゲイン非課税)により、多くの子どもが自分で投資できるようになるという趣旨の記事ですが、非常に違和感を覚えました。
       
      記事によると、子どもNISAによって投資に関心をもつ子供が増え、その結果1.2兆円が投資市場に流入するということで、母親に薦められて10歳から株式投資を始めたお子さんや、8歳で投信セミナーに父親と参加するお子さんなどが紹介されています。セミナーの講師は「お金を増やすには自分が働く、お金に働いてもらうという2つの方法があります。後者が投資です」と語っていますが、まだ前者の「自分が働く」こともよくわかっていない子供に投資教育をすることに疑問を感じるのは私だけでしょうか?
       
      断っておきますが、私は大人が金融市場で投資をすることに決して反対ではありません。世界的な低金利が続く中、私自身も老後に備え、いくばくかの蓄えを株や投資信託で運用していますし、投資の神様バフェットが言うように、効果的なリターンを得ようと思うのならばなるべく早いうちから投資を始めるというのは理に適っています。
       
      しかし、自分自身が働いて得るお金の大切さを知る前から「お金に働いてもらう」教育をするのは少し違うと思うのです。
       
      ■「お金に働いてもらう」教育で起こったバブル経済
      1987年、NTT株の一次放出がありました。11197千円だった取引価格が2か月で300万円以上にもなった現象は、今もバブル経済のあだ花として語り継がれています。
       
      この頃私は社会人として働き始めたばかりでしたが、世の中には「投資をしない奴はバカだ」という声が吹き荒れていました。新聞や雑誌、テレビには毎日のように当時まだ珍しかったファイナンシャルプランナーが次々と登場し、どの株式銘柄を買うべきか、どのように手元資金を増やすかを熱心に指南していました。当時、大学1年生だった私の妹は、そんな声に背中を押されるように、なけなしの貯金をはたいてNTT株を1株買ったのです。
       
      彼女がどのタイミングでこの株を売ったのか、今もまだ持っているのか、聞いたことはありません。しかし、まだ社会のことが何かもわかっていない妹までがこの株を買ったことで、私はバブル経済の崩壊を直感し、その後、いっさい投資には手を出しませんでした。
       
      そして予想通りバブルは崩壊し、投資に失敗して全財産を失った人や、倒産した会社などが私の周囲にもあふれました。短期的に儲けるための投資はギャンブルであることがこれほど明らかになったときはなかったと思います。
                                                                                           
      ■実業の教育が子どもの職業観を作る。
      私が子どもの頃、「はたらくおじさん」というNHK教育テレビの番組がありました。
       
      農場、工場、工事現場、商店などさまざまな職場で働く人々を紹介する番組で、家で観る以外にも学校の社会科の授業でもときどき視聴していました。私はこの番組が大好きで、自分も早くおじさんたちのように働きたいといつも思っていました(この嗜好は現在も続いていて、いまだに工場見学が大好きです)。
       
      確かに金融業界はさまざまな実業の世界を支える、なくてはならない産業です。しかし、間接金融の役割はあくまでサポートであり、まず実業の世界があって初めて存在意義がある産業ではないでしょうか。
       
      金融はあくまで「働いてお金を稼ぐ」を助けるためにあるものであって、助けてもらったお礼として投資家はお金をもらえるはずです。ですから、お金自身が働くのではなく、実際に働いた人たちからお裾分けとして投資した人に与えられるものがキャピタルゲインなのです。
       
      子どもたちがこうしたことをよくわかってから始めるのが、本当の投資ではないかと私は思います。
       
      ■金融市場に資金を流入させたいなら、まず大人のNISA枠拡大を。
      記事によると、NISA枠を子どもにまで拡大する理由は、現在、60歳以上が7割を所有する有価証券市場の主役を、下の世代に裾野を広げていきたい、という思惑のようです。
       
      しかし、戦後世代から団塊世代の60歳以上がもつ資産のほとんどは、「お金が働いてきた」お金ではありません。70年前の敗戦からこの世代の方々が必死に働き、こつこつと貯蓄や投資してきたお金が現代の日本に存在する金融資産なのです。このことをまだ年端もいかない、働くことも知らない子供たちが理解できるとはとても思えません。
       
      もしも若い世代に本当に金融市場に入ってもらいたいのなら、子供枠ではなく、現在の大人のNISA枠を広げて1人200万円にしたらどうでしょうか? 最近の経済政策では「孫になら祖父母も喜んで貯金を差し出すだろう」という目論見があちこちで透けてみえますが、大人が責任をもって金融市場に投資をするのであれば私も大賛成ですし、わざわざ子供をだしに使う必要はありません。
       
      ■信託財産は子供が成人するまでプロが運用していた。
      欧米の近代小説を読むとときどき「信託財産」というものが出てきます。これは、お金持ちの子どもが成人するまで、信頼できる信託会社に財産を預け、一定の年齢になったら子どもがその後の生活に困らないように財産を渡す、それまで信託会社がしっかりと投資をして預託された財産を守る、というシステムです。まだ社会経験のない子どもに大金を渡したら見境なく使ってしまうので、一定の年齢までは渡さないようにする、という前提で考案されたものであったのだと思います。
       
      信託会社には投資をする会社を選び、数十年という長いスパンでクライアントの期待に応えられるよう、プロとして財産を管理することが求められました。
       
      翻って現代では「ミセス・ワタナベ」に象徴されるように個人投資家があふれていますが、投資の世界で全員が勝つことはありえません。長期的にみれば少しずつ蓄えを増やしていく人もいるでしょうが、そのときは物価も上がっていきますから、ほんの一部のセミプロたちを除けば大多数の人々は物価上昇に対してトントンか多少増やせれば良しとする程度でしょう。
       
      一番良いのは、インフレに対して応分の金利が払われ、少しずつでもしっかりと貯蓄をしていく、余裕があれば少しずつでも投資市場で長期的視野にたった投資をすることだと私は思います。
       
      そして個人の短期投資はあくまでもギャンブル性が高いことを忘れず、子どもたちにも良識ある大人がしっかりと教えてほしいと思うのです。
       
      | 後藤百合子 | 日本経済 | 17:50 | - | - |
      AIIB参加には大局にたった国民的議論を!‐‐ 気軽にのるわけにはいかない、前途多難なアジア金融
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        JUGEMテーマ:国際社会
        ■日本のAIIB不参加にバッシングの嵐!?
        昨日から
        2日間、世界最大のイスラム人口を誇るインドネシアで、100か国以上を集めてアジア・アフリカ国会議が開催されました。

        主催国インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は開会スピーチで「世銀、
        IMFADBが世界金融の問題を解決できるという考え方はすでに時代遅れだ」と現状を批判しつつAIIB(アジアインフラ投資銀行)への期待を煽り、シンガポールのリー・シェン・ロン首相も自国メディアの取材に応えてAIIBは「新たな(世界経済の)方向性への第一歩」であるとの見方を述べました。
         
        いっぽう、日本でも丹羽宇一郎元中国大使・元伊藤忠商事会長を筆頭に、各界から日本のAIIB参加を求める声が上がっています。いずれも「中国を中心とした世界の経済の枠組みの変化に日本だけが乗り遅れるのはまずい」という論調です。
         
        日本政府は3月末締切までの参加表明はすでに見送り、あくまでも慎重な姿勢を崩していません。今月9日の記者会見では麻生財務相が「現在のようにAIIB自体の運営方針が不透明な状況では、貸したお金が返ってくるかどうかわからず、そこに国民の税金を投入するわけにはいかない」と述べています。(この発言と関連していると思われますが、現在、視聴者3億人ともいわれる香港の中国語衛星放送局フェニックスが、反麻生キャンペーンを展開しています。
         
        参加賛成の方々の意見をみると一見、日本がAIIBに参加しないと将来の私たちの生活に非常に不利益をもたらすような印象をもちますが、本当なのでしょうか?
         
        AIIBに参加するのはどこの国なのか?
        中国主導のAIIBに参加表明をした国と日本主導のADB(アジア開発銀行)参加国を図解した地図が掲載されているサイトがありますので、実際の参加表明国の内訳をよく見てみました。4月になってカナダがAIIB参加を表明したので、北米で不参加はアメリカのみとなりましたが、南米でAIIB参加はブラジルのみ。アフリカでもエジプトと南アフリカのみの参加となっています。「南米やアフリカからも参加!」と煽る記事もみかけましたが、実際にはこの地域からの参加は3か国にすぎません。
         
        逆にADBには入っておらず、AIIB参加国が多いのはロシアを含む中央アジア・EU諸国と中東。いずれも昨年来の原油価格暴落と、何年も続くヨーロッパ経済の停滞に苦しめられている国々であることがわかります。
         
        ■財政危機に瀕するイスラム金融最先端のマレーシア
        インドネシアと並びASEANのイスラム大国であるマレーシアでは、今月から消費税が導入されました。原油安による財政難のためという建前で導入時から6%の高税率。たまたま導入後すぐに首都クアラルンプールを訪れる用事があり、華人系ビジネスマン数人と話しましたが、財政難の内実は現政権内部の腐敗がひどく、適切な会計処理ができていないためであり、国有企業の中には資金繰りがうまくいかず、何度も操業停止を繰り返しているところもあると口を揃えて語っていました。この現状に対し「ルックイースト政策」でマレーシア経済を発展させてきたマハティール元首相は、現ナジブ政権に退陣要求をつきつけています。
         
        また、シンガポールとの共同プロジェクトとして鳴り物入りで進められてきたジョホールのイスカンダー地域開発も、資金難のためか最近ではマレーシア側から開発スピードの抑制がもちだされてきており、暗雲がたちこめています。
         
        このように前途多難なマレーシア経済ですが、実は近年、イスラム金融の中心地としてこの分野のリーダー役を果たしてきました。南アジア、中央アジア、中東など今回20か国近くのイスラム教国がAIIBに参加を表明していますが、牽引役であるはずのマレーシアがこの体たらくでは、どの国がイスラム金融分野でのリーダーシップをとるのかが危ぶまれます。
         
        ■クレジットカードが普及していない中国とインドネシア、金融インフラ未整備のインド
        難しいのはイスラム金融だけではありません。2013年、楽天がインドネシアでの合弁事業解消で話題になりましたが、インドネシアでのeコマース最大のネックはクレジットカードがほとんど普及していないことです。1997年の金融危機を脱して以来、着実な経済成長を続けてきたインドネシアですが、1人あたりの購買力平価GDPは1万USドルを少し超えたくらいで、バイクや自動車など一部の産業を除き、人口ボーナスによるメリットを広く企業が享受できるような経済状態にはまだ至っていません。
         
        いっぽう、AIIB宗主国の中国も一般消費者と「信用」取引ができないという点ではインドネシアとたいして変わりません。中国人観光客の爆買が世界中で話題になっていますが、彼らの爆買を支える「銀聯カード」は、実はクレジットカードではなく、デビッドカードです。クレジット(信用)に対しデビット(即時決済)ですから、先進国では当たり前に行われている信用経済が個人レベルではまったく普及していないことはもちろん、信用取引を行っている企業レベルでも銀行の不良債権が危険水域にあるのは報道されている通りです。
         
        さらに、中国に続く超大国の期待が高まるインドでも、モディ首相が金融改革を政策の目玉にもってくらい金融インフラ整備ができていない状況です。我が社でもインドから直接輸入をしていますが、電信送金が届かないと連絡がくるのは日常茶飯事。ひどいときには入金確認までに2週間以上かかることもあります。このような状況から脱するのが一朝一夕でいかないことはモディ首相でなくともわかります。
         
        ■ヨーロッパはお付き合い、日本はお付き合いですむのか?
        経済問題を抱えているのはEU諸国も同じです。今回も多数のEU加盟国がAIIB参加を表明していますが、あくまでも彼らはアジア諸国ではなく、部外者であることを忘れてはいけません。ギリシャが破産すれば火の粉は自分たちにかかってきますが、アジアの小国が経済危機に陥っても遠いヨーロッパでは対岸の火事でしかありません。ですから、AIIBにもお付き合い程度の多少のお金を払って参加しておけば、将来、漁夫の利を得ることもできるかもしれない、という損得勘定が働くのは当然のことです。
         
        しかし、日本がもし参加するのであれば、そのような軽い気持ちでは他国が許さないでしょう。GDPでは中国の後塵を拝したとはいえ、世界第3位の経済大国、腐っても鯛、アジアの中心メンバーである日本ですから、お付き合い程度の出資金でお茶を濁すのは不可能です。いっぽう、ただでさえ、アベノミクスの金融緩和で国債発行高が天文学的数字に達している中、麻生財務大臣がおっしゃる通り、他人に貸す金があれば、まず自分の借金を返すのが当然なはず。現在の日本の最悪の赤字財政下で、将来返ってくるかもわからない大金を拠出するのは、まさに自分で自分の首を絞めることに他なりません。
         
        ■日本人が総裁を務めるアジア開発銀行(ADB)は格付けトリプルA
        では日本が何も国際経済に貢献していないかといえば、それは違います。AIIBより参加国が多く、アジア地域の発展を長年にわたり支えてきたADBがあるのです。
         
        ADBは1966年設立。アメリカと日本が各15%強を出資し、67加盟国・地域が参加(AIIBは台湾参加を拒否)。「貧困のないアジア・太平洋地域」をめざし、対政府融資を柱にしています。加盟国には中国、インドなどの他、イギリス、ドイツ、フランスなども含まれ、本部はマニラです。ADBの融資残高は昨年6月末で約800億円。
         
        日本がAIIBに参加した場合、設立時の融資規模は一説には1,000億円と言われているそうですが、応分の負担をしなければならず、人も出さなければならない、また融資基準など原資が保証されることが明確にわかるルール作りもこれからというときに、とてもそんな巨額の税金を拠出する余裕は今の日本政府にはありません。しかし、トリプルAの格付けをもつADBで現在、実際に同規模の融資が行われているのです(うち約25%は中国向け)。また、もし、融資枠が不足しているというのであれば、ADBの調達資金を増やせばいいだけの話ではないでしょうか。

         
        ■日本の将来のグランドデザインとの関連で議論を
        『日経ビジネスオンライン』で、チャイナ・ウォッチャーでジャーナリストの福島香織さんが「中国主導のアジアインフラ投資銀行の行方 米国とも中国とも対等であるらめの方策を」という記事を書いていらっしゃいます。

        こういう背景があるので、私は日本がAIIBに参加しなかったのはよかったと思っている。もちろん将来の中国の大国化シナリオを考えれば、擦り寄っておいた方がよかったではないかと言う人もいるだろう。私は現役の北京駐在記者時代から中国が今の体制を維持できない確率は3割位のイメージで取材するのがよい、と思っていた。同時に今は米中G2時代のシナリオも2割くらい頭の片隅においている。だが崩壊するにしろ、大国に化けるにしろ、日本が中国の“冊封体制”に入る選択肢はないと思っている。かつて大陸には巨大な帝国が何度も出現しているが、日本は小国ながらその冊封下に入ってこなかった。歴史の中で日本を支配したのは米国だけである

         
        福島さんのご意見にまったく賛同しますが、ただ、中国だけとの関係性だけではなく、アジア全体の経済の中で日本がどのような位置を追求していくのかも含め、さらに具体的に、国民全体を巻きこんだ議論がなされるべきでしょう。
         
        もっと具体的にいえば、日本という国が、これから何で食べていくのか、他国との関係も含め、どのような国にしていくべきなのかを網羅する国家のグランドデザインと共に、AIIB参加への是非を議論すべきであると思うのです。その意味で、ただバスに乗り遅れないためだけにAIIB参加を煽るのには反対です。
         
        | 後藤百合子 | 日本経済 | 15:05 | - | - |
        アベノミクス第三の矢でいよいよ始まる移民受け入れ政策
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          JUGEMテーマ:シンガポール
          先週、在シンガポール日本大使館主催でアベノミクスに関するセミナーが開催されました。
           
          内閣官房参与本田悦郎氏をキーノートスピーカー、シンガポール政府投資会社のチーフエコノミストと、シンガポール最大の不動産会社キャピタランド子会社の日本担当責任者をスピーカーに、コーディネーターをシンガポール国際問題研究所トップに依頼するという豪華編成。シンガポールを拠点にして5年になりますが、日本大使館主催でこれだけの規模のセミナーを見たのたのは初めてでした。
           
          ■アベノミクスの推進者、本田悦郎官房参与講演の意図
          講演ではアベノミクス政策により一部で復調の兆しをみせる日本経済の説明に始まり、インフレターゲットを達成することこそが最重要課題と本田参与が力説。ただし、折悪く日銀の黒田総裁が2015年度のインフレターゲットを2%から1%に軌道修正した直後のタイミングで「2020年までに設定したプライマリーバランス黒字化目標を達成できなくてもいたしかたない」といういささか歯切れの悪い場面もありました。
           
          ただ全般的には、本田氏=安倍政権のアベノミクス推進に対するなみなみならぬ熱意だけはじゅうぶん伝わってくる講演で、シンガポール財界人に向けてアベノミクスの大枠を説明し、サポーターを増やす、という目的(私の推察ですが)はある程度果たされたのではないかと思います。
           
          ■具体的にみえてきた高度外国人材の受け入れ
          講演の中では特に言及されませんでしたが、配布された資料で最も気になったのがアベノミクス第三の矢の重点政策の労働資源として、女性と並び外国人が挙げられていたことです。労働力としての女性活用推進は第二次安倍政権発足当初から声高に叫ばれていましたし、昨年3月の自民党日本経済再生本部の「労働力強化に関する中間とりまとめで外国人技能実習生制度の拡充についてかなり詳しく述べられていましたが、高度人材に関する言及はごくわずかでした。それが今回の資料では、女性の労働戦力化と並ぶ柱として外国人が挙げられていたのです。
           
          その中で、すでに段階的に実施されている政策は2つあります。
           
          ・高度人材の要件に関する基準の緩和(給与水準や業績などの基準の見直し)
          ・永住権取得に必要な居住期間を5年から3年に短縮
           
          いっぽう、今後検討される政策としては、
           
          ・国家戦略特区(福岡市、養父市、関西圏、新潟市、東京圏)における外国人の起業奨励
          ・同区内における外国人家政婦の受け入れ(高度外国人材家庭向け)
          ・外国人材の積極活用推進のための新基準の促進
           
          が挙げられていました。この中ではさらに製造業セクターへの労働者受け入れも検討されており、20153月までに詳細な内容が決定されると書かれています。ここまで踏み込んで外国人受け入れを推進する目的はいったい何なのでしょうか?
           
          ■少子高齢化では日本の先を行くシンガポール
          シンガポール政府関係のスピーカー、レスリー・テオ氏は日本経済の最大の問題点として「人口構造の変化」と「規制撤廃が進んでいないこと」を挙げました。後者は「農業、医療分野」と明言されていましたので明らかにTPPを指していると思われ、「人口構造の変化」は日本流にいえば少子高齢化社会への急激な変化です。
           
          しかし、「人口構造の変化」が日本よりもっと深刻なのは実はシンガポールのほうです。一時期産児制限による人口抑制政策をとっていたこともあり、合計特殊出生率は日本の1.43を大幅に下回る1.2ぎりぎりラインで世界最低レベル。1975年に2.1を切ってからほぼ右肩下がりで推移しこれ以上伸びる気配がありません。ただ、シンガポール政府がこの状況に手をこまねいていたかというと、決してそうではありません。
           
          保育園(すべて民営)の数は驚くほど多く自由に選べ、待機児童という言葉さえありません。また、外国人家政婦も低賃金でいつでも雇うことができますので、女性が働きながら子育てする理想的な環境が揃っています。財政サポートも充実しており、ベビー・ボーナスという出産給付金が1人あたり約50万円支給されるほか(3人目からはさらに高くなります)保育料の補助もあります。さらに以前は政府主催の無料お見合いパーティーなどを盛んに催していました。しかしこれだけのことをしたにもかかわらず、出生率は下がり、独身男女の数は増えるいっぽうでした。シンガポールでは少子高齢化に歯止めをかけることはできなかったのです。
           
          ■移民政策に舵を切ったシンガポール
          そこでシンガポール政府がとった対策は、移民の受け入れでした。
           
          外国人労働者を高度人材と単純労働者に分け、ビザの種類や滞在期間、規則などを厳密に区分して受け入れました。例えばIT技術者など絶対数が不足している高度人材の場合は、就業ビザや永住権が比較的簡単にとれやすいのですが、逆に低コスト労働者である外国人家政婦の場合は永住権申請はできず、また、妊娠がわかった時点でビザは取り消しとなり、国外退去処分を受けます。
           
          永住者は帰化への段階的措置とみなされており、申請すればシンガポール国民になることも可能です(ただし審査基準は非公開で必ずなれるわけではありません)。帰化する人がもっとも多いのはシンガポール人とあまり変わらない華人系マレーシア人ですが、最近では中国からの帰化シンガポール人も増えています。
           
          このように、シンガポールではすでに自力で人口を増やすのではなく、国にとって有用だと考える人材を輸入する、つまり移民を受け入れる方向に大きく舵を切りました。その結果、外国人人口はこの十年で約2倍に伸び、1人あたりGDPも日本を大きく超える経済成長を果たしました(ただし国民及び永住者は全住民の約70%程度にとどまっていて、その他は依然として外国人労働者です)。シンガポール政府は今後数十年間で人口を現在の倍の1,000万人まで増やす計画ももっているようですが、その実現策が移民を軸としたものであることは疑いようがありません。
           
          ■移民受け入れと法人税減税はセット
          建国当初から多民族国家だったシンガポールと違い、これまで海外からの人材受け入れを厳しく規制してきた日本にはバブル期などに人手不足に陥り、「移民受け入れ」議論が起きてもことごとく潰されてきました。しかし、特区をわざわざ作ってまで高度外国人材を受け入れるという政策の裏には、シンガポールと同じく日本の少子化・人口減少にはもはやドラスティックな改善が望めないという諦念が見え隠れしているような気がします。
           
          そしてもう一つ、安倍政権が財務省の強硬な反対を押し切ってまで推進しようとしている法人税減税もこの高度外国人材受け入れと無関係ではないと私は考えています。というのも、コストのかかる教育を受け、高度なスキルをもつ人材は世界的にどこの国でも歓迎されており、シンガポールをはじめ多くの国が獲得競争をしています。彼らに移民してもらい働いてもらうことにより、国全体の経済成長を促すことができるからです。しかし日本では「(世界共通語である)英語が通じにくい」というハンデがあるうえ、企業法人税が非常に高いというデメリットも抱えています。これでは外国人にとって移民先や投資先として魅力がなく、他国との獲得競争に負けてしまいます。
           
          私はこれまで中国とシンガポールで会社を設立してきましたが、海外からの投資や人材を呼び寄せたい国が真っ先に行うのは税の優遇です。中国に会社を設立したときには外資企業に対し「三免五減」で3年間は会社の利益に対して免税、5年間は減税されるという特典がありました。シンガポールでは3年の免税期間がありました。
           
          これに類する外資企業への優遇措置を日本政府が直ちに行えば、国内企業と差が開きすぎて不満が噴出することは必至です。また、数年間免税や減税をしてもらっても、その後、世界的にみても非常に高い水準の法人税が課されることがわかっていれば進出する企業も二の足を踏んでしまいます。そこでまず段階的に法人税減税をしつつ、外国企業への優遇措置も検討していくというのが次の一手ではないかと考えるのです。外資企業が増えれば当然、そこで働く外国人も増えていきます。このようにステップを踏みながら外国からの高度人材を受け入れたい、というのが政府の本音なのではないかと推測するのです。まず永住権の取得期間を短縮したのはその表れではないでしょうか。
           
          ■アベノミクス後に来るのは真の日本の国際化か?
          本田氏が講演中何度も口にされた数々の政策実現期限である2020年は、東京オリンピック開催年でもあります。公共工事やインバウンド受け入れ整備など現内閣が推進する施策は多いと思いますが、その背景には東京オリンピック以降をにらんで日本という国の将来をどう形作っていくかのビジョンが反映されているはずです。アベノミクスはまさにその礎の政策となる運命にあります。
           
          その意味で、外国人労働者(高度人材であれ単純労働者であれ)の受け入れはこれからの少子高齢化社会をどう乗り切っていくかの一つの解答になると同時に、本当の意味でこれからの日本が国際化していくのかどうかの重要政策の一つになるのではないでしょうか。
           
          | 後藤百合子 | 日本経済 | 08:30 | - | - |
          TPPこそ農業の救世主に!――シンガポールのスーパーマーケットから見える日本の農産物が売れる理由
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            ■膠着状態に陥ったTPP交渉
            2014年の経済ニュースで最後まで気になっていたのがTPP交渉の行方でした。
             
            結果からいうと「確実に年内合意をめざす」との当初の経産省の意気込みにもかかわらず、2,014年度中に合意には至りませんでした。シンガポールで交渉が行われたこともあり、JETRO主催のセミナーで直接交渉担当官の方からお話をお伺いする機会もありましたが、壮大なフリートレードゾーンの青写真にもかかわらず、交渉内容や進捗状況についてはすべて秘密のベールに包まれており、結局、長期間をかけたものの昨年は不調に終わり、今後も事態打開の兆候は簡単に見えそうにありません。そんな中、交渉国の一つであるシンガポールからは「もう日本をはずした11か国でTPPをまとめたほうがよいのでは」というような意見さえ出るような状況になっています。
             
            ■他国から本音を見透かされるTPP締結を望まない安倍政権
            年末の衆院解散総選挙はアベノミクスの是非が最大の争点になっていたようですが、TPPについてはほとんど話題に上りませんでした。日本政府としてTPP対策本部を作り交渉に臨んでいるいっぽうで、自民党政権内にはTPPに真正面から反対する議員が多数います。つまり「TPPを締結したい」というポーズの裏で「いちおうTPP締結には努力するけれど実際には合意しないほうがいい」という本音が他の交渉に本気で取り組んでいる国々に見透かされてしまっているのではないかと思うのです。
             
            安倍内閣で要職を歴任する稲田朋美自民政調会長は筋金入りのTPP反対論者でしたし、法相に再任された上川陽子氏もつい最近まで「TPP反対」とHPに記載していました。このようなメンバーが政府要人として起用されていれば、交渉妥結に日本が及び腰の姿勢になっていることも不思議ではありません。
             
            ■世界各国から農産物を輸入するシンガポール
            TPPに反対する方々の最大の論拠は「安い輸入農産物が入ってくることにより日本の農業が壊滅する」ということです。しかし、世界各国からほぼ100%農産物を輸入しているシンガポールに住み、地元のスーパーマーケットで毎週買い物をしている私から見るととてもそうは思えません。
             
            よく知られているようにシンガポールはフリートレードゾーンであり、車や酒などごく一部のものに輸入税がかかる以外、関税率はすべて0%です。そのため、スーパーマーケットには世界各地からの輸入食品があふれています。
             
            葉物野菜は隣国マレーシア産が多いですが、中国産も半分近くあります。果物はマレーシアはもちろん、インドネシア、タイ、ベトナムなどからトロピカルフルーツ、中国や韓国から梨や柿など、オーストラリアやニュージーランドからキウイフルーツやりんごなどが輸入されており、アメリカ産オレンジやブルーベリー、スペイン産ザクロやイスラエル産スィーティーなども見かけます。
             
            米はインディカ種(長米)のタイ米が圧倒的な人気でいろいろなブランドのものがありますが、ジャポニカ米(短米)も徐々に種類が増えています。以前はカリフォルニア米しか選択肢がなかったのに、最近はスーパーのPBをはじめいろいろなブランドが買えるようになってきました。一部の高級スーパーでは日本米も販売しています。
             
            気になる日本からの農産物ですが、高級品を置いているスーパー(日本人向けの店ではない)にはオーガニック野菜の隣に日本農産物のコーナーがあります。健康食として和食を好んで食べる人が多いためか、日本から直輸入された野菜が日本の2〜4倍程度の価格で販売されており、少しずつですが種類も増えています。
             
            ふつうのスーパーでも少し大きい店になると必ず日本の調味料のコーナーがあります。人気のカレールーはもちろん、海苔やみりん、すし酢なども買えます。ここで調味料を揃え、もっとこだわりたい人は日本からの輸入野菜まで購入するというところでしょうか。
             
            ■企業努力で躍進するホクトのぶなしめじ
            その中で私が注目しているのは沖縄産もずくとホクトのぶなしめじです。
             
            沖縄産もずくは私がシンガポール人の夫と結婚した15年ほど前からすでに一部スーパーでみかけていましたが、現在はほとんどのローカルスーパーに置かれています。価格も日本で買うのとあまり変わらず、シンガポールの一般家庭の食材として根付いたといってもいいと思います。
             
            いっぽうホクトの日本産ぶなしめじは最近、急激にスーパーのきのこコーナーに出回りはじめました。2パックで200円強のプロモーションをしょっちゅう行っており、その分韓国産のえのきコーナーが縮小する事態にまでなっています。輸送費を入れても日本と変わらないような値段ですからコストダウンの企業努力は相当なものだと思いますが、このままぶなしめじもシンガポールで欠かせない食材として残っていくのは間違いないのではないのでしょうか。
             
            ■競争があることによって農産物も進化する
            TPPの話題が出るたびにいつも思い出すのが、GATTウルグアイラウンドでの牛肉オレンジ自由化です。これは80年代後半にアメリカの圧力に負ける形で日本政府が牛肉とオレンジの自由化を認めたものでしたが、協議中は「日本の畜産農家とみかん農家は壊滅する」と国を挙げて自由化に反対するキャンペーンが張られました。私の友人の実家も大きなみかん農家を経営していましたが、父上が「もうみかんの将来はない」と泣きながら農場のみかんの木を伐り、経営意欲まで失ってしまい、自由化からほどなくして失意のうちに早逝してしまいました。このような方々がいらっしゃったことを思うと、決して他人事とは思えません。
             
            しかし自由化にもかかわらず、日本の牛肉は「和牛」ブランドの御旗のもとに素晴らしい進化を遂げ、市場で勝ち残ってきました。日経新聞の記事によると、1990年度に約39万トンだった国内牛肉生産量はいったんアメリカ産牛肉に圧されて減少するものの、2013年度には36万トンまでに回復し、和牛だけをみると90年度の14万トンから13年には16万トンに逆に増えているのです。昨年末に熊本から初のハラル(イスラム教の教えにのっとって屠殺)和牛がインドネシアに出荷されたというニュースが流れましたが、年々豊かになるアジア諸国で本場日本の最高級「和牛」への需要が高まっていることは見逃せません。
             
            残念ながらみかんのほうは年々耕作面積が減っており、自由化前に比べると生産量は4分の1程度と低迷しています。しかし先月、日本に帰国したときに食べた地元のみかんが格段に美味しくなっており驚きました。静岡県はみかんの産地として有名ですが、三ヶ日など西部みかんは高級品で、私の地元東部ではジュース用など安価なものしか作れないというのが長い間、常識でした。それが今年は三ヶ日みかんを上回る価格で売られていたのです。これも生産者の方々の危機感を伴った多大な努力の成果だと思います。
             
            このように、やむにやまれず熾烈な競争の中に放り出されても希望を失わず、将来に向けて努力をする生産者の方々には、必ず未来が開けるものではないでしょうか。
             
            ■食糧自給率を上げる試みを始めたシンガポール
            いっぽう、つい最近になって、やはりシンガポールのマーケットでみかけるようになったのがシンガポール産の葉物野菜です。ごく一部の有機野菜農場などを除き、地価が異常に高く、賃金もアジアトップクラスの都市国家シンガポールでは農業は不可能と思っていましたが、よく見てみると昨年安倍首相が訪問して話題になった、オランダ型の工場栽培の野菜のようです。価格もマレーシア産のものとあまり変わらないので、何度か買って食べてみたところ、新鮮な分より美味しく感じられました。この試みがうまくいけば、飲料水を自給できるようになったように、シンガポールでも食料自給率が今後上がっていくことと思われます。
             
            また、農業先進国オランダの農産物はこれまでほとんど見かけたことがありませんでしたが、こちらも最近になってアメリカ産などと並んで販売されるようになりました。オランダ型農業は生産地に近いヨーロッパ内のみで成り立つ、という論調もあるようですが、遠く離れたシンガポールでも販売できているところをみると、そうともいえないと思います。オランダ産じゃがいもをみながら、ここにもし北海道産のキタアカリが同じくらいの価格で並んだら、飛ぶように売れるのではないかと勝手に想像しています。
             
            ■必要なのは円安政策と流通対策
            昨年10月には訪日観光客数が1100万人を超え、空前のブームに小売業界が湧きました。シンガポールでもこれまで「ちょっと高いから」と敬遠されていた日本への旅行がプチブームになっており、お客さんからも「みんな日本へ行って買ってしまうので日本の品物が売れない」などと文句を言われて複雑な気持ちになりました。
             
            しかしこの潮流は日本の農産物輸出にとって大きなチャンスになると思います。日本でも欧米への旅行者が増えておいしいパンやパスタなどへの需要が増えたように、日本で食べた美味しかったものを自国に帰ってもまた食べたい、という需要は必ず増えるからです。
             
            少子高齢化で日本の市場が縮小する中、地道な経営努力を重ねつつ世界でもじゅうぶん通用する高品質の農産物を作ってきた農家の方々にとって、TPPにより販売機会が増大することはチャンスでこそあれ決してマイナスにはならないと思います。
             
            しかしそれには条件があります。まず、円安の維持。これまで農家に限らず国内の製造業がどうにもならない環境として必死に耐えてきたのが異常ともいえる円高でした。アベノミクスの金融緩和により現在は人肌のちょうどいい円安になっていますが、安定した輸出量維持するには円安が必須です。
             
            また、もう一つは流通の問題です。最近、楽天がアジアでの拡販にテコ入れをし、毎日定期的に空輸することにより、これまで輸出の最大の課題であった物流コストを下げる試みを始めたそうです。我が社にも楽天と提携した静岡県からプロジェクト参加の打診があり、今回は見送りましたが、将来的には大いに期待できるシステムだと思います。このように、官民を挙げての輸出促進がいっそう進展すれば、これまで輸出などとは無縁だった小規模事業者にも大きなチャンスが広がってくると思います。
             
            「アジアの時代」と呼ばれて久しいですが、まだまだ日本が位置するアジア地域には成長の推進力が渦巻いています。「アメリカ対日本」の対決図式だけではなく、アメリカを利用したアジア地域全体での国としての生き残りをかけて、ぜひTPP交渉には再度積極的に参加してほしいと願っています。

            【参考記事】
            シンガポールの言論の自由とは?
            貧困家庭サポートNGOが超豪華パーティー主催!? 福祉も民間主導のシンガポール
             

             
            | 後藤百合子 | 日本経済 | 12:31 | - | - |
            トヨタ自動車空前の黒字でも日本人の給料が上がらない理由
            0


              ■トヨタ値下げ要請見送りで下請け企業の給料アップ!?
              10月25日付の日経新聞にトヨタ自動車が2014年度下半期の下請け企業への値下げ要求を見送る、という記事が掲載されていました。
               トヨタ自動車は継続して調達する部品の購入価格について、2014年10月〜15年3月分は取引企業に値下げを求めない方針を固めた。年2回の価格交渉で一律に値下げを見送るのは初めてとみられる。数万社に及ぶトヨタの全ての取引先に値下げ見送りの恩恵が広がれば、国内の景気回復を後押しする賃上げなどにつながる可能性がある。

              「国内の景気回復を後押しする賃上げなどにつながる可能性がある」と書いてありますが、本当にそうなのでしょうか?

              記事はさらに続きます。
              足元の円安で輸出採算が改善することなどに伴い、トヨタの14年4〜9月期の連結営業利益(米国会計基準)は1兆3000億円程度と過去最高を更新したもよう。15年3月期も2期連続で最高益を更新する見通しだ。
               一方、電気料金の引き上げや円安による資材費の上昇などに苦しむ中小企業の業績は低迷している。14年10月〜15年3月分の部品の価格を決める交渉では9月時点で平均1%を切る値下げを求める計画だった。この値下げを見送ることで本来生じるはずの数百億円の収益改善分を取引先に還元する。


              ■トヨタ空前の黒字でも上がらない下請け企業の部品価格
              トヨタの値下げシステムは業界では有名で、毎年2回必ず部品を納入する下請け企業にコストダウンを要求するものです。つまり、下請け企業はトヨタに対し同じ商品を納品しているにもかかわらず、販売価格は毎年2回ずつ確実に下がっていくのです。値下げ要求はその車種が販売中止になるまで続きますので、5〜7年程度は同じ品質の同じ商品であるにもかかわらず、下請け企業の部品価格は下がり続けることになります。

              もちろん販売価格は日本円ですから、下請け企業は円安の恩恵はまったく受けません。逆に円安により円ベースでは樹脂や金属などの原料価格、そして電気料金が大幅に上昇していますので、その分のコストアップも含めて決められた価格の中でやり繰りしていかなければなりません。

              記事には「この値下げを見送ることで本来生じるはずの数百億円の収益改善分を取引先に還元」と書いてありますが、これはトヨタの立場にたってみた話で、下請け企業にしたら「製造原価は上がっているのに販売価格は上がらないどころか下がっている」状況に変わりはないのです。こんな状態で、下請け企業が賃上げできるはずがありません。

              ■円安と海外生産拡大で過去最高益に
              もう一つ、トヨタ自動車の最高益ですが、実はこちらもほとんど日本には関係ありません。

              トヨタ自動車のHPによると、トヨタ、ダイハツ、日野を合わせたグループ全体の自動車の輸出台数は、過去5年間一貫して減り続けています。

              2010年 484万台
              2011年 446万台(地震の影響で生産台数減)
              2012年 480万台
              2013年 467万台
              2014年 372万台(1〜10月までの合計)

              いっぽう、海外でのトヨタ車の生産は増加の一途をたどっています。

              2003年には海外生産台数256万台、国内生産台数352万台と国内のほうが100万台ほど多かったのですが、2007年には海外431万台、国内423万台と逆転。この傾向は猛スピードで進み、わずか5年後の2012年には海外524万台、国内349万台と海外生産が国内の1.5倍となっているのです。

              ですから、トヨタの最高益も国内で稼いだものではなく、海外での利益が大部分を占めるといっても過言ではないでしょう。この場合も、国内のトヨタ社員の給料が大幅に上がるとはとうてい考えられません。稼いでいるのは日本の社員ではなく、海外のトヨタの社員なのですから。

              ■国は原点に帰って国内産業育成を
              トヨタ自動車1社をとってみても、現在の日本の産業構造では「円安→輸出増→従業員の給与アップ」という図式が当てはまらないのは明らかです。過去20年近くにわたり国内での産業育成をないがしろにし、「企業の海外生産を後押しする」政策を続けてきた結果が現在の国内不況につながっているのです。

              昨日の報道によると、官民ファンドのクールジャパン機構はラーメン店の一風堂に10億円以上の資金提供を決めたそうですが、非常に残念だと思います。なぜなら、サービス業の輸出は日本国内での雇用を産まないからです。同じ税金を使うのであれば、ぜひ日本国内での安定した雇用を創出し、かつ輸出につなげられる企業に使ってほしいと願います。
              | 後藤百合子 | 日本経済 | 18:35 | - | - |
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