ASIAN NOMAD LIFE

日本、香港、中国で生活・仕事をしてきてシンガポール在住7年目。
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    超学歴社会のシンガポールでつくづく「職業人生において学歴はさして重要でない」と思う。
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      ■小学校6年生で進路が決まるシンガポールの学歴社会
      シンガポールの受験戦争は、小学校6年生がピークです。

      6年生の後半に行われるPSLEと呼ばれる全国共通テストで行ける中学が決まり、さらには大学受験そのものができるかできないかがほぼ決まってしまう(中学を4年で終わらせるExpressコースか、5年かけて卒業するNormalコースに分離)ため、少しでも大学進学(全体の約25%)の可能性を高めようと、就学前から必死のお受験対策が始まります。

      2,3歳でアルファベットや数字がすべて書けるのは当たり前、小学校入学時にはほぼ全員が英語のみならず母国語(中国語やマレー語など)の簡単な読み書きや、一桁の足し算引き算はできるようになっています。小学校ともなればスタートから同級生全員がライバル。多くの親たちは何とか子供たちをトップ25%の中に入れようと、塾や家庭内学習を含めありとあらゆる対策を講じるのです。

      トップ25%にはいれなかった子供たちがどうなるかというと、多くは高等専門学校(ポリテクニック)か職業専門学校へ。中学卒業資格をもつOレベル、卒業後大学入学資格取得するためのジュニア・カレッジ卒業資格のAレベル、高専卒業資格のディプロマなど、それぞれのもつ資格によって就職先が違ってきます。日本のように「学歴・専攻不問」というような求人はほとんどなく、Oレベルでも応募できるのかAレベル以上でないとだめか、高専や大学を卒業しているとしても、どの科目の学位をもっているか、中途採用の場合はさらにどの分野で何年以上の経験が必要かが細かく指定されるのが普通です。大卒、高専卒、高卒、中卒とそれぞれで職業人生の入り口がはっきりと分かれるのがシンガポールの厳しい現実なのです。

      ■中卒でも大成功をおさめたあるシンガポール女性
      では、受験戦争で落ちこぼれてしまった子供たちは、一生、職業的成功への途を絶たれ、低収入に甘んじなければならないのでしょうか? 決してそうではないところがこの国の素晴らしいところで、私の身近にも好例がいます。

      彼女の名前はPさん。シンガポールの私の会社のお客様で、シンガポール政府が出資する大きな観光施設のギフトショップ部門の責任者で取締役です。私とほぼ同年輩の彼女の職業人生の出発点は、シンガポールのデューティーフリーショップの店員。「あの頃は日本人観光客といえばみんなハンティング・ワールドのバッグを肩から下げてたからすぐにわかったわよ」と笑うくらいですから、おそらく中卒ですぐに働き始めたのだと思います。組織の中では一番下のランクからのスタートです。

      しかし、彼女はその後いくつかの職場でありとあらゆることを自力で学んでいきます。デューティーフリーショップも観光施設のギフトショップも、専門店とは違い、食品から衣料、雑貨まで非常に広範な商品知識が必要とされる店舗です。のみならず、商品ディスプレーの設計方法や並べ方、消費者へのセールストーク、レジでの消費者の扱い方、さらには数千点もある商品の会計処理まで、すべてに精通していなければスタッフの指導ができません。Pさんはそれらを全て自分でこなせるだけでなく、数十人のショップや仕入れスタッフを教育し、まとめあげているのです。

      これだけの能力の人ですから、スタッフに対しても非常に厳しい態度で接します。傍で聞いていても震え上がってしまうくらいの恐ろしい剣幕で怒鳴りつけているのを数回目撃したことがありますし、彼女がかけている中国語の電話で、中国語を勉強したときに「これは非常に悪い言葉だから絶対に使っちゃいけない」と先生にくぎをさされた言葉を何度も繰り返し使って相手を叱っているのを聞いたこともありました。

      しかし、ほとんどのスタッフは彼女に心酔しており、「確かにPさんは厳しいけれど、彼女のおかげで本当にいろいろなことを勉強させてもらっている。彼女の下で働けて本当に幸せ」と口にします。私もまったく同じで、商品選択について彼女から厳しい指導を受けたこともありますが、ディスプレイの仕方や商品補充のタイミングなど、小売り業界は初めての私としては本当に多くのことを学ばせてもらいました。

      ■仕事をやり抜く強い意志と積み上げた実績があれば学歴は関係ない
      そんなPさんですが、この観光施設のウェブサイトの取締役紹介のページを見ると、他の政府関係の大卒、大学院卒のぴかぴかの超エリート取締役たちと並び、にこやかに笑っています。

      スタッフの話によると、Pさんはこの観光施設ができる前は、北京のショッピングモールで数店舗あるチェーン店を経営していたそうで、たまたま親の介護が必要になって帰国する際にこの施設のオープンと重なり、ぜひにと乞われてこの観光施設を運営する会社の取締役に就任したとのこと。Pさんにとってもタイミングはよかったかもしれませんが、会社にとってもかけがえのない人材を得られたことは間違いなく、3年ほど前に私が初めて商品を納品していた頃の仕入れスタッフはPさん以外に1人しかいなかったのが、現在は10人を超える大所帯になっており、シンガポールを訪れる観光客が減少する中、反比例するようにこの施設のショップ売り上げは右肩上がりで増加しています。

      Pさんを見るたびに、自分の娘も彼女のようにたくましく生き抜ける力をぜひ身につけてほしいと思います。シンガポールの知人の中には彼女以外にも、学歴はなくても自ら起業して成功している人々が何人もいますし、逆に、イギリスの大学院卒の学歴で、経営学や生産管理方法などあらゆる手法を駆使して自分のアパレルブランドを立ち上げたものの、業績が泣かずとばずでショップスタッフに賃金を払えず、毎日、自分で店頭に立っている人もいます。彼らみていると、つくづく、ビジネスの成功には学歴は関係ないと思わざるをえません。

      小学校卒業程度の読み書きソロバンは人生を生き抜いていく上で不可欠だと私は考えますので、自分の娘には何としてでも叩きこむつもりですが、それ以降は自分が完遂できる意志をもてる業界や職種をみつけ、自分が満足できるペースで一生涯、続けていけるような仕事をもつことこそが、職業人生における最大の成功ではないかと思います。

      超学歴社会のシンガポールでも、大学に行けなかった子供たちのために、高専や専門学校の職業教育が非常に充実しているのは、それを政府がわかっているからこそなのではないでしょうか。
      | 後藤百合子 | シンガポール社会 | 11:08 | - | - |
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