ASIAN NOMAD LIFE

日本、香港、中国で生活・仕事をしてきてシンガポール在住7年目。
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    セブン&アイホールディングス鈴木会長辞任にみる事業承継の難しさ
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      セブン&アイホールディングスの鈴木敏文会長(83)が4/7、セブン-イレブン・ジャパンの井阪隆一社長(58)解任をめぐって取締役会と対立。自らの辞任を表明しました。

      多くの方と同じく、鈴木さんという素晴らしい経営者がこんな形で辞められることになるなんて、と第一報を聞いたとき私も信じられない思いでした。その後、鈴木会長の辞任会見の模様や、すでにこの問題で頭を悩ませていたであろう前月のインタビュー記事を読み、事業承継の難しさを改めて認識しました。

      ■業績好調のときには冬の寒さがわからない。
      セブン-イレブン・ジャパンの売上高推移は、絵に描いたような右肩上がりで、特に井阪社長が社長に就任してからはそのスピードがさらに加速しています。

      決算発表によると、店舗数は1,081店舗増の18,572店舗。おにぎりやサンドイッチなど基幹商品の品質向上に努め、セブンカフェ ドーナツの提供を全国展開。短期間のうちに商品を改変するなどの対策が消費者に受けいらられ、既存店売上伸び率は43か月連続でプラス。直営店及び加盟店売上を合計したチェーン店売上は4兆2,910億67百万円、前年同期比7.1%増とあります。

      まさに驚異的な業績であり、井阪社長が「自分が社長としてこれだけのことをしてきたのに交代を求められるのは納得いかない」と考えるのももっともといえばもっともです。

      しかし、別の見方をすれば、ここまで伸びてこられたのはコンビニエンスストアという業態自体にまだ伸びる余地があったからともいえます。実際、スーパーストア事業や百貨店事業は大きく業績を落としてからの微増であり、業態としての衰退期を迎えています。以前、スーパーマーケットの勃興期に個人商店の八百屋や魚屋から客足がとだえて廃業を余儀なくされたように、現在はイトーヨーカ堂からセブンイレブンに客足が移っています。その結果の高い伸びであり、決してその状態がいつまでも続くわけではありません。

      例え話をしよう。「冬になったら寒いよ。寒いから、きちんと下着を着なさいよ」と。相手は「はい、わかりました」と言うけどね、実際に寒くなってみないとそうしない。本当に寒くなってきた頃は「寒すぎる」感じで、もう風邪を引いている。「はい、わかりました」と言っている時点では実はまだ暖かいんだよね。仕事にはそういうときがある。


      今年1月のイトーヨーカ堂の戸井氏の辞任について、鈴木会長は「彼はわかったつもりだったけど、わかっていなかった」と言い、こう語ります。

      現在、絶好調のコンビニ事業(実際は業界全体が絶好調)においても、少子高齢化による国内マーケット縮小、競合他社の合併や大手資本注入による財務体制強化や商品・サービス力増強、ネット販売業者の台頭による消費者の購買行動の変化など、これから脅威になりそうな要素は門外漢の私が見てもいくらでも数え上げられます。

      まだ業界全体が興隆期の暖かい時期だからこそ、潜在する問題を直視し、早い段階から種まきをして対策を打っておかなければならないのは必至ですが、往々にして人は「見たいもの」しか見ず、現実から目をそらしがちです。それが「残念ながら、(井阪社長から)COOとしての改革案はほとんど出てきませんでした。」という鈴木会長の言葉につながったのではないかと思うのです。

      ■伊藤名誉会長から鈴木会長に引き継がれた「商売の原点」
      今回の鈴木人事案否決の最大の要因は、創業者一族の一人で大株主でもある伊藤名誉会長の信任が得られなかったことと言われています。

      (伊藤名誉会長とは)これまで良好な関係にありました。けれどここに来て、急きょ変わりました。今まで私が提案したことを(伊藤名誉会長が)拒否したことは1回もなく、ずっと了承してきていました。しかし世代が変わったのです。抽象的な言い方ですが、それで判断してもらいたい。


      このような鈴木会長の言葉を受けて、「コーポレスガバナンスがなっていない」とか「密室での決定」と批判する声もあるようですが、取締役会開催の前に創業から現在までの社史の表も裏もをすべて知り尽くし、しかも株主としても一定のポジションを占める創業者一族に意見を聞いてそれを取締役会で発表する行為自体は、私からすると上場会社としてもまったく問題ないことだと思います。

      そのうえで、これまで人事に関する鈴木案をすべて信任してきた伊藤名誉会長が今回はそれを拒否。鈴木会長は「世代が変わった」と繰り返しました。

      創業者の伊藤名誉会長は、1924年生まれの今年92歳。大正9年に叔父が始めた洋品店、羊華堂を戦後すぐに母・兄とともに再開し、ヨーカ堂グループを率いてきた人物です。1984年、伊藤名誉会長がまだ60歳だったときの記事が日経ビジネスオンラインに掲載されていたので読んでみましたが、小さな商店を身を粉にして切り盛りしてきた原点をもち、何をおいてもお客様と仕入れ先を大切にする昔ながらの厳しい経営者の姿が浮かび上がってきます。

      セブン‐イレブンの合理的なシステムを自賛しはするが、伊藤がこの店に魅かれるのは実はシステムの完成度の見事さではなく、フランチャイズ方式に集まる「自営業者の心意気」なのである。「ご夫婦が一生懸命に助け合って店を磨いてるのを見ると、気持ちいいね」。


      記事の最後は「後継者についての質問に対して、伊藤はポツリと一言『これからが大変ですね』と言った。」という言葉で締めくくられています。サラリーマン社長とはいえ、伊藤会長の薫陶を直接受け、伊藤会長が商人の原点をみた「セブン-イレブン」を創り上げた鈴木会長こそ、羊華堂の遺伝子を引き継ぐ後継者となったのはごくごく自然なことでした。鈴木会長はもちろん、伊藤名誉会長もまた、その遺伝子を次の世代に引き継ぐべく、高齢にもかかわらずこれまで経営に関わってきたのではないかと思うのです。

      しかし、それがままならないまま、タイムリミットを迎えてしまった。うがった見方をすれば、今回の伊藤名誉会長の「心変わり」と形容されている人事不信任は、鈴木会長に対する「ここまでよく頑張ってきてくれた。もうこれ以上、頑張らなくてもいいから」という最後の思い遣りだったのかもしれません。

      ■フランチャイジーを最後まで気にかけた鈴木会長

      私自身も今日辞任を発表しましたから、明日から会社に出てこないというような無責任なことはできないと考えております。1万8000店の加盟店のオーナーさんもいらっしゃるし


      鈴木会長が会見の後半、気にかけていると口にしたのは、社員のことでもなく、会社の将来のことでもなくフランチャイジーのことでした。24時間営業の中、学生アルバイトや外国人アルバイトをまとめながら自分自身も現場の第一線で日々働く彼らこそ、鈴木会長が絶対に守らなければならないと考えていることがよくわかりました。

      また、鈴木会長が業績不振のヨーカ堂を切り離せという外資ファンドの圧力に抵抗してきた背景には、尊敬する伊藤名誉会長がビジネス人生を賭して創り上げてきたスーパーマーケット業態を、自分が創り上げたコンビニ業態が壊してしまったという悔恨の念もあったような気がします。

      会社を経営するということは、毎日、多くの矛盾や不測の事態に直面しつつ、会社にとって何が大切なのかを自問自答しつつも前に進むことだと私は思っています。時代は変わり、人も変わります。しかしその中で、自分自身の確たる信念をもち、自らの進退も含めて一瞬一瞬を不退転の決意で進んでいくことにしか経営の道はありません。

      常人にはとてもまねできない強靭な精神力でここまで経営をされてきた鈴木会長には、セブン-イレブンやイトーヨーカ堂で買い物をする顧客の一人として「本当にお疲れさまでした」の一言をお贈りしたいと思います。
      | 後藤百合子 | 企業経営 | 15:21 | - | - |
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