ASIAN NOMAD LIFE

日本、香港、中国で生活・仕事をしてきてシンガポール在住7年目。
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黒字企業の設備投資強要より、赤字企業の業績改善を重点政策に
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    ■成果上がらぬアベノミクスに苛立ちを隠せない安倍政権
    安倍政権の目玉政策であるアベノミクスの成果がなかなか上がりません。
     
    日銀の黒田総裁は30日の記者会見で物価上昇率2%の政策目標(もともとは134月から2年という目標だったのですでに期限切れ)を2016年前半からさらに繰り延べして「来年後半」としました。いっぽう「物価が上がらないのは賃金が上がらないから」と、政府は昨年と今年、2年連続で企業に賃上げを要請。多くの企業が賃上げに踏み切りましたが、それでも目標達成にはほど遠く、新たなターゲットとして、黒字企業に内部留保を取り崩して設備投資に回すよう圧力をかけ始めています。

     

    「今こそ、企業が設備、技術、人材に対して積極果敢に投資をしていくべき時だ」安倍首相は官民対話の初会合で経済団体のトップらを前にこう強調した。
    政府が、民間企業の経営判断に基づいて行われる投資に口出しするのは異例のことだ。ここまで踏み込む背景には「企業収益は過去最高となったが、投資の伸びは十分ではない」(安倍首相)との強い不満がある。
    (中略)
    甘利明経済再生担当相は初会合で「過去最高の原資がありながら、投資を行わないのは企業経営者として重大な経営判断の見誤りになる」といら立ちを隠さず、経済界へハッパをかけた。

     
    1028日付J-CASTニュースではこのように伝えられ、安倍政権と財界の蜜月時代も終焉を迎えるのでは、との危惧を示しています。
     
    ■「ダム式経営」で内部留保を推奨した松下幸之助と感銘を受けた稲盛和夫
    甘利大臣に先立つ9月には、麻生財務大臣が、企業は法人税減税による増益分を「配当、賃金、設備投資に回さなければおかしい。内部留保に回したら意味がない」と述べています。2月には企業の内部留保が増加していることについて「まだカネをためたいなんて、ただの守銭奴にすぎない」とまで発言しました。
     
    どうも安倍政権からみると、企業も国民もとにかくどんどんお金を使い、貯蓄(内部留保は企業の貯蓄です)も節約もしないのが美徳のようですが、日本の多くの経営者はそう考えてきませんでした。その代表ともいえるのが「経営の神様」パナソニックの創立者松下幸之助氏です。
     
    松下氏が提唱した「ダム式経営」は、資金、人材、技術のダムを作って蓄え、不測の事態が起こったときにはダムの水を少しずつ使うように蓄えを取り崩しながら経営をしていかなければならない、という経営哲学です。企業の内部留保とはまさしくこの「資金」にあたります
     
    京セラの創業者、稲盛和夫氏は創業間もなくのまだ資金繰りに苦労していたころ、松下氏の講演を聞き、どうやってダムを作るかという参加者の質問に対して「まず願うことですな。願わないとできませんな」という松下氏の回答に深い感銘を受けたといいます。
     
    パナソニック、京セラ、トヨタ自動車をはじめ、日本の「優良企業」といわれる企業の多くには、ムダや贅沢を慎み、貯蓄(内部留保)に励み、雇用を大切にする、というDNAが綿々と受け継がれているのです。
     
    実際、2008年のリーマンショック時や、それに続く民主党政権下の超円高期、2011年の大震災からの混乱期などを振り返ると、企業にとっていつまた大変な経営危機が訪れるかわかりません。そんな非常時に従業員の雇用を守り、給料を払い続けるためには内部留保というダムは必要不可欠なのです。
     
    ■内部留保を積み上げる企業は設備投資や賃上げをしていないのか?
    冒頭の甘利大臣や麻生大臣の話では、内部留保を増やしている企業はまるで設備投資を行っていないような言われようですが、実際にそうでしょうか?
     
    内部留保というのは、税金を払った後に(配当をする会社であればさらに配当をした後に)残ったお金のことを指します。つまり、内部留保を積める企業は「税金を払っている=黒字企業」だということです。では、黒字企業はどれくらいあるのでしょうか?
     
    国税庁の2013年度分の調査結果によると全国に法人数は、2585,732社。このうち、資本金1,000万円以下と1,000万円から1億円未満の中小企業が全体の99.1%を占めます。つまり、法人のほとんどが中小企業ということになります。そして、欠損法人と呼ばれる、いわゆる赤字で法人税を納めていない(外形標準課税等は除く)会社は、1762,596社で、全体の68.2%にものぼるのです。逆にいうと、内部留保ができる黒字企業は全体のたった3割くらいしかありません。
     
    利益が出ている企業は10社に3社程度。その3社に入るためには当然、ただコストを下げるだけでなく、他社と差別化するための技術開発や、設備投資も必要です。また、売り上げを増加させて利益を出すには人材への投資も必要不可欠です。何十年も前の設備を使い続け、社員を安く使い捨てにし、研究開発にもお金をかけなかったら、とても内部留保ができるだけの利益など上がらないでしょう。
     
    実際、利益を上げて納税している会社の社長さんたちは、みな新しい設備投資や人材の採用、商品の研究開発に熱心です。また、優秀な人材の確保や社員の生活の保証という点からも、ベースアップや賃上げに積極的な会社が大半なのです。
     
    しかし、バブル時代と違うのは、銀行からやみくもにお金を借りて計画性のない投資を行うのではなく、将来を見据えてしっかりと経営計画や資金計画をたて、無理な背伸びをせずに、自社の身の丈に合った投資や内部留保をしている会社が増えていることです。そんな堅実経営者が「守銭奴」などと呼ばれてしまったら、それこそ身も蓋もありません。
     
    ■本当に設備投資が必要なのは内部留保ができない赤字企業
    グローバル競争社会の中で、人件費の低い発展途上国と互角に戦っていくために先進国の企業が必ず行わなければならないのは、付加価値の高い商品を作って販売することと、社員1人あたりの労働生産性を向上させることです。この2つがなければ、決して競争に勝って利益を出すことはできません。
     
    高付加価値商品の開発には地道な研究開発が必要ですし、労働生産性アップには生産やサービスの機械化や情報化が必須です。ただ「がんばれ!」と掛け声をかける精神論だけで達成できないのはもちろん、一言でいえば「とにかくお金がかかる」のです。
     
    例えば、私が経営する会社は製造業ですが、だいたい7年ごとに生産管理システムを入れ替えています。その費用は年商の17%程度に上りますので、1年あたりにすると売上げの2.4%をソフトウェアを含む情報関連の設備に投資していることになるのです。本業の生産とは直接関係のない、情報投資だけでもこれだけの資金が必要です。
     
    しかし、企業全体の2/3を占める赤字企業にはそれができません。利益が出ていないのですから売り上げから設備投資に回せる資金余力がほとんどなく、内部留保も作れないのです。また、赤字企業には銀行も融資をしてくれません。いきおい、古い商品や設備で事業を続けることになり、国内や海外製品との競争に負けて業績は先細りになっていきます。
     
    最大の問題はここにこそあるのです。
     
    内部留保ができる黒字企業は設備投資ができ、内部留保ができない過半数の赤字企業こそ設備投資が必要なのにそれができない。この状態を改善しない限り、日本経済全体の底上げと未来へ向けた活力は期待できないのではないでしょうか?
     
    ■必要なのは赤字企業に対する支援
    このように、いま真に日本経済を再生させるために必要なのは、経営不振スパイラルに陥っている赤字企業をソフト、ハード両面から支援し、再生させるための政策ではないかと思います。
     
    ただ、補助金をばらまいたり、公共工事を増やすような一時しのぎでは意味がありません。まず、問題点を分析し、確実に売り上げをアップさせていくための方針を策定するコンサルティングと教育。また、すでに少子高齢化で縮小が始まっている国内マーケットだけでなく、今後も拡大が続くアジアを中心とした海外マーケットの開拓支援。時代のニーズに即応する商品開発と製造方法の改良へのサポートなど。考えられる支援は多々あります。
     
    政府に言われなくてもしっかりと投資も内部留保も行ってきた黒字企業より、行いたくても行えない赤字企業に対する支援こそ、いま最も求められているのではないでしょうか。
    | 後藤百合子 | 企業経営 | 14:45 | - | - |
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