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同族経営は「悪」なのか?
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    大塚家具の経営権を巡る騒動についていくつか記事を書きましたが、いただいたコメントの中に「同族経営はよくない」という趣旨のご意見が散見されました。日本では税制も含めて「同族経営は悪である」という意識が一般に根強いようですが、本当にそうなのでしょうか?
     
    ■日本だけではない、上場している同族企業
    日本の税法では株式の50%以上を家族などがもつと同族企業とみなされ、中小企業の大半は同族企業です。また、上場企業では創業者一族が過半数の株をもっていなくとも、創業者一族が経営の根幹にかかわっている場合は同族企業とみなされます。日本では上場企業の約3割が同族経営といわれ、トヨタ自動車、キャノン、キッコーマン、エーザイなどがこれにあたります。ソフトバンクやファーストリテイリングなど、現在も創業社長が現役で経営の実権を握る企業は別格としても、日本を代表する企業に同族経営が決して少なくないことがわかります。
     
    いっぽう、アメリカの上場企業にも、数はそれほど多くありませんが同族企業は存在しており、M&Mチョコレートのマース、自動車のフォード、小売のウォルマートなどが有名です。また、非上場ですが穀物メジャーのカーギル社も同族企業です。
     
    全世界で4,000以上のマリオットホテルチェーンを展開し、リッツ・カールトンを傘下に収めるマリオットホテルグループも2代目であるビル・マリオットが40年間にわたりCEOを務めまてきました。彼は2012年に社員の中からアーン・ソアソンを指名して引退しましたが、取締役には一族出身者が残り、経営に関わっています。
     
    ■同族企業へのリスペクトが強い欧米社会
    2010年、トヨタ自動車はリコール問題を発端に激しいバッシングの嵐にさらされ、ついに豊田章夫社長がアメリカ議会で喚問されるという事態にまで発展しました。このとき豊田社長はあえて通訳を使わず、うっすらと涙さえ浮かべながら消費者に対して真摯に語りかけ、「TOYOTAのプリンスが議会で謝罪!」とマスコミで大々的に取り上げられました。対応の遅さを指摘する声こそあったものの大半は同情的な論調で、この後、潮が引くようにバッシングが収まり、トヨタ自動車が北米で急激に売り上げを回復したのは記憶に新しいと思います。
     
    これはひとえに、豊田社長が直接謝罪したことによる効果でしょう。アメリカ人にとって、トヨタ自動車は豊田家の会社であり、ファミリー企業のトップである豊田社長が謝罪したことに大きな意味があっのだと思います。
     
    ヨーロッパでも長く続く同族企業への尊敬の念が大きいのは同じです。BMWやミシュランなど老舗企業の多くが同族企業なのはよく知られていますが、我が社が20年以上取引しているドイツの機械メーカーも同族企業です。非常に特殊な機械を作っていますが、メルセデスベンツとも協業するなど、この分野では世界的なシェアを誇る中堅企業で、創業は1861年。現在は5代目の娘婿が社長を務めており、HPでは「オーナー経営で独立した同族企業です」とまず高らかに謳ってから、創業者から現社長までの歴代の同族経営者の軌跡を紹介しています。
     
    このようにヨーロッパでは同族経営のイメージはマイナスどころか、会社が誇る歴史の一部なのです。
     
    ■同族企業が長命な理由
    2014年4月14日の日経ビジネスオンラインの記事で、ボストン・コンサルティング・グループ日本代表の御立尚資氏が「ファミリービジネスで気づいた日本の“偏見”」という記事を書かれています。
     
    この中で、御立氏は同族企業とそうでない企業を比べると、同族企業(ファミリービジネス)では、景気に左右されにくいボラティリティー(変動性)が低い経営が特徴であると述べ、その理由として、以下の点を挙げられています。
     
    (1)倹約メンタリティーの徹底
    (2)設備投資に対する厳しいチェック
    (3)低い負債依存度、そして中庸な配当政策
    (4)M&A(合併・買収)は、比較的低頻度・小ぶりなもので、中核事業に近いもの中心
    (5)収益源の多角化への執念の強さ
    (6)グローバル化への積極性
    (7)人材の長期リテンション(保持)
     
    この分析は、自分自身の会社や、繊維業界という歴史が長い業界で長く事業を行ってきた取引先の同族企業をみても、非常に当てはまると思います。
     
    質素倹約については生まれたときから厳しく教えられてきましたし、物を大切に長く使う、ということは長期的視野にたった設備投資にもつながります。また、借入については、「借金してはいけない、欲しいものがあったら貯金を貯めてから買いなさい」と繰り返し刷り込まれましたので、設備投資も手持ち資金でやり繰りできる範囲で継続しています。また、毎年利益を出していても内部留保し、配当そのものをしない会社も他業界と比べて多いと思います。
     
    多くの会社では、景気が悪いときには経営者自身の報酬を削っても利益を出しますし、そうならないために日頃から販路開拓に余念なく、子弟を積極的に留学させたり、海外で研修や就職をさせて国外でのパイプを広げようとします。
     
    また、人材の長期保持についても、多くの会社が真剣に取り組んでいます。長く事業を継続していくためには人材の育成と定着が不可欠だからです。
     
    『フォーチュン』誌3/15日号の「働きたい会社ベスト100」特集では、上記のマリオットホテルグループが取り上げられていますが、同社では10,600人の社員が20年以上同社で働き、ホテル支配人の平均勤続年数は25年だそうです。また、このランキングの85位にはM&Mチョコレートのマースがランクインしています。
     
    私の会社でも親子2代にわたって勤めてくれる社員や、親戚が以前勤めていたという社員は珍しくありません。もし社員を使い捨てにするような経営を続けていたら、それこそ働いてくれる人がいなくなってしまい、人手不足で会社を閉鎖せざるをえなくなってしまうでしょう。

    日本では、創業100年を超える会社が5万社以上あると言われますが、その大半が同族企業です。長命の理由はずばり、このような同族企業に特徴的な経営の結果ではないでしょうか。
     
    ■会社は誰のためのもの?
    「会社は誰のものか?」といえば、答えは簡単、間違いなく株主のものです。上場している、していないにかかわらず会社の所有権は株主にありますし、同族が過半数の株式をもっていれば、理論的には、その同族の思うままに会社経営ができます。
     
    しかし、「会社は誰のためのものか?」という質問に、即答できる方は少ないでしょう。
     
    会社が登記されて法人という人格をもっているならば、会社=株主ではありません。同族、非同族に限らず、株主はもちろんのこと、顧客や仕入れ先、従業員、さらに地域社会など、さまざまなステークホルダーすべてのために存在するのが会社です。その意味では、同族会社であっても社会的な存在であり、株主の勝手にはできないのです。
     
    もちろん私は、プロフェッショナルの経営者を株主が選任し、株主の意向に沿った経営を行うことを否定するものではありません。が、現在のアメリカ経済界で実際に起きているように、プロフェッショナルの経営者たちが従業員の給与とはかけ離れた高額報酬を享受し、短期的な利益を追求するあまり極端なコストカットに走ったり、自社株買いでストックオプションの価値を上げたりする行為が行き過ぎると、長期的にはその会社の利益を損ない、ひいては社会的利益の損失を招く事態も起きかねません。その意味では、あまりに株主の利益偏重となり、非同族経営の会社では「公器」としての会社の役割がないがしろにされる危険性も少なくないと思うのです。
     
    ■「社業」を継続していくということ
    私自身は、経営学部を卒業したわけでもなく、経営に不可欠な簿記も経営者になってから勉強したくらいで、まったくの素人の状態で経営者になりました。しかし経営者として必要な基礎的教育は、子供の頃からずいぶん、父や祖母から受けてきたように思います。
     
    前述の日常生活での質素倹約や、物を大切に扱うことはもとより、家業というのは、次の世代に伝えていくものであり、自分自身は駅伝のランナーに過ぎないということ、世の中は常に変わっていくものだから景気がいいといっても安心せず、堅実に経営すること(実際、私自身も含め我が社の99年の歴史の中では何度も倒産の危機に直面しています)、社員と苦楽を共にし共に社業に励むこと、などはすべて日常の生活の中で繰り返し言われ続けてきました。

    また、親族もほとんど事業をしていましたので、あの時あの人は(自社や取引先、同業者など)こうしたから失敗・成功したというケーススタディの話を盆や正月など、親戚が集まる度に聞かされてきました。このように、家庭の中で経営者教育が行われるということも、同族企業ならではの特徴であると思います。
     
    かといって、経営者の家に生まれればみな経営者に適性があるかというとまた違いますが、少なくとも経営者としての適性を身に着けて成長する人の割合が一般の平均より高いことは間違いないと思います。会社でもしかるべきポジションに人材を配置するとそこで才能を開花させる人がいるように、経営者の家庭という環境が次世代の経営者を育てる可能性も当然高くなるからです。
     
    ■社業にかける同族企業の「思い」
    そして何より、同族企業の一番の強みは、社業に対する「思い」ではないでしょうか。
     
    エルメスでは、「われわれは過去の遺産を引き継いだからここにいるのではない。未来のものを預かっているのだ。未来からの預かり物に対して、ここで我々がいい加減なことはできない」というといいます。
     
    経営者も社員も、目先の利益に振り回されず、長期的な視野にたって仕事をし、堅実に、誠意をもって社業に励むことこそが、現代の同族企業に期待されていることだと思います。
     
    確かに一世代前の時代には、公私混同する経営者も少なくありませんでしたから、同族企業=悪というイメージが定着してしまったのもいたしかたないことだったかもしれませんが、現代の多くの同族企業の経営者はそうではなく、逆に、同族経営だからこそ社会に貢献できる側面があるということを、ぜひ多くの方々に理解していただきたいと思います。
    | Yuriko Goto | 企業経営 | 18:41 | - | - |
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