ASIAN NOMAD LIFE

日本、香港、中国で生活・仕事をしてきてシンガポール在住7年目。
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「老い」のマーケティング
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    ハフポスト日本版に「水着になった60歳のモデルは、本当のセクシーを教えてくれる」という記事が掲載されていました。

    記事によると、オンライン専門店の「ザ ドレスリン」と下着メーカー「ランド・オブ・ウーマン」がコラボ水着の広告に、60歳の現役モデル、ヤスミーナ・ロッシさんを起用。白いワンピースタイプの水着を着たヤスミーナさんをさまざまな角度から撮影した写真を紹介しています。

    記事は「セクシーとは必ずしも露出が多くする必要はなく、若くなければいけないわけでもないと、あらためて思い出させてくれる。」と結ばれていますが、残念ながら、私にはとてもそう思えませんでした。おそらく、ほとんど修正を施していないであろう写真には、60歳の年齢を正直に映すロッシさんのシワやたるみに覆われた肌がこれでもかというくらい写されていたからです。

    ■閉経は「もうセクシーでなくてもいい」という女性の体のシグナル
    女性なら誰でも知っていることですが、年齢が一番はっきりと出るのは肌です。

    シワやシミ、たるみを防ぐために、紫外線から肌を守ったり、高価な美容液を塗ったり、さらには数万円もするプラセンタ(胎盤)を飲んだり注射したり、外科的に皮膚を引っ張り上げて伸ばしたりと、世の多くの女性たちは肌の若さを保つため、涙ぐましい努力をしています。

    しかし、どんなに努力しても、肌のツヤやハリは、20代半ばをピークにどんどん衰えてきます(昔「25歳はお肌の曲がり角」という化粧品会社のキャッチコピーもありました)。卵巣機能が低下し、女性ホルモンの分泌量がどんどん減少していくからです。これにより皮膚中のコラーゲン量が減少し、角質層の水分量が少なくなり、ロッシさんのように乾燥してシワやたるみの多い肌に変化していくのです。そして、この変化が最も劇的に表れるのが更年期以降です。

    ロッシさんは60歳ということですので、更年期を経てほとんど女性ホルモンの分泌がなくなっている状態だと思いますし、私もまた、現在更年期の真っ最中ですので、身をもって女性ホルモンがどんどん少なくなっているのを感じています。それはつまり、体が「もう子供を産もうとがんばらなくてもいい」「もう女性ホルモンの力を借りて男性にアピールしなくていい」と伝えているのではないか、妊娠できる年齢のうちは動物として異性にアピールするセクシーさが求められてきたけれど、もうそれをしなくてもいい、という自分自身の肉体からのメッセージではないかと思うのです。

    そして、ロッシさんもそのことを十分わかった上で、あえて60歳のありのままの自分の肉体をカメラの前に置いたのではないでしょうか?

    ■女性にとっての50代は人生最大の転換点
    性に対する欲望は、食欲や睡眠欲と同じく、人間として当たり前かつ根源的なものです。妊娠可能年齢のうちは意識的にせよ、無意識的にせよ、男女ともに自分をよりセクシーに見せ、異性(一部の人には同性かもしれません)を惹きつけたいという欲求があるのが普通でしょう。

    逆に、妊娠できなくなる年齢になると、男性ホルモンや女性ホルモンが減少し、そのような欲望も激減します。男性には大きな個体差があり、高齢でも子供を作れる人もいますが、女性の場合はその期間が閉経まで、と非常にはっきりしており、時期も大部分が50歳前後とほとんど同じ。女性にとって50代後半以降は、肉体的にそれまでの人生とは大きく変わり、同時に価値観も大きく変わる大きな節目といってもいいと思います。

    経営者として社員や就職希望する方を多数見てきましたが、女性にとっての50代というのは、生き方を変えたり、新らしいステージにさしかかった自分の人生を見つめ直す最大の転換期といってもいいと思います。老親の介護や若夫婦に代わって孫の世話をするなどの理由で会社を辞めたり転職したりする人は多く、中には熟年離婚を決意する人もいます。理由はさまざまですが、私には彼女たちの背中を押す最大の要因は、ホルモンバランスの変化ではないかと推測しているのです。

    ■そごう柏店の閉店に見るシニア・マーケティングの難しさ
    セブン&アイ・ホールデイングスは今月、そごう柏店を9月いっぱいで閉店することを発表しました。この記事によると、そごう柏店では高齢者にターゲットを絞り、シニア向けのカルチャーセンターを設置するなど差別化を図っていましたが、近隣のショッピングセンターに家族連れでシニア顧客が流れてしまうなど思うように売り上げを伸ばすことができず、閉店の決断に至ったということです。

    これを読み、シニア消費者、特に家計を握る女性シニア消費者のマーケティングはつくづく難しいと思いました。

    若い女性消費者の心をがっちりつかみたければ、ファッションや化粧品など異性にアピールするセクシーを全面に押し出すことはできますし、ファミリー層であれば子供や家庭用品の品揃えを強化すればいいでしょう。しかし、シニア女性消費者は、人生の第二ステージを迎えて、その多くが「自分らしく」生きたいと思っているはずです。もちろん子供や孫のための消費もあるでしょうが、それは一部でしかありませんし、そごう柏店が用意したように、ダンスや短歌のクラスを開いても、みながみなそれに興味をもつわけでもありません。何よりも、当の本人たちがどうしたら自分らしく生きていけるのかを、必死に模索しているのではないでしょうか? その選択肢を思うように提供できていないのが、現在の日本のシニア・マーケティングなのではないかと思うのです。

    ■女性の人生95年時代の消費とは?
    4人に1人が65歳以上となった現代の日本社会で、多くの女性の推定寿命は95歳ともいわれます。病気で自分の思うように動けない人もいますが、巷には後期高齢者と呼ばれるようになっても、元気いっぱいの女性たちがあふれています。

    更年期を50歳としても、残りの人生が45年間。女性の人生の第二ステージは第一ステージとほぼ同じくらいの年月があり、日々の生活の中で、ただ生きるためだけではない消費は豊かな人生を送るための重要な要素でもあります。

    このことを考えるとき、「セクシー」や「ファミリー」だけではなく、もっと多様な価値観に応えることができるマーケティングが求められているのだと思います。そしてそれこそが、超高齢化社会における「日本再生」の鍵になるのではないかと思うのです。
    | 後藤百合子 | 高齢化社会とビジネス | 18:45 | - | - |
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