ASIAN NOMAD LIFE

日本、香港、中国で生活・仕事をしてきてシンガポール在住8年目。
政府財政が健全だといいこともあるよ、という話。
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    JUGEMテーマ:シンガポール

    先週後半からの旧正月疲れと、あちこちで新年会がありまだまだお正月ムードが続いたおかげで、今週はなんとなく終わってしまいましたが、そんな中でもシンガポール政府のみなさんは精力的にお仕事されていて、2018年度予算が発表されて財務大臣はその説明にあちこち駆け回っていました。

     

    2017年の世界的好景気を受け、シンガポールのGDPは前年比3.7%増。税収も大幅に伸びて、来年からと大方が予想していた少子高齢化対策に伴う消費税増税(現行7%を9%に)も、2021年から2025年の間に景気動向をみながら行うということに。

     

    いっぽうでたばこ税は即日10%増税のほか、地球温暖化対策の一酸化炭素税の導入や過熱気味の不動産購入税などの増税の他、国境を越えたゲームダウンロードや音楽ストリームなどへの新たな課税も公表されました。

     

    大幅な予算措置としては地下鉄システムの整備や公団住宅の新たな建設費など、インフラ関係がメインで「まだまだ成長するぞ」との強い決意がにじみ出る内容。教育にも力を入れていて、昨年から本格的に始まったリカレント教育予算継続の他、貧困世帯の教育補助も大幅に増額するとしました。

     

    中でも羨ましいなーと思ったのは、21歳以上のシンガポール国民全員にSG$100〜$300(約8,000円〜24,000円)の特別ボーナスを配るとの発表。以前も選挙前などに実施していたこともあるようですが、今回のように「大幅にお金余ったから」と国民に還元するのは私が知る限りでは初めてです。

     

    財政が健全で、必要なところにしっかりと予算配分ができ、その結果経済もうまく循環している状況がよくわかり、国民も「いろいろ言いたいこともないではないけど、この政府だったら安心して政治を任せられる」と信頼している様子。私は国民ではないのでボーナスもらえませんが、ずっと税金を払ってる日本政府にも将来ぜひこんな政策を期待したいものです。

    | 後藤百合子 | シンガポール社会 | 18:56 | - | - |
    シンガポール国民の職を確保し給料を押し上げる外国人労働者クォータ制
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      JUGEMテーマ:シンガポール

       

      昨日のブログ記事に、シンガポール人の叔母が80歳過ぎても飲食業で働き続けているという話を書きましたが、シンガポール人が高齢でも比較的簡単に職をみつけられるのには理由があります。

       

      それは、約3割の外国人労働者(実際には人口の4割が外国人ですが、私のようにシンガポール人と結婚したり長年シンガポールで働き続けて永住ビザをもつ外国人が1割おり、この層はシンガポール国民に準ずる扱いを受けます)の雇用に際し、シンガポール国民の雇用を義務づけるクォータ制をとっているからです。

       

      シンガポールの労働ビザは、高度人材ビザから家政婦ビザまでいろいろな種類がありますが、この中で最も多いのが「Work Permit」と呼ばれる比較的単純な労働に従事するためのビザで、昨年6月時点で975,800人の外国人がこのビザを支給されています。

       

      うち、建設労働者が約3割を占めますが、その他にも、ホテルや運輸、ビジネスなど就業職種は多岐にわたっており、叔母の働いている飲食業界も含まれます。

       

      特に飲食などのサービス関連業種につける労働者は出身国も決まっており、マレーシア、中国、北アジア(香港、マカオ、台湾、韓国)限定。中国人についてはビザ延長の年数も最初から決められています。

       

      もともとサービス業、特に小売店員や飲食店店員などはシンガポール人に人気がある職種ではありません。そのためマンパワーを外国人ワーカーに頼らざるを得ないのは日本のコンビニなどの現状と同じですが、大きく違うのは、政府によってシンガポール人の割合が一定以下にならないようクォーター制が強制されていることです。

       

      このビザでは、外国人労働者は職場での全体人数の40%を超えられないため、より多くの外国人労働者を雇うためには、さらに多くのシンガポール人労働者を雇う必要があります。また、外国人の割合が多くなればなるほど税金が上がりますので、雇用者としてはシンガポール人を多く雇ったほうが得なのです。

       

      とはいえ、ほぼ完全雇用状態のシンガポール。シンガポール人求職者の供給は限られているため、高齢者でも採用されやすく、賃金も決して悪くないという状況が続いています。

       

      私と同い年のあるシンガポール人の友人(独身女性)は、長年ホテルの客室係として働いていますが、趣味の旅行を楽しむためにときどき勤務先を辞めたり、数年前に母親を自宅で最期まで介護していたときはパート勤務になり、容体が悪くなる度に仕事を辞めていました。それでも次の仕事に困ることはなく、すぐにみつかるため、30代で買った公団住宅のローンもすでに払い終えたようです。

       

      日本では建前上は外国人労働者を受け入れていないことになっていますが、外国人就学生や研修生など、実際には外国人労働者なしでは一部の産業は成立しないのが現状です。この日経の記事によれば、リーマンショック後に増えた就労者の4人に1人は外国人というところまで外国人労働者の数が増えています。

       

      少子高齢化社会で外国人労働者に労働力を頼るのは仕方ないと思いますが、それにより、真剣に働きたいと求職している中高年層や高齢者の働き口が少なくなったり、外国人労働者に比べて賃金水準が低くなってしまうのであれば本末転倒だと思います。

       

      日本国民、特に求職弱者である中高年以上の就職率をどのように向上させ、賃金を上げるのか、シンガポールの国民クォーター制は一つの参考になると思います。

      | 後藤百合子 | シンガポール社会 | 14:28 | - | - |
      「高木ラーメン」で考えた、炎上してしまったビジネスの活かし方
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        JUGEMテーマ:ビジネス

         

        ■本格的日本ラーメンを手頃な価格で、を掲げる高木ラーメン

        今週、所用でシンガポール老舗の工業団地Ang Mo Kioを訪れた際、かねてから気になっていた「高木ラーメン」に行ってきました。

         

        シンガポールではここ数年、日本のラーメンが大ブーム。

         

        草分けの味千ラーメンはもとより、麺屋武蔵、らーめんけいすけ、らーめんまる玉、一風堂など日本の有名ラーメン店が大量に出店してしのぎを削っています。もちろんシンガポール在住の日本人だけでなくシンガポール人にも大人気で、人気店にはお昼時に長蛇の列ができるほど。

         

        この高木ラーメンも「本格的日本ラーメン」が売りですが、他店との最大の違いは、最初から日本人を客として想定しておらず、メインターゲットを「平均的なシンガポール人」に絞っていることです。

         

        この戦略は、現在ある3店舗が、南洋工科大学、南洋理工学院、シンガポール国立大学に近い立地で若者が立ち寄りやすいこと(シンガポール国立大学はキャンパス内にあります)、また、価格が他の日本ラーメン店の税・サービス料込価格に比べて半分程度、替え玉に至っては日本円にして50円以下など、徹底した低価格戦略からも明らかです。

         

        私が立ち寄ったのは月曜日の13時過ぎでしたが、学生さんはまだ授業中のせいか、比較的年齢層が高い30代から50代くらいの男女が多く、女性1人だけで食事をしている人も4,5人みかけました。Facebookページによると、週末には長蛇の列ができることもあるようですが、この時間帯としてはまあまあの客入りと回転率。

         

        肝心の味はというと、スープは豚骨ベースのこってり系でいまどきの日本ラーメンっぽいのですが、自慢の自家製麺はかんすいが入っておらずコシがない中国の拉麺に近いもので、本格的日本ラーメンと呼ぶには少し躊躇するところ。私がリピートするかどうかは微妙ですが、もし店の近くの学校に通う学生だったら気軽に立ち寄れる価格とボリュームだと思いました。

         

        ■高木ラーメン、オーナー夫妻の前ビジネスとその挫折

        さて、ここまででしたら「へー、シンガポールに安い日本ラーメン店があるのね」で終わってしまうのですが、このお話には前振りがあります。

         

        というのも、高木ラーメンの20代のオーナー夫妻、アイ・タカギ氏とヤン・カイヘン氏には、過去“The Real Singapore”というサイトを運営し、人種差別的発言やフェイクニュースを流布した「Sedition(扇動罪)」に問われてシンガポール政府に逮捕され、服役した経歴があるからです。

         

        2015年に逮捕され、2016年3月までかかった裁判後、10か月の実刑判決を先に受け入れた日系オーストラリア人のタカギさんは、逮捕時に若干22歳。判決が下りたときには妊娠8週間め(その後流産)でした(ヤンさんもその後、8か月の実刑で服役。2人とも刑期短縮で出所)。

         

        裁判中は、イスラム教徒のペンネームを使って多くの記事を書いていたとされるタカギさんがシンガポール人ではなくオーストラリア人であること(もともとは日本国籍だったようです)、名門クイーンズランド大学に通いながらセンセーショナルな話題でビューを稼ぎ、莫大な広告収入を得ていた事実が次々と明らかになり、連日、新聞やテレビで報道されました。

         

        特に、年上の夫(当時は婚約者)のヤンさんがしじゅううなだれ気味なのに対し、タカギさんは毅然とした態度でポーカーフェイスを貫徹。しかも、裁判の真っ最中に「高木ラーメン」の開店を準備してマスコミに情報を流す、というビジネスに徹した姿勢にただ者ではない感を漂わせていました。

         

        このインタビュー記事によれば、最初は大学の授業が少なく暇をもてあましていたタカギさん1人で始めた無名サイトは、閉鎖に追い込まれる直前の4か月には月4万オーストラリアドル(約340万円)以上をコンスタントに稼ぎ出し、その収入でヤンさんの学費の他、2人の生活費やアシスタントたちの給料を支払い、30年ローンで購入した家の購入代金もすべて払い終えていたそうです。

         

        さらにこれに続く記事によると、タカギさんは有罪判決を受けて収監された前歴を隠すどころか、

         

        “If there’s a story you can link to it, you’re more familiar with it, and you’re more likely to eat it.”

        「もしもそのお店につながるストーリーがあったら、お店は身近なものになって、そこで食べてみたいという気が起きるわ」

         

        と、積極的にアピール。本来であれば消し去りたいはずの過去をオープンにすることによって、ビジネスの拡大を図り、このような取材にも積極的に応じていたのです。

         

        ■ネガティブな経験もビジネスのステップアップに

        オープンから3年あまり。高木ラーメンは順調に業績を伸ばしている様子で、Ang Mo Kioの本店もこれまでのホーカー(屋台村)から出て独立したお店を構えていました。また、Facebookページの投稿を読んでみると、若い夫妻が試行錯誤を繰り返しながら経営者として着実に事業を育てている様子がよくわかります。

         

        ”The Real Singapore”時代には朝9時から真夜中までずっと記事を書いてはアップし続けたというタカギさんですが、現在はラーメン店の発展に全力を傾けているのでしょう。このように私がタカギさんを身近に感じるのも、前述の彼女の言葉「ストーリーがあった」からに違いありません。

         

        20代前半という若さにして、普通の人が一生かかってもできないようなさまざまな経験を経たタカギさん夫妻の、今後のビジネスの行方が非常に楽しみです。

        | 後藤百合子 | シンガポール社会 | 14:56 | - | - |
        「シングリッシュ」と侮るなかれ。シンガポール人が英語ネイティブの理由
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          JUGEMテーマ:シンガポール

           

          ■シングリッシュと揶揄されるシンガポール人の英語とは?

          シンガポールを旅行したことがある方なら聞いたことがあると思いますが、シンガポール人の英語は往々にして「シングリッシュ」(シンガポール・イングリッシュ)と揶揄されます。

           

          語尾につける「lah」(中国語の「了」(完了状態を表わす)や「啦」(強調や相手に同意を求める)などいろいろな意味がある)を筆頭に、中国語の直訳形である「also can」(都可以=どっちもOK)など慣用表現や、中国語やマレー語の単語を英文に混ぜてそのまま使うこともあり、英米英語しか聞いたことのない人にはほとんど意味がわからないセンテンスも少なくありません。

           

          特に1965年の独立以前に教育を受けた人には、英語で正規の学校教育を受けていない人も多いため、文法めちゃくちゃの英単語を並べただけの英語を話す人もいますし、私の義母のように相手の話している英語は何となく理解できるものの、自分が話す言葉は中国語のみという人もいます。

           

          そのため、シンガポールは英語が標準語だけれども、シングリッシュという特殊な三流英語を話す人たちばかりで、半分外国語みたいなものと誤解する人も多いのですが、実情は決してそんなものではなく、非常に高いレベルの英語の素養をもつ人が大半です(その教育は学校の授業で行われます)。

           

          今月から小学校3年生になった娘と宿題を一緒にしていて、シンガポール英語教育の底力に唸らされたので、少しご紹介したいと思います。

           

          ■家庭で使っていない言葉をネイティブ並みにする英語教育

          Q: Let's put this  ______  table in that counter.

          1) wooden, nice

          2) round, wooden

          3) wooden, brown

          4) round, nice

          この問題は、娘の宿題の文法問題集の中の「形容詞」パートの1問です。

           

          使われている言葉は簡単ですし、何となく2)のような気もしますがいまひとつ確信がもてません。そこで回答を見てみると(回答に詳しく説明がつけられていてわからない場合は参照できるようになっている)次の通りでした。

          When we use adjectives together, we usually use them in this order; opinion, size, age, shape, colour, origin, material.  Therefore the answer is "round, wooden"(shape, material).

          形容詞をつなげて使うときは、通常、次のような語順にします。「意見、大きさ、古さ、形、色、由来、材料」。ですから「丸い、木製の」(形、材料)が正解です。

          まるでオックスフォードの英語学習者向け文法書に書いてあるような説明。

           

          娘と比べると私のほうが英語の読書量の蓄積は多いため、不確かではあるものの正解しましたが、日本で大学まで英語教育を10年受けてきたにもかかわらず、小3の娘にこの文法を説明することはかないませんでした。

           

          これは恐らく、英米など英語ネイティブの国々でも同じではないでしょうか。日本人が「が」や「は」の使い方を教わらなくても自然に使い分けができるように、英語だけを使っている人々にはこの説明は不要です。経験から判断できるからです。

           

          しかし、シンガポールの場合は家庭や日常生活の中で前述のように間違った英語を使う人たちが多く、家庭では(特に移民の場合は)中国語やマレー語、タミル語しか話さない、という人々も少なからずいます。そのため、英語だけで育った人たちと対抗できるよう、理論を加えて不足する分を補っているのです。

           

          ■香港とシンガポールにみる英語の違い

          英語に比べると「mother tongue(母語)」と呼ばれる科目は比較的易しく、それなりの内容です。それでも授業は英語と同じくほぼ毎日あり、中国語を選択している娘の場合も、小2までで習得していなければならない漢字はすでに数百を超えています(書き取り必須の漢字はそこまで多くありませんが、読めないと文章が理解できないので、読めなければならない単語の中には私が知らない漢字もけっこう入っています)。

           

          シンガポールと並んで英語でビジネスができる国(地域)として香港には根強い人気がありますが、英語と中国語(母語)の比率からすると、香港とシンガポールの教育は対照的です。

           

          そもそも学校からして、中国語(広東語)で教える学校と英語で教える学校に分かれますし、シンガポールでは家庭でも英語を話す人たちが少なくないのと反対に、香港の一般家庭ではほぼ100%広東語を使うので、英語はあくまでも外国語。

           

          私は香港の中国返還の年の1997年まで香港で4年弱暮らしていましたが、日常生活は完全に広東語で、普通に英語が話せる人は多かったものの、ネイティブ並みの正統派英語を使う人は一部に限られていました。

           

          その1人が、苦学しながら大学からロンドンで教育を受けて会計士の大学院まで卒業したある友人です。

           

          彼は自分で会計事務所を立ち上げて、欧米の会社向けに中国での会社設立支援やコンサルティング事業を手がけ、完璧な英語と中国語、そして誠実な人柄で事業を拡大していました。私が中国工場を立ち上げたときも彼のお世話になり、その後もずいぶん助けてもらったものです。

           

          そんな彼が一昨年、ニューヨークでの国際会議出席の際に脳梗塞で倒れ、半身不随になってしまったのです。本人と連絡が取れなかったため昨年になって知ったのですが、半年ほど前に訪れたときには意志力の強い彼らしくリハビリに励み、杖をつきながら一人で歩けるようになるまで回復していました。

           

          しかし驚いたのは、あれほど堪能だった英語も、普通語(北京語を基礎にした中国の標準語)もまったく話せなくなってしまったことです。たどたどしいながら彼の口から出てくる単語はすべて彼の母語である広東語でした(この時ほど広東語が理解できて良かったと思ったことはありません)。

           

          翻って我が家の場合はどうか? 私の夫は親との会話は福建語で(兄弟間では英語)、仕事や日常生活で使うのはすべて英語です。大学まで中国語(普通語)を勉強したはずですが、日常会話や台湾ドラマなどを観て理解はできるものの、漢字はあらかた忘れてしまっているので中国語の新聞や本はほとんど読めませんし、もちろん長い文章を書くこともできません。

           

          そんな夫がもし彼と同じ状態になったら、口をついて出てくる言葉は、間違いなく福建語ではなく英語でしょう。彼にとっての母語は、家庭で親と話している福建語ではなく英語なのです。

           

          ■老後に備えて「うんこ漢字ドリル」と英単語学習に励む。

          私の場合はどうか? 絶対に日本語です。

           

          以前、倍賞美津子さん主演の映画『ユキエ』を観たことがあります。

           

          戦争花嫁としてアメリカ軍人と結婚し、アメリカにわたって家庭を築いた日本人ユキエが認知症を患い、夫や子供たちが介護を通して結びつきを強くするというストーリーですが、最も鮮明に記憶に残っているのは、認知症を発症したユキエが、40年以上も日本に帰っていないにもかかわらず、日本語しか話せなくなってしまうシーンです。

           

          私も英語、中国語と外国語を勉強し、生活や仕事でこれまで随分使ってきましたが、最後に自分の言葉として残るのはやはり母語である日本語であることは間違いありません。

           

          もしもユキエや香港の友人のようになってしまったらと考えると、日本語が通じないシンガポールで家族と最低限の意思疎通ができる担保として、娘には日頃からできるだけ日本語で話すようにしていますし(といっても理解してくれないことが多いので、たいてい英語でも説明をつけ加えています)、「うんこ漢字ドリル」を使って日本語も教えています(漢字はほとんど中国語で習っているので、ひらがなと文章を覚えさせるのが目的です)。

           

          いっぽう、これからどんどんレベルが上がっていく娘の英語学習に備えて、自分の英語学習も並行させています。

           

          あるオンラインテストを試してみたところ、私の日本語の語彙は約35,000語だったのに対し、英語は11,000語程度しかありませんでした。これが母語と外国語の違いかと再認識させられましたが、娘が義務教育を終える頃までには、何とか2万語くらいまで英単語の数を増やし、娘の勉強についていきたいと学習意欲を燃やす毎日です。

          | 後藤百合子 | シンガポール社会 | 12:20 | - | - |
          落ちこぼれてわかった、落ちこぼれた生徒を見放さないシンガポールの教育
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            JUGEMテーマ:幸せなお金と時間の使い方

             

            かれこれ一年前に、去年小学校に入学した我が家の娘がいきなり落ちこぼれた記事を書きました。

             

            最近、シンガポールの教育がNHKの番組でも取り上げられ、公立小学校の勉強がどれだけ大変か報道されたようですが、娘の勉強をみながら一緒に勉強している親としては、日々、これを実感しています。

             

            先月、娘が小2の期末テスト(英語、母国語、算数の3教科でペーパーテストと面接テストがある)を終えて成績を持ち帰りましたが、相変わらず英語を辛うじてパスしただけで、母国語(中国語)と算数は合格の60点に遠く及ばず赤点。相変わらず落ちこぼれています。パスした英語も、担任に「読解問題ができないから、休みの間ちゃんと勉強させるように」としっかり釘を刺されました。

             

            ■ADHD診断を受け、カウンセラーが授業に付き添い

            今年5月、我が家の娘はADHDと診断されました。保育園の頃から疑いありとは指摘されていたのですが、授業中、席にじっと座っていられず勝手に教室を出ていってしまったりするので困り果てた学校が文部省に要請をして専門家の診断を受けたところ、重度のADHDであることが判明しました。

             

             

            これはADHDの子どもと普通の子供の脳の働きのイメージ図です。

             

            普通の子供が脳全体を使っているのに対し、ADHDの子供の脳は特に前側がほとんど機能しておらず、活動している範囲が非常に狭いのが特徴です。このため集中力を持続することができず、多動障害や学習障害が起こるのです。

             

            以前から学習に限らず問題行動が多く、保育園を何度も退園させられたりしていたり、小学校入学以後もたびたび学校から呼び出しを受けたりしていたのですが、ADHDと正式に診断されてからは、担任の他に担当カウンセラーがつきました。

             

            担当カウンセラーのMrs.Gは、我が家の娘の他にもADHDの子どもやディスレクシア(識字障害)の子どもなど数人の面倒をみています。

             

            娘の場合は、Mrs.Gや他のカウンセラーが授業中に横に座ってくれ、集中力が続かなくなったなと判断したら教室内を歩かせてリフレッシュさせたり、朝と放課後にMrs.Gの部屋に行って朝はしてはいけないことを復唱し(衝動性が高いため同級生にひどい言葉を投げつけたり、同級生の持ち物を欲しいと思ったら勝手に持って帰ってきたりしてしまう)、放課後にはそれができたかどうかを一緒にチェックして、できたらカードにシールを貼ってくれます。また学期の終わりには、部屋でアイスクリームを作ったり、ビデオを見せたりしてくれるので、娘も喜んでMrs.Gの部屋に通っています。あまりによく面倒をみてくれるので、他の生徒がやきもちを焼くくらいだそうです。

             

            また、親や他の先生への連絡も非常に緊密にしてくれ、気になることがあるとWhat’sappというLINEのようなアプリですぐに私や夫に連絡をくれたり、ADHDに対する理解が浅い先生方にもいろいろな面でアドバイスしてくれるので、以前のように娘の問題行動に困った先生方が直接親に連絡してくることも非常に少なくなりました。

             

            ■補習授業と家庭学習指導

            カウンセラーによる指導とは別に、小2になって始まったのが、週1度の補習授業です。

             

            落ちこぼれている子どもを集めて、いろいろな教科の先生方が勉強をみてくれるのですが、高学年になるにつれてさらに補習授業が増えるようです。また、学期末の親との面接では、各教科の先生方が「ここが弱い」というところを教えてくれ、家庭でそれを補うよう厳しくプレッシャーをかけられます。

             

            娘の場合は週に2,3回、休みの間は週末を除く毎日、私と夫が1年生の教科書に戻って勉強させ直していますが、同じく落ちこぼれている娘の友だちのママ友は3人の子供を抱えてそこまでは手が回らず、週2回公文教室に通わせて家で勉強させていると言っていました(公文はシンガポールでも大人気で80教室以上あります)。

             

            英語、算数ともに、さすがPISA最高点のシンガポールならではの小学校低学年でも非常に高度なカリキュラムを課されていますが、特に母国語の中国語に関しては、小2ですでに中級中国語程度の難易度の学習をしており、私も毎日必死に辞書をひきながら勉強に付き合っています。

             

            なかなか娘が理解できないときは「なんでこんなこともわからないの?」と頭をひっぱたきたくなりたい衝動に駆られることもありますが(実際、ときどき手がでることもあります)、娘もずっとできなかったことが繰り返しやっているうちにできるようになると達成感があるらしく、泣いたり笑ったりしながら毎日親子で勉強を続けています。

             

            ■アートやクラブ活動にも力を入れる学校教育

            これは、先日、娘が学童から借りてきた小学校4年生の美術のクラスの教科書です。

             

            私も最近絵を習い始めたのでよくわかるのですが、絵をリアルに描くために必須なのが影のつけ方です。それを子どもにもわかりやすく、しかし本格的に解説しています。この教科書では他にも、立体工作のさまざまな方法や平面デザインの構図の取り方、色相と補色の解説と具体的調色方法の他、マンガのコマ割りの仕方まで登場します。

             

            小3からはクラブ活動も必修となり、サッカーや水泳などの運動科目の他、ダンス(モダンダンスの他民族舞踊もあり)や武術、合唱など、幅広いコースの中から選べるようになっています。

             

            コンピュータによる授業も小1から普通に行われており、勉強が得意でない子どもにも何とかして得意なものをみつけさせたいという文部省の執念を感じます。

             

            ■変わる試験制度とシンガポール政府の意図

            先月末に発表されたPSLE(Primary shool Leaving Exam)という小学校卒業時の統一試験結果は、受験者38,942人中、66.2%がエクスプレス(中学課程を4年で履修するコース)、21.4%がノーマル/アカデミック(同じく中学課程を5年で履修するコース)、10.7%がノーマル/テクニカル(技術専門課程を4年で履修するコース)となりました。

             

            エクスプレスコース以外の子どもは国立大学入学への道は事実上ほぼ閉ざされてしまうため、PSLEで高得点を取って何とかエクスプレスコース、それも成績上位の中学に入れるように親たちは必死で子供を教育します。

             

            この親の期待に応えられず、ノーマルコースに進学した女子中学生の悲劇を描いた「Normal」という芝居が2015年に初演され、大きな評判を呼びました。私も今年観ましたが、家庭にも学校にも見放されて行き場のなくなった多感な少女たちを必死でサポートしようとする新任教師との交流と、それが現実の前に無残に打ち砕かれていく様子が描かれており、涙が止まりませんでした。

             

            いっぽう、保育園・幼稚園から始まる英才教育と過熱する受験戦争(エクスプレスコースに進んでも2〜3割程度の国立大学進学枠に入るためのサバイバル競争は継続します)に対し、文部省も手をこまねいているわけではなく、2021年からは4科目(英語、母国語、算数、科学)の点数だけではなく、達成レベルや他の科目の達成度も考慮して総合評価とするなど、新しい制度が始まる予定です。

             

            我が家の娘に関して親が望むのは、どのコースに行ってもいいけれど、とにかく中学卒業レベルの学力だけは確実に自分のものにして卒業してほしいということです(今でもできれば小2をもう一年やり直してくれればいいと思っているくらいです)。九九や簡単な分数の計算ができない(=社会人になっても仕事以前の問題でつまずいてしまう)うちに自動的に卒業してしまうくらいなら、ノーマルコース進学でさらに落第し、もう一度同じ勉強をやり直してくれてもいいと考えます。恐らくシンガポール政府も同じ考えなのではないでしょうか。

             

            ■「最貧困女子」を再生産しないために

             

            鈴木大介さんの『最貧困女子』は、現在の日本で最底辺のセックスワーカーとして働く女性たちの多くが、知的障害、精神障害、発達障害の3つの障害のどれかをもつという現実を教えてくれる迫真のドキュメンタリーです。

             

            自分の子どもがADHDという発達障害をもっているということがわかり、改めてこの問題をさらに身近なものとして感じるようになりました。

             

            社会の安定と持続的な発展は、決して一部の有名大学出身のエリートだけで達成できるものではありません。小企業の経営者として長く仕事を続けてきて一番感じたのは、社会の基礎を支える中流以下の人々が最低限必要な知識を教育によって身につけ、職業生活を通じてそれを発展させていくことにこそ、社会全体の成長と発展が期待できるということでした。

             

            その意味で、シンガポール国立大学をアジアNo.1の大学にし、エリート教育に成功したシンガポールが、今後、落ちこぼれ教育にさらにどのように取り組んでいくのか、娘の成長を見守りつつ、非常に期待しています。

            | 後藤百合子 | シンガポール社会 | 17:06 | - | - |
            人生100年時代に「稼げる国民」を作る「Skills Future」というシンガポールの社会実験
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              JUGEMテーマ:シンガポール

               

              2015年予算で、シンガポールは政府は、『「経済体として次なる未知の領域に到達しなければならない」とし、技術革新、労働者の技術力向上を所得増のけん引役とする方針を示した。』として、​非常に大胆な予算案を編成しました。

               

              まず、政府傘下の投資会社テマセクからの歳入を大幅に増やして財源を確保し、東南アジアのハブ空港であるチャンギ空港の新ターミナルなどインフラ事業に重点投資(この効果はすでに出始めており、昨日のニュースではオーストラリアのカンタス航空が今後、チャンギ空港をベース空港とすることが発表されました)。

               

              賃上げ補助や企業への海外販売支援金の増額、年金制度(政府管掌の個人年金)の上限引き上げと柔軟化、高額所得者への税率引き上げ(といっても最高税率22%ですので世界的水準と比較するとまだまだ低い)、低所得者高齢者に対する恒久的支援制度の創設などが大きく変わったところですが、なんといってもこの予算案の白眉は「Skills Future」プログラムの創設にあります。

               

              ■生涯教育と技術習得

              Skills Future(未来のスキル)プログラムは、生涯を通じて国民が職業スキルをアップしていくためのプログラムです(創設当初は25歳以上が対象でしたが、現在は修学中の学生にも対象が拡大しています)。

               

              このプログラムに登録されている講座を受講するため、全国民にSGD500(約4万円分)のポイントが授与され、コースによっては受講料も9割以上が政府補助になるため、驚くほど安価で職業教育を受けることができます。

               

              しかも政府系職業訓練校のみならず、民間の専門学校にも委託した講座数はオンラインも含めて10,000以上あるとも言われ(すべて数えたことがないので正確なところはわかりませんが)、とにかくありとあらゆる分野、初心者向けで1日で終わるコースから、シンガポール国立大学や南洋理工大学のMBAコース、さらに非常に高度な専門技術を教える(部外者がタイトルを見ただけでは何のことだかわからない)長短の各コースまで多種多様。

               

              2015年には35万人、2016人は38万人がこのプログラムを利用していますので、シンガポール国民約390万人のうち約10%が毎年何らかの勉強をしたということになります。しかし政府担当者は「まだまだ端緒についたばかりで、これからさらにプログラムを拡大し、生涯学習していくというマインドセットと技術の習得をシンガポール国民に周知していく」と語っています。

               

              シンガポールの失業率は2%程度と世界でも最低レベルですが、特に中高年においてスキルのミスマッチングのため職探しが難しくなっているという背景もあり、政府としては、すべてのレベルの労働者において、知識やスキルのアップデートを図り、職業カウンセリングも交えながら就労させていくという方針です。

               

              ■人生100年時代の国民の働き方を変えるポテンシャルをもつ壮大な社会実験プログラム

              私も今年に入って、政府から受託してSkills Futureのコースを開設している専門学校で、5日間のコースを2回受講しました(私はシンガポール国民ではありませんが、永久住民ビザをもっているためこのプログラムが利用できます)。

               

              5日間の基礎的な実技を中心としたコースでしたが、政府補助が9割だったため、受講料は8,000円程度。4日の実技、1日の実技及び理論のアセスメント(テスト)の期間、20人弱のクラスメートは1人も欠席することなく、真剣に受講していました。

               

              クラスメートの中には転職を考えているため有給休暇をとって参加したという中高年や、軍隊訓練中(シンガポールは皆兵制のため高校卒業後にNational Serviceに2年間従事する義務がある)だけれど今後の進路を決めるためにいろいろなコースを受講しているという若者もいました。いっぽうで、特に職業にする予定のない人が趣味のために、という目的で参加していたりもしていましたので、将来、受講者のうちどれだけの人がここで学んだスキルを仕事に結びつけられるかは未知数です。

               

              しかし、そこは政府もわかったもので、専門学校での講座終了後アンケート以外にも、個別にオンラインでサーベイ要請があり(数回は無視したのですが何度もしつこくメールが送られてくるので仕方なく回答)、PDCAをしっかり回している様子がうかがえます。

               

              Skills Futureプログラムは、現在、インドネシアなど周辺諸国でも注目を集めていますが、もしもこの制度が軌道に乗り、国民が職業人生の中で段階的にスキルアップして高度人材を輩出し、失業率を低減させ、就業期間を延ばして年金に頼らず生活していける期間を延長する実力を身につけることができれば、生活保護などの社会保障費を大幅に削減することができます。

               

              「転ばぬ先の杖」と言いますが、まだ学習能力があるうちに企業が求める人材を育て、将来かかる可能性のあるコストを未然に削減するという意味で、コンセプト的にも規模的にもこれまでどこの国も行ったことがない、壮大な社会実験であると思います。

               

              人生100年時代、常に厳しい国際競争を生き抜くための国としてのスキルを磨いてここまで成長したシンガポールの、現在進行形の実験を、注意深く見守っていきたいと思っています。

              | 後藤百合子 | シンガポール社会 | 12:06 | - | - |
              電気自動車時代の先駆けで利用広がる電気スクーター
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                JUGEMテーマ:幸せなお金と時間の使い方

                 

                テスラを筆頭にガソリン車から電気自動車への転換が世界中で一気に進みそうな昨今、都市国家シンガポールではその潮流に先駆けるように電気スクーターが流行中です。

                 

                そもそも国土面積が東京23区内程度しかなく、渋滞や環境悪化を避けるため自家用車所有にはクォータ制、輸入には高い関税をかけるなど、国民に自家用車を極力保有させない政策をとってきたシンガポールですが、いっぽうで、ヨーロッパの諸都市と違い、南国特有のスコールが多く1年を通じて高温多湿な気候ゆえ、リクリエーション用バイク以外の自転車はあまり普及していませんでした。

                 

                ところが、ここにきて一気に広まる様子を見せているのが、電動スクーター。といっても中国のようなバイク型ではなく、スケートボードにハンドルがついていて簡単に折りたたみができるものや、取っ手がついていて片手で持ち上げて運べる一輪車型など、軽量でコンパクトなものが主流です。

                 

                価格はスーパーマーケットで気軽に買える3万円程度から、専門店で販売する高級品の10万円ほどまで。時速は普及品で15卍度、高価格帯のものになると50勸幣綵个襪發里發△蝓下手にバスや地下鉄を利用するより目的地に早く着ける可能性もあります。降雨時は公共交通機関やタクシーの利用も可能。折り畳み自転車のように他の乗客の邪魔になることもありません。

                 

                さらに、この流れを加速するかのように「パークコネクター」という歩行者専用道路網の整備が進んでいます。

                 

                もともとは国民の健康増進のため、国中に散らばる公園をジョギングやウォーキングコースとサイクリングコースでつないで余暇の利用に役立てる目的で始まったものですが、この地図で見る限り、各住宅地から都心までだいぶネットワークが広がってきていて、通勤にもじゅうぶん使えそう。

                 

                シンガポール政府も電気スクーターのトレンドには注目しており、一部のコミュニティセンターにスクーター用のロッカーを整備したり、将来的には各地下鉄の駅に共用できる電気スクーターを配置して通勤や通学に使えるようにするという計画もあるようです。

                 

                日本では法律上、私有地以外でこのような電気スクーターに乗ることはできないと思いますが、私が見る限り、高齢者の乗り物としても電動カートよりはずっと手軽ですし、歩道で走行できる分自転車より安全だと思います。

                 

                高齢者の運転による交通事故の増加や、逆に、運転免許を返上して日常生活の足を失ってしまう高齢者も今後増える中、ぜひ電気スクーターの合法化を考えてみてはどうかと思います。

                | 後藤百合子 | シンガポール社会 | 19:11 | - | - |
                シンガポールの普通預金金利が暴騰中
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                  JUGEMテーマ:国際社会

                  昨日の土曜日、近所の大きなショッピングモールに家族で出かけました。

                   

                  そこで見たのは、ローカル&外資大手のコンシューマー銀行の窓口に、口座開設のため並ぶシンガポールの人々(一部はどこでもやってた無料アイスクリームの列に並ぶ人たち)。夫もあるイギリス系銀行で口座を作ろうとしていたのですが、一時間待ちと言われて、アイスクリームだけ食べて口座開設は諦めました。

                   

                  現在、シンガポールの各銀行は普通預金の金利利上げ合戦の真っ最中。

                   

                  給与振り込みにすると1%、クレジットカードで月2000ドル(16万円くらい)使うと1%などなどを積み重ねていくと、最高で普通預金金利が4%近くまで跳ね上がります。適用される預金額も最初は200万円弱などが多かったらしいですが、現段階では競争激化で1,000万円を超えそうな勢い。アメリカの政策金利引き上げの波及効果です。

                   

                  ヨーロッパの金融緩和政策もそろそろ終わりに向かいつつあり、今後長期金利が漸増していく方向性が見えてきました。

                   

                  日本は? マイナス金利政策に終焉が訪れたときにどうなるのか?

                   

                  国会での黒田日銀総裁は「時期尚早」としてこれまで出口戦略について言及するのを避けてきましたが、そろそろ政府とともに日銀が今後の国家財政をどう考えるのか明確に語ってほしいものです。

                   

                  | 後藤百合子 | シンガポール社会 | 12:37 | - | - |
                  「一生涯詰め込み教育」が国のサバイバル戦略のシンガポール
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                    JUGEMテーマ:幸せなお金と時間の使い方

                     

                    ■シンガポールの小学校で落ちこぼれた我が家の娘

                    本日からシンガポールの学校で新年度が始まりました。今年小学校2年生になった我が家の娘も初登校。小1の間は小学生になったばかりということでいろいろなことが許されてきましたが、もう甘えは通用しません。休み中に親や先生からいろいろ言われたせいか、今朝は少し緊張して登校していきました。

                     

                    シンガポールでは、政府が設立したいわゆる「公立」という学校は少なく、多くの学校が宗教や出身地の共同体などの背景をもっていますが、アメリカンスクールや日本人学校などのインターナショナルスクールでない限り、すべて文部省の管轄下にあり、シンガポール国民はこのうちのどれかに通うことが義務づけられています。

                     

                    就学に関わる費用は教科書代や制服代などを除けばほぼ無料に近く、国内のどの小学校に進学することも可能です(ただし、学業レベルの高い中学への進学率が高い学校は応募者が殺到するため、選考条件の1つである「家から近い」マンションへ引っ越しする家庭も少なくありません)。

                     

                    娘の小学校は、家から徒歩10分程度。学校全体の成績は中レベルですが、芸術や文化教育に熱心な学校です。娘なりに学校生活をエンジョイしていると夫ともども安心していたのですが、1年を終えたところで娘の成績を渡されてショックを受けました。1年生の成績が、英語、算数、母国語(中国語)のどれもクラス最下位レベルだったのです。

                     

                    親バカかもしれませんが、娘はどちらかというと利発なほうで、けっこう気が利いたことを言ったりしますし、物事の飲みこみもそれほど悪くありません。ところが、この有り様。生活態度に若干問題があったこともあり、学期末のある日、夫婦で学校に呼び出されていくつか注意を受けました。成績についても指摘され、同級生に後れを取っている分、休み中に家でしっかり親が教えるように説教されたのです。

                     

                    ■「落ちこぼれ」させないための教育

                    なぜうちの娘が落ちこぼれたのか? 答えは簡単。私たち夫婦が「学校で勉強させれば十分」と考えて、学校以外は私立の学童保育で宿題をみてもらう以外、家でまったく勉強させていなかったのです。

                     

                    我が家のようなケースは非常に稀で、ほとんどの家庭では親が学校から帰った子供たちの勉強の進捗具合をチェック。自ら教えたり、塾に行かせたり、家庭教師をつけたりするのが普通で、このような家庭教育は幼稚園時代から始まります。夫も私も「そんなことをしなくても、ちゃんと学校で授業を聞いていれば何とかなるだろう」と楽天的に考えていましたが、実際にはどうにもならず、見事に落ちこぼれてしまいました。

                     

                    特に成績が悪かったのが算数で、学校の呼び出しを受けてから教科書をチェックして驚いたことには、小学1年生ですでに2桁の足し算、引き算、後半には九九まで始まっていました。さらに2年生の前期には3桁の足し算が始まるばかりか、2桁の割り算もあり、日本の公立小学校と比べると想像を絶するスピードで授業が進んでいきます。

                     

                    英語も同様で、読解問題はともかく、文法では仮定法や比較級、語彙も「爬虫類」や「共同体」など小1の子供にコンセプトを理解させること自体が難しい問題がこれでもかというほど出てきます。このまま放置していたらますます授業についていけなくなると危機感を抱き、1か月強の休み中、私と夫が交代で毎日、3〜4時間程度、3教科を集中して教えました。

                     

                    まるで日本の有名私立進学校のようなカリキュラムでも、ほとんどのシンガポールの子供たちが落ちこぼれずに学校の授業についていっているのは、このように家庭で親や祖父母(「母国語」は祖父母が教えるケースが多い)が必死になって子供を教育しているおかげだと、身をもって思い知らされました。

                     

                    PISA世界トップのシンガポールが生徒に求めるもの

                    OECDの発表によると2015年度のPISA(学習到達度調査)で、シンガポールは世界第一位となりました。科学、数学、読解すべてで世界トップとなり、圧倒的な強さをみせつけたのです。

                     

                    シンガポール式教育に対する関心は年々高まってきており、中国やインドネシアなど近隣諸国から裕福な家庭の子弟がシンガポールの小学校や中学校に留学するのは当たり前。また、フランスやオランダなど海外でもシンガポールの教科書を採用する学校が増えているそうです。

                     

                    親が「我が子に良い教育を受けさせて良い職業につけさせたい」と願うのはどこの国でも同じですが、では、小さいうちからこれだけ子供に勉強させた末、シンガポールでは全員が大学に進学するのかというとこれもまた違います。以前の記事にも書きましたが、いわゆるシンガポールの国立大学に進学できるのはせいぜい3割程度で、半分以上の子供たちは、中学卒業後ポリテクニックという技術系の高等教育機関(日本でいう高専のような扱いですが、分野は工業に限らず幅広い職業教育が行われます)や、職業訓練専門学校に進学。

                     

                    また、その後、海外私費留学や欧米の私立大学のシンガポール校へ進学する学生もいますが、学位は取れても、よほどの有名大学でなければ、国立大学卒と同等とはみなされません。

                     

                    もちろん、多くの親たちが必至になって子供に勉強させる最大の動機は、子供を何とか選ばれた3割の中に入れて国立大学に進学させたいというものかもしれませんが、我が家のように「別に大学など行かなくてもいいから、読み書きそろばんだけはきちんと身につけて、自分に合った職業をみつけてほしい」と考えている親も決して少なくありません。

                     

                    しかし、そんな子供にも、学校(=文部省)は徹底的な詰込み教育を要求してきます。そしてそこからは、「これからの時代、どんな職業を選んでも、基礎的な学力と思考・発想力を身につけなければ生き残れない」「グローバル社会の中で弱小国のシンガポールが生き残っていくためには、国民全体の知的レベルを上げるしかない」という政府の教育に対する考え方が透けて見えてくるのです。

                     

                    ■次のターゲットは生涯教育

                    このようにシンガポールでは、小中学校で基礎教育を徹底的に詰め込みした後、さらに高等教育を受ける学生と、職業教育を受ける学生に分かれますが、近年になって文部省の下に、SkillsFuture SingaporeSSG)という生涯教育に特化したプログラムを推進する委員会が設立されました。

                     

                    日本で生涯教育というとカルチャー教室のようなイメージが強いですが、こちらではもっと実践的で、いろいろな学歴レベルの国民が職業人としてさらに高いレベルを目指すためのプログラムを受けるための支援が受けられるようになっています。

                     

                    MBAなど本格的な知識習得コースはもちろん、私立専門学校と提携しての長・短期コースや、さらに気軽に職業的な知識を得られる駅前施設での夜間単発プログラムなど、多種多様な選択ができます。例えば、飲食店の従業員向けに「仕入れ材料の受け入れ検品方法」という半日コースなど、非常に実用的ながらビジネスの質を上げるであろうことが容易にわかり、たいへん興味深いと思いました。

                     

                    実は昨年、私もある専門学校の4日間のコースに申し込んだのですが、9割が政府補助とのことで、驚くほど安い授業料で授業を受けることができました。このように、国民にとって非常に身近に「このくらいの出費だったら頑張ってちょっと勉強してみようか」と思えるような機会がふんだんに用意されているのです。

                     

                    シンガポールではもはや教育は「学校を卒業したら終わり」ではなく、職業人として働いている限りずっと学び続ける、という姿勢と習慣が期待されていると思われます。

                     

                    ■「教育」についての考え方を根本的に考え直す時期に

                    大学全入時代、私立中学・高校や大学の教育費の家計における家計負担増加、AIによる職業環境の激変、高齢化社会の進行による就業年数の長期化など、教育と就労の関係について、また教育の質と時期、方法について、日本では現在、根本的に私たちの考え方を変える時期にきているのではないかと感じます。

                     

                    その中で、「人こそ国の財産」と建国時代から国民教育になみなみならぬ情熱を注いできたシンガポールの取り組みは、同じく人材が国の発展に非常に重要な意味をもつ日本でも参考にするべきではないでしょうか。

                    | 後藤百合子 | シンガポール社会 | 15:20 | - | - |
                    超学歴社会のシンガポールでつくづく「職業人生において学歴はさして重要でない」と思う。
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                      ■小学校6年生で進路が決まるシンガポールの学歴社会
                      シンガポールの受験戦争は、小学校6年生がピークです。

                      6年生の後半に行われるPSLEと呼ばれる全国共通テストで行ける中学が決まり、さらには大学受験そのものができるかできないかがほぼ決まってしまう(中学を4年で終わらせるExpressコースか、5年かけて卒業するNormalコースに分離)ため、少しでも大学進学(全体の約25%)の可能性を高めようと、就学前から必死のお受験対策が始まります。

                      2,3歳でアルファベットや数字がすべて書けるのは当たり前、小学校入学時にはほぼ全員が英語のみならず母国語(中国語やマレー語など)の簡単な読み書きや、一桁の足し算引き算はできるようになっています。小学校ともなればスタートから同級生全員がライバル。多くの親たちは何とか子供たちをトップ25%の中に入れようと、塾や家庭内学習を含めありとあらゆる対策を講じるのです。

                      トップ25%にはいれなかった子供たちがどうなるかというと、多くは高等専門学校(ポリテクニック)か職業専門学校へ。中学卒業資格をもつOレベル、卒業後大学入学資格取得するためのジュニア・カレッジ卒業資格のAレベル、高専卒業資格のディプロマなど、それぞれのもつ資格によって就職先が違ってきます。日本のように「学歴・専攻不問」というような求人はほとんどなく、Oレベルでも応募できるのかAレベル以上でないとだめか、高専や大学を卒業しているとしても、どの科目の学位をもっているか、中途採用の場合はさらにどの分野で何年以上の経験が必要かが細かく指定されるのが普通です。大卒、高専卒、高卒、中卒とそれぞれで職業人生の入り口がはっきりと分かれるのがシンガポールの厳しい現実なのです。

                      ■中卒でも大成功をおさめたあるシンガポール女性
                      では、受験戦争で落ちこぼれてしまった子供たちは、一生、職業的成功への途を絶たれ、低収入に甘んじなければならないのでしょうか? 決してそうではないところがこの国の素晴らしいところで、私の身近にも好例がいます。

                      彼女の名前はPさん。シンガポールの私の会社のお客様で、シンガポール政府が出資する大きな観光施設のギフトショップ部門の責任者で取締役です。私とほぼ同年輩の彼女の職業人生の出発点は、シンガポールのデューティーフリーショップの店員。「あの頃は日本人観光客といえばみんなハンティング・ワールドのバッグを肩から下げてたからすぐにわかったわよ」と笑うくらいですから、おそらく中卒ですぐに働き始めたのだと思います。組織の中では一番下のランクからのスタートです。

                      しかし、彼女はその後いくつかの職場でありとあらゆることを自力で学んでいきます。デューティーフリーショップも観光施設のギフトショップも、専門店とは違い、食品から衣料、雑貨まで非常に広範な商品知識が必要とされる店舗です。のみならず、商品ディスプレーの設計方法や並べ方、消費者へのセールストーク、レジでの消費者の扱い方、さらには数千点もある商品の会計処理まで、すべてに精通していなければスタッフの指導ができません。Pさんはそれらを全て自分でこなせるだけでなく、数十人のショップや仕入れスタッフを教育し、まとめあげているのです。

                      これだけの能力の人ですから、スタッフに対しても非常に厳しい態度で接します。傍で聞いていても震え上がってしまうくらいの恐ろしい剣幕で怒鳴りつけているのを数回目撃したことがありますし、彼女がかけている中国語の電話で、中国語を勉強したときに「これは非常に悪い言葉だから絶対に使っちゃいけない」と先生にくぎをさされた言葉を何度も繰り返し使って相手を叱っているのを聞いたこともありました。

                      しかし、ほとんどのスタッフは彼女に心酔しており、「確かにPさんは厳しいけれど、彼女のおかげで本当にいろいろなことを勉強させてもらっている。彼女の下で働けて本当に幸せ」と口にします。私もまったく同じで、商品選択について彼女から厳しい指導を受けたこともありますが、ディスプレイの仕方や商品補充のタイミングなど、小売り業界は初めての私としては本当に多くのことを学ばせてもらいました。

                      ■仕事をやり抜く強い意志と積み上げた実績があれば学歴は関係ない
                      そんなPさんですが、この観光施設のウェブサイトの取締役紹介のページを見ると、他の政府関係の大卒、大学院卒のぴかぴかの超エリート取締役たちと並び、にこやかに笑っています。

                      スタッフの話によると、Pさんはこの観光施設ができる前は、北京のショッピングモールで数店舗あるチェーン店を経営していたそうで、たまたま親の介護が必要になって帰国する際にこの施設のオープンと重なり、ぜひにと乞われてこの観光施設を運営する会社の取締役に就任したとのこと。Pさんにとってもタイミングはよかったかもしれませんが、会社にとってもかけがえのない人材を得られたことは間違いなく、3年ほど前に私が初めて商品を納品していた頃の仕入れスタッフはPさん以外に1人しかいなかったのが、現在は10人を超える大所帯になっており、シンガポールを訪れる観光客が減少する中、反比例するようにこの施設のショップ売り上げは右肩上がりで増加しています。

                      Pさんを見るたびに、自分の娘も彼女のようにたくましく生き抜ける力をぜひ身につけてほしいと思います。シンガポールの知人の中には彼女以外にも、学歴はなくても自ら起業して成功している人々が何人もいますし、逆に、イギリスの大学院卒の学歴で、経営学や生産管理方法などあらゆる手法を駆使して自分のアパレルブランドを立ち上げたものの、業績が泣かずとばずでショップスタッフに賃金を払えず、毎日、自分で店頭に立っている人もいます。彼らみていると、つくづく、ビジネスの成功には学歴は関係ないと思わざるをえません。

                      小学校卒業程度の読み書きソロバンは人生を生き抜いていく上で不可欠だと私は考えますので、自分の娘には何としてでも叩きこむつもりですが、それ以降は自分が完遂できる意志をもてる業界や職種をみつけ、自分が満足できるペースで一生涯、続けていけるような仕事をもつことこそが、職業人生における最大の成功ではないかと思います。

                      超学歴社会のシンガポールでも、大学に行けなかった子供たちのために、高専や専門学校の職業教育が非常に充実しているのは、それを政府がわかっているからこそなのではないでしょうか。
                      | 後藤百合子 | シンガポール社会 | 11:08 | - | - |
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