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    「北方領土」に素朴な疑問
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      「北方領土は戦争で取り返すしかないのでは?」と酔っぱらってからんだ若い国会議員が所属政党を除名処分になりました。

       

      なんだかなーと思いますが、日本の政治家たちがなんだかんだとこだわってきたこの「北方領土」問題、私としては、この議員をはじめ、なぜこの領土問題に日本の政治家たちがこれほど拘泥するのか理解できません。その理由は以下の通りです。

       

      1.2019年現在、北方領土に日本国籍をもつ日本人は誰も住んでいないそうです。戦後、ロシア人と結婚して日本に帰国せずに残ったり、日本人の血をひく2世や3世たちは住んでいるそうですが、彼らのアイデンティティはすでに日本人とはいえないでしょう。

       

      逆に、現在この島々には、1万人を超える数のロシア人が住んでいます(歯舞群島を除く)。その中にはこの土地で生まれ育った人々も少なくないはず。

       

      もしも北方領土が政府の言う通り日本に返還されることになったら、このロシア人たちは日本人になるのでしょうか? それともロシアの他のどこかの土地へ強制移住させられるのでしょうか? 彼らが通う学校では日本語の授業が行われることになるのでしょうか? 役所の書類はすべて日本語になるのでしょうか?

       

      誰も人が住んでいない尖閣諸島や竹島と違い、北方領土にはすでにロシア人が住んでいるのであり、彼らにとってはここが故郷です。同じロシア人の中には「日本が大金を払うのなら北方領土返還してもいい」という人が少なからずいるそうですが、その人たちはここに住んでいる同胞たちの生活や将来を考えているのでしょうか?

       

      いずれにせよ、日本人が住んでおらず、多くのロシア人が実際に何十年も、数世代にわたって住んでいる土地を日本の領土なのだからそのまま返還しろといっても無理があります。

       

      反対にもしもいざ返還となったら、どんな日本人がここに住むのでしょうか? 冬は氷点下20度以下になる北海道の郡部に住んでいる友人がいますが、彼女の息子たちはすでに家を出て都会に移住しており、近隣は過疎化がかなり進んでいるそうです。

       

      北方領土も凍てつく土地です。ロシア領ですからインフラも日本よりだいぶ劣っているでしょう。ここに税金を投入して日本なみのインフラを整備しても、いったいどれだけの日本人が移住して生活するのでしょうか?

       

      「住人」という観点からみて、北方領土は戦後74年を経て実質的にはロシア人の土地となっている。であれば、ロシア人からしたら「譲渡」はあるかもしれませんが、法的所有権は日本にあったとしても無償で「返還」という事態にはなるはずがないと思います。

       

      2.北方領土問題には、国防権、漁業権、天然資源の採掘権などが絡んできますが、このようなこそこそロシアの「条約違反の違法占拠である」、という事実を逆手にとって日本に有利に交渉することはできないのでしょうか?

       

      現段階では、日本はこのような権利を行使できていないわけで、ロシアはその権利を享受している。そこをタダでよこせ、と言っても私がロシア人だったらうんというわけがありません。このような権利を日本に認めるなら、応分の見返りをよこせと言うに決まっています。

       

      逆に、巨額の見返りを支払って返還してもらっても、それは取引による譲渡、つまり「土地の購入」であって、日本政府が主張している法的根拠による「返還」ではないはずです。もし見返りを支払うのが嫌だというのであれば、それこそ彼の議員が言うように戦争という力づくの手段しか選択はなくなる。

       

      もちろん、ここに先祖のお墓がある方々などが訪問したいというのはわかりますが、ビザなし渡航という形で現在すでに日ロ間の合意ができているわけです。その他の案件についても交渉は可能ではないでしょうか? 費用対効果を考えて、したたかに計算&交渉する余地はないのでしょうか?

       

      ひたすら「領土」という概念にこだわるのではなく、実質的に日本という国にとって有益な権益を探りつつ、少しでも有利に交渉を進めるのが外交というものではないでしょうか?

       

      3.北方領土に関する世論調査はいつも「北方領土問題を知っているかどうか?」とか「四島返還か二島返還か?」「返還運動に参加したいか?」というような設問ばかりになっていますが、私の知る限り、「北方領土返還は必要だと思うか?」という世論調査はなぜか見当たりません。

       

      心から北方領土を返してほしいと願う日本人はいったいどのくらいいるのでしょうか? 私が友人と話をしていて尖閣や竹島の話は出ることはあっても、北方領土の話というのはまず出ないのですが、私の周囲だけが特殊なのでしょうか?  一般的な日本人は違うのでしょうか?

       

      平成30年度の北方領土関係の予算は16億8千800万円。このうち13億2,200万円と約8割を占めるのが、件の議員が参加して問題を起こしたビザなし交流のための飛行機チャーターなどの費用で、それ以外は返還にかかわる啓蒙活動費用が大半です。

       

      裏を返せば、啓蒙活動をしなければ北方領土問題は日本国民に忘れ去られてしまう、ということではないでしょうか?

       

      実質的な活動である2017年度の4島ビザなし交流は9回で参加者がのべ501名。ロシア人による日本訪問及び、報道関係者やお役人や政治家などの関係者などを含む数字ですから、実質的にどのくらいの元島民の方々が参加されたのかわかりません。推測の域を出ませんが、せいぜい数十人といったところではないかと思います。毎年、そのためにこれだけの税金が使われています。

       

      私たち日本人が日本という国で安心して暮らしていくにあたり、北方領土やこれらの国家事業は本当に必要なのでしょうか? このために多大な予算を組んだり、総理大臣はじめ政治家たちが少なからぬ時間を費やすより、もっと他にすべきことがあるのではないでしょうか?

       

      4.「戦争しかない」と言った若い議員は、常々心中で考えていたことを酔っぱらって口にしてしまっただけではないかと思います。

       

      私は「国防」のためには戦争をしなくてはならない局面もあると考えます。そのためには軍隊が必要であり(自衛隊はれっきとした軍隊ですし、先日もシンガポールに他国の軍隊とともに招かれていました。広報官の方は堂々と英語でスピーチされ、日本人としてとても誇らしく思いました)、徴兵制もやむを得ない。

       

      特に日本では今後若年人口が減っていくのですから、若い男子だけに国防の大任を押し付けることなどとうていできません。老若男女問わずの徴兵こそが日本の選択すべき道だと思いますし、私自身も非常事態となれば真っ先に志願します。若くないですし力もありませんが、兵糧の在庫管理や物流などロジスティックスは得意。いざとなれば最前線でコックだってできます。

       

      しかし、それはあくまでも「国民」とその国民が生活する「土地」を守るためであって、日本人が誰も住んでいない「領土」をめぐって戦争をし、自衛隊員の方々を筆頭とした、地球より重い国民の命を失う危険を冒すのは本末転倒でしょう。

       

      尖閣や竹島を守りたければ、とにかく外交の力を最大限駆使して戦争にもちこまないようにするしかない。いわんや現在ロシア人が居住する北方領土をや。

       

      もしも彼の議員が言ったように、ロシア人が現在住んでいる北方領土を戦争によって奪還しようとするなら、その土地を生活の基盤にしているロシア人たちの「国防力」によって日本人の貴重な命が失われることも厭わないということです。

       

                    *******

       

      これだけ釈然としないものがある北方領土返還問題。まず「返還」ありきではなく、日本国にとって本当に四島の返還が必要かつ最善なのかどうか、国会やメディアをはじめ、この事件を好機に、広く率直な議論をしてほしいと思います。 

      JUGEMテーマ:政治

      | Yuriko Goto | 国際社会 | 11:00 | - | - |
      いつの間にか海外在住者100人に1人を超えていた日本。
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        海外在住日本人の最新の統計調査を読んでみました。

        www.mofa.go.jp

        昨年の8月発表。統計数字は一昨年の10月1日現在。

         

        ちょうど1年半前で若干古いですが、数字を読みこんでみるといろいろと興味深い事実が浮かび上がってきました。

         

        まず、日本国籍をもつ海外在住者(長期滞在者+永住者)は135万人で、日本人の人口1億2,421万人の約1.1%と、すでに100人に1人以上の日本人が海外に住む時代になっていること。

         

        内訳は企業駐在や留学、その家族などの長期滞在者が約2/3で、結婚や現地企業での就職などによる永住権取得済みの永住者が約1/3。

         

        居住国は北米が圧倒的に多く全体の37%を占めていて、次にアジアの29%、ヨーロッパの16%、オセアニア9%と続きます。全体的にどこも増えていますが、戦後、移民が推奨された中南米と、アフリカだけは減少。

         

        仕事をしていると欧米からアジア方面に企業の駐在国もシフトしている気がするのですが、永住となると、留学も含めてやはり北米はじめ西欧諸国の人気は根強いようで、永住者の国別内訳は米国が40%、オーストラリアが12%、ブラジル10%と3か国で6割を占め、次いでカナダ、イギリス、韓国、ドイツ、アルゼンチン、ニュージーランド、フランスを加えると永住者の8割。アジアは韓国のみのエントリーです。

         

        アジアの中でみると中国離れの傾向が顕著で、2015年から17年までの5年間は13万5千人から12万4千人と居住者が1万1千人も減少しました。永住者は若干増えていますが、居住者全体の約2.5%で、3千人ちょっとしかいません。

         

        私が住むシンガポールの邦人居住者はずっと増加傾向にありましたが、2017年に政府の外国人受け入れ政策の変更によりマイナスに。この時点で約3万6千人が居住。うち永住者は2,589人(私もここに入っています)。二重国籍を含む永住者の子どももこの中に入っていると思いますので、シンガポールの成人永住者は意外と少ないという印象です(私の知人のシンガポール人と日本人のカップルの大部分に2〜3人子どもがいます)。

         

        世界全体でみると、日本人海外永住者数は2002年にマイナスになった他は、平成に入ってずっと増え続けています。特に2008年のリーマンショック以降の10年間は平均で3.6%の増加。いっぽう、長期滞在者は2017年に-0.26%と23年ぶりに減少した他、増加率も10年で平均1.5%と頭打ちです

         

        この数字の意味するところは、海外に留学や駐在などで長期滞在していた人が現地の人と結婚したり、現地企業に就職して長期間働いて永住化するケースが増えているのではないかと推測しています。

         

        他方、日系企業では相変わらず海外拠点が増加しており、2017年までの過去5年間で18%増。7万5千拠点を上回っていて、圧倒的に多いのは中国3万2千拠点。次に米国の8千600拠点ですが、ここ最近はインドとタイの拠点数が激増中

         

        中国では拠点数は増加しつつあるにもかかわらず日本人居住者の数は減少していますので、人員の現地化が進んでいるか、もしくは拠点を残しても縮小という会社が増えているのかもしれません

         

        平成30年の統計では、日本に居住する外国人の数が264万人と過去最高に。この数は在外日本人の約2倍になります。

         

        中国では、トランプ政権以来米国での反中感情が高まったり就労ビザの要件が厳しくなったのに加え、中国の企業や政府機関が米国に流出した優秀な人材を高給で呼び戻すケースが増えて、中国に帰国する若者が激増しているそうです。

        www.scmp.com

         

        外国人を受け入れを最小限に留め、かつ日本の人口を減らさないためには、以前の日本政府が南米日系人の就労ビザ要件緩和を行ったように、まずは海外に居住する働き盛りの日本人やその子弟を呼び戻す政策を考えることも重要ではないかと思いました。

        JUGEMテーマ:国際社会

        | Yuriko Goto | 国際社会 | 12:43 | - | - |
        「幸福である」より「幸福になる」ということ
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          f:id:gotocord:20190323191617j:plain

          ブランコに乗れたら幸せな娘

          2019年の世界幸福度ランキングが発表されました。

          www.huffingtonpost.jp

           

          日本は前年よりさらに順位を落として59位。トップ10は下記の順です。

           

           1.フィンランド

           2.デンマーク

           3.ノルウェー

           4.アイスランド

           5.オランダ

           6.スイス

           7.スウェーデン

           8.ニュージーランド

           9.カナダ

          10・オーストリア

           

          見事に北欧、プロテスタント、そしてアメリカ合衆国を除くカナダ、オセアニアなど移民の国が上位を独占しています。

           

          記事中ではこの順位の理由を、北欧諸国で福祉や教育が手厚いため、と解説していますが、本当にそうでしょうか? 

           

          北欧諸国はとにかく物価が驚くほど高く、年中寒くて、冬は日照時間が極めて短く、陽光ふり注ぐ常夏のシンガポールの気候に慣れきった私からするととても住みやすそうには思えません。

           

          先日も夫と新婚旅行で幸福度世界ナンバーワンのフィンランドを訪れたときのことを話して笑いあったのですが、18年前当時、マクドナルドのセットランチでさえ2,000円以上、ヘルシンキで少し高級なレストランに入ったらアラカルト料理が一皿すべて5,000円以上して2人で固まりました。

           

          いくら福祉政策が手厚く自然が美しいとはいえ、やはりもう少し暖かくて気軽に外食も楽しめるような国に私は住みたいです。

           

          北欧ほどではありませんが、オランダやスイスも北国気候や物価高という点では多かれ少なかれ似たようなものでしょう。

           

          彼らにとっては、幸福度のずっと低い南欧やアジアや南米など「君よ知るや南の国」の方が、生活環境としてはずっと理想的に近いはずだと思います。だから東南アジアの国々には少しでも陽の光に当たろうと、これらの国々から大挙して旅行者がやってくるのです。

           

          タイやインドネシアのバリ島などの人気観光地はいうまでもなく、シンガポールにもやはり、北欧やオランダやスイスからやってきた人々がけっこう住みついています。

           

          8位から10位の国では事情は若干違います。

           

          こちらは気候的にも政治的にも経済的にも安定していてある意味、納得できる結果ですが、いっぽうで、移民によって構成されている国であり、さまざまな文化的背景や価値観をもった人々が共に暮らしていく上で、日常的にいろいろな問題が発生しているであろうことは容易に想像がつきます。

           

          以前にはオーストラリアで「残酷だ」という理由で魚介類を生きたまま売ることを禁止する法律ができ、華人系のアジア移民が反発する、ということもありましたし、つい先日はニュージーランドで白人至上主義者によるテロ事件が発生しました。理想郷の移民国であっても、やはりいろいろな問題は避けて通れないのです。

           

          しかし、彼らはそんな過酷な環境や、問題が頻発する環境の中に暮らしていても自分をたいへん幸福だと思う。それは何故でしょうか?

           

          この記事では、同じ調査結果をこのように分析しています。

           

          例えば、13位のコスタリカは「生まれたからには幸せであるべき」との考えからほとんどの人が「10」と即答。また、6位のオランダは「7」「8」と答える人が多く、「不幸せ」に対して前向きに価値を置いて考えていることが背景にあるという。

           

           確かに「幸せ」も「不幸せ」もあくまでも主観的なもの。

           

          調査では一人あたりGDPや健康寿命などの数値も考慮されているそうですが、そのような要素を除けば、もっとずっと貧しい国々も上位に入ってくるでしょう。お金があるからとか、福祉が充実しているから、というような数値で測れる事実だけでは、とうてい「幸福」の実像には迫れないのではないかと私は思います。

           

          他方、アジアで特徴的なのは、台湾が25位とトップにつけていること。わざわざ「中国の省の一つ」と注をつけられているほど政治的には不安定な国ではありますが、それでもこのように幸福度が高いのは、やはり将来に不安はあるけれど、今、この瞬間を幸せに生きよう、という台湾の人々の決意表明のような気がします。

           

          日本人もシンガポール人も、台湾を旅行した人が「ほっとした」「気が休まった」と一様に口にするのは、そんな台湾の人々の幸福「意識」によるものではないかと思うのです。 

           

          逆に、日本人の幸福度が年々低下傾向にあるのはたいへん残念です。

           

          少子高齢化をはじめいろいろな面で社会がシュリンクしていく中でも、もっともっと人々が自発的に「幸福になる」と思えるような、外部要因に容易に左右されない、精神的な充足感を尊重するような社会になってほしいと思います。

           

          「幸せな人」が増えればその幸福感が伝染し、さらに「幸せな人」を増殖させていく作用があると考えるからです。

           

          私自身の経験でいえば、10年ほど前のある晩秋の朝の始業前、会社の駐車場の落ち葉掃除をしていたとき、心から「幸せだなー」と感じたことがあります。

           

          今日も一日、健康で仕事ができ、家に帰ると私を待っていてくれる家族がいて、今日のご飯の食材を買うお金の心配をすることなく夕飯のメニューを考えられる。これ以上の幸福はないと思いました。

           

          その日一日、私は一日中機嫌よく、いつもより少しだけ同僚たちにも優しくできたことを記憶しています。

           

          あれも欲しい、これもしたいけどかなえられない、と思ってしまったら私も全く幸福ではないかもしれませんが、自分自身が幸福と感じられ、現在置かれた環境に満足できれば、その分だけ周囲の人にも幸福のおすそ分けができ、少しずつ幸福な人の数が増えていくのではないかと思います。 

           

          幸福度の高い国のリストを見て「いつかこんな国に住んでみたい」と想像をめぐらすのも一興ですが、今自分が住んでいる場所で、どうしたら自分も他の人々ももっと幸福になれるのか、改めて考えてみる機会を提供するのもこの調査の目的の一つではないでしょうか。

          | Yuriko Goto | 国際社会 | 08:33 | - | - |
          タックスヘイブンに巣くう魔物
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            週明けの本日、日経ビジネスのスクープでLIXILグループがMBOを行って日本の株式市場から撤退、その上でシンガポール証券市場に上場を検討中と報道されました。この騒動でLIXIL株の取引きは一時停止に。LIXIL側は報道をいったん否定しましたが、さまざまな情報をみていると火のないところに煙は立たないと考えたほうがよさそうです。

             

            売上高が2兆円に迫るというLIXILグループは、昨年末にプロ経営者の社長解任で話題になりましたが、この記事によるとその前年の9月から、創業者の息子で現CEOの潮田洋一郎会長がシンガポールに持ち株会社を設立し、海外企業の買収を進めるという計画を進めていたようです。瀬戸前社長はこの方針に異を唱えたために解任されたとのこと。

             

            仰天計画の中核は本社のシンガポール移転である。これは潮田の悲願で、5年ほど前、野村証券にスキーム作りを依頼した。その野村が「本社を移す場合、どうしても移転価格税制がネックになる」と結論付けると、今度はM&AアドバイザリーファームのGCAを雇って、実現可能性を探った。

            関係者によるとGCAはこんなスキームを提案した。まずLIXILグループをMBOで非上場化する。次にシンガポールで買収する企業と合併させ、合併会社をシンガポールで上場させる。 https://facta.co.jp/article/201812002.html

             

            日経ビジネスによると、潮田会長はすでにシンガポールに移住済。

             

            着々と計画が実行に移されているのではと想像しますが、直近の決算ではLIXILの売上の75%は日本国内に依存しているそうで、その中での日本株式市場での上場廃止と、商売的にはほとんど関連のないシンガポール(シンガポールではLIXIL製のサッシやトイレには滅多にお目にかかりません)での上場というのは素人目にみてもかなり無理があると思います。

             

            シンガポール移転の最大のメリットはタックスヘイブンと呼ばれる低率の法人税や所得税、キャピタルゲイン課税や相続税がないところでしょうが、実際にこの国を拠点に国際的なビジネスを展開するのは容易なことではありません。昨日のブログ記事でもご紹介しましたが、シンガポール政府の強力なバックアップを受けたスターカンパニーでさえ、いとも簡単に経営破たんしてしまうのが現実のビジネスの世界なのです。


            また、海外に本社を移した日本企業といえば、1997年に経営破たんした静岡出身のスーパー、ヤオハンが思い浮かびます。ヤオハンは私の子供時代、地元では唯一のショッピングセンターでしたので非常に思い入れがありました。地方の中堅スーパーに過ぎなかったヤオハンが香港をはじめ、東南アジア各国に展開、さらにはアメリカやカナダにまで進出して規模を拡大していく勢いには瞠目したものです。

             

            そして香港へのグループ本社移転。日本のマスコミがこぞってこの決断をもちあげ、NHKでも大きく報道されました。

             

            しかし、まだ消費市場が成熟する前の中国に過大な投資を続けて資金繰りに行き詰まった際には、「外国企業」となったヤオハンに日本の金融機関からの救いの手は差し伸べられませんでした。たまたまこの時私は香港にいてヤオハン香港にある商品を卸していたのですが、売掛金回収のために事務所に行くと、同じような取り立て業者が受付にあふれており、経理担当の女性が困惑した顔で「(日本人の)上司がいないので支払いがいつになるかわからない」と繰り返し説明する姿が今でも記憶に焼き付いています。

             

            もちろん香港やシンガポールに商機がないわけではありません。

             

            しかし、低税率の恩恵はあくまでも本業で利益が上がってから享受できるものであり、タックスヘイブンのメリットを追い求めて重大な本社機能を海外に移すのは本末転倒ではないかと思います。

             

            潮田会長の真意がどのようなものか私には図りかねますが、きらびやかな国際都市タックスヘイブンに巣くう魔物に魅入られ、商売の基本中の基本である泥臭い日常業務を忘れたときに、破滅への一歩を踏み出すことになるのではないのでしょうか。

            | Yuriko Goto | 国際社会 | 19:36 | - | - |
            高齢化社会の星、マハティール次期首相(もうすぐ93歳)の健康の秘密は小食と生涯現役でいること。
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              JUGEMテーマ:経営のヒントとなるニュースを読み解く

               

              マハティール元首相が率いるマレーシア野党連合が、昨日行われた総選挙で勝利しました。

               

              マハティール元首相は1925年7月10日生まれなので、ちょうどあと2か月で93歳。1981年から22年間首相を務めて「Look East」政策下、日本に倣って経済政策を進めマレーシアを近代国家にした人物であり、80年代90年代を通じてマレーシアの顔だった人物です。親日家としても有名であり、三菱自動車と組んで国民車「プロトン」を立ち上げたのもマハティール元首相でした。

               

              2003年には禅譲により首相の座を降りますが、その後も活発に発言。汚職疑惑が絶えないナジブ現首相を痛烈に批判し続けて今回の選挙には高齢を押しての出馬。選挙期間中は現政権の嫌がらせを受けたり暗殺計画の噂も流れましたが、与党政権から過半数の議席を奪取する結果に終わりました。

               

              それにしても92歳といえば、たいていの人は政治活動どころか自分自身の生活をまかなうことすら覚束ない年齢です。その中で熾烈な選挙戦を勝ち抜いて激務の首相職復帰へ。並みの人間のできることではありません。マハティール元首相の活力の源泉はどこにあるのでしょうか?

               

              昨年のこのインタビューによると、マハティール元首相は自分自身の健康の秘密について、心臓病や肺炎を患ったこともあり100%健康ではないと前置きしながらも、「煙草を吸わない、お酒を飲まない、食べ過ぎない」生活をしていると話しています。過去30年間体重はほとんど変わっておらず、30年前の服が着られるとのこと。

               

              また首相を引退しても人に会って話をすることはずっと続けており、「完全リタイア」という状態からはほど遠い生活をしていることを語っています。

               

              こちらの記事は今年になり、選挙への出馬が報道されてからのものですが、ここでもやはり非常に細い食と寸暇を惜しんで選挙民に会う生活が紹介されています。実際にマハティール元首相と会ったことがある知人に聞いたことがありますが、非常に気さくで温かい人柄で、会った人は魅了されるといいます。

               

              いずれにせよ世界的に高齢化が進む社会の中、92歳で一国の首相に再登板という事実は快挙には違いありません。

               

              マハティール、もうすぐマレーシア首相、もうすぐ93歳。今後の活躍に期待します。

              | Yuriko Goto | 国際社会 | 09:00 | - | - |
              メートル法を使わない世界唯一の国、アメリカ
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                JUGEMテーマ:国際社会

                本日4月11日は「メートル法公布記念日」だそうです。

                 

                私たちが普段使っているmやcmという単位は日本では1921年から使われることになり、kgやmlというような重量や容積を測る単位もすべて10進法に統一されました。

                 

                日本ではこのように100年近く前からメートル法になっていたので違和感はありませんが、メートル法が確立されたのがフランスだったためか、イギリスとイギリス植民地では長らくヤード/ポンドが用いられてきました。

                 

                そのため現在でも、香港やシンガポール、インドなどの旧イギリス植民地では不動産の面積を表わすのは平方フィートが一般的。価格も1平方フィートあたりいくら、となっているのでメートル法に慣れた私の頭にはなかなか入ってきません。

                 

                ただし平方フィートを除けば、その他の単位はメートルであったりリットルであったりグラムであったりとメートル法の単位を日常的に使っており特別困ることはありません。特に香港では1997年の中国返還直前に「Use Metrit(メートル法を使おう)」キャンペーンを大々的に行ったため、ヤードやポンドなどの単位がほぼ根絶されました(業界によってはダースやグロスなどの単位がまだ残っているとこともあります)。

                 

                問題はアメリカ。

                 

                国際標準のメートル法などまったくおかまいなしで、すべてが旧世界の単位です。

                 

                長さはヤードやインチにフィート、距離はマイル、ガソリンはガロン、重量はポンドにオンス、極めつけは温度の華氏。しかもハーフ(1/2)だのクォーター(1/4)だの10進法とはまるで関係ない端数の数え方をするので、さらにややこしい話に。共通する単位といえば12&60進法の時間くらいです。

                 

                Wikiによると現在でもヤード/ポンドなどという単位を使っているのはアメリカと長らく鎖国していたミャンマーくらいだそうですが、ミャンマーもメートル法への移行を表明しているといいます。

                 

                世界の国々が協力して国際標準のメートル法を使おうと努力してきたのに対し、アメリカという国だけはどこ吹く風。他の国と協調して変える努力をしようという気はまったくないようです。

                 

                日本は戦後一貫してアメリカの影響下にあったためアメリカは日本人にとって一番身近な外国であり続けてきましたが、メートル法をまったく意に介さない姿勢をみても、アメリカという国は国際社会の中にあって非常に特殊な国だということを認識しておいたほうがいいと思います。

                | Yuriko Goto | 国際社会 | 18:45 | - | - |
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