ASIAN NOMAD LIFE

日本、香港、中国で生活・仕事をしてきてシンガポール在住7年目。
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    上海株式市場暴落をくいとめた中国式経済統制と、資本主義自由経済のターニングポイント
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      ここのところギリシャ経済危機がクローズアップされ、連日、世界的ニュースになっています。確かに一つの国家財政が破たんしかかっている状況は大きな問題には違いないのですが、ギリシャの経済規模の点からみれば、私にはそれほど騒ぐべき問題にはみえません。
       
      ■世界経済に与える影響が非常に小さいギリシャ経済
      2012年のギリシャの歳出予算は約11兆円。いっぽう2015年度の東京都の一般会計歳出予算は約7兆円です。国と地方予算の割合は約4:6ですので、これを考えると、国税も含めた東京単体の予算はギリシャを超えます。
       
      また、債務残高は42兆円程度と大きいですが、これも年収(歳入)の45倍程度の住宅ローンを抱えてしまったと考えれば、何とかやりくりして数十年かければ返せない額でもないように思えます(もちろん現在の経済規模を維持できればの話ですが)。
       
      800兆円の債務残高を誇る(?)日本に比べればギリシャの負債総額はたった20分の1の規模にすぎませんし、日本の債務残高が税収(約55兆)の15倍であることを考えると、このくらいの借金で世界は騒ぎすぎたので、逆にいびつな政権が幅をきかせてしまったのではないかと勘ぐってしまいます。いずれにせよ、ギリシャ問題の報道量に比べ、実質的な世界経済に与える影響はいたって軽微なものと思います。
       
      ■予想されていた上海株式市場暴落                                             
      いっぽう、先月半ばから始まった上海株式市場の暴落は、アジア株式市場にすさまじい破壊力をもたらしました。ここのところ2万円の大台を堅調に維持していた日経平均も一時19,000円代前半まで値を下げ、投資家の心理に大きなダメージを与えましたし、香港や韓国などのアジア株式市場も6月後半から7月にかけて下落し、ニューヨークダウも影響を受けました。
       
      そもそも上海株式市場は1年ほどの間に急激に高騰し、誰もが「バブルなのでいつかははじける」と考えていましたが、そのスピードは予想以上にすさまじいものでした。特に7月に入っては1000銘柄以上の株が連日10%以上下落するなど、97年のアジア金融危機時や08年のリーマンショック時を彷彿とさせる内容で、上海を起点にした世界金融危機の再来があるかもしれないと、予断を許さない状況になっていたのです。
       
      ■先週末に召集された中国政府の緊急ミーティング
      緊迫した状況の中、74日夜、CITIC(中国中信集団)を含む中国の投資会社トップが北京に集められ、中国証券監督管理委員会本部で緊急会合を開いたというニュースが入ってきました。
       
      CITICは今年1月、中国国営企業への外国投資としては過去最大級、伊藤忠商事とタイ財閥のチャロン・ポカパングループが共同で、合計1兆2040億円を出資すると発表された投資会社です。もしもここが大きな損害を被ったら、当然、その影響は日本やタイも飛び火します。もはや一部で言われていたように「上海株式市場は外国からの投資は少ないので世界経済に与える影響は少ない」という段階ではないと感じました。
       
      そして週明け。中国監督管理委員会は次々と株価暴落防止政策を発表。私がネット上で把握した限りでも、以下の政策が執行されています。
       
      ・国有企業の株取引を禁止
      ・大口投資家の株売りを禁止
      ・金融機関に株担保ローンの継続を指示
      ・機関投資家に株の買取りを強制
      ・株の空売りを警察が取り締まり
       
      どれも資本主義自由経済国家では想像も及ばない施策ばかりですが、ひとまず株の下落はストップ。9日、上海はもちろん、日本や韓国の株式市場も上昇に転じました。
       
      ■中国経済と世界経済は一蓮托生
      中国の上海株価安定策に一番胸をなでおろしたのは、他でもない、欧米をはじめとする先進諸国だったのではないかと思います。実際、アジアではインドやインドネシアなど途上国の株式市場に今回の暴落や下落ストップがほとんど影響なかったのにもかかわらず、先進国の株式市場は程度の差こそあれ、影響されています。
       
      それもそのはず、現在の先進国経済は、中国経済の動向に大きく左右される構造になっているのです。
       
      2013年のJETROの輸出入統計によると、EUの輸出国1位はアメリカで、2位が中国。中国への輸出額はユーロ圏内への輸出とほぼ同額です。輸入はアメリカを大きく引き離して中国が1位。
       
      アメリカの輸出国1位はカナダですが、中国は3位でEU向けの約半分。輸入は中国が1位。
       
      中国の輸出国1位はアメリカ(香港は除く)で、輸入は韓国が1位。2位以下日本、台湾、アメリカと続きますが、EU全体でみると1位となり、これにASEANが続きます。
       
      また、日本への輸出だけをとってみると、EUから日本への輸出額は中国の1/4、アメリカからも中国の半分にすぎません。日本はもちろん、EU、アメリカ、ASEAN諸国にとって、いかに経済における中国のウエイトが高いかがよくわかります。
       
      もしも、今回の上海株式市場の混乱が中国経済全体に波及し、中国の輸入額が大きく減少することになれば、日本も含めた世界経済が大混乱となることは火の目を見るより明らか。今回の中国政府の措置は建前としてはとても自由主義経済諸国が「よくやった!」といえるものではありませんが、一様に胸をなでおろしたであろうことは想像に難くありません。リーマンショック時に中国の57兆円という巨額の財政出動を決めたときと同じような安堵感が、先進諸国の指導者の胸をよぎったのではないかと思うのです。
       
      8日、NY証券取引所、ウォールストリートジャーナルHP、ユナイテッド航空システムがクラッシュ
       いっぽう、アメリカでも不気味な現象が起こっていました。上海株価救済の政策が矢継早に展開される中、8日、アメリカではニューヨーク証券取引所のシステムがクラッシュし、午前11時半から午後310分までの取引が停止。ユナイテッド航空ではルーター故障により、全米の空港で同社航空機が1時間以上にわたり地上待機を余儀なくされ、ウォールストリートジャーナルのホームページも一時、閲覧不可に。
       
      「これはサイバーテロではない」と当局は結論づけていますが、不気味な偶然と言わざるをえません。
       
      ■資本主義自由経済はターニングポイントに
      10日の中国株式市場の平均上昇率は4.5%。うち1300銘柄は10%上昇のストップ高だったそうです。今後どうなるかはさておき、今回の上海株式市場大暴落を引き金に起こる可能性のあった中国の経済危機は、ひとまず回避できたといえるでしょう。
       
      アジア通貨危機、リーマンショックはともに、アメリカの金融機関による資本主義自由経済がもたらした経済危機でした。今回の上海株式市場の異常な株価高騰も同じく、中国の株式市場における自由な市場経済がもたらした当然の帰結だったのかもしれません。
       
      しかし、アメリカ発の経済危機が瞬く間に世界に広がったのと違い、中国政府の自国での経済危機の解決方法とスピードはまったく違いました。中国式経済統制が絶大な効果をあげたのです。
       
      日本では中国経済の先行きを危ぶむ声が多いようですが、好むと好まざるとをえず、現在の世界経済は中国経済と一蓮托生。また、今回のような中国発の世界経済危機の火種は今後もくすぶり続けるでしょう。しかし、従来型の自由主義経済の原則に頼っていては、一瞬のうちに奈落の底に落ちていくような世界経済恐慌を回避できないことは、アジア通貨危機やリーマンショックが証明しています。
       
      私は、今後一定期間、中国経済の行方とそれをコントロールする中国当局の施策に世界経済そのものの命運がかかっているといっても過言ではないと思います。また同時に、これまで私たちが信じてきた資本主義自由経済も大きなターニングポイントを迎えているのではないかという予感がします。
      | 後藤百合子 | 世界経済 | 13:47 | - | - |
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