ASIAN NOMAD LIFE

日本、香港、中国で生活・仕事をしてきてシンガポール在住8年目。
経営者は現代の貴族なのか?
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    JUGEMテーマ:経営のヒントとなるニュースを読み解く

     

    先週日産の元会長カルロス・ゴーン氏が逮捕され、国内外を巻き込んだ大スキャンダルになっています。

    過少申告されたという報酬金額の巨額さもさることながら、私が一番ショックを受けたのは、ゴーン氏が2016年に再婚した際にその披露パーティーをソフィア・コッポラ監督の映画『マリー・アントワネット』を模した演出で、ブルボン王朝時代のベルサイユ宮殿大トリアノン城で開いていたこと、そして、東京、パリを含む世界6か所に自宅をもち、その費用を会社に負担させていた可能性が高いという報道でした(結婚パーティー費用も会社もちだったという報道もあります)。

     

    「ザ・コスト・カッター」の異名で知られるゴーン氏の経営手腕は誰もが認めるところであり、経営危機に陥っていた日産を見事に復活させた業績は逮捕後も高く評価されています。しかし、上記の報道を見る限り、ゴーン氏には経営者としてあるべきコスト感覚やバランス感覚が欠落していたように私には思えてしかたありません。

     

    まず、結婚パーティーの件。

     

    マリー・アントワネット妃を筆頭とする王家メンバーや貴族たちがギロチンで残酷に処刑されるという悲劇の原因は、度重なる戦費調達に加え、様々な宮殿の建設費や王侯貴族たちの贅を尽くした享楽的な生活を支えるための俸給の出費などにより国家財政が破たんしたこと、また物価高騰に苦しむ庶民の生活がひっ迫し、王朝に対する不満が高まったことからでした。

     

    コスト・カッターとして辣腕を振るったゴーン氏ならば、日産社員をはじめ、納入業者や販売店がどれだけの苦労をしてコストを削り、厳しい競争を勝ち抜いてきたかを知らないはずがありません。そうした夥しい数の人々の努力によって少しずつ積み重ねられてきた利益を、こともあろうにフランス革命が起きたその地で、その原因となった王侯貴族の生活を模したパーティーで享楽的に使ってしまうというセンスが私にはどうにも解せません。

     

    世界各地に構えたとされる邸宅も同じです。

     

    自分や家族が常に住む家ならまだしも、出張時や休暇時に短期間利用する目的で豪邸を所有するのは、コスト面から言ってまったく合理的ではありません。購入資金はもちろん、固定資産税や管理費、修理費など購入後にもさまざまな経費がかかってくるからです。それらのコストを考えれば、出張のたびに最高級ホテルの部屋を使ったほうが安上がりですし、社内から不満が出ることもないでしょう。今回は経費を会社もちにしていた可能性があるということですが、もしも購入資金も含め必要費用をすべて自腹で支払っていたとしたら必要経費だけで最低でも年間数千万円、場合によっては億を超える総額になる可能性が高く、それこそ10億円程度の年収ではとうてい足りないのではないかと推測します。

     

    つまり、これらの報道が真実だとすれば、ゴーン氏は自分自身がしたい生活にかかるコストを収入と均衡させることができなかったために自身が経営する会社に負担させ、さらには社員たちの目にその行為がどう映るのかを判断して自分の行動を律するバランス感覚を欠いていたと思われます。ゴーン氏の逮捕後に開かれた記者会見での西川社長の表情から推察する限り、ゴーン氏のこのような振る舞いを側近として決して好ましく思っていなかったという様子がうかがわれました。

     

    ゴーン氏は自分が受け取る報酬額について常々「世界水準から比べると高くない」と話してきたそうですが、このような傾向が始まったのは1970年代後半以降。役員報酬が高いことで知られる米国でも、それまではCEOと被雇用者の平均給与の差は30倍程度が平均だったそうです。例えば、一般社員の給与平均が年間500万円とすれば、CEO報酬は1億5千万円程度。それが現在では数千倍という企業も珍しくないとのこと。これをスタンダードにすれば確かにゴーン氏の報酬は法外な額とは言えず、日本の株主がうるさいから報酬をこれ以上高く設定できないのであれば、それ以外の経費を使うことにより不足分を補うという発想になったのかもしれません。

     

    ブルボン王朝時代の貴族の仕事は戦争で功績をあげることであり、それに見合う俸給を求めたのかもしれませんが、彼らの金銭や生活感覚が一般庶民とかけ離れてしまったゆえにフランス革命が勃発しました。同じく、現在、グローバル企業で起きている役員報酬高騰の潮流は、やはりいつまでも続けられるものではないという事実を、今回のゴーン氏の逮捕劇が示唆しているように思えてなりません。

    | 後藤百合子 | 企業経営 | 15:24 | - | - |
    仕事フュージョンが産むイノベーション
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      JUGEMテーマ:ビジネス

       

      2週間前からシンガポールの調理師学校に通っています。

      昔から料理が好きで40年近くいろいろな料理を作ってきましたが、自己流の家庭料理とプロがお金をもらって作る料理はここまで違うのかと驚きの連続で、若いクラスメートに混じって毎日必死で勉強しています。

       

      移民国家シンガポールにあるだけあって学校では、フランス料理やイギリス料理などの西洋料理はもちろん、中華料理、マレー料理、インド料理、タイ料理などアジア各国のさまざまな料理を教えてくれます。インストラクターを務めるシェフもバラエティに富み、タイ人シェフが英語でフランス料理を教えるというちょっと不思議なシチュエーションに遭遇することも。

       

      このように作る料理はさまざまですが、勉強の基本はフレンチの「ミザンプラス」。調理にかかる前の下ごしらえのことをこう呼ぶのですが、例えば2个虜戮いみじん切りはブルノワーズで、2僂梁腓さの角切りはダイスの大。フランス料理だけでなく、学校ではマレー料理でもタイ料理でもシェフからこう言われれば学生は言われた通りの大きさに材料を切ります。

       

      シェフ曰く、アジアでは学校で調理方法を教育するという伝統がなく基本はすべてフランスから輸入した、とのこと。確かにちょっとかじっただけでもフランス式の調理教育は非常に合理的でよくできていると感じます。

       

      そして日本でこのようなフランス式調理方法を広く普及させたのは、日本を代表する調理師学校である辻調グループの創設者、辻静雄さんです。

       

      辻静雄さんは日本におけるフランス料理教育の基礎を築かれた方で、実際的な調理法の研鑽のみにとらわれず、調理にまつわる理論を広く研究・紹介し、海外から高名な料理人を招聘して日本のプロの料理人に教育の機会を与えたり、出版やテレビを通じて広く一般にも調理方法の普及を図るなど、斬新な教育方法を導入して日本人のフランス料理技術の向上に多大な貢献をされました。

       

      興味深いのは辻静雄さんが大学で調理とは関係ないフランス文学を専攻し、卒業後は新聞記者として働かれていたこと。まったく違う世界からこの世界に入っただけに、従来の調理人の徒弟制度の枠にとらわれずに自由な発想でさまざまなアイディアを実現できたのではないでしょうか。

       

      辻さんの功績にみるように、同じビジネスであっても、他の仕事では普通に行われているがその業界では行われていない手法を用いて成功した例は意外と少なくありません。

       

      シンガポールの料理界では、いろいろな国の料理や材料を組み合わせたフュージョン料理が非常に多いですが、他業界のビジネスメソドや視点を持ち込むことによって生まれる仕事のフュージョン効果こそが、これまでにない新風をそのビジネスに吹き込むイノベーションになるのだと思います。

      | 後藤百合子 | 企業経営 | 22:19 | - | - |
      日本の労働生産性を押し下げる経営者の責任
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        JUGEMテーマ:経営のヒントとなるニュースを読み解く

         

        今週書いた「労働生産性は働き方とはまったく関係ない理由」という記事に対し、時間あたりの生産性は製造業のみに関連するものであり、製造業以外には適用できない、というご意見がありました。

         

        しかし、日本の低い労働生産性に最も貢献しているのはGDPの7割を占めるサービス業で、その労働生産性は製造業の5割程度にとどまっていると言われます。つまり、日本の労働生産性を向上させるためには、サービス業の大幅な労働生産性の改善が不可欠です。

         

        例えば運輸業。人手不足問題が深刻になり、ヤマト運輸の昨年末の大幅運賃値上げや、今春の引っ越し難民の増加予測などさまざまな問題を聞くにつけ、低い労働生産性が業界全体や働く社員を疲弊させている様子がわかります。

         

        ヤマトの場合、平均で何度不在配達をするかを売上原価として計算しているかわかりませんが、法人など1回で配達できる荷物が減り、複数回配達が当たり前の個人宛荷物が増えれば、当然労働時間は比例して増えるのに対し、1個あたりの配送運賃は変わりません。その結果、長時間労働やサービス残業が横行するようになり、利益率が伸び悩むのは必然の成り行きです。

         

        この事実に気がついた佐川急便は2013年に早々とアマゾンとの契約を打ち切り。法人客メインの営業方針に切り替えました。このブログ記事では2015年までの2社の売上と営業利益率を比較していますが、2015年時点でヤマトは佐川の約1.5倍の売上があるにもかかわらず、営業利益はほぼ同額(ヤマトは減益)。いっぽうの佐川は、2010年から2015年には売上を約1割近く落としたにもかかわらず、営業利益は倍増しています。

         

        ヤマト経営陣は昨年の値上げの大騒動を待つまでもなく、佐川がアマゾン配送から撤退した2013年時点で将来予測をし、何らかの手を打つべきだったのは明らかです。

         

        昨日は日経にアートコーポレーション社長のインタビューが掲載されていましたが、単価の低い単身者引っ越しをメインにしたり、担当者の「カン」に頼った見積もり等をしていたため利益が低迷。今後はAIを利用して見積もりの誤差を少なくし、個人や相見積で価格が安い業者に発注するシステムの法人の契約も受注しない方針だそうです。

         

        このように経営者が売上単価や利益率を上げるための経営判断をしたり、機械化(システム投資も含む)をしていけば、社員の働き方も自ずから変わってきます。

         

        同じくサービス業の小売り店。

         

        棚卸や発注のための在庫確認は小売店舗で最も時間を消費する作業の一つですが、昨年、リーダーで瞬時に単品在庫数を読み取ることができるICタグの全店導入をユニクロが決定しました。

         

        しかしユニクロは満を持して導入決定しただけであって、日本のICタグ導入の草分けはセレクトショップのビームス。何と5年前の2013年から導入実験を開始。2016年夏までにすべての業態で導入済です。これにより、ビームスでは従来、10人で20時間かかっていた棚卸を3人で2時間以内に短縮できたといいます。

         

        なぜビームスにこんなことができたのか? 答えは簡単。ビームス商品の販売単価と利益率が高く、ICタグ導入に必要な資金を用意できたからです。それにより削減できた社員の労働時間は本業の接客販売に費やすことができ、さらに時間あたりの売上アップ効果が期待できる他、本業のアパレル以外にもカフェやコラボ事業などさまざまな新規事業に余剰人員を回すことができます。その結果、ビジネスの相乗効果やリスク分散機能も補強できるのです。

         

        ホワイトカラーの営業職や管理職でも同じこと。

         

        「明日までにこの資料をそろえてほしい」と顧客の言うなりになって深夜残業が横行しているという話や、毎月必要な資料ならそもそも販売システムの中に組み入れて自動的に作成できるようにすればいいのに、わざわざデータをエクセルに落とし込んで加工して資料作成自体が業務になっているという話、売上や仕入れを操作してささやかな決算数字の誤魔化しに毎月末にけっこうな時間を使っているという話などなど、「最小限のコストで最大限の売上と利益をあげる」のが目的のはずの企業から逸脱した行為は、日本の会社では日常茶飯事です。

         

        それもこれも、私はすべて経営者が必要な判断と指示を、必要なタイミングでしていないことが問題ではないかと考えます。その結果、社員は生産性向上どころか、何のために仕事をしているのかがわかっていない人も多いのではないでしょうか?

         

        働き方改革といかに政府が声高に叫んでも、私は日本の多くの経営者たちが変わらない限り、労働生産性の問題は永遠に変わらないと思います。

        | 後藤百合子 | 企業経営 | 13:28 | - | - |
        労働生産性は働き方の問題とはまったく関係ない理由
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          JUGEMテーマ:ビジネス

           

          労働生産性を高めるための労働裁量制度を推進する議論の前提となる資料の齟齬が大きな問題になっています。

           

          この制度については、賛否をめぐりいろいろな方がいろいろな意見をおっしゃっていますが、私は根本的にこの問題は、被雇用者の労働問題ではまったくなく(つまり、働き方の問題ではなく)、経営者の問題だと考えています。

           

          労働生産性とは、1人あたりのGDP(その国で創造された付加価値)です。それを時間で割ったら時間あたりの労働生産性(購買力平価により調整するため若干変わります)になります。2016年の日本の時間あたり労働生産性はOECD35ヵ国中21位で、平均より低くこの順位はほとんど変わっていません。

           

          では、どうしたら1人あたりのGDP≒労働生産性が上がるのか?

           

          答えは3つです。

           

          1.売上単価を上げる。

          同じスマホでもAppleのi-phoneは10万円、中国ブランドのスマホは1万円のものもあります。

           

          これを仮に100人の工場スタッフと販売・管理スタッフが1日100個作って売ったとしたら、Appleは1人あたりの1日の労働生産性は10万円、中国ブランドは1万円になります。仮にそれぞれ10時間働いたとしたら、1人あたりの時間あたり労働生産性はApple1万円、中国ブランド1,000円です(計算を単純にするため材料費やその他の諸経費はゼロとします)。

           

          中国ブランドの社員がApple社員の労働生産性に追いつくには、それまでの1万円の売り上げ単価を10万円にし、その値段でも消費者が買ってくれる商品を作り、市場を開拓することが必要です。

           

          2.1人あたりの時間あたりの生産性を上げる。

          中国ブランドがAppleほどみなが欲しいと言ってくれる魅力的な商品を作れない場合どうするか? 時間あたりの生産高や販売高を増やすことで労働生産性を上げます。

           

          具体的には、これまで1日100個しか製造・販売できなかったものを、200個にすることです。これにより、時間あたりの労働生産性は2,000円になります。

           

          しかし、人間の能力には限界がありますので、これまで1日1人あたり1個しか製造できなかったものを「カイゼン」により2個にすることはできるかもしれませんが、10個にすることはできません。

           

          ですから、この方法でApple社員に労働生産性で追いつくことは不可能です。

           

          3.人間の作業をロボットやAIに置き換えて生産性を上げる。

          人間の能力には限界がありますが、機械であれば生産性向上の可能性は飛躍的に高まります。

           

          機械は人間と違って休む必要がなく、投資するお金さえあればいくらでも増やせるからです。

           

          工場にはロボットを導入し、販売・管理部門は自動化によって工場スタッフと販売・管理スタッフをこれまでの100人から10人にします。これで100人が100個を作り販売していたときと同じ生産・売上げを上げられれば、1人あたりの時間生産性は1万円になってAppleに並びます。

           

          労働裁量制のめざす労働生産性向上はずばり、2.のタイプです。

           

          これはトヨタを筆頭にこれまでの日本企業が得意としてきた、日常業務の「カイゼン」によって1時間あたりに作ったり販売したりする効率を高め、時間あたりの出来高を上げるという発想です。

           

          裁量労働制は、これをさらに徹底して働く時間を短くするように労働者が努力するという目的なのでしょうが(表向きは)、前述したように実際にどこまで効果があるかは疑問。夕方6時から始まる会議が労働時間にカウントされなくなれば、名目上は若干1時間あたりの労働生産性が上がるかもしれませんが、年間の労働生産性に変化はありません。

           

          アメリカ経済が現在絶好調なのは、IT関連を中心に、1.の魅力ある、販売単価(もしくは販売総額)が高い商品やサービスを売っているためで、労働生産性はOECD諸国中第3位。アイルランドやルクセンブルグなど他の順位の高い国を見ても、金融やITなど販売単価や利益率が高い産業に力を入れているのがわかります。

           

          いっぽう、もともと労働力が常に不足しているシンガポールは現在、3.に非常に力を入れており、先日はホテルでコックなしでも作れる目玉焼きロボットの話題をニュースで紹介していました。

           

          従業員の労働生産性向上のために、1.か3.をとるか、従来通り2.のままでいくかは、働く人の問題ではなく、完全に経営者の経営判断です。働く人が会社が販売する商品を決めたり、機械の導入を決定したりできないからです。

           

          提出された資料云々とまったく別のところで議論が盛り上がっているようですが、裁量労働制と密接に関連する労働生産性の問題は、日本の経営者が今後何をめざすのかを問われるイシューですので、経済界への徹底的なヒアリングが必要なのではないでしょうか?

          | 後藤百合子 | 企業経営 | 15:54 | - | - |
          Amazon一強時代到来? シンガポールで垣間見たAmazonの弱点とは?
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            JUGEMテーマ:国際社会

            米Amazonが昨年買収したホールフーズのリソースを使用し、8日、食品ネットスーパーを開始したそうです。

             

            そして本日、日本でもソフトバンク、ヤフー、イオンが共同でネット通販事業に乗り出すというニュースが日経に掲載。アマゾン対その他大勢のがちんこ勝負になりそうです。(シンガポールをはじめ東南アジアではアマゾンが出遅れていて、中国勢が圧倒的優位を保っています)

             

            ただ、この勝負、最初から勝負がついているような気がしてなりません。

             

            私は以前から日本が優位と言われる技術を使ったICタグに非常に期待していたのですが、先月実際の運用が始まったAmazonGoではカメラとセンサーで店舗無人化を達成。タグをつける手間が不要ですので、長期的にはICタグより優位性が高いのは確実です。

             

            また、アレクサでハードの領域に進出してきたAmazonが、従来の購買分析技術をもとに食品分野まで食い込んでくれば、Amazonなしには生活できなくなる人が急増しそう。迎え撃つには、中国勢くらいの市場規模と資金力がなければ対抗できないような気がします。

             

            一昨年まで半分日本にいた頃、私にとってAmazonはなしでは生きていけない生活必需サイトでしたが、シンガポールではなければないでそれなりに何とかなります。どうしても必要な専門的な道具などは楽天を1万分の1のサイズにしたような中小サイトで買っており、Amazonほど便利ではありませんが、困ることはない。しかし、本格的にAmazonなどの大手資本が入ってくれば、このようなサイトは次々と倒れていくだろうなーと思います(サプライヤーがなくなることはないでしょうが)。

             

            Amazonは昨年からシンガポールでもプライムサービスを始めましたが、見ていて感じるのは、マーケットが小さいところは不得意なんだなということ。人口が少なくもともとたいして売れないため、品ぞろえが貧弱で、多くの商品がアメリカからの直送で運賃がかかります。だったら最初から米Amazonのサイトで注文したほうが早い。何のためのプライムか?と首をかしげざるをえません。

             

            逆にシンガポールの弱小ベンダーたちのサイトは、Facebookグループなどでコミュニティーを作り、顧客を増やした上で、ローカル郵便や格安デリバリーを使ったり、友人の店に引き取り機能だけを持たせたりと臨機応変です。

             

            世界制覇を狙うAmazonの巨大パワーに勝つには、巨大な資金投入という総力戦でぶつかっていくより、このようなゲリラ的な戦法をうまく使ってニッチ市場を狙っていくしかないのかもしれません。

            | 後藤百合子 | 企業経営 | 15:07 | - | - |
            組織のDNAを変えるには 〜 香港フィルにみる再生の軌跡
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              ■予想を裏切られた20年ぶりの香港フィルの演奏

              シンガポールでも連休となったメーデーの今月1日、香港フィルハーモニック・オーケストラのシンガポール公演に行ってきました。(その前週は29年ぶりの日本公演に続き韓国、今週はオーストラリアと遠征しているので同じ演目で聴かれた方もいらっしゃるかもしれません)

               

              香港で暮らしていた1994年夏から97年末までの3年半、「香港フィル友の会」のメンバーになり、週末にはせっせとセントラルのシティ・ホールやツィムサチョイのカルチュラル・センターで開かれるコンサートに通っていたので、20年ぶりにこの昔馴染みのオーケストラの演奏を聴けると、たいへん楽しみにこの日を待っていたのです。

               

              そして、当日。

               

              私の予想は完全に裏切られました。

               

              しかし、良い方にです。20年ぶりに聴いた香港フィルの演奏は、同じ交響楽団とは思えないほど素晴らしいものだったのです。

               

              そう感じたのは私だけでない証拠に、マーラー交響曲第一番の演奏終了後、会場の聴衆の大部分が立ち上がり、いつまでも拍手を止めませんでした。香港フィルの公演でこんなふうに熱狂する聴衆を見たのは初めてですし、地元シンガポール交響楽団の定期公演でも経験がありません。強いて言えば、五嶋みどりさんがシンガポール公演でバッハのソナタを弾いて以来ではないかと思います。

               

              それほど感動的な演奏を香港フィルが聴かせてくれたのです。

               

              ■香港フィルの歴史と迷走の12年

              香港フィルは香港経済の発展と足並みをそろえるかのように、1974年に正式にプロ楽団として発足しました。当時はまだ英国領で、音楽監督にインドネシア系華人リム・ケッジャン氏を迎えてシティ・ホールで開催された初公演には当時の香港総督も足を運んだそうです。

               

              (余談ですが、私が香港に住んでいたときの香港フィル公演では香港最後の総督クリストファー・パッテン氏を見たことがありますし、シンガポール交響楽団の公演では実業家のジム・ロジャーズ氏や故ネイザン大統領もみかけました。実業家や政治家の有名人に会ってみたい人は、その土地の交響楽団の公演に出かけるのがお薦めです)

               

              設立当時は世界から著名な演奏家を招聘する資金もなく、「世界的ヴァイオリニストのイザーク・パールマンを呼びたかったが高すぎてギャラが払えず、思案の上『ギャラは規定しか払えないが、来てくれたら世界最高の中華料理を御馳走する』というオファーをしたところ2回も来てくれた」というエピソードまであるほど。

               

              できたばかりの無名オーケストラの道は厳しく、指揮者や経営責任者が次々と辞めて安定せず、1981年には招聘された華人系アメリカ人音楽監督に反発した62名の楽団員が罷免を要求する署名を集める事件が発生。1984年には米国人のシャーマーホーン氏が就任するまで3年間音楽監督が不在という異常事態となりました。

               

              しかしその後、シャーマーホーン氏の時代に中国や北米をはじめ海外遠征を行うなど中堅オーケストラとしての地歩を固め、英国人デヴィッド・アサートン氏が11年にわたって音楽監督を務めた期間にはアジアでも有数のオーケストラとしての評判を確立します。

               

              私が香港フィルを聴いていたのもこの頃。正確でスピーディーな演奏が持ち味で、安心して演奏を聴いていられました。外国人と香港人とではまだまだ外国人割合が多く、1997年の香港の中国返還前後にはさまざまな式典やコンサートに引っ張りだこで、出ずっぱりだったのをよく覚えています。

               

              ところが、2000年に初の香港生まれの音楽監督として期待されたサミュエル・ウォン氏が着任後、香港フィルは未曽有の危機を迎えます。

               

              中国政府の政策により、楽団設立以来スポンサーとなってきた香港政庁のアーバン・カウンシルが解体されて余暇文化サービス庁となった結果、理事会メンバーが総入れ替えとなり、アジア経済危機も相まって予算は大幅カット。団員の待遇改悪に手をつけ、強制解雇にも及ばざるをえない事態となりました。

               

              その結果、楽団員は次々と辞めていき、理事長も退任。チケット売り上げも漸減していきます。そんな中、理事会メンバーが再度入れ替わり、サミュエル・ウォン氏はわずか5年で香港フィルを去ることとなりました。

               

              次の8年を担当したオランダ人音楽監督エド・デ・ワールトは、著名な「オーケストラ・ビルダー」であり、プロチームを率いてぼろぼろになった楽団再建の望みをかけられて就任したものの、彼の在任期間にも事務局長が4人交代、コンサートマスターが3人交代など異常事態が続きます。

               

              そして2012年に現在の音楽監督であるオランダ人、ヤープ・ヴァン・ズヴェーデル氏が就任。ここにきてやっと団員やマネージメントの入れ替わりがなくなり、再び安定期を迎えるのみならず、アジア随一の交響楽団として飛躍のステップを踏み出したのです。

               

              ■「香港フィルをアジアのベルリン・フィルにする」と断言したズヴェーデルと香港フィルに残った楽団員

              香港フィルの歴史の中で、ズヴェーデル氏の期間を除き唯一の安定期ともいえるアサートン氏の音楽監督期間に私は香港フィルの演奏を聴いていたわけですが、この時も「プロ楽団」としての技術基準はクリアしていたものの、音楽にかけるパッションや理解といった一流の交響楽団に不可欠な素養をあまり感じることはありませんでした。

               

              一番印象に残っているのは、曲目が終了後、聴衆の拍手が一段落するのを待ちかねたようにさっと椅子から立ち上がり、燕尾服の裾を翻して楽屋に戻っていく団員たちの姿です。年間150回以上もの数のコンサートをこなす超がつくほど勤勉なオーケストラならではかと当時は思っていましたが、今振り返ると、音楽は彼らにとってプロとしてこなしていくべき「職業」であり、それ以上でもそれ以下でもなかったのではないかと思います。

               

              当時、唯一そのような姿勢を感じなかった楽団員が、チェロのリチャード・バンピングとクラリネットのジョン・シャートルで、彼らがソロパートを弾いたショスタコーヴィチの「チェロ協奏曲第一番」と、ドボルザークの「新世界より」の演奏は今でも思い出せるほどです。今回、20年前のメンバーをプログラムやネット探してみたところ10人もいなかったので驚きましたが、この2人は激動の時代も楽団を辞めることなく、香港フィルで音楽を続けていました。

               

              このようにもともとパッションを抱いて楽団に残り続けたほんの一握りの楽団員と、香港フィルの伝統も歴史も知らない新しい楽団員の寄せ集めの交響楽団にやってきたのがズヴェーデル氏でした。

               

              彼にも、10年以上にもわたり迷走を続けてきたこの楽団を正しい軌道に戻すのが用意な仕事でないことはわかっていたはずです。しかし、就任直後のインタビューでズヴェーデル氏は「香港フィルをアジアのベルリン・フィルにする」と宣言しました

               

              長年の内紛と相互不信、追い打ちをかけるような超過密スケジュールと「売り上げを上げろ」というマネージメントからのプレッシャー。疲弊に疲弊を重ねたメンバーの前に、ズヴェーデル氏が掲げたのは、「世界最高峰をめざす」という目標でした。正直なところ、プロとしては二軍どころの交響楽団だった香港フィルに「君たちは一流になれる」という希望をまず指し示したのです。

               

              そして、その夢を実現できるだけの具体的な方法論を彼はもっていました。

               

              19歳のときからオランダの交響楽団のコンサートマスターとして長く演奏家活動を行ってきたズヴェーデル氏は、指揮者としてだけではなく、団員の1人1人が演奏家として何をすべきかということを非常によくわかっているのではないかと思います。それは今回の交響曲の演奏を聴いていても明らかでした。それぞれのメンバーに個性的な音を奏でさせつつ、それをまとめたときに最大の音のパフォーマンスを引き出すことに大変長けていたのです。

               

              そして最後に、最も重要だったのは恐らく、「情熱のない」楽団員が去った後に彼が就任したことです。

               

              どれほど素晴らしいリーダーとやる気にあふれたメンバーがチームにいても、過半数のメンバーが無気力で後ろ向きで不平不満ばかり言っていたら、その組織が成功を掴むことは絶対にできません。それどころか、新たにやる気のある人が入ってきても「朱に染まれば赤くなる」式に、情熱は長続きせず無気力に流されていくでしょう。それほど人間は弱く、易きに流れるものなのです。

               

              香港フィル再生はこの3つが完全に揃ったときに初めて実現したのではないかと私は思います。

               

              ■最も大事なのは「情熱

              チームのリーダーになるにしても、メンバーになるにしても、最も大切なのは、パッション、つまりその仕事にかける情熱です。

               

              その情熱は結果となって表れ、ビジネスであったらクライアントや消費者を、音楽であったら聴衆を魅了し、感動させます。逆に、感動ができない、魅了されない商品やサービスをいくら作っても、相手に受け入られないばかりか、自分自身をも疲弊させて無気力の負のスパイラルに陥ってしまうだけでしょう。

               

              プロとして、職業人として、仕事とは何か、その仕事の中で自分は何をすべきなのか、を改めて考えさせてくれた香港フィルのコンサートでした。

              | 後藤百合子 | 企業経営 | 14:45 | - | - |
              ユナイテッド航空の再発防止策
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                JUGEMテーマ:ビジネス

                 

                オーバーブッキング時に降機を拒否した乗客を引きずり出したユナイテッド航空のCEOから、再発防止策がメールで送られてきました。全文は下記の通り。

                 

                対策内容を要約すると、

                 

                ・乗客を降機させるために警察などの法執行機関の介入をやめる。

                ・一度乗機した人には降機を求めない。

                ・自主的にフライトをあきらめてくれる人への謝礼を1万ドル(約110万円)まで引き上げる。

                ・チェックイン荷物紛失の場合、煩雑な手続きを省き、「何も聞かずに」1,500ドル(約165,000円)を実行する。

                ・従業員向けのアプリを開発し、何か問題が起こった場合は、その場でマイルや旅行クレジットや粗品などの対応をする。

                 

                だそうです。

                 

                「クレームにはとにかくマイルを出す」とユナイテッド航空のクレーム担当者が言ってたというのを、別の航空会社のクレーム担当から聞いたことがありますので、ユナイテッド航空らしい対策といえば対策。逆に、「オーバーブッキングをなくす」(=客席消化率が下がって利益が減る)という方向にはいかないのか、というのが率直な感想です。

                 

                これが企業文化というものなんですね。

                 

                ただ、問題発生から1か月もたたないうちに、これだけのことをきちんと決めて全世界の顧客に提示する、という断固とした姿勢は評価できます。これもやはり企業文化と言えるでしょう。

                 

                Dear Ms Goto,

                Each flight you take with us represents an important promise we make to you, our customer. It's not simply that we make sure you reach your destination safely and on time, but also that you will be treated with the highest level of service and the deepest sense of dignity and respect.

                Earlier this month, we broke that trust when a passenger was forcibly removed from one of our planes. We can never say we are sorry enough for what occurred, but we also know meaningful actions will speak louder than words.

                For the past several weeks, we have been urgently working to answer two questions: How did this happen, and how can we do our best to ensure this never happens again?

                It happened because our corporate policies were placed ahead of our shared values. Our procedures got in the way of our employees doing what they know is right.

                Fixing that problem starts now with changing how we fly, serve and respect our customers. This is a turning point for all of us here at United – and as CEO, it's my responsibility to make sure that we learn from this experience and redouble our efforts to put our customers at the center of everything we do.

                That’s why we announced that we will no longer ask law enforcement to remove customers from a flight and customers will not be required to give up their seat once on board – except in matters of safety or security.

                We also know that despite our best efforts, when things don’t go the way they should, we need to be there for you to make things right. There are several new ways we’re going to do just that.

                We will increase incentives for voluntary rebooking up to $10,000 and will be eliminating the red tape on permanently lost bags with a new "no-questions-asked" $1,500 reimbursement policy. We will also be rolling out a new app for our employees that will enable them to provide on-the-spot goodwill gestures in the form of miles, travel credit and other amenities when your experience with us misses the mark. You can learn more about these commitments and many other changes at hub.united.com.

                While these actions are important, I have found myself reflecting more broadly on the role we play and the responsibilities we have to you and the communities we serve.

                I believe we must go further in redefining what United's corporate citizenship looks like in our society. You can and ought to expect more from us, and we intend to live up to those higher expectations in the way we embody social responsibility and civic leadership everywhere we operate. I hope you will see that pledge express itself in our actions going forward, of which these initial, though important, changes are merely a first step.

                Our goal should be nothing less than to make you truly proud to say, "I fly United."

                Ultimately, the measure of our success is your satisfaction and the past several weeks have moved us to go further than ever before in elevating your experience with us. I know our 87,000 employees have taken this message to heart, and they are as energized as ever to fulfill our promise to serve you better with each flight and earn the trust you’ve given us.

                We are working harder than ever for the privilege to serve you and I know we will be stronger, better and the customer-focused airline you expect and deserve.

                With Great Gratitude,

                Oscar Munoz

                Oscar Munoz

                | 後藤百合子 | 企業経営 | 12:21 | - | - |
                「好人物」経営者が辞めるとき〜ローソン玉塚CEO引退にみるボトムアップ経営の限界
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                  きちんと刈り揃えられた短髪。

                  ラグビーで鍛えあげた長身にすっきり着こなしたダークスーツ。笑顔からこぼれる真っ白な歯。

                  言葉を慎重に選びながらも、率直で嫌味のない受け答え。

                   

                  ローソンの玉塚CEOを一目見て好印象をもたない人はいないのではないでしょうか? その証拠に、これまで玉塚氏は現在の日本を代表する経営者たちに人柄を見込まれ、経営を任され、実業界の表舞台を歩いてきました。

                   

                  ■数々の有名企業の経営を任されてきた玉塚氏の経営者人生

                  玉塚氏の名前が一躍全国区になったのは、ユニクロブランドで知られるファーストリテイリングの社長を任せられた時。しかし、残念ながら志半ばで退任。そして今回もまた、「永遠の好青年」玉塚氏は、業界再編の渦中にあるコンビニ業界3強の一角、ローソンCEOの職を辞することになりました。

                   

                  引退発表に先立つ3月、玉塚氏はダイヤモンド・オンラインで4回にわたりこれまでの経営者人生を振り返られていました

                   

                  この連載の中で彼は、証券会社の家業を父の代で失い、捲土重来を期して自分自身が事業を興そうという思いをずっと抱いてきたと告白しています。幼稚舎からの慶応ボーイという経歴ながら、心の中では「このままでは終わらない、いつかきっと」という闘志を密かに燃やし、大学卒業後メーカーに就職するも熾烈な勉強を重ねてMBA留学。そしてユニクロの創業者柳井氏との出会い・・・。

                   

                  丁稚になるつもりで入社したというファーストリテイリングで柳井氏に見込まれ、2002年には社長に就任。就任時にはどん底に陥っていた売り上げを回復させたものの目標には到達せず、わずか3年で辞任することになります。しかし、当時の一般の受け取り方とは異なり、柳井氏とはまったく確執のない、互いに納得しての社長退任でした。

                   

                  辞任後もすぐに複数の会社の取締役に就任し、翌年にはファストリ時代からのパートナーだった澤田貴司氏と設立した会社、リヴァンプの事業の一環としてロッテリアのCEOに就任。ここでも一定の成果を上げたものの、4年後の2010年には契約解消。リヴァンプの資本も引き上げます。

                   

                  さらにその年の秋には三菱商事出身で、当時ローソンCEOだった新浪剛史氏に乞われてローソン顧問就任。2011年には副社長に取り立てられ、2014年には新浪氏のサントリー転任を受けて社長に。そしてまたその3年後の今年、ローソンが三菱商事の子会社となったことを機に退任を決めたといいます。

                   

                  さっと経歴を振り返っただけでもプロ経営者としてそうそうたる企業の経営に携わってこられたことがわかりますが、同時に、どの会社も数年で志も業績も半ばのうちに辞めざるをえない状況に追い込まれており、毀誉褒貶の激しい経営者人生と断じざるを得ません。

                   

                  ■下剋上時代のボトムアップ経営には限界がある。

                  ダイヤモンド・オンラインの連載や、今回の引退記者会見の記事などを読んで感じる玉塚経営の真髄は、ビジネススクールで教えられているような「教科書通りの経営方針」と、社員やフランチャイザーなどのステークホルダーとのコミュニケーションを徹底的に行った上での「ボトムアップ経営」であると思います。

                   

                  加盟店側からも「玉ちゃん」と呼ばれ人気もあった。地方のローソンの視察に行くと「玉ちゃん」の周りには店長や従業員が自然と集まってきた。高級スーパーの成城石井も買収し成長戦略の基礎も築いたほか新浪ローソン時代の拡張路線も一部、修正して社内と加盟店をまとめてきた。 http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ12HEJ_S7A410C1000000/

                   

                  部下や取引先に誠心誠意耳を傾け、やるべきことを一つずつきちんと行い、決して派手ではないものの着々と順序だてて物事を進める。このような玉塚氏の経営手法は、進むべき方向があらかじめ決まっていて、足元をしっかり固める時期には非常に有効であると思います。

                   

                  しかし、まだ成長途上にはあるものの成熟期を迎える中、3強による業界再編が進み、業界の先駆者、セブンイレブンの鈴木氏が引退に追い込まれるなど、コンビニ業界全体が熾烈なサバイバル競争を繰り広げる中、昨年には筆頭株主の三菱商事から社長を送り込まれ、今年2月にはローソンが三菱商事の子会社に。この時点で玉塚氏は引退を決めたと言われます。

                   

                  ――2015年からは「1000日実行プラン」と銘打った改革を実行してきた。その成果を見届けてから、退任する選択肢もあったのでは。

                   

                  正直、迷った。ただ、強い組織というのは、強いトップダウンと強いボトムアップがぶつかる組織だと思う。竹増社長は強いトップダウンの素養があるし、この3年でものすごく成長された。これから先、私も意見を言って、竹増さんも意見を言ってしまうよりは、シンプル化した方が組織として健全だと思った。 http://toyokeizai.net/articles/-/167538?page=2

                   

                  志半ばで自ら引退表明せざるをえない状況に追い込まれた無念さが言葉尻ににじみ出ている反面、CEOの座にしつこくこだわったり、執着したりすることがない玉塚氏の素直さ、性格の良さがよくわかるコメントだと思います。

                   

                  ■これからの時代に求められる理想の経営者とは....?

                  もし私がユニクロやローソンの社員や加盟店の店主であったなら、玉塚氏は思い描ける限り最高の、理想の経営者だと思います。

                   

                  決して一方的に無理な要求をつきつけてくるようなことをせず、どんな些細なことにも穏やかに耳を傾け、チームワークを大切にして地道に着実に結果を出していく。3年前の社長就任時、玉塚氏は「これからは”みんなのローソン”にしていく」と語ったそうですが、「自分が、自分が」というリーダーではなく、「ともに作っていこう」と呼びかけるリーダーに対して、「この人と一緒にやっていこう」と共感した社員や加盟店店主は決して少なくないと思います。

                   

                  しかし、逆に、自分が株主であったらこのような経営者をどう思うでしょうか?

                   

                  確かに社員もフランチャイザーも大切な経営資源です。経営状況が安定期に入っていて低成長でも当分は今走っている路線を手堅く守っていけば相応の利益が見込まれるとなれば、株主はボトムアップ型の経営者も支持するでしょう。

                   

                  ただ残念ながら、現在のローソンも、当時のファーストリテイリングもそのような幸運な時期にはなく(どんな会社でもたいていはそんな時期は長続きしませんが)、下剋上の生存競争の真っただ中にありました。そんな時期に会社を存続させるために求められる経営者とは、確固としたビジョンをもち、どんな障害にも負けずにトップダウンでそのビジョンを素早く実行して結果を出していく「強い」経営者であり、そのような経営者像こそ、身銭を切ってその会社に投資している株主が待望するものなのです。

                   

                  そして会社は、「株主のもの」であり、経営者を選ぶ最終的な決定権は株主にあります。

                   

                  玉塚氏はこれまでの実績を拝見しても非常に優秀な経営者であり、あるべきリーダーの姿を体現しておられる、心から尊敬できる人物だと思います。

                   

                  しかし、反面、玉塚氏のようなタイプの経営者がこれから産業革命以来の大変革を迎えるであろうビジネス界で果たして株主に選ばれ続け、活躍していける場があるのかどうか? ひいては、MBA経営者へのニーズ自体への変化が出てくるのではないかと、今回の玉塚氏引退の一部始終を見ていて強く感じました。

                  | 後藤百合子 | 企業経営 | 01:02 | - | - |
                  「労働生産性の向上=時間あたりの生産効率の向上」という議論の誤謬と「付加価値額」増加から考える新しい労働生産性の考え方
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                    JUGEMテーマ:ビジネス

                     

                    ■「労働生産性」に関する考え方の根本的な誤り

                    (財)日本生産性本部の「2016年度版労働生産性の国際比較によると、2015年の日本の時間あたり労働生産性は、42.1ドル(4,439円/購買力平価(PPP)換算)で、OECD加盟35か国中20位、ニュージーランド(41.0ドル)をやや上回るものの、米国(68.3ドル)の6割強程度しかないそうです。ちなみに、第1位はルクセンブルクの95.0ドル(10,006)で、日本の2.3倍もあります。

                     

                    また、就業者1人当たりでみた日本の労働生産性(就業者1人当たり名目付加価値)は、74,315ドル(783万円/購買力平価(PPP)換算)で、順位はOECD加盟35カ国中22位。やはりニュージーランド(72,109ドル/760万円)をやや上回るものの、カナダ(88,518ドル/932万円)や英国(86,490ドル/911万円)といった国を大きく下回っています。

                     

                    この数字はいったい何を意味するのでしょうか?

                     

                    「労働生産性の向上」というと、すぐに「無駄な残業時間の削減」や「時間あたりの生産高の向上」が議論されますが、時間あたり労働生産性だけでなく、1人あたり労働生産性もこれだけ低いとなると作業効率はほぼ関係ありません。いくらルクセンブルグ人が優秀だといっても、まさか時間あたり日本人の2.3倍の仕事量をこなせるとは誰も信じないでしょう。

                     

                    また、このレポートで「統計で遡れる1970年以来、主要先進7カ国の中では最下位の状況が続いている」「2010年代に入り、日本の労働生産性水準は米国の6割強で推移。1990年には米国の34近い水準だったが、2000年代に7割前後に低下し、近年まで緩やかに差が拡大する状況が続いている」と分析しているのも非常に問題の根が深い指摘だと思います。

                     

                    ■労働生産性向上の手法は時代の変遷によって変化する。

                    では、なぜ日本人の労働生産性はこれほど低いのでしょうか?

                     

                    私は、労働生産性向上の議論に見られるように、日本人の多くがまだ、一時代前の「時間あたり生産効率を上げて生産コストを下げ、安く販売する」という成功モデルに囚われていることに最大の原因があると考えています。

                    1人あたり労働生産性=付加価値額/労働者数

                    付加価値額=売上高−人件費を除いたコスト(生産、仕入れ、減価償却、租税公課等)

                     

                    付加価値額や労働生産性の計算式はどれを採択するかによって少しずつ違いますが、だいたいこのようなものです。そして従来の議論では、「生産効率を高める=コストの削減」は議論されても、「売上高を上げる」という方法についてはほとんど議論されてこなかったのが実情です。

                     

                    20世紀にフォード型のライン方式やトヨタ型のカンバン方式でコストを下げる議論をしていたときならまだしも、21世紀の現在、「モノ」ではなく「情報」が主役に躍り出た時代にいかにも時代遅れの議論をしているように私には思えます。

                     

                    ■ある100年企業の変遷に見る付加価値額の確保方法

                    それをはっきりと物語るのが、私が昨年10月まで社長をしていたある小企業の付加価値額確保方法の変遷です。

                     

                    この会社は私の曾祖父が大正5年に創業。当時は第一次世界大戦の最中でヨーロッパで日用品の生産ができなかったことから、ヨーロッパ向けに靴紐を作って輸出することからスタートしました。

                     

                    こちらは昭和9年の新聞に掲載された曾祖父のインタビュー記事

                     

                    曾祖父が語っているように、当初は東京の会社の下請けとして安い田舎の労働力を使って靴紐を作っていましたが(ヨーロッパに比べて安い製造コスト)、最初は長い紐の状態で販売していたところ、靴紐の長さに切ったり、その先に金属のチップをつけたりするとより高く売れることがわかり、別の商社に営業して販売先を変え、付加価値額を上げます。

                     

                    その後、祖父の代になると、今度は商社を介さず、横浜と神戸に支店を構えて直接輸出を始めるようになります。すると今度は商社が販売していたのと同じ値段(または若干安く競争できる値段)で売れるようになりますが、製造コストは変わりませんので、付加価値額は当然上がります。

                     

                    太平洋戦争をはさんで戦後の高度経済成長時代に経営にあたった父の代になると、今度は本格的なコスト削減=生産効率の向上が始まります。これまで住宅地にあった工場を人がいない畑の中に移し、24時間無人で工場を稼働させ、また生産効率のよい機械設備もどんどん導入して、これまでの数倍の生産高にしたのです。

                     

                    しかし、従業員数はそこまで増えませんので当然、1人あたりの労働生産性は上がり、従業員がいない夜間も稼働するわけですから時間あたりの生産性も上がります。一度に大量に作って販売すれば、それにかかる間接費も削減できますので、競合他社と比較して安い価格で売ることもできました。それでもなお、高い付加価値額と労働生産性を確保し、設備投資に余剰金を回すことができました。

                     

                    しかし1998年、私が経営に着手したときには、「作れば作っただけ売れる」という時代は終焉を迎えていました。当時の中国の工員さんの月給は約4,000円。対してこちらの社員の月給平均は20万円近くでした。父の代に相当な設備投資をし、製造コストに占める人経費割合が5割を切っていたとはいえ、いかんせん人件費が違いすぎます。また、日本製原料と中国製原料、及び外注加工費の差もあり、どんなに頑張っても価格差が縮まらず、あれよあれよという間に注文は中国に流れていき、倒産の危機に直面しました。

                     

                    そこで私がとった戦略は主として2つです。

                     

                    1つは徹底的なコストダウン。これまでの設備をさらに拡充して生産高を最大にし、もう一方で原料を中国より安いアジア諸国から直接買いつけて原料コストでも優位性を確保しました。この結果、一部の商品で中国製品と競争できるくらいまで販売価格を下げることができ、間接輸出額が大幅に増加しました。販売価格こそ低いものの販売数量が飛躍的に伸び、減価償却などの固定費や間接費は変わりませんので、その分付加価値額がプラスになりました。

                     

                    もう1つは「オンリーワン商品」の開発です。オンリーワン商品は競合他社が販売していない(販売できない)商品ですので、顧客に価格選択権はありません。そこで、高い粗利が取れる価格で商品を販売し、付加価値を高めました。もちろん開発した商品が全部売れるわけではないので大変でしたが、コストに比べ販売単価が大幅に高いので付加価値額が飛躍的に増えたのです。

                     

                    そして現在。次の世代に経営を譲りましたが、これからの付加価値額及び労働生産性向上の鍵になるのは、単なるモノではなくそのモノを所有することによって得られる消費者の満足感を徹底的に追及すること、および情報技術を使って販売機会を最大限拡大することにかかっていると思います。

                     

                    つまり、労働生産性の問題とは、人事・総務の問題ではなく、企画・営業・販売、ひいては経営戦略の問題なのです。

                     

                    ■労働生産性の王者はアップル

                    このことを端的に表わしているのが、アップル社です。

                     

                    i-phoneをはじめとするアップル社の製品は、どれも競合他社とすることは同じです。電話をしたりネットにつながったりビデオを観たりすることは安いアンドロイド端末でも十分できます。しかし、多くの人は安物のアンドロイド端末(i-phoneと同じ中国製です)ではなく、その10数倍ものお金を払って最新のi-phoneを買うのです。

                     

                    安いアンドロイド端末を作るのもi-phoneを作るのも、(多少はいい材料を使っているかもしれませんが)たいして製造コストは変わりません。十数倍ものコストの違いは絶対に出ません。また、従業員数が十数倍になることもあり得ません。つまり、アップル社の社員の1人あたり労働生産性は、安価なアンドロイド端末のメーカーに比べ数倍も労働生産性が高くなる可能性があるということになるのです。

                     

                    これこそ、冒頭に紹介したアメリカと日本の労働生産性の差が開きつつある最大の原因ではないでしょうか?

                     

                    ■どうやって付加価値額を上げるかをもっと真剣に考えるべき。

                    ホワイトカラーの労働生産性を上げる、という場合、ムダな残業を削減して効率よく仕事するという議論にはもちろん全面的に賛成します。

                     

                    しかし、これまでと同じ仕事をしてただ早く帰ればいい、というのでは時間あたりの労働生産性は上がるかもしれませんが、1人あたり労働生産性は上がりません。そこが上がらなければもちろん給料も上がりませんし、デフレからも脱却できないでしょう。

                     

                    もちろん、日本にもキーエンス、ファナック、浜松ホトニクスなど、それぞれの分野で他社の追随を許さない独自の技術をもち、非常に高い世界的シェアを誇る会社はいくつもあります。しかし、残念ながら、総労働者数や総企業数に対してこのように高付加価値額を稼ぎだすことができる企業の数が少なすぎるのが現状なのです。

                     

                    シャープの鴻海への身売り、東芝の経営危機をはじめ、これまで日本を代表してきた名門日本企業が次々と経営難を迎える中、これからの日本経済をどうやって持続させていくかを考えるとき、もう一度原点に立ち返って、付加価値額を上げ、労働生産性を高める方策を国民レベルで議論していくことが重要なのではないでしょうか。

                    | 後藤百合子 | 企業経営 | 17:09 | - | - |
                    なぜ社長は辞められないのか?
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                      JUGEMテーマ:ビジネス

                      ■自分から辞められない経営者たち

                      今年はセブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長の解任、ソフトバンクグループの孫正義社長の引退撤回と、経営者の進退問題が話題になりました。また、それ以前であれば、大塚家具の父娘の社長の椅子争い、ファストリテイリングの柳井社長の社長復帰など、辞められない経営者たちの例は枚挙にいとまがありません。

                       

                      名経営者たちが事業承継を考えながらも、なぜ「辞められない社長」になってしまうのか? 彼らには遠く及ばないものの、私もつい2日前に後継者に社長のバトンを渡して退任し、彼らの気持ちが痛いほどよくわかりましたので、少しまとめてみたいと思います。

                       

                      1.社長には辞める自由がない

                      「こんな会社もう辞めてやる!」と思ったことのないサラリーマンは恐らくいないのではないでしょうか? 

                       

                      私も会社員を何度か経験しましたが、就業中、辞めたいと思ったことは何度もあり、実際に辞めました。経営者になっても同じで、専務時代には何度もそう社長に言ったこともあります(その結果、「そこまで言うなら自分で社長をやれ」と言われて社長になったのですが・・・)。

                       

                      しかし、自分自身が代表取締役になって初めて気がついたのは、「社長には辞める自由がない」ということです。 数年単位で社長が交代するのが当たり前のサラリーマン社長や、強制的に事業を停止せざるをえない倒産を別にして、定年がない社長業を辞めるには、廃業にしても、事業承継にしても、自分が辞める前に長い時間をかけて準備をしなければなりません。当然その間は辞められないわけですから、衝動的に辞めたいと思っても辞めるまでの期間はやはり事業を続けるための気力と努力が求められます。

                       

                      まして銀行の借り入れがあれば、(上場企業を除き)ほとんどの社長が個人保証をしています。返済のめどがたたないまま社長を辞めてしまったら、会社の借金を一生かかって返す人生が待っている可能性は低くありません。

                       

                      このように「辞められない」状況で長年働いていると、社長の辞書からはいつの間にか「辞める」という文字が消えてしまいます。「とにかく自分が責任をもって事業を続けるしかない」という使命感のようなものが長年の社長生活の間に体にしみついてしまうのです。

                       

                      2.後継者との力量の差に我慢できない

                      どれだけ権限を委譲していても、どれだけ優秀な後継者候補がいても、社長とナンバー2以下の取締役及び社員が決定的に違うのは、最後に決断をし、その責任をとるのは社長以外にいない、ということです。

                       

                      私は16年間社長を務めましたが、その間、文字通り一時も気が休まることはありませんでした。営業、生産、人事、財務など、すべての分野でごくごく細かいことまで「あれはどうなってるんだろう?」と夜中に気づいてメモをし、翌朝一番にチェックするのは日常茶飯事。休暇をとって旅行に行っても、会社のことが頭から離れたことは一度もありません。

                       

                      こういう生活を長年続けていると、社長の力量は当然、上がっていきます。逆に、ナンバー2以下がどれほど優秀だとしても、この立場からくる差は決して埋めることができないのです。その結果、長い目で後継者を自分が育てているつもりでも「自分だったらこうするのに」という気持ちがむくむくと社長の心の中に湧き上がってきます。そして「やっぱり自分でなければこの会社を続けていけない」という結論に往々にして至ってしまうのです。

                       

                      3.会社に対する思いが断ち切れない

                      社長にとって、苦労しながら育ててきた社員たち、自社製品やサービス、オフィスや生産設備、そして敷地内の植木の1本1本に至るまで、会社に関わる全てのことは自分自身の人生と重なります。

                       

                      大切な社員が一人前になるまでにぶつかりつつ、励ましつつ共に働いた日や、ヒット商品を生み出すまでに重ねた苦労と失敗、不安を感じながらも背伸びをして借り入れで購入してきた社屋や機械など、会社には社長の脳裏にその時々の記憶を鮮やかに蘇らせてくれる人や物があふれています。

                       

                      自分が社長の座を降りるということは、それらすべてが後継者のものになること。大塚家具の例でもわかるように、自分の遺伝子をもつ息子や娘でもなかなかできないのに、ましてや血がつながらない後継者(私の場合も後継者は他人です)をいくら信頼し、期待していても、会社を渡すことは自分の人生を失ってしまうような感覚につながるのです。

                       

                      ■辞めるためには退路を断つしかない

                      冒頭に挙げたような名経営者たちは、自分が永遠に社長を続けられないこと、いつかは大事な会社を託す後継者に事業を承継しなければならないことは100%わかっているはずです。それがどうしても実行に移せないのは、やはり上に述べたような社長の心の在り方自体に問題があると思います。

                       

                      しかし、そのような社長が承継準備ができていないまま突然亡くなったり、病気や事故など社長を辞めざるをえない状況に陥ったときに最も大きなダメージを受けるのは、その会社の社員です。私自身も後継者不在のまま50歳を超えたとき、さまざまな可能性を考えつつも「このままではもし私に万一のことがあったら廃業以外に道はなく、社員の生活を守れない」と思い至り、事業承継の準備を始めました。 その際真っ先に考えたことは、絶対に「やっぱり社長辞めるのをやめた」と自分が言えないよう、すべての退路を意識的に断つことでした。

                       

                      「社長を辞める」、16年の社長人生の中で一番困難な仕事だった事業承継を終えて、現在、心の底から安堵しています。

                      | 後藤百合子 | 企業経営 | 11:31 | - | - |
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