ASIAN NOMAD LIFE

日本、香港、中国で生活・仕事をしてきてシンガポール在住7年目。
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AIIB参加には大局にたった国民的議論を!‐‐ 気軽にのるわけにはいかない、前途多難なアジア金融
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    JUGEMテーマ:国際社会
    ■日本のAIIB不参加にバッシングの嵐!?
    昨日から
    2日間、世界最大のイスラム人口を誇るインドネシアで、100か国以上を集めてアジア・アフリカ国会議が開催されました。

    主催国インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は開会スピーチで「世銀、
    IMFADBが世界金融の問題を解決できるという考え方はすでに時代遅れだ」と現状を批判しつつAIIB(アジアインフラ投資銀行)への期待を煽り、シンガポールのリー・シェン・ロン首相も自国メディアの取材に応えてAIIBは「新たな(世界経済の)方向性への第一歩」であるとの見方を述べました。
     
    いっぽう、日本でも丹羽宇一郎元中国大使・元伊藤忠商事会長を筆頭に、各界から日本のAIIB参加を求める声が上がっています。いずれも「中国を中心とした世界の経済の枠組みの変化に日本だけが乗り遅れるのはまずい」という論調です。
     
    日本政府は3月末締切までの参加表明はすでに見送り、あくまでも慎重な姿勢を崩していません。今月9日の記者会見では麻生財務相が「現在のようにAIIB自体の運営方針が不透明な状況では、貸したお金が返ってくるかどうかわからず、そこに国民の税金を投入するわけにはいかない」と述べています。(この発言と関連していると思われますが、現在、視聴者3億人ともいわれる香港の中国語衛星放送局フェニックスが、反麻生キャンペーンを展開しています。
     
    参加賛成の方々の意見をみると一見、日本がAIIBに参加しないと将来の私たちの生活に非常に不利益をもたらすような印象をもちますが、本当なのでしょうか?
     
    AIIBに参加するのはどこの国なのか?
    中国主導のAIIBに参加表明をした国と日本主導のADB(アジア開発銀行)参加国を図解した地図が掲載されているサイトがありますので、実際の参加表明国の内訳をよく見てみました。4月になってカナダがAIIB参加を表明したので、北米で不参加はアメリカのみとなりましたが、南米でAIIB参加はブラジルのみ。アフリカでもエジプトと南アフリカのみの参加となっています。「南米やアフリカからも参加!」と煽る記事もみかけましたが、実際にはこの地域からの参加は3か国にすぎません。
     
    逆にADBには入っておらず、AIIB参加国が多いのはロシアを含む中央アジア・EU諸国と中東。いずれも昨年来の原油価格暴落と、何年も続くヨーロッパ経済の停滞に苦しめられている国々であることがわかります。
     
    ■財政危機に瀕するイスラム金融最先端のマレーシア
    インドネシアと並びASEANのイスラム大国であるマレーシアでは、今月から消費税が導入されました。原油安による財政難のためという建前で導入時から6%の高税率。たまたま導入後すぐに首都クアラルンプールを訪れる用事があり、華人系ビジネスマン数人と話しましたが、財政難の内実は現政権内部の腐敗がひどく、適切な会計処理ができていないためであり、国有企業の中には資金繰りがうまくいかず、何度も操業停止を繰り返しているところもあると口を揃えて語っていました。この現状に対し「ルックイースト政策」でマレーシア経済を発展させてきたマハティール元首相は、現ナジブ政権に退陣要求をつきつけています。
     
    また、シンガポールとの共同プロジェクトとして鳴り物入りで進められてきたジョホールのイスカンダー地域開発も、資金難のためか最近ではマレーシア側から開発スピードの抑制がもちだされてきており、暗雲がたちこめています。
     
    このように前途多難なマレーシア経済ですが、実は近年、イスラム金融の中心地としてこの分野のリーダー役を果たしてきました。南アジア、中央アジア、中東など今回20か国近くのイスラム教国がAIIBに参加を表明していますが、牽引役であるはずのマレーシアがこの体たらくでは、どの国がイスラム金融分野でのリーダーシップをとるのかが危ぶまれます。
     
    ■クレジットカードが普及していない中国とインドネシア、金融インフラ未整備のインド
    難しいのはイスラム金融だけではありません。2013年、楽天がインドネシアでの合弁事業解消で話題になりましたが、インドネシアでのeコマース最大のネックはクレジットカードがほとんど普及していないことです。1997年の金融危機を脱して以来、着実な経済成長を続けてきたインドネシアですが、1人あたりの購買力平価GDPは1万USドルを少し超えたくらいで、バイクや自動車など一部の産業を除き、人口ボーナスによるメリットを広く企業が享受できるような経済状態にはまだ至っていません。
     
    いっぽう、AIIB宗主国の中国も一般消費者と「信用」取引ができないという点ではインドネシアとたいして変わりません。中国人観光客の爆買が世界中で話題になっていますが、彼らの爆買を支える「銀聯カード」は、実はクレジットカードではなく、デビッドカードです。クレジット(信用)に対しデビット(即時決済)ですから、先進国では当たり前に行われている信用経済が個人レベルではまったく普及していないことはもちろん、信用取引を行っている企業レベルでも銀行の不良債権が危険水域にあるのは報道されている通りです。
     
    さらに、中国に続く超大国の期待が高まるインドでも、モディ首相が金融改革を政策の目玉にもってくらい金融インフラ整備ができていない状況です。我が社でもインドから直接輸入をしていますが、電信送金が届かないと連絡がくるのは日常茶飯事。ひどいときには入金確認までに2週間以上かかることもあります。このような状況から脱するのが一朝一夕でいかないことはモディ首相でなくともわかります。
     
    ■ヨーロッパはお付き合い、日本はお付き合いですむのか?
    経済問題を抱えているのはEU諸国も同じです。今回も多数のEU加盟国がAIIB参加を表明していますが、あくまでも彼らはアジア諸国ではなく、部外者であることを忘れてはいけません。ギリシャが破産すれば火の粉は自分たちにかかってきますが、アジアの小国が経済危機に陥っても遠いヨーロッパでは対岸の火事でしかありません。ですから、AIIBにもお付き合い程度の多少のお金を払って参加しておけば、将来、漁夫の利を得ることもできるかもしれない、という損得勘定が働くのは当然のことです。
     
    しかし、日本がもし参加するのであれば、そのような軽い気持ちでは他国が許さないでしょう。GDPでは中国の後塵を拝したとはいえ、世界第3位の経済大国、腐っても鯛、アジアの中心メンバーである日本ですから、お付き合い程度の出資金でお茶を濁すのは不可能です。いっぽう、ただでさえ、アベノミクスの金融緩和で国債発行高が天文学的数字に達している中、麻生財務大臣がおっしゃる通り、他人に貸す金があれば、まず自分の借金を返すのが当然なはず。現在の日本の最悪の赤字財政下で、将来返ってくるかもわからない大金を拠出するのは、まさに自分で自分の首を絞めることに他なりません。
     
    ■日本人が総裁を務めるアジア開発銀行(ADB)は格付けトリプルA
    では日本が何も国際経済に貢献していないかといえば、それは違います。AIIBより参加国が多く、アジア地域の発展を長年にわたり支えてきたADBがあるのです。
     
    ADBは1966年設立。アメリカと日本が各15%強を出資し、67加盟国・地域が参加(AIIBは台湾参加を拒否)。「貧困のないアジア・太平洋地域」をめざし、対政府融資を柱にしています。加盟国には中国、インドなどの他、イギリス、ドイツ、フランスなども含まれ、本部はマニラです。ADBの融資残高は昨年6月末で約800億円。
     
    日本がAIIBに参加した場合、設立時の融資規模は一説には1,000億円と言われているそうですが、応分の負担をしなければならず、人も出さなければならない、また融資基準など原資が保証されることが明確にわかるルール作りもこれからというときに、とてもそんな巨額の税金を拠出する余裕は今の日本政府にはありません。しかし、トリプルAの格付けをもつADBで現在、実際に同規模の融資が行われているのです(うち約25%は中国向け)。また、もし、融資枠が不足しているというのであれば、ADBの調達資金を増やせばいいだけの話ではないでしょうか。

     
    ■日本の将来のグランドデザインとの関連で議論を
    『日経ビジネスオンライン』で、チャイナ・ウォッチャーでジャーナリストの福島香織さんが「中国主導のアジアインフラ投資銀行の行方 米国とも中国とも対等であるらめの方策を」という記事を書いていらっしゃいます。

    こういう背景があるので、私は日本がAIIBに参加しなかったのはよかったと思っている。もちろん将来の中国の大国化シナリオを考えれば、擦り寄っておいた方がよかったではないかと言う人もいるだろう。私は現役の北京駐在記者時代から中国が今の体制を維持できない確率は3割位のイメージで取材するのがよい、と思っていた。同時に今は米中G2時代のシナリオも2割くらい頭の片隅においている。だが崩壊するにしろ、大国に化けるにしろ、日本が中国の“冊封体制”に入る選択肢はないと思っている。かつて大陸には巨大な帝国が何度も出現しているが、日本は小国ながらその冊封下に入ってこなかった。歴史の中で日本を支配したのは米国だけである

     
    福島さんのご意見にまったく賛同しますが、ただ、中国だけとの関係性だけではなく、アジア全体の経済の中で日本がどのような位置を追求していくのかも含め、さらに具体的に、国民全体を巻きこんだ議論がなされるべきでしょう。
     
    もっと具体的にいえば、日本という国が、これから何で食べていくのか、他国との関係も含め、どのような国にしていくべきなのかを網羅する国家のグランドデザインと共に、AIIB参加への是非を議論すべきであると思うのです。その意味で、ただバスに乗り遅れないためだけにAIIB参加を煽るのには反対です。
     
    | 後藤百合子 | 日本経済 | 15:05 | - | - |
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