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ASIAN NOMAD LIFE2020.07.11 Saturday
「発展」に疲弊するシンガポールの若者たち
結果は、93議席中、与党PAP(People's Action Party)が83議席を確保して圧倒的多数は守ったが、野党労働者党(Workers’ Party)が2選挙区10議席を獲得し躍進。与党の得票率も前回から9ポイント近く落として61.2%と、国民の3人に1人以上が野党を支持という結果に終わった。
これを受け、リー・シェンロン首相は「信任を得た」と勝利宣言しつつも、国民の声を真摯に受け止めると表明。実際、野党が獲得した2選挙区の他にも予想以上に与党が苦戦した選挙区はいくつもあり、次期首相の座が決定しているヘン財務大臣が送り込まれた選挙区でも30代の人気女性候補率いる労働者党が46.59%を獲得して勢いをみせつけた。
今回の選挙はシンガポール史上初めて、全選挙区に野党候補が立候補。さらにコロナ対策のため集会が禁止されて1日中選挙ニュースがテレビで放送されることとなり、選挙権をもたない永住者である私もエキサイト。私が住む地域もベテラン議員を複数抱えながら接戦で野党が40%以上の票を獲得した。
最終結果は与党の勝利に終わったものの、今回の選挙が意味するのは、野党の大躍進=与党への国民の支持低下とみて間違いないと思う。アジアの国々の中でも有数の繁栄を誇り、日本の1.5倍もの1人あたりGDPを享受するシンガポールで、その舵取りをする与党に厳しい選挙結果が出た理由はなぜか?
最大の要因は政府のコロナ対策における失策だろう。
シンガポールの7月10日時点のコロナ罹患者数は4万5千人と、日本の2倍以上であり、香港、台湾、韓国など他のアジア先進国と比べてもけた違いに多い。しかし、その大部分が外国人建設労働者で占められていて、自国民の感染率は極端に低く、100万人あたりの死亡者数もわずか4人にとどまっている(日本は8人)。この最大の原因は外国人建設労働者クラスターが発生した際の政府初動対策の失敗だ。
南アジア系の労働者が圧倒的多数を占める外国人建設労働者が住む寮には、以前から過密で劣悪な環境の寮が多いことが知られており、人権団体などが政府に対して改善を要求していた。今回もこのような寮が感染の温床になり爆発的に感染拡大(同じ寮でも感染が広がらなかった所もあり、その違いはやはり過密かどうかだと労働者たちが証言している)。シンガポールはロックダウンをせざるを得なくなった。
いっぽう、コロナには感染しなかったものの、ロックダウンの結果として職を失ったのがシンガポールの一般市民だ。シンガポールの経済紙『ビジネスタイムズ』は2020年の解雇は小売り、航空、観光業界を中心に10万人以上、失業率は4~5%になる可能性があると予測。中から低所得者層を中心に国民生活を直撃している。
では、なぜ優秀なことで知られるシンガポール政府は、外国人建設労働者の感染対策を直ちに講じなかったのか?
選挙期間中、政府は対策を講じなかったどころか、雇用者に対して発病者を病院に連れていった場合はその労働者の労働ビザを取り消すという通達を出したと野党が告発した(これに対し政府はこの情報はデマであり、そのような事実はなかったと反論)。しかし、有権者たちは、政府が労働者寮の規制を強化し環境改善に動き始めた際に「建設コストが増大するため住宅価格の高騰はやむを得ない」と言及したことを思い出して、さもありなんと納得した。
政府は国民に対して、経済発展のためには労働者の環境(この場合は外国人労働者の住環境)をある程度犠牲にするのはやむを得ない、と考えていることを露呈してしまったのである。
同様の政府の考え方は教育行政にも言える。シンガポールの教育は世界でも有数の質の高さを誇り、最新のPISAの結果でも中国に続き3分野すべてで2位。国民の大半がバイリンガル以上であることでも知られる。
しかしその実態は、幼稚園からの塾通いを肯定し、大学に至るまで熾烈な受験競争を子供に強制。親には多大な教育費の支払いが重い負担となってのしかかっていて、落ちこぼれた子供たちが非行に走り、麻薬中毒になるティーンエイジャーが年々増加している、というお世辞にも理想的とはいえない状況だ。
このように経済発展を最優先し、その目標に向けて国民をひた走りに走り続けさせてきた与党に対し、今回の選挙結果は「もういい加減にしてほしい」という国民の悲鳴であったと私には思える。
実際、コロナ失業対策として今後10万人の雇用を約束するという与党公約にも、国民の再教育を奨励し、訓練機会を与えるという条件がついていた。つまり、今までと同じスキルレベルだったら失業して当然なのだから、国民は自分の力でレベルアップすべし、その後押しを政府はする、というのである。
物心ついた頃から必死に勉強し続け、やっと働き始めても労働の傍ら常に教育訓練を受けて死ぬまでスキルを磨き続けなければいけない。自分たちの人生のすべてを経済発展のために捧げ続けなければいけない、という国の要求に、特に若い世代の国民が「ノー」を突き付けたのが今回の選挙結果ではないかと私は思う。
選挙では敗れたものの、労働者党の若い候補者たちが健闘した私が住む地域の選挙区の36歳の労働者党員、ナタニエル・コー候補のシンガポールの将来への希望の項目には胸を打たれた。
その中で彼は「これ以上のショッピングモールや住宅プロジェクトではなく、緑にあふれた環境を取り戻したい」、そして「シンガポールを成功させるというパイオニア世代のミッションは完遂された。私たちに新たなミッションをみつけさせてほしい」と語っている。
経済発展と豊かさに向けて邁進してきたシンガポールの時代は終焉を迎えつつある。 2019.05.01 Wednesday
我慢強く、辛抱強く、麻薬常習者の子どもたちを更生させるために。
3月半ばから4月頭まで、我が家にステイしていた16歳の姪っ子が、チャンギ刑務所内のDRC(Drug Rehabilitation Centre)に収監されました。麻薬乱用の再犯、4〜12か月の実刑です。
この問題が発覚した2月半ばからずっと、あちこちに援助を求め、夫と2人で何とか彼女を学校に戻らせて更生させようと動いていたのですが、残念ながら今回その願いはかないませんでした。
非常に残念な結果になってしまった要因はいろいろあるのですが、やはり麻薬の強い常習性が筆頭に挙げられると思います。「覚せい剤やめますか? それとも人間やめますか?」のキャンペーン通り、一度常習者になってしまうと、麻薬を手に入れるためには親でも売るような動物以下の人間になってしまうのが恐ろしいところです。
シンガポールでは姪っ子のケースのように未成年でも実刑を受けますし、最高刑が死刑と日本よりよほど厳しいにもかかわらず、驚くべきことに、麻薬犯罪の年間逮捕者の人口比は日本の5〜6倍にものぼります。
また、この記事のように、最近では毎日のように摘発が報道されるほど、問題が深刻になりつつあります。
一説によると麻薬犯罪の再犯率は80%ともいいますし、特に最近は30歳以下の若年層への広がりに政府が注意を喚起しています。
いっぽうで、彼女や、彼女の友人の麻薬常習者たちといろいろな話をしてみると、彼らがこの犯罪にどっぷりはまりこむまでに追い詰められた過程における、いろいろな問題が浮かび上がってきます。
概してその大部分は家庭にあるのですが、それ以外にも学校や父兄の無理解であったり、このような子どもたちが働けるような職場環境が少ないなどの問題であったりとさまざま。その多くが繊細で傷つきやすい感性をもっているのも、彼らの共通点です。
私がなぜこんな身内の話を書くかというと、この問題が決して芸能人や暴力団など特殊な人たちだけの問題ではないということを知ってもらいたいからです。彼らと話していると、ごくごく普通の家庭に育った子供たちが、思春期の多感な時期に家族と衝突し、同じような境遇の仲間たちとつるんでいるうちに麻薬の罠にからめとられてった過程が手にとるようにわかります。
ただでさえ思春期で親も子供自身もたいへんなところに、「いい子」しか受け入れてくれない社会が普通のルートから落ちこぼれてしまった子どもを拒絶してしまうと、彼らは行き場所を失ってしまいます。そこにつけこんで金儲けをするのが麻薬密売組織なのです。
さらに言えば、家庭に居場所がない彼らの話を聞き、慰め、世話をしてくれる先輩格の子どもたちもまた麻薬の犠牲者であり、麻薬を買う金欲しさに、親身になって話を聞いてあげた子供にまで麻薬を売りつける売人になっていく、というケースも珍しくありません(この防止策として、麻薬の使い方を教えると罪がさらに重くなるそうなのですが、実際にはやってしまってから知るケースがほとんどのようです)。
この悪循環を遮断するためには、どんなに手のつけられないと思われるような子どもたちであっても、彼らを我慢強く、辛抱強く、大人たちが努力して更生させていくしかありません。
彼らは心の中では「助けてほしい!」と大声で叫んでいるのに、日々の生活の中では他の子どもたちに麻薬を売りつけるディーラーの自分に甘んじ、偽悪的なポーズで悪態をついてはさらに自己嫌悪に陥っているのです。
現在、私たち夫婦は彼女が刑期を終えた後の対応を巡って学校や政府機関の方々と協議を続けています。逮捕されたら一件落着では当然なく、これからが彼女の更生のために私たちが力を尽くすことができる本番であり、さらに困難な道のりであると覚悟しています。
そんな私たちにとって最大の救いは、援助を求めて会いに行った国会議員のタン議員が、逮捕とお世話いただいた件の進捗報告についてメールでお知らせした際、すぐ返信してくれ励ましてくれたこと。お願いすればいつでも政府のバックアップが受けられると思えるだけで、心強いです。
先は長い。でも諦めません。 2019.03.31 Sunday
言論と集会の自由が許されたシンガポールのSpeaker's Cornerに行ってみる。
「シンガポールは明るい北朝鮮で、言論の自由はない」としたり顔で語る人がいます。
しかし、それは大きな誤解です。
シンガポールでは言論や(平和的な)集会は憲法14条で保証されています。内容が日本と違うのは、以下の点。
この条項に見事に違反してしまったのが、2015年当時ティーンエイジャーだったエイモス・イー君。故リー・クワンユー元首相やイギリスの故サッチャー元首相をおちょくるビデオやブログを作って公開。さらにイスラム教徒が怒り狂う画像も投稿して、裁判の末実刑判決を受けて服役しました(その後アメリカに亡命)。
この事件で、国際社会からシンガポールは大きな批判を受けましたが、私個人としては順当な判断だったと考えています(実刑でなくても良かったとは思いますが)。
このように、厳しい条件つきではあるものの、シンガポールには言論と集会の自由があります。そして警察に事前申請して許可を受けてですが、集会を開いていいのがここ、クラークキー駅の出口を出てすぐの場所にある、Hong Lim公園内の「スピーカーズ・コーナー」です。
今回、私も当事者であるシンガポールの水処理会社Hyfluxの破たん処理に関する債権者たちの抗議集会が開かれるというので、滅多にない機会を逃さないべく、娘と見物に行ってきました。
この問題に関する詳しい顛末は別の記事に書いています。
開始時間の3時になると、こんな感じで人が集まってきました。 段ボール製の手作りのプラカードやタテカンが素人っぽい。シンガポール人、集会に慣れてないことがよくわかります。この築山がステージ。
マイクの前のキャップにマスクの人が主催者。怪しい感じですが、これまでのメールから推察する限りでは普通の社会人で、自分のアイデンティティーを隠すためにこういう恰好をしているようです。またしても慣れてない。
隣のスマホいじってる赤シャツの紳士は今回唯一の予定されたスピーカーでしたが、30分ほどにわたって自説を展開し、拍手喝さいを受けていました。
集まった人々は、総勢で200人強くらい。メディア関係の人もたくさん来ていましたが、ビデオカメラは持ちこまない約束なのか、普通のカメラとマイクを使わないレコーダーと筆記だけで記者やカメラマンの人たちが取材をしていました。
ステージ上の紺のポロシャツ姿の紳士は、聴衆の中から「ちょっと私も話します」と築山に上り、演説していました。基本的に年配の方々ばかりなので、過激な感じはまったくしません。統制された感じもなく、ものものしい警備もなく(隣が交番ですがお巡りさんは誰も来ていませんでした)ゆるーい集会でした。
それにしても1時間程度、炎天下の木陰も何もない場所で立ってるのは本当にきつい。
あらかじめ想定してピクニックマットを持っていったら、娘、その上で寝込んでしまいました。1時間だったのでまだ我慢できましたが、これで何時間もつき合うのはちょっと無理です。
なんとかこの暑さを乗り切り、シンガポールの言論と集会の自由が機能しているのを知り、安心して帰途に着いた次第です。 JUGEMテーマ:シンガポール 2019.02.16 Saturday
Scootの台北経由成田便に初搭乗してLCCの時代を実感
常夏のシンガポールから真冬の東京に着きました。
寒い。そして、みんな日本語喋ってる。当たり前だけど。
さっそくデザイナーさんと仕事の打ち合わせ。LINEでは時々話してますが、対面は久しぶりなので新鮮な感じです。
さて、今回初めてシンガポール航空系列のLCC、Scootの台北経由成田便に乗ってみました。ちょっと前までシンガポール航空のLCCはTigerairとScoot の二本立てだったのが1社に統一され、大幅にLCC路線が増えたのです。
そのため、近場の東南アジア各都市はもちろんのこと、最近は香港に行くのもScootが多くなりました。便が多くてとにかく便利。バリ島便などシンガポール直行はここしかありません。
ヨーロッパなど少し遠くに行く時には世界的に評判の高いシンガポール航空も選択肢に入れますが、近場にちょっと遊びに行くのだったらLCCで十分。シンガポール人にとってScootは日常生活に欠かせない足のような航空会社になってきています。
ところが、アジア内でも東京までとなるとちょっと話は違ってきます。
飛行時間は短くても6時間強。風向きなどシーズンによっては8時間近くかかることもあるので、LCCの狭隘レッグスペースはきついなと思っていたのですが…。
ネット検索してみたらScootの東京便には台北経由というのがあるではありませんか⁈
台北は結婚前に夫と付き合ってた頃、中間地点だからと待ち合わせしてデートしたりした街。シンガポールからも東京からもさほど時間がかからず、また、一度飛行機から降りるので、ずっと乗りっぱなしに比べたら体への負担も少なくなります。これはいいとチケットを購入しました。
そして本日、いよいよ初体験。
驚きました! 機体はちょっと古いですがなんとノーマルな大型機です。レッグスペースは普通のエアラインと変わらずゆったり足を延ばせる広さ。シートにスクリーンはないものの、映画などのストリーミングサービスはあり。トイレも数が十分。
快適です。とてもLCCとは思えない。
あー、もうノーマル・キャリアは不要な時代になったのだ、と実感しました。
シンガポールから台北まではほぼ満席。台北からさらに東京に乗り継ぐ人は20人足らずでしたが、台北から乗り込んだ観光客などが加わり、ちょっと空いているけれど早朝便としてはまあまあの客入りでした。
さすがシンガポール航空、商売うまいわー。
実は現在のシンガポール航空CEO、夫の軍隊時代の同期で私もたまに会うことがあります。夫としきりにScootの沖縄便を作ってねとお願いしているところ。
CEO交代しないうちに、ジャンボジェットでぜひお願いします!
JUGEMテーマ:幸せなお金と時間の使い方 2019.02.15 Friday
Scootの台北経由成田便に初搭乗してLCCの時代を実感
常夏のシンガポールから真冬の東京に着きました。
寒い。そして、みんな日本語喋ってる。当たり前だけど。
さっそくデザイナーさんと仕事の打ち合わせ。LINEでは時々話してますが、対面は久しぶりなので新鮮な感じです。
さて、今回初めてシンガポール航空系列のLCC、Scootの台北経由成田便に乗ってみました。ちょっと前までシンガポール航空のLCCはTigerairとScoot の二本立てだったのが1社に統一され、大幅にLCC路線が増えたのです。
そのため、近場の東南アジア各都市はもちろんのこと、最近は香港に行くのもScootが多くなりました。便が多くてとにかく便利。バリ島便などシンガポール直行はここしかありません。
ヨーロッパなど少し遠くに行く時には世界的に評判の高いシンガポール航空も選択肢に入れますが、近場にちょっと遊びに行くのだったらLCCで十分。シンガポール人にとってScootは日常生活に欠かせない足のような航空会社になってきています。
ところが、アジア内でも東京までとなるとちょっと話は違ってきます。
飛行時間は短くても6時間強。風向きなどシーズンによっては8時間近くかかることもあるので、LCCの狭隘レッグスペースはきついなと思っていたのですが…。
ネット検索してみたらScootの東京便には台北経由というのがあるではありませんか⁈
台北は結婚前に夫と付き合ってた頃、中間地点だからと待ち合わせしてデートしたりした街。シンガポールからも東京からもさほど時間がかからず、また、一度飛行機から降りるので、ずっと乗りっぱなしに比べたら体への負担も少なくなります。これはいいとチケットを購入しました。
そして本日、いよいよ初体験。
驚きました! 機体はちょっと古いですがなんとノーマルな大型機です。レッグスペースは普通のエアラインと変わらずゆったり足を延ばせる広さ。シートにスクリーンはないものの、映画などのストリーミングサービスはあり。トイレも数が十分。
快適です。とてもLCCとは思えない。
あー、もうノーマル・キャリアは不要な時代になったのだ、と実感しました。
シンガポールから台北まではほぼ満席。台北からさらに東京に乗り継ぐ人は20人足らずでしたが、台北から乗り込んだ観光客などが加わり、ちょっと空いているけれど早朝便としてはまあまあの客入りでした。
さすがシンガポール航空、商売うまいわー。
実は現在のシンガポール航空CEO、夫の軍隊時代の同期で私もたまに会うことがあります。夫としきりにScootの沖縄便を作ってねとお願いしているところ。
CEO交代しないうちに、ジャンボジェットでぜひお願いします!
JUGEMテーマ:幸せなお金と時間の使い方 2018.09.27 Thursday
IT弱者を救え! リタイア・シニアに幅を広げるシンガポールのリカレント教育
JUGEMテーマ:シンガポール ※シンガポール東地区の生涯学習センター。勤労者向け各職業訓練学校が入居している他、就労相談なども行っている。
人生100年時代を迎えた今日、国民に広く職業学習の機会を提供し、生涯現役で働くためのスキルアップ教育を目的に巨額の予算を投じて始まったシンガポールのSkillsFutureプログラムが、ここに来て新たな展開をみせています。(ちょうど1年前にこのプログラムについては詳しくご紹介したのでこちらの記事をご参照ください)
それは「Seniors for Smart Nation」というプログラム。
主として50歳以上の国民を対象に、スマホやタブレットの活用法を教えてIT弱者になりがちな高齢者のITスキルをレベルアップしようという試みです。
通常のSkillsFutureプログラムは写真の生涯学習センター内のコースをはじめ、各種学校のコースがほとんどですが、こちらはCC(コミュニティーセンター)というシンガポール全土にネットワークをもつ公民館で開催されるので受講の敷居が低く、約30時間の履修で日常生活に必要な一通りのITスキルを身につけることができます。
コース詳細はこちらのページからダウンロードできますが、WeChat、Instagram、Facebook、WhatsApp(シンガポールでよく利用されているLINEのようなSNS)の使い方に始まり、ネットショッピング、オンラインバンキング、キャッシュレスペイメントの他、シェア自転車やグーグルマップの使い方まで庶民の日常生活に必須のアプリの操作方法を教えてくれます。
中でも特に重要だと思われるのが、SingPassというオンライン住民サービスIDの使用方法を教えてくれる講座。
NRIC(National Registration Identity Card)はシンガポール住民であれば必ず所持を義務付けられる身分証明書(日本でいうマイナンバーカード)ですが、最近はこれに加えてSingPassというオンラインIDも公共サービスを受けたり納税などの際に必要になってきています。
例えば、私は今年55歳になったのでNRICの更新が必要になりましたが、オンラインで更新申し込みをするようにという通知が郵送されてきた後、SingPassを使用して自分で政府サイトにアクセスしてから必要事項を入力し、写真やパスポートコピーなどを添付しました。5年ごとに更新している再入国許可の申請も同様。すべてSingPassを使ったオンライン手続きで、出入国の際に必要な許可証は自分でサイトからダウンロードしてプリントアウトします。
以前なら使い方が分からなければ直接、移民局などに行って聞いたり、窓口で申請したりすることができたのですが、最近はこのような窓口サービスがどんどんなくなっており(オンライン・ターミナルはCCなどに設置されており、24時間アクセスできるところもあります)、「やり方がよくわからないから窓口で聞いてみよう」という方法がとれなくなっているのです。ちなみに通知書には問い合わせ先の電話番号さえ書いてありません。
つまり、IT弱者のままでいるということは、イコール通常の市民生活が営めないということ。そんな人たちをすくい上げて国としてIT化を推進しようというのがこのプログラムの目的であり、そこに国民全員に付与される年間500ドル(約4万円)のSkillsFutureプログラムのクレジットが使えるということでインセンティブも与えているのです(このポイントは使わないと自動的に消滅してしまうので、「もったいないから使おう」と考えて実際にプログラムを受講する国民が年々増加中です)。
そもそもは優秀な外国人労働力に負けないスキルを国民に身につけさせようという就労支援目的で始まったSkillsFutureプログラムが、IT弱者のシニア教育に裾野を広げてきた中、今後どんな展開をみせていくのか、たいへん注目しています。 2018.04.17 Tuesday
印僑の時代
JUGEMテーマ:シンガポール シンガポールでインド人人口が増えている事情を前記事でご紹介しましたが、人口増加の一因に家族の移住が挙げられます。
若いIT技術者が最初は独身でやってきても、お年頃になるとインドに休暇で里帰りしたついでにお見合い結婚。まず妻がやって来て、次に自分の両親もやってくる。子供が生まれる頃には兄弟も呼び寄せて同居を始め、さらには親戚もやってきてどんどん家族が増えていく...、というようなことが決して珍しくないそうです。
華人系の友人に言わせると「インド人は血縁、地縁の結びつきがとても強いから、一人シンガポールにやってくると村中まるごと移住しちゃうのよ」だそう。
ある小売店のオーナーも、インド人は本人だけでなく家族全員でお店にやって来ることが多く、1つのものを買うにも家族がそれぞれ違う意見を言うのでまとまらず、数時間接客しても何も買わずに帰ってしまうことが多々あり本当に大変、と嘆いていました。
確かにイースト・コースト・パークを散歩していたインド人も家族連れが非常に多かったです。
中国人は古くから世界中にチャイナタウンを作り世界に散らばってたくましく生き抜いてきましたが、インド人もやはり同じ歴史をもち、華僑に対して印僑と呼ばれます。インド経済が勃興する中、今後さらにインド人の世界進出が加速しそうな雰囲気です。 2018.04.01 Sunday
シンガポール中学生の定番ボランティア
毎週土曜日の午前からお昼過ぎにかけて、シンガポールのショッピングセンターや公団住宅のマーケット近くには必ず制服姿の2人組が立っています。
中学生のチャリティー募金ボランティア。募金缶に募金を入れると、こんなかわいい子たちが胸にシールを貼ってくれます。
募金の場合は金額の多寡で成果がはっきり出るので、まじめにやる子は目つきも真剣。気づかないうちにいきなりシールを胸に貼られて募金缶をぐっと押し付けられた経験もあり。
そういえば、昔住んでいた香港でもよくやってました。イギリス統治時代の名残なんでしょうか?
以前の記事にも書きましたが。シンガポールでは草の根ボランティア活動がとても盛んです。
やはり子供のうちからの教育が重要ですね。 2018.03.30 Friday
シンガポールの屋台が衛生的な理由
JUGEMテーマ:ビジネス シンガポールではホーカーという屋台の他、カジュアルレストランでも壁がなく開放的な設計の店が多いのが特徴です。
一年中夏なのでこのようなデザインは理にかなっているのですが、衛生面で二の足を踏んでしまう外国人や観光客もいると聞きます。
逆に、シンガポールでは一年中夏なのにもかかわらず、ほとんど食中毒のニュースを耳にしたことがありません(以前住んでいた香港では最低でも年数回は食中毒が発生していました)。あまりに多くてニュースにもならないのかとずっと思っていたのですが、最近、食品衛生責任者講習をシンガポールで受けてその理由がよくわかりました。
実は私は昨年、日本でも食品衛生責任者講習を受けています。
食中毒の種類や防止方法など、講義の内容はほぼ同じですが、違うのは下記の通り。
1.日本では講習受講だけで免許をもらえるが、シンガポールではテストがある。 2.日本は保健所の立ち入り検査は問題が発生しない限り基本的にないが(開業時を除く)シンガポールは定期的にある。 3.シンガポールの検査項目は具体的で、非常に厳しい罰則がある。
1.は文字通りそのまま。日本の講習は1日でしたが(シンガポールは2日)、学生さんなどの中にはほとんど寝たきりの人もいました。
2.も同様。検査はポイント制で減点ポイントが多いほど評価ランクが下がっていきます。飲食店では検査後の営業許可証と一体化した評価ランク表示が義務づけられており、写真のようにレジ横などに貼ってあります。写真の店のような「A」評価は食べ物を出すところでは珍しく(飲み物屋さんは多いです)、検査が非常にシビアであることがわかります。
3.の検査項目は減点法+シンガポール政府十八番の罰金です。例えば、営業許可証を提示してないと罰金200ドル、従業員の服が汚れていたら減点4+罰金300ドル、調理済の食品をカバーなしで放置しておくと減点4+罰金300ドル、調理済みの食品を素手で触ると減点6+罰金400ドル、施設内で虫や害虫がみつかると減点6+罰金400ドルなどなど。トイレの衛生状態に関する項目も少なくありません。
12か月以内に減点が12点以上になると、2週間の営業停止処分に。ということはたとえば、ゴキブリやハエが2回みつかると営業停止になるということです。どうりで熱帯気候にはつきものの害虫を滅多にみないわけです。
このように非常に厳しいスタンダードが課されているため、飲食店は害虫やネズミ駆除業者との定期契約が普通だそう。特に政府管理下の公営ホーカーでは施設全体が契約しており、トイレ掃除や食器類の片付けも屋台の調理人が直接行うことはないため、人を介して感染する食中毒は逆に少なくなるだろうと感じました。
シンガポール観光の際は、このライセンスを目安にぜひ屋台も楽しんでいただけるといいと思います。 2018.03.27 Tuesday
シンガポールの巨大コミュニティー・センター
JUGEMテーマ:シンガポール 昨日の記事で図書館でのアート・ワークショップについて書きましたが、本日はその図書館があるタンパニース・コミュニティー・センターについてお話ししたいと思います。
このセンターは2017年8月にできたばかりの巨大統合型地域コミュニティー施設。もともとスタジアムがあった場所をリノベーションし、ありとあらゆる住民のニーズに応える設計になっています。概略は下記の通り。
・スポーツ施設 サッカー場(5,000席)、スイミング・プール(6個)、多目的体育館(1,500席)、テニスコート、フットサルコート、ホッケー場、ジョギングコース他 ・文化施設 公共サービス窓口(公団など12政府機関)、公共図書館(6F建て)、映画・コンサートホール(400席)、児童公園、エコ・ガーデン、総合ギャラリー、キッチン・スタジオ、会議室他 ・医療・介護施設 ヘルス・センター、家族向けクリニック、デイ・ケア・センター他 ・その他 催事場、バーベキューピット、フードコート、スーパーマーケット、ショッピングモール、飲食店街、ボーリング場(30レーン)、ロッククライミング練習場、学習塾、バレエ教室、音楽教室他
オープン初日には10万人の地域住民が来場。
あまりにも色々な施設がありすぎて、また、ワークショップを含め至る所で面白そうな催しが開催されており、半日ほどいましたが、とてもすべて見ることはできませんでした。
こちらの記事では、シンガポール人と日本人など外国人駐在員の日常生活が全く違う事実をご紹介しましたが、家族で週末を過ごす娯楽施設も同様。
同じ巨大施設でも、観光客や駐在員に人気のマリーナ・ベイ・サンズのようなカジノや高級店が軒を並べる巨大施設には、仕事で必要な場合を除いて一般のシンガポール庶民が頻繁に訪れることはまずありません。
逆にこのような政府が運営する施設では、あまりお金を使わずに家族で一日遊べるため、堅実なシンガポール市民に大変な人気が高いのです。
今後シンガポール政府はこのような統合型の地域センターを徐々に増やしていく予定だそう。
日本でも今後少子高齢化が急速に進行していく中、地域中核都市に住民を集中させて都市計画を推進していく際には、このような統合型のコミュニティー・センターをぜひ併設して街作りをしてほしいと思います。 |
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