ASIAN NOMAD LIFE

日本、香港、中国で生活・仕事をしてきてシンガポール在住8年目。
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老舗企業の倒産増加とネスレ社に見る「変われる力」。
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    ■増える老舗企業の倒産割合
    ネスレ日本の高岡浩三社長が、日経新聞の広告企画インタビューで、環境適応=マーケティングであるとおっしゃっています。その意味とは、顧客が現状で感じている問題を解決し、満足させる(イノベーション)ことを突き詰めていき、商品やサービスを変化させることにより、企業がマーケティング(販売促進)を行っていくというものです。
    「環境の変化に適応する」と多くの方が当たり前のように言いますが、ほとんどの場合、それはできていないのではないでしょうか。環境の変化が激しい時代であれば、自社の中も激しく変化していなければならないのですが、本当にそれができているのでしょうか。 
    と、高岡社長はかなり厳しい発言をされていますが、それを裏付けるのが、2/5東京商工リサーチが発表した倒産件数に占める老舗企業の割合の増加です。
    2015年に倒産した業歴30年以上の『老舗』企業は2,531件だった。前年(2,647件)より116件減少したが、倒産に占める構成比は32.3%と前年比1.7ポイント上昇した。これは過去20年間で最高を記録した。全産業の倒産がバブル末期の25年ぶりの低水準で推移するなか、老舗企業の倒産は構成比を高めている。

    このデータによると、業歴30年以上の老舗企業の倒産に占める割合は増加基調にあり、企業の平均寿命も2003年についで、24年強となりました。

    老舗企業は長年の業歴から一定の事業基盤を築いている。だが、老舗企業の強みである資産、経験、ブランド力が信用を高める時代は終焉を迎えているようだ。過去の成功体験から業績回復への対応は鈍く、グローバルな時代の変化に合わせたスピード感や柔軟な発想に課題を抱えている。今後、将来性を判断する事業性評価が重視される中で、どのように老舗企業の強みを前面に出せるか、経営者の力量が問われている。


    高岡社長がおっしゃっているように、過去の資産や経験にしがみついて老舗のブランドを守るのではなく、現状を変革していくマーケティングこそが、企業経営者にとって必要とされているのだと思います。

    ■老舗企業の代表格、ネスレの「ネスカフェ」
    かくいうネスレ社も創業は1866年。今年創業150年の堂々たる老舗企業です。

    スイスに本社を置き、食品・飲料としては世界最大手、日用品メーカーとしてもP&Gに次ぐ世界第二の巨大企業。もともとはベビー食品メーカーとしての創業でしたが、チョコレートに進出。戦後はインスタントコーヒーが主軸の一つに加わり、その後もアイスクリーム、スープ、ペットフードなどM&Aを繰り返しながら巨大企業に成長してきました。

    中でも、第二次世界大戦中アメリカ軍に採用されて飛躍的に広まったといわれる「ネスカフェ」は「キットカット」や「ミロ」と並び、ネスレ社の顔ともいえる商品。日本では「違いがわかる男」シリーズのCMが有名で、1970年代には池坊専永さんなど文化人や北杜夫さんなどの作家、今世紀に入ってからは演出家の蜷川実花さんなども登場し、「ネスカフェ愛飲者=インテリ」のイメージ戦略で、もともとコーヒーを飲む習慣がほとんどなかった日本市場にもしっかりと浸透しました。

    しかし、この20年ほど、日本のコーヒー業界には大きな変革の波が押し寄せます。最大の要因は1971年にシアトルで創業し、今から20年前、1995年にお洒落雑貨販売大手のサザビーリーグが展開してきたスターバックスコーヒー(2014年スターバックス本社が買収)。

    2006年の映画『プラダを着た悪魔』でも世界最先端のファッション業界人がひっきりなしに飲むコーヒーはスタバのラテやカプチーノで、決してネスカフェではありません。いわゆる「グルメコーヒー」の流れはとどまるところを知らず、この数年は近所のコンビニでも本格的な挽きたてコーヒーやラテが飲めるようになってきていました。

    スタバの戦略はまさに往年のネスカフェの戦略そのままといっても過言ではないと思います。ネスカフェがコーヒーと一緒に「文化の香り」を売ったのに対し、スタバは「お洒落なライフスタイル」を売ったのです。発売からほぼ半世紀。「ネスカフェ」は末期的な商品寿命を迎えていました。

    ■「ネスカフェパリスタ」で蘇ったネスカフェ
    ここで救世主となったのが、ラテやカプチーノをお洒落カフェまで行かずに自宅で簡単に作れるマシーン、ネスカフェパリスタ。それまで本格的なカプチーノを作ろうと思ったら最低でも数万円はする専用マシーンを買う必要があったのが、5千円前後から1万円以下というお手軽価格で、しかも慣れ親しんだ粉末のネスカフェを使って作れるようになったのです。

     

    コーヒーマシン「ネスカフェバリスタ」も発売から1年半はまったく売れなかった。そこで1万5000円で売っていたものを、(試験的に)4980円、7980円、9980円の3段階に値下げした。すると4980円と7980円で売った店では販売量が10倍にハネ上がった。

    ただ、4980円で買ったお客さんは「安すぎてちょっと心配」と言う。つまり、お客さんの値頃感が7980円にあった。この値段だと儲けはゼロだが、赤字ではない。コーヒーマシンさえ買ってもらえば、ネスカフェから”浮気”されずに済む。(コーヒーパックを扱っていない)電機メーカーはこんなに安く機械を販売できないから、競争が激化せず、値崩れもしない。


    東洋経済オンラインのインタビューで高岡社長はこう語ります。以前、『ドリルを売るなら穴を売れ』というマーケティング本が大ヒットしましたが、この本さながら、ネスカフェを売るためにネスレ日本はネスカフェパリスタを販売したのです。この結果、ネスカフェ販売は復調し、営業部員を2/3に削減しても目標達成という成果につながったといいます。

    ■商品寿命をクリアして企業寿命を伸ばす
    企業というのは変化対応業と言われますが、特に老舗企業の最大の課題は商品寿命にどう対応していくかです。

    創業数十年の会社であれば、必ずといっていいほど看板商品をもっています。そして収益の大半をその看板商品に依存していることが多いのです。この看板商品の商品寿命をどうやって伸ばし、もしくは新たな看板商品となるような商品を開発できるかが企業寿命を延ばしていく鍵となります。

    例えばあのアップル社も、もともとはコンピュータが看板商品の会社でしたが、商品寿命がきて業績が悪化。創業者のジョブズを追放したものの好転せずに彼を呼び戻します。そこからはご存じの通り、i-pod、i-phone、i-padと矢継ぎ早に看板商品を開発してきました。ジョブズ亡き後再び将来が危ぶまれているのは、これらの商品に新たなヒットの息吹を吹き込むリノベーションや、新しい看板商品となるイノベーションが起こっていないからに他なりません。

    ネスレ日本の場合はネスプレッソで旧商品のネスカフェの商品寿命を延長し、これ以外にもオフィス需要を喚起するなど新サービスの開発にも余念がありません。老舗企業だからこその遺伝子に深く刻みこまれてきた商品寿命の壁を取り払い、企業寿命を延ばしていくチャレンジ精神を日本の老舗企業もまた、獲得していくべきだと思います。

    | 後藤百合子 | 企業経営 | 08:39 | - | - |
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