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    飲食業界で台頭するLGBTシェフたち
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      生き馬の目を抜く飲食業界。

       

      数多のレストランやカフェがオープンしては閉店し、一世を風靡したシェフも後進の料理人にその座を明け渡す…。という下剋上の業界にあって、ここ10年ほどで特にその活躍が目立つようになってきたLGBTのシェフたちを少しだけ紹介してみたいと思います。

       

      アン・バーレル(Anne Burrell)

      www.foodnetwork.com

      アメリカの料理専門チャンネル、フードネットワークの看板シェフの1人。

       

      アメリカ版「料理の鉄人」で鉄人シェフのアシスタントを務めた後、自らの冠番組をも
      つ人気者に。アラフィフで貫禄たっぷりな肝っ玉母さんキャラですが、かなり早い段階でレズビアンを公表。その後も人気は衰えず、スター・シェフであり続けています。

       

      彼女の番組で紹介される料理は、どちらかというとシンプルで伝統的なアメリカ料理。それほど高度な技術が要求されず、忙しいワーキングマザーでも作ってみようかと思わせるものが多いですが、ちょっとしたコツなども教えてくれ、さすが経験を積み上げたプロ、と唸らされます。

       

      クリステン・キシュ(Kristen Kish)

      www.instagram.com

      米リアリティ番組「トップ・シェフ」 で史上2人目の女性トップ・シェフに。アジアンな風貌は韓国生まれ故ですが、生後すぐにアメリカ人の養親に引き取られたため、料理のバックグラウンドにアジアの影響はなく、調理学校で学んだのも作るのも、正統派フレンチ&イタリアンです。

       

      特筆すべきは彼女のユニセックスでエキゾチックな風貌。高校生の頃モデルをしていたというだけあって、華奢でスレンダーな体型は百戦錬磨のシェフたちに混じってもひときわ目をひきます。そんな彼女をテレビ業界が放っておくわけがなく、有名人になってからは旅番組のホストとして数年間活躍していたようです。

       

      2018年には満を持してテキサス州オースティンのLine Hotel内にレストランArlo Greyを開店。一流シェフへの道を着実に歩んでいます。

       

      ヨタム・オットレンギ(Yotam Ottolenghi)

      ottolenghi.co.uk

      ロンドンっ子であればカジュアル・レストラン&デリカテッセン「オットレンギ」の名前を知らない者はいないほどの有名店オーナー・シェフ。

       

      エルサレム生まれ。父親はヘブライ大学の教授、母親は高校の校長というエリート一家に生まれ、テル・アビブ大学で比較文学の学位を取得するも、ゲイとしての自由と料理への情熱をかなえるべく欧州に移住。

       

      野菜を中心としたメニューには中東やヨーロッパのスパイスやハーブを多用し、プレゼンテーションもひたすらお洒落。抜きん出たアーティスティックなセンスと飾らない穏やかな人柄がそこここに感じられます。

       

      彼のキャリアは順風満帆で、パティシエとして複数の有名店で経験を積んだ後、2002年にノッティング・ヒルにデリカテッセンの店を開店。瞬く間に有名店に。ガーディアン紙に執筆を始め、2008年に出版した『Ottolenghi』が10万部を超える大ベストセラーに。

       

      その後も旺盛に執筆活動を続ける他、料理番組のホストを務めたり、店舗数も順調に伸びるなど、イギリス料理界における彼のステータスは不動のものとなっています。

       

      私も彼のレシピが大好きで著書を数冊もっていますが、特に独特のスパイスづかいのスィーツ・レシピはベーキングに欠かせません。中東にとどまらずアジアやインドなどさまざまなエスニック料理をヨーロッパ風に小粋にアレンジする技には、いつもただただ感動するばかりです。

       

       

       

      ニック・シャルマ(Nik Sharma)

      www.abrowntable.com

      デジタル時代にふさわしい新しいタイプの料理ブロガー&フォトグラファー。ムンバイ出身、サンフランシスコ在住。

       

      インドのスパイスや伝統料理を洋風にアレンジした独特のレシピもさることながら、彼の料理ブログ「A Brown Table」の最大の特徴は、黒を基調にしたアーティスティックな写真の数々。ときどき映り込む、料理をする彼の手もかなり暗い褐色で、陰影のある画像の表情が「ブラック・イズ・ビューティフル」を体現しています。

       

      そして昨年出版した初の著書『Season』はたちまち話題の本に。ニューヨーク・タイムズ紙にも取り上げられ、次世代スターの座を揺るぎないものにしつつあります。

      www.nytimes.com

       

      彼もまた、自身のゲイとしてのアイデンティティをカミングアウトできないインドから脱出するためにムンバイ大学在学中に奨学金を獲得してアメリカ留学。修士号まで取得した後、ワシントンDCで医学研究者として働いていた2011年にブログを開始し、こちらが本業になってしまいました。まだまだこれからが楽しみな30代。インド料理をベースにした新しいテイストの創作料理に熱い期待が寄せられています。

       

                     *****

       

       

      飲食業界もアパレル業界と同じく、今日では、セントラル・キッチン方式の大量生産やマニュアル化でコストを最低限に抑えて薄利多売に走るか、逆に、他のお店では決してマネできない独自のテイストとSNS映えするアーティスティックなプレゼンテーションでリピーターを獲得するか、の厳しい二者択一を迫られています。

       

      その意味で、芸術的なセンスに秀でるLGBTの料理人たちは、時代のニーズに応えて頭角を現してきていると言えるでしょう。同時に、LGBTをなかなか公にできない中東やアジアから欧米に移民したシェフたちが活躍している点も見逃せません。

       

      ”Mine is the story of a gay immigrant, told through food."

      「(私のブログは)食べ物を通じて一人のゲイ移民が語る物語だ」

        

      と、ニック・シャルマさんが著書『Season』の中で語るように、今後は「LGBT」と「移民」が飲食業界の重要なキーワードになっていくような気がしてなりません。

      JUGEMテーマ:ビジネス

      | Yuriko Goto | グローバルビジネスと人材 | 20:47 | - | - |
      美しく快適な都市に不可欠なランドスケープ・デザイン人材
      0

        <国内公園の設計・管理をするNational Parks発行の出版物。こんな小さい国で1000種類以上の植生には圧倒されます。>

         

        19歳になる甥っ子が今年高専の建築科を卒業し、2年間の兵役期間後にシンガポール国立大学でランドスケープ・デザインを勉強することになりました。

         

        「ランドスケープ・デザイン」といっても、シンガポールの場合は単純に造園というより、ビルそのものの緑化であったり(義妹の話によると「vertical garden」というビル建設時に壁面などを緑化するケースがたいへん増えていて人材の需要も増加中だそう)、商業ビルや集合住宅の設計段階からの敷地緑化プラン策定、そしてNational Parksという国の機関が主導する公園の設計・管理など、さまざまな仕事があるそうです。

         

        そのため、ランドスケープ・デザインを専攻する学生は、造園に限らず建築の設計技術も学ぶ必要があるいっぽう、農業や地質など樹木に関する知識も当然必要とされ、何よりもそれらを美しく配置するというデザインの勉強も必須。建築だけの人材と違い、守備範囲が幅広いのが特徴です。

         

        また、最近では国内にとどまらず、都市緑化の人材需要が高まる東南アジア諸国や中国など海外でも、このようなスキルをもつシンガポール人は引く手あまただそう。

         

        兵役をすでに終えた長男はやはり大学で作曲を学び、次男がランドスケープ・デザインを学ぶことになった義妹は、結婚前にインテリアデザイナーとして働いていた経験をもっています。「まさかあの腕白な息子たちが自分と同じアートやデザインの道に進むとは思っていなかった」とまんざらでもない様子。

         

        2050年には世界の都市人口が全人口の約7割になると言われています。

         

        電力グリッドやデジタルネットワーク、上下水道、交通網などのインフラはもちろん、これから快適で魅力ある都市を作るためには緑化インフラとその整備及び管理が不可欠であり、その人材を育成していく必要があります。

         

        近い将来、建築物の構造計算や地盤の改良計画はAIがやってくれるようになるかもしれませんが、人間が見たり過ごしたりして美しいと感じたり、快適に過ごせる建物や公園は、やはり同じ人間が考えて設計していかなければならないでしょう。

         

        豊かな緑の自然が広がる田舎と違い、緑化による都市景観や快適性の維持にはたいへんな手間もコストもかかります。

         

        しかし人が精神的にリラックスできる美しい緑の空間があってこそ、コンクリートとガラスでできた殺伐とした大都市ではなく、人と人とがつながり合って生きる豊かなコミュニティを形成することができると思うのです。

         

        甥っ子や彼の級友たちがこれからどんどん活躍して、「住んでみたい」と思わせてくれる緑あふれる都市が世界中に溢れるといいなと願っています。

        JUGEMテーマ:ビジネス

        | Yuriko Goto | グローバルビジネスと人材 | 09:56 | - | - |
        美しく快適な都市に不可欠なランドスケープ・デザイン人材
        0

          <国内公園の設計・管理をするNational Parks発行の出版物。こんな小さい国で1000種類以上の植生には圧倒されます。>

           

          19歳になる甥っ子が今年高専の建築科を卒業し、2年間の兵役期間後にシンガポール国立大学でランドスケープ・デザインを勉強することになりました。

           

          「ランドスケープ・デザイン」といっても、シンガポールの場合は単純に造園というより、ビルそのものの緑化であったり(義妹の話によると「vertical garden」というビル建設時に壁面などを緑化するケースがたいへん増えていて人材の需要も増加中だそう)、商業ビルや集合住宅の設計段階からの敷地緑化プラン策定、そしてNational Parksという国の機関が主導する公園の設計・管理など、さまざまな仕事があるそうです。

           

          そのため、ランドスケープ・デザインを専攻する学生は、造園に限らず建築の設計技術も学ぶ必要があるいっぽう、農業や地質など樹木に関する知識も当然必要とされ、何よりもそれらを美しく配置するというデザインの勉強も必須。建築だけの人材と違い、守備範囲が幅広いのが特徴です。

           

          また、最近では国内にとどまらず、都市緑化の人材需要が高まる東南アジア諸国や中国など海外でも、このようなスキルをもつシンガポール人は引く手あまただそう。

           

          兵役をすでに終えた長男はやはり大学で作曲を学び、次男がランドスケープ・デザインを学ぶことになった義妹は、結婚前にインテリアデザイナーとして働いていた経験をもっています。「まさかあの腕白な息子たちが自分と同じアートやデザインの道に進むとは思っていなかった」とまんざらでもない様子。

           

          2050年には世界の都市人口が全人口の約7割になると言われています。

           

          電力グリッドやデジタルネットワーク、上下水道、交通網などのインフラはもちろん、これから快適で魅力ある都市を作るためには緑化インフラとその整備及び管理が不可欠であり、その人材を育成していく必要があります。

           

          近い将来、建築物の構造計算や地盤の改良計画はAIがやってくれるようになるかもしれませんが、人間が見たり過ごしたりして美しいと感じたり、快適に過ごせる建物や公園は、やはり同じ人間が考えて設計していかなければならないでしょう。

           

          豊かな緑の自然が広がる田舎と違い、緑化による都市景観や快適性の維持にはたいへんな手間もコストもかかります。

           

          しかし人が精神的にリラックスできる美しい緑の空間があってこそ、コンクリートとガラスでできた殺伐とした大都市ではなく、人と人とがつながり合って生きる豊かなコミュニティを形成することができると思うのです。

           

          甥っ子や彼の級友たちがこれからどんどん活躍して、「住んでみたい」と思わせてくれる緑あふれる都市が世界中に溢れるといいなと願っています。

          JUGEMテーマ:ビジネス

          | Yuriko Goto | グローバルビジネスと人材 | 09:27 | - | - |
          増え続けるシンガポールのインド人
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            JUGEMテーマ:シンガポール

             

            イースト・コースト・パークはチャンギ空港付近から島の南真ん中に位置する植物園ガーデンズ・バイ・ザ・ベイまで続くシンガポール最大の公園です。

             

            週末ともなればローラースケートやサイクリング、ジョギングやウォーキングをする人であふれ、公園内に点在するバーベキューピットやキャンプサイトも人気。シーフードレストランやカジュアルレストラン、フードコートもあちこちにあり家族連れや若い人たちで賑わっています。

             

            この公園に惹かれて我が家のマンションも徒歩圏内の場所に決めたのですが、ここ数年はあまりにも人が増えてしまったため人混みを避けるようになり、週末の散歩も住宅地から近い公園中心部ではなく、車で空港の近くの周囲に何もないところに行ってから駐車しては歩いていました。

             

            たまたま先週末は最寄りのショッピングセンターで買い物のついでだったことと土砂降りの雨の後で人が少なそうだったので、久しぶりに住宅密集地に近い場所を散歩してみました。

             

            そこで驚いたのが、インド人の多さ。

             

            シンガポール人の人口比率は、華人74.3%、マレー人13.4%、インド人9.1% とインド人はもともと少ない部類。にもかかわらず、公園内で行き交う人の半分近くがインド系なのです。逆に以前は非常に多かった白人の姿がかなり少なくなっています。

             

            どうしてしまったのだろうとよく観察してみると、言葉や服装などから判断するにどうもシンガポール生まれのインド系シンガポール人ではなく、インドからやってきた人々のよう。といっても、旅行者ではなく住んでいる様子。

             

            一緒に散歩していた夫に聞いてみるとやはり同意見。IT関連企業を筆頭としてシンガポールで働くインド人の数がここ数年非常に増えているといいます。

             

            そういえば、先月娘の学校帰りに出会った同級生の一家もインド人でしたし、知り合いの銀行員のシンガポール人女性も最近インド人と婚約したと言っていました。有名どころではシンガポール最大の銀行DBS銀行のCEOもインド人(現在はシンガポールに帰化)。

             

            一時はお金持ちの中国人がマンションをはじめあらゆるものを買い漁っている印象が強かったシンガポールですが、現在は静かにインド化が進行している様子です。

             

            なぜそうなったのか? 今日の午後お茶をした友人に聞いてみたところ、2005年に締結されたシンガポール/インド間CECA(Comprehensive Economic Cooperation Agreement 包括的経済協力協定)に話が遡るとのこと。

             

            この協定、メインの内容は関税の撤廃や二重課税防止、投資保護協定などですが、見逃せない点として二国間の人的交流の促進があります。

             

            The cross-border movement of natural persons plays a central role in initiating and supporting trade and investments in goods and services. This chapter enhances trade and investment flows by facilitating easier temporary entry for 4 categories of business persons from India and Singapore:

            国境をまたぐ人の活動は物およびサービスにおける貿易と投資を開始および促進するための中心的役割を果たす。この条項ではインドとシンガポールの4領域におけるビジネスパーソンの一時入国手続きを簡便にすることによって貿易及び投資の流れを拡張するものである。

             

            と、短期滞在や特定業種などのビザ発行を容易にする旨が記されていますが、特に気になるのはインド-シンガポール間の企業内転勤を認めるという項目。シンガポール企業がインドに法人を作ってインド人を雇用すると、容易にシンガポールに転勤させることができるわけです。

             

            常にほぼ完全雇用の状態が続いており人手不足に悩むシンガポール企業にとっては願ってもない労働力供給源になりますし、インド政府にとっても中間層が技術先進国シンガポールで働くことにより、これらのホワイトカラー労働者が国に技術を持ち帰ることを期待できます。

             

            問題は人気職種を巡ってシンガポール人と外国人間の競争が激化し、シンガポール人の就職機会が奪われること。

             

            ここ数年、シンガポール国民からこの点についての不満が高まり、一定の割合でシンガポール人を雇用する義務を雇用者に課すクォーター制の拡充や、外国人への雇用ビザ引き締めなどが行われてきました。そのため日本人や欧米人など外国人がビザを申請しても時間がかかったり取りにくくなっている、という話を聞くようになりましたが、インド人に関してはCECAの手前なかなか表立って規制できていないのが現実のようです。

             

            前述の友人によると「もしインド人ホワイトカラーのビザをシンガポールが規制したら、今度はインド政府が建設労働者をシンガポールに出さなくなるでしょう。そうなるとシンガポールの不動産業が立ち行かなくなる。だからインド人は増える一方なのよ」だそう。

             

            2024年には中国を抜いて世界最大の人口をもつ国になると言われているインドですが、東南アジアの小国シンガポールの公園でも、そのプレゼンスが無視できないものとなりつつあります。

            | Yuriko Goto | グローバルビジネスと人材 | 00:28 | - | - |
            日本の国家公務員給与は本当に高すぎるのか?
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              JUGEMテーマ:経済全般

              ■「日本の公務員給与が高すぎる」という偏見に対する私の見解

              森友学園問題にからみ国税庁長官を退職した佐川氏の退職金が4,999万円と公開され(一般個人の退職金額を公開するのもいかがなものかと思いますが)、高すぎると一部で批判の声が上がっています。

               

              また、国家公務員全体の給与が高すぎるという声も根強いのですが、トップ官庁の財務省で2,3位のポジションにある国税庁長官の年収が1,700万円程度が本当に高すぎるのか、森友学園問題や佐川氏の証言内容はまったく別として、私は大いに疑問に思います。その理由を挙げてみます。

               

              1.公務員賃金が比較的高いのは男女差が基本的にないから

              公務員といえば私が学生の頃から、一生働き続けたいと考える女性たちの憧れの職業でした。なぜなら、民間企業と違い基本的に男女差がない男女平等の賃金体系であり、産休制度なども民間企業と比べ格段に女性が優遇されていたからです。

               

              このまとめ記事は、日本と海外の平均給与と公務員給与を比べたもので、「公務員 年収 高すぎる」というキーワードでググるとトップに出てきます。各国を比較した上で日本の国家公務員給与は高い、ということになっているのですが、元になっている数字がよくわからず(出典サイトをあたってみても「地球の歩き方」などよくわからないサイトが出てきて数字は確認できません)、OECDの統計数字とはかけ離れています。

               

              <まとめ記事の公務員平均年収と国民平均年収> アメリカ合衆国 357万円(国民平均給与額325万円)イギリス 275万円(国民平均給与額240万円)フランス 198万円(国民平均年収180万円)ドイツ連邦共和国 194万円(国民平均年収205万円)

               

              <OECDデータの国民平均年間給与額> アメリカ合衆国 60,200ドル(644万円) イギリス 42,800ドル(458万円) フランス 43,000ドル(460万円) ドイツ 46,400ドル(496万円) 日本 39,100ドル(418万円)

               

              日本の場合は平均給与が他国と比べて低くなっていますが、これは女性の平均賃金が男性に比べて低く、また女性被雇用者の多くを占める非正規雇用のパートタイマーが平均賃金を押し下げているため。

               

              この記事によれば、2014年の男性正規被雇用者の平均賃金は532万円。基本的に公務員には男女差や労働時間が短い非正規雇用(臨時職員を除く)はないわけですから、元となる数字はこれを使わなければおかしいと思います。

               

              その上で、この総務省の統計をまとめたこの記事の一般職員の平均給与を見ると557万円で、民間とほぼ変わりません。これは当たり前の結果で、国家公務員の給与は民間と均衡するように人事院が勧告を行うからで、あまりにも高すぎれば引き下げられ、低すぎれば引き上げられるので差がつくわけがないのです。

               

              2.東証一部上場企業の役員と比べるとキャリア官僚の報酬は半分以下

              こちらの記事は、デロイトトーマツが調べた東証一部上場企業の役員報酬額の中央値を紹介しています(2017年)。

               

              それによると、会長が5743万円、社長が5435万円、副社長が4399万円、専務が3780万円、常務が3009万円。

               

              これに対し、政府発表のこちらの資料では、キャリア国家公務員の最高到達点である事務次官の年収が約2,270万円、次の局長クラスで約1,730万円。会長と事務次官、社長と局長を対比させると、民間に比べると事務次官で半分以下、局長クラスでは1/3以下で常務クラスにも遠く及びません。

               

              各省庁のトップも東証一部上場企業トップも、多くは東大や京大という最高学府で机を並べた同期でしょう。その中でも優秀な人ほど国家の将来を担うキャリア官僚としての道を目指したはずです。

               

              ところが、30年もするうちに一般企業の道を選んだかつての同窓生たちとこれだけ給与面で差がついてしまうのです。これでも果たしてキャリア国家公務員の給料は高いといえるのでしょうか?

               

              また、退職金(一般企業の場合は役員退職慰労金)については最近も廃止している企業も多いですが、役員になる前に一般社員としての退職金はきちんと支払われますし、残している企業(比較的役員報酬が低い企業が多い)では、

               

              役員報酬月額×在任年数×功績倍率+功労加算金=役員退職慰労金

               

              この公式を使うと(通常の功績倍率は会長・社長が3.0倍、専務2.5倍)、例えば月収300万円(年収3,600万円)で6年間社長を務めた場合、役員退職慰労金が5,400万円と局長クラスの退職金とほぼ同額となり、さらに会長職になればまた慰労金が支払われることになります(前述したように役員になる前の退職金は別勘定です)。

               

              佐川氏の約5,000万円の退職金が高いと思うか、と聞かれたら「一般サラリーマンの平均に比べたら若干高い。しかし、彼らと同程度の能力や職歴をもつ一般企業の役員と比べたら非常に低い」と私でしたら答えます。

               

              ■公務員の汚職を防ぐには給与を高くするのが最善策

              アジアの中でも非常に公務員の汚職が少ない国(地域)として認識されているのが香港とシンガポール(アジアでは1位シンガポール、2位日本、3位香港)。その理由は第三者機関による徹底した汚職の摘発によるところが大きいですが、もう一つは国家公務員の給与、特に汚職が可能な立場にあるキャリア官僚などの給与が高いのも挙げられると思います。

               

              これは旧イギリス植民地全般にいえることですが、もともと植民地経営にあたる役人には母国から派遣されたイギリス人が多かったため、公務員は給与体系もその他福利厚生も非常に恵まれていることが特徴でした。

               

              私が香港に住んでいた中国返還の1997年以前には香港政庁にも多くのイギリス人が勤務していて(ほとんどは返還前にイギリスに帰国しましたが)、民間とはケタが違う高給をはじめ、ヴィクトリア湾を見下ろす高給アパートメントの官舎、子どものイギリス留学費用などさまざまな特権を付与されており、香港人の高級官僚も同じ特権を享受していました。

               

              シンガポールはそこまで極端ではないですが、この投稿サイトでもわかるように民間に比べて給与が悪いことは決してなく、中途で民間から公務員になって高給をはんでいる人もいます。また、キャリア官僚では数千万円から億という民間に負けずとも劣らない金額の人も珍しくありません。そのくらいの給料を払わないと優秀な人材を惹きつけられないのです。

               

              逆に、アジアの多くの国で公務員の汚職が非常に多いのは、公務員の給料が民間に低すぎるため汚職をしないと(例えば交通違反の切符を切る代わりに賄賂を渡すとか、通関書類の間に札を挟んでおくとか)普通の生活が成り立たないせいだと言われます。彼らにとって、賄賂のお金はアメリカのウェイトレスのチップのようなものなのです。

               

              日本では通常の汚職が少ない代わりに非常に長い期間にわたって、公務員の天下りが行われてきました。この天下りによって、役所と強いパイプをもつキャリア官僚たちの民間との賃金格差をある程度埋めることができていたわけです。

               

              この制度は正式に廃止されにもかかわらず、実質的には継続されていましたが(前川元文部省事務次官はこの責任をとって辞任)、年金支給年齢が繰り延べられる現在、今後はキャリア官僚たちの天下り以外の再就職先をどう確保していくかが議論されなくてはならない状況になっていると思います。

               

              汚職がなくクリーンで、しかも有能な人を公務員として私たちが雇用したければ、当然、そういう人々を惹きつけられるだけの給与や退職金、福利厚生を含めたパッケージが必要なわけで、政治の問題でも公務員が個人攻撃され、プライバシーにかかわる退職金額まで公開され、退職後も再就職先がない、というような職場では誰もそこで働きたいと思いたくなくなります。

               

              今後日本の困難な時代を乗り切るために粉骨砕身して国家のために働く公務員(Civil Servant=公民の召使)が安心してその職務に専念できるように、「公務員の給与が高すぎる」などという根拠レスなバッシングはぜひやめてほしいと思います。

              | Yuriko Goto | グローバルビジネスと人材 | 18:40 | - | - |
              アジア域内の移民が岐路に。
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                JUGEMテーマ:経済全般

                昨日の日経新聞電子版に「世界の若者、移住先はアジア 人口移動に異変 細る欧米、高齢化に拍車」という記事が掲載されました。

                 

                記事によると、世界全体の移住者(定住者やその家族、出稼ぎ労働者、留学生など)は2017年に2億5800万人で、2000年と比べて5割の増加。現在の世界人口は76億人と推計されていますので、約3.4%が自分の生まれた国でない国で暮らしていることになります。

                 

                また、移住先としては移民大国であるアメリカの5000万人が最も多いものの流入ペースは鈍化しており、全体の約3割である8000万人がサウジアラビアやアラブ首長国連邦、インドなど中東を含むアジア地域に住み、地域としては最大の受け入れ地域。90年代はたった100万人超だったのが、00年代は1670万人、10年代は1370万人と、現在では新規移住者の36%がアジアに向かうといいます。

                 

                アジア地域でどこが大口受け入れ国となっているかというと、

                 

                受け入れ国別に2000年以降の新規移住者をみると、東アジアではタイの230万人を筆頭にマレーシアや韓国が続く。タイと韓国は20年前後に15〜64歳の生産年齢人口が減少に転じる見通しで、海外からの労働力で人手不足を補っている構図が見てとれる。日本に住む外国人も17年末時点で256万人と、10年前より50万人近く増えた。サービスや建設といった分野を中心に企業などの受け入れはさらに増える見込みだ。

                 

                とされていますが、こちらの資料によると、マレーシアの外国人労働者は2016年10月で195万人。国民の約4割が外国人のシンガポールでも218万人ですので、外国人留学生や研修生も含めた外国人移住者の数でいうと、日本はアジアでトップクラスの移住者受け入れ国といえるでしょう(在日韓国・朝鮮人の方が大半を占める特別永住者数は約33万人ですので、この方々を除くと日本とタイ、シンガポールの外国人数はほぼ同じです)。

                 

                いっぽう、送り出し元の国のトップはインドで1660万人。うち2割がアラブ首長国連邦で暮らし、アラブ首長国連邦の人口の3割がインド人労働者だそうです。

                 

                次点は中国の1000万人。

                 

                中国人の移住先は米国が240万人と最も多く、香港(230万人)、日本(74万人)が続く。日本に住む中国人のうち3人に1人は永住者だ。

                 

                と、日本の人気が非常に高いことがわかります。

                 

                以前の記事でも、日本がすでに外国人労働者大国となっている現状を指摘しましたが、日経新聞の記事を読む限り、今後ますますアジア圏内での人口移動が加速しそうな気配。

                 

                シンガポールはここ数年、外国人労働者数を抑制し自国民の数を増加させる政策をとってきました。それにより昨年はついに永住者を除く外国人数が減少に転じ、国として大きな節目を迎えています。

                 

                また、タイでも不法就労や人身売買、労働搾取など外国人労働者に関わる問題が深刻化したため、昨年には「外国人就労管理法」が公布されて雇用者と就労外国人の罰則が強化されました。

                 

                シンガポールもタイも少子高齢化で労働力がひっ迫している環境は日本と同じ。

                 

                その中で、どのように外国人労働者を受け入れ、また規制して自国民の優位性を保ちつつ共存していくか、知恵を絞って新しいシステムを作る時期が到来しています。

                | Yuriko Goto | グローバルビジネスと人材 | 21:35 | - | - |
                世界中の人々を貧乏にするかもしれないギグ・エコノミー
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                  JUGEMテーマ:経営のヒントとなるニュースを読み解く

                   

                  昨日のForbs Japanの記事「中間層は10年以内に消滅? 未来の社会は「需要」が主導か」は、今後の働き方と経済の関わり方を考える上で非常に示唆に富む内容でした。

                   

                  記事を要約すると、

                   

                  ・80年代から経済は供給ではなく需要に左右されるようになった。

                  ・労働人口の高齢化と自動化によるコスト削減が経済成長を停滞させる。

                  ・自動化により、短期的には利益の大半は高所得者層が獲得し、コストは低所得者層が引き受ける。

                  ・それも自動化されていくが、中低所得者層の収入が低くなり需要が抑えられ、経済が停滞する。

                  ・おそらく10年以内に雇用喪失は生産性向上を圧倒する問題になる。

                  ・ベビーブーマー世代の支出の伸びが2020年代にはマイナスに転じ、自動化により失職する労働者が最大25%に。

                  ・投資家や経営者は「10年後の顧客は誰なのか」を考えるべき。

                   

                  恐らくこの予言はその通りになると思います。

                   

                  その筆頭が、今後急速に市場が広がると考えられる労働市場のギグ・エコノミー(シンガポール政府も将来的な影響を見越して今年、この問題に関するワーキンググループを立ち上げました)。会社に所属しないで仕事単位で請け負い出来高払いのフリーランスの働き方です。

                   

                  在宅勤務、働く時間は自分の裁量で決められ、世界中どこにいてもできる仕事、ということで今後ますます広がりそうな働き方。日本では「ランサーズ」が最大規模だそうですが、wikiによると本場アメリカでは「Upwork」が登録フリーランサー1,200万人、同じく登録クライアント500万社、年間求人件数300万件と、一部の特殊市場と片づけられない規模になっています。

                   

                  しかし実際にUpworkの中身を見ていくと、働くフリーランサーにとってはかなり厳しい内容になっています。

                   

                  例えば、あるソフトウェアエンジニアの方。ドイツ人で時間給US$50(約5,300円)。これまでに1,000万円以上を稼いでいるというと聞こえはいいですが、実は2013年からの累計金額です。

                   

                  25年の経験をもつと書いてあり、履歴書の言語やプログラミングスキルのテスト欄をみてもすべて上位10〜20%に入っていますので相当実力も実績もある方だと思いますが、そんな方でもこのサイトを通じての年収は200万円程度にしかなりません(もちろん別の仕事もされているでしょうが、この相場感覚ですと年収一千万円程度にはとても届かないと思われます)。

                   

                  もちろん、保険をはじめ社会保障はすべて自分もち。定期収入がないため、家のローンを組むのも大変になるでしょう。また、今後AIの進化でさらにソフトウェア開発の仕事が自動化されていくことを考えるとスキルアップの勉強も並行して自腹で行わなければならないでしょうし、必要な機器のアップデートなどのコストもかかります。

                   

                  高度なスキルが必要とされないアシスタント職はさらにシビアです。時給US$25のアメリカ人やカナダ人のフリーランサーに、希望時給半分以下のフィリピン人やメキシコ人が対抗しています。

                   

                  このようにこれまでは製造業などブルーカラー労働者コストの国際競争だけだったものが、ホワイトカラーの頭脳労働者にまで国際化が広がってきており、それがさらに会社単位でなく個人単位での価格競争(+AIとの競争)になっているところが、求職者からすると非常に恐ろしい点でしょう。

                   

                  10年ほど前、ある中堅企業が人事部の仕事をある大連の会社に外注し、社員が給与明細について疑問があって電話をかけるとその会社につながり、中国語なまりの日本語で答えてくれる、という話を聞いて驚いたことがありました。

                   

                  しかし、ギグ・エコノミーがさらに進化していけば、現場も管理職も、自分が働く会社もクライアント企業もみなフリーランスで、そこそこの売上の会社でも正規社員は社長1人だけというような時代が来るのかもしれません。

                   

                  そのような社会が到来した暁には、会社どころか徹底した個人間の競争が起こり、現在よりもっと厳しい(派遣社員でもまだ派遣会社がある程度は守ってくれます)生存競争にさらされることになるのではないでしょうか?

                   

                  いっぽう、そのような時代に突入したとき、企業はコストは抑えることは可能でも、反対にこのような不安定な消費者をターゲットにしなくてはならず、誰に何を売るのかがクローズアップされてきます。 例えば、保険料をフリーランサーが支払えるのか、銀行は住宅ローンをどのように販売したらいいのか、などの問題が早晩起こってくるでしょう。

                   

                  企業にとってもギグエ・エコノミーの今後とマーケティングについて真剣に考えるべき段階に入っていると思います。

                  | Yuriko Goto | グローバルビジネスと人材 | 13:42 | - | - |
                  100年ライフでみつけるべき一生「努力できる」仕事
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                    JUGEMテーマ:幸せなお金と時間の使い方

                     

                    ■「努力できるのも才能のうち」の言葉の意味

                    長く経営者の立場からいろいろな方々を見てきましたが、その中で最も強く感じたのは「努力できるのも才能のうち」という言葉です。

                     

                    成功する人、結果を出す人が努力を怠らないのは言うまでもありませんが、ではなぜ彼らが努力できるのかというと、努力をしたら結果を出せるのを理解している、もしくは信じているという理由が大きいと思います。また、得意なこと、好きなことで努力するのは、例え肉体的にきつくても、精神的にはむしろ快感や高揚感を感じている時間のほうが長く、(特に年齢が若いと)苦痛を感じにくいのではないでしょうか。

                     

                    そして、才能がある人ほど努力を惜しまず、成果が出て、さらに面白くなって努力するという好循環が生まれるのです。

                     

                    いっぽう、努力できない人は、ほとんどの場合、もともと怠け者だったり、楽をしようと考えて努力をしないわけではありません。

                     

                    本人が何かの作業や仕事に熟達したいと思って努力をしたとします。しかし、もともとのその作業や仕事が得意でないため、なかなか上手にならない。周囲はどんどん上達していくのに、自分だけ取り残されていく。当然、気持ちが入らなくなっていき、漫然と続けるだけになってさらに効率が落ち、周囲からは「不真面目だ」と責められ、自分でもどうしていいかわからず、最後には嫌になってやめてしまう。

                     

                    20年近くいろいろな人を見てきて、本当に世の中にはこのような「努力できない人」が多いことに気づきました。

                     

                    本人たちが真剣なのは間違いありませんが、その仕事に要求される能力がそもそも低すぎるのが問題なのです(ごく稀に、そういう人の中に長く続けることによって必要な能力を獲得する人もいますが、数は非常に少ないです。昔は恐らくこのような人が圧倒的に多かったのではないでしょうか)。

                     

                    ■人は適性のある仕事でしか成功できない。

                    これは自分自身に置き換えても同じです。

                     

                    例えば私はスポーツ全般、特に球技が非常に苦手で嫌いですので、もしある会社に入社して、仕事に必要だから野球のノックを毎日何時間もやれ、と命令されたら即座に辞めます。逆に、一日中席に座ってじっと動かずに本を読んでいろ、と言われたら喜んで何十年でもその仕事を続けるでしょう。

                     

                    人間、得意でないこと、嫌いなことはできないようにできているのです。それを無理矢理続けさせられたら、ストレスのあまり体や心を病んでしまうと思います。

                     

                    つまり、努力できる、成果が出せる人というのは、もともとその仕事に適性がある人(=その仕事が好きになれる人)であり、仕事で成功できるかどうかは、ひとえに自分に適性のある仕事に就けるかどうかにかかっていると私は考えます。

                     

                    ■「好きこそものの上手なれ」の「好き」を見つけることが最重要課題に

                    しかし、従来のように就職ではなく就社という形態を取り、会社も専門職ではなく会社が必要とする仕事に社員を就かせるゼネラリストとして社員を使う限り、個人が適職に就ける可能性は非常に低くなります。

                     

                    また、社内での人間関係や組織の調整に関わる時間が長くなればなるほど、仕事そのものに割ける時間や労力が減ぜられ(組織マネージメントの方により適性がある人は別ですが)、適性を磨ける時間も減るか、過重労働になってしまいます。

                     

                    リンダ・グラットン氏著『ライフ・シフト』の中で、これからの働き方、生き方のシンボルとして登場するジェーンは「食」に興味と適性があり、大学卒業後、アルバイトやフリーランサーとしてこの仕事にかかわったり、自分で起業したり、組織に属したりしますが、首尾一貫して仕事の柱を「食」から変えません。その結果、結婚や子育てなど人生のステージに併せて就業形態は変化しても、ずっとその道のプロフェッショナルとして、80歳過ぎまで働き続けることができるのです。

                     

                    「好きこそものの上手なれ」とはよく言ったもので、得意なことは好きになり、好きであればつらい努力も厭わず、その結果、その道を究めることも難しくなくなります。これからの100年ライフで一生働き続けるためには、いかに自分の「好き」をみつけるかが、非常に重要な就職のポイントとなってくるのだと思います。

                     

                    とはいえ、「好き」をみつけるのはそれほど簡単なことではありません。私も大学卒業時には、自分に適性がある仕事は何なのかまったくわかりませんでした。ましてや、デジタル化により今後、世の中の仕事内容が急速かつ大幅に変わっていく中、これまで以上に難しくなると予想されます。

                     

                    そのような状況の中では、ただ子供に「自分で好きなことをみつけなさい」と突き放すだけでなく、親や教師があらゆる方向から子どもの「好き」をみつける手助けやアドバイスをする必要があるのではないでしょうか。

                     

                    子どもの「好き」探しを少しでもバックアップできるよう、親としても真剣に勉強し、子どもの成長を見守りたいと思っています。

                    | Yuriko Goto | グローバルビジネスと人材 | 16:21 | - | - |
                    台湾の芸術レベルが高くなった理由
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                      JUGEMテーマ:国際社会

                       

                      昨晩はシンガポールの国立コンサートホールEsplanadeで新春芸術祭の一環として開催された、台湾のパーカッション・グループ「朱宋慶打撃楽団」のコンサートに行ってきました。

                       

                      普段はクラシック・コンサートにしか行かないのですが、たまには8歳の娘にも楽しめるPopコンサートにも行ってみようとチケットを購入したのですが、予想に反してなかなか本格的な現代音楽のコンサートでした。

                       

                      太鼓だけでなく、マリンバや鉄琴、琵琶まで登場してメロディーラインを奏でた他、マスクをつけて扇子をバチ代わりに使うパフォーマンス性の高い演奏や、日本人作曲家櫻井弘二さんの電子音楽を使った楽曲などバラエティに富んだ演奏で、2時間近い時間があっという間に過ぎ、最後のアンコールは、テレサ・テンの名曲をサンバで演奏して会場を巻き込み大盛り上がり。

                       

                      いわゆる伝統音楽や、クラシック、軽音楽の垣根を越えて自由に音とリズムを追求し、しかし安易なパフォーマンス重視に陥ることない非常に高い水準の芸術レベルに驚かされました。

                       

                      これまで、日本やアメリカなどの太鼓やパーカッショングループの舞台をいくつか観たことがありますが、芸術レベルという意味では今回の朱楽団の演奏が頭一つ抜きん出ているといっていいと思います。

                       

                      ■アート分野で世界レベルに躍り出る台湾

                      実は、台湾アーティストの芸術レベルの高さに驚かされたのは、これが初めてではありません。

                       

                      20年ほど前、台北に所用があって行った折、たまたま夜時間があったので国立劇場で京劇を観ました。

                       

                      私は中国の伝統芸能に詳しいわけではありませんし、京劇も初めてでした(香港に住んでいたので広東語のオウ劇はときどきTVで観ていました)が、私が観た演目は大衆劇レベルを超越し、シェイクスピアを現代風に翻案した舞台を観るような感覚で、舞台や衣装、音楽の豪華絢爛さのみならず、古典ストーリーの解釈そのものが素晴らしいと感じました。

                       

                      台湾映画もまた、エンタメ性が高い香港映画やインド映画と違い、文芸作品で国際的に高い評価を受ける作品が多いことで有名です。

                       

                      その中でも傑出しているのが『ブロークバック・マウウテン』でアカデミー賞監督賞を受賞し、最近ではとてもハリウッド映画とは思えない寓話性の高い『ライフ・オブ・ファイ』で再度アカデミー賞監督賞を受賞した、アン・リー監督。

                       

                      リー監督は台湾の国立芸術大学卒業後、アメリカへ渡り、イリノイ大学とニューヨーク大学で映画制作を学んだといいます。

                       

                      私は映画の最後のタイトルロールを見るのが好きなのですが、よく見ているとハリウッド映画の製作スタッフの中に非常に台湾出身者が多いのがわかります(中国人や華人でも出身国によって名前のアルファベット表記が違うため、おおよそ見当がつきます。例えば、広東省潮州出身者に多い「蔡」という苗字は、中国ではCai、台湾ではTsai、香港ではChoi、シンガポールやマレーシアではChuaと表記されるのが普通です)。この中から第二、第三のリー監督が出てくるであろうことは想像に難くありません。

                       

                      朱楽団の代表、朱氏もクラシック音楽の聖地ウィーンに留学後、台湾に帰国してからこの楽団を立ち上げており、代表の留学経験が楽団の音楽方針やクオリティに大きな影響を与えているのは容易に想像できます。

                       

                      ■留学生たちが作ってきた国、台湾

                      正確な統計資料がないのではっきりした数字はわかりませんが、台湾では国民全体の数に比べ海外に留学する人の割合が他国に比べて多いのではないかと感じます。これは、私の大学時代にも感じたことですし(当時は中国本土からの留学生はほとんどいませんでしたが、韓国人留学生と比べても台湾人の人数が多いという感覚がありました)、また、このブログ記事のように、実際に台湾にいてもそう感じる方は多いようです。

                       

                      鴻海を筆頭に台湾が国際的成功を収めるビジネス分野での留学はもちろんのこと、音楽や映画といった芸術部門でも台湾人は積極的に海外から多くのものを学び、それを母国に持ち帰って磨き上げ、そのような人々が切磋琢磨しているうちに自然と国全体のレベルが上がってきたのではないでしょうか。

                       

                      シンガポールでも若いアーティスト育成に政府が力を入れていますが、全体のレベルからするとまだまだ日本や台湾には追い付いていないと感じます。他方、台湾のアーティストたちは政府をあてにするどころか、自分たちの力で世界のあちこちに積極的に出ていき、そこで自国にはないものをどん欲に吸収しつつ、帰国してからさらに熟成させているのだと感じます。

                       

                      日本人留学生の数が激減しているという話を近年よく耳にしますが、留学による費用負担が厳しいのはどの国の学生も同じ。それを恐れず新天地を開拓しようとする気概のある若者たちが、20年後、30年後のその国の形を作っていくのだと思います。

                      | Yuriko Goto | グローバルビジネスと人材 | 15:21 | - | - |
                      「一帯一路」に寄与するかもしれない華人ダイバーシティー
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                        JUGEMテーマ:国際社会

                         

                         

                        ■欧米人を凌ぐ華人系英国人指揮者の音楽への造詣

                        先週末、シンガポール交響楽団の「Discovery Series」というカジュアル・コンサートに行ってきました。

                         

                        演目はベルリオーズの幻想交響曲。クラシックの名曲ですが、当日はベルリオーズの生い立ちからイギリス人女優ハリエットとの恋愛のいきさつを含めた説明で始まり、演奏中もスクリーンとトークで曲や主題を説明。他にもクイズやQ&Aコーナーなど聴衆とのリアルタイムでのインタラクティブもあって、いわゆる「クラシック・コンサート」とは趣が異なり大変楽しめました。

                         

                        指揮とトークは、ジェイソン・ライ。

                         

                        シンガポール交響楽団の他、シンガポール大学でオーケストラの指揮者を兼任している、英国生まれの香港系イギリス人。以前にはBBCのクラシック番組で審査員やホストを務めていたこともあり、完璧なBBC英語でユーモアたっぷりに音楽を語ります。

                         

                        ジェイソンさんの祖先がいつイギリスに移住したのかはわかりませんが、100%アジア人の外見とは裏腹に、クラシック音楽への造詣を披瀝する姿を見ていると、先祖代々英国に住んできた英国人より英国人らしいかもしれないと思いました。

                         

                        ■東南アジアの華人の歴史と華人に共通する価値観

                        華人が人口の7割強を占めるシンガポールも、歴史を遡ればもともとは華人の国ではありません。

                         

                        長く土着の少数部族が小競り合いを繰り返してきたマレー半島にあって、シンガポールで華人が一大勢力となったのは18世紀後半と言われますが、それよりずっと早く10世紀から華人の移住が始まっていたそうです。

                         

                        15世紀には明朝とマラッカ王国の交易が盛んになり、華人の移住も増加。マレー人やインド人、ヨーロッパ人との混血も増え独特の華人文化、プラナカン文化を形成していきます。私の義父の家系もプラナカン(かつ客家)ですが、先祖がいつマレー半島にやってきたのか親戚の誰に聞いてもわからないほどマレー半島に長く住みついてきました。

                         

                        そんな彼らのアイデンティティは何かというと、やはり「中国人」。飲酒・豚肉の禁止など戒律の厳しいイスラム教徒とは一線を画し、コミュニティーを守ってきた彼らは生まれたときから中国人です。

                         

                        ただし、共産党革命以降の中国本土の人々とは、価値観や宗教、そして言葉も大きく違います。

                         

                        シンガポールは故リー・クワンユー元首相の号令一下で中国の普通語に発音も文字も統一されましたが、マレーシアでは広東語のテレビ番組も日常的に放送されていますし、タイやインドネシアに至っては、普通語はおろか、華人に中国語教育を行うことも長く禁じられてきた他、姓名も現地風の名前が強制されていますので、一見して華人とはわかりません(タイのタクシン、インラック元首相兄妹や、アホック元ジャカルタ州知事も華人です)。

                         

                        やはりプラナカンの家に育った私の義妹は、「学校でも中国語を勉強したしずっと自分は中国人だと思っていたけれど、初めて中国に行って彼らと中国語で話してみたら、自分たちとは全然違うことがわかった。私は華人だけど、やっぱり中国人じゃなくてシンガポール人だわ」としみじみ語ってくれたことがあります。

                         

                        逆に同じ東南アジアの華人でも、タイやインドネシアの華人とシンガポールの華人は中国語でなく英語で会話します。そんな彼らの姿を傍から見ていると、日本人の私と同じように英語で会話していても、やはり代々受け継がれてきた華人として共通する文化や習慣そして何よりも価値観のせいか、私には理解できないところで彼らが分かり合っているという印象をもたざるを得ないのです。

                         

                        ■バナナでも根っこの価値観は中国人

                        そしてこのところ増えているが、冒頭にご紹介したジェイソンさんのように、欧米(やオセアニア)に移住した華人の子孫たちです。

                         

                        シンガポール人は自虐的に自分たちのことを「バナナ」と呼ぶことがありますが、そのココロは「外は黄色いが中は白い」です。

                         

                        以前の記事にも書きましたが、シンガポール人の大部分は英語ネイティブ。自分が使う言葉は、ものの見方や考え方の基礎になりますから、頭の中が英米風になっても不思議ではありません。しかし、いくら英語でものを考えるようになっていても、数百年受け継がれてきた生活習慣や文化に裏付けられた生き方そのものに対する考え方はなかなか変わらないものです。

                         

                        故リー・クワンユー首相はプラナカンの家庭で育ち、英ケンブリッジ大学を首席で卒業した秀才ですが、英語とマレー語は自由に話せたものの、中国語は当初ほとんど話せなかったといいます。しかし、その彼でさえ「アジアの価値観」という言葉をさまざまな場面で使い、最後まで欧米的な価値観と対極にある、きわめて中国的な価値観をもっており、現在もそれはシンガポールの政策の中に生きています。

                         

                        例えば、シンガポールの公団住宅や年金システム。

                         

                        シンガポールには極めて安価に良質の公団住宅を国民が買えるシステムがありますが、親と同じ地域に希望して応募すると抽選の優先順位が上がったり(介護が必要になったときに便利)、土曜日の夜や日曜、祭日は公団住宅の駐車場が無料になったり(休みに子どもたちが親を訪ねるのを奨励)、3世帯同居も可能な2つのアパートメントをくっつけた住宅もあります。

                         

                        また、年金は自己口座に強制的に積み立てて政府が運用しますが、決してこれだけでは十分ではなく、子どもたちが親の老後を協力して金銭的面倒をみるのを少し助けるくらいの感覚です。最近はこの制度に加え、自分の給料から親の年金を補助する積み立て金に加入すると税額控除が受けられる仕組みもできました。

                         

                        日本ではここ数十年で「老後は子供の世話にならない」が普通になりましたが(その分家族でない国民が年金を負担することになります)、バナナな国民が大半のシンガポールでは、いまだに物質的にも精神的にも、家族が常に助け合って生きていくという極めて中国的な価値観が生きているのです。

                         

                        このような国が欧米(及びオセアニア)で生まれ育った華人たちや、香港や台湾などで生まれ欧米などに留学したり仕事の経験がある華人たちに居心地が悪かろうはずがありません。

                         

                        ジェイソンさんがいる芸術界をはじめ、ビジネス界でもさまざまな国で生まれ育った華人がシンガポールで活躍していますし、その数は近年、ますます増えていると感じます。

                         

                        ■華人ダイバーシティーが次世代のキーに

                        シリコンバレーを筆頭とするIT産業が米国経済復活のキーになり、現在も世界の最先端を走り続けているのはご存じの通りですが、その成長の原動力となったのは、世界中から集まってきた人材の多様性であると言われます。

                         

                        実際、米IT企業と仕事をすると、メールにCCされている名前を見ただけでアジア系、インド系をはじめ、世界中のあらゆる国々の人が働いていることがわかります。

                         

                        しかし、昨年にトランプ氏が米大統領となり移民政策が抜本的に改正される懸念が強まっていること、イギリスもまたEU離脱に伴い移民規制が強まりつつあること、またオーストラリアでも移民枠の縮小が始まるなど、英語圏で華人(その国の市民権をもっていない)が置かれる状況は日増しに厳しくなっています(先週伊藤比呂美さんがツィートしていましたが、以前は米グリーンカード保持者は国民と同じ列に並べたのが、現在は外国人の列に並ばされるそうです)。

                         

                        そのような状況の中で世界に散らばった華人たちがどこをめざすか?

                         

                        シンガポールはもちろん、香港、台湾、そして中国本土に、「外国人」華人として回帰していくような気がしてなりません。

                         

                        習近平書記長の「一帯一路」思惑とはまた別の形で、はるか昔、シルクロードを通って中国から世界に向けて出ていった華人たちが主役となって、再び大中華圏が復活してくる予感がしています。

                        | Yuriko Goto | グローバルビジネスと人材 | 17:52 | - | - |
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