ASIAN NOMAD LIFE

日本、香港、中国で生活・仕事をしてきてシンガポール在住7年目。
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    「移民は拒否」でも「経済成長」したいは可能?
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      JUGEMテーマ:ビジネス

       

      ■移民アレルギーと経済成長信仰が同居する不思議

      上野千鶴子さんが書かれた「脱成長」と「移民」を論じるエッセイがさまざまな議論を呼んでいます。「脱成長」はけしからんけど、「移民はムリ」をやっと認めたのは評価するという意見がある一方で、「移民はムリ」はとりあえずおいておいて、「脱成長」は若い人たちに対して失礼であるし、逃げ切り世代の傲慢だ、という意見も広く共感を呼んでいるようです。

       

      私もこれまで何度か移民について書いたことがありますが、そのたびに、信じられないほど強い拒否反応が返ってくることに驚かされたものです。

       

      私自身は、子どもの頃から在日韓国人の複数の家族と家族ぐるみの付き合いをし、大学では台湾人留学生にノートを借りて単位を取り、香港や中国で勉強したり働いて、中国人のみならずいろいろな国籍の友人や同僚そして部下と仕事をし、イスラム教シンガポール人の親友の家に通っているうちに付き合い始めた華人系シンガポール人の夫と結婚し、カンボジアから迎えた養子のクラスメートの仲良しの友人たちはマレー系やインド系など、民族や国籍の違いをほとんど意識することのない生活を50年以上送ってきました。

       

      また、ビジネスを長くしてきた者としては、「外国人は絶対に入れてはだめ」と頑なに門戸を閉ざし、なおかつ「経済成長は絶対に必要」とこだわる姿勢の矛盾に多くの方々が気づいていないのも不思議に感じます。

       

      ■一筋縄では語れない経済成長

      経済成長に関してですが、これには2つの側面があります。1つは労働力の問題、もう1つは市場の問題です。

       

      先月の記事にも書きましたが、労働生産性がOECD諸国の中でも著しく低かったかかわらず、日本はつい最近まで長期間にわたり、アメリカに次ぐ世界第二のGDPを誇ってきました。

       

      その理由は簡単です。明治時代から2010年まで一貫して人口が増え続けたからです(太平洋戦争後短期間は微減)。

       

      人口が増えるということは、労働力確保はいわずもがなですが、消費市場が形成されるということです。他の先進諸国と比べて割安で豊富(しかも画一的労働では非常に優秀な粒ぞろいの労働者が揃っていました)な労働力を背景に、巨大な労働者=消費者の市場が形成されてきました。

       

      市場という観点で経営を考えるとき、会社の売り上げを増やすためには、次の3つしかありません。1.市場が拡大する。2.市場の中でのシェアを上げる。3.(海外市場やまったく別の市場という)従来なかった市場で売り上げを上げる。

       

      これを日本という国に当てはめれば、2の国内シェアについては現在も将来も100%なわけですから、1.日本の人口そのものが増えて市場が拡大する。3.海外市場で売り上げを拡大する。の2択しかありません。現在の人口トレンドでは移民を受け入れない限り国内市場縮小は火の目を見るより明らかですし、大企業はともかく、日本という巨大消費市場だけで商売をしてきた多くの日本の中小企業が、これから短期間のうちに人口減少分を有り余って成長できるほど海外で自社製品やサービスを販売できるかはすこぶる疑問です。

       

      ■ドイツの難民受け入れは単なる人道主義ではなく経済成長のための対策

      日本ではあまり人気がありませんが、経済や政治を語るときに、地政学とともに真っ先に挙げられる学問が「人口学」(demography)です。

       

      その人口学を代表する学者の一人がフランスのエマニュエル・トッド氏です。

       

      トッド氏は、移民を惹きつける力こそ、その国の活力であり、ドイツは戦後、ユーゴスラビアやトルコ、その他の東欧諸国から移民を受け入れることにより、一貫して経済成長を遂げてきた、そして日本と並ぶ超高齢化社会でありながら、経済成長を諦めていない、と分析しています

       

      実際、昨年、ドイツの工場を訪問した際、現在の急激な難民流入に賛成する人も反対する人も、ドイツ人全般としては移民に対して非常に寛容という印象を受けました。

       

      昨年の記事にも書きましたが、ある中堅企業の営業マンはオランダ人で、アシスタントはドイツ生まれのトルコ系ドイツ人です。オランダ人営業マンはメルケル政策に非常に批判的で、「こんなに中東難民を入れたら治安が悪くなる」と文句を言っていましたが、自分のアシスタントについては「彼女はイスラム教徒でもドイツ生まれだから全く問題ない」と庇いました。

       

      ある数人規模の工場の社長さんは、自分のような規模の工場では常に採用難で、生まれながらのドイツ人か移民かを問わず、応募してくれる若者はとにかく採用すると言っていました。今一番目をかけているのは、イラク移民の若者だとも語りました。

       

      この2社はともに、海外販売の割合が非常に高く、2人とも年中世界を飛び回っています。逆に言えば、これだけ移民を受け入れながらもドイツ国内売り上げだけではなかなか成長は望めないのです。

       

      ■「ドイツ人」「日本人」の定義とは何か?

      このように「移民」に関する考え方の中で、ドイツで実際に起こっているのは、治安の悪化以上に「ドイツ人」という概念の変容であると思います。

       

      オランダ人営業マン(すでに30年以上このドイツ企業で働いていて同族の経営陣の番頭のような立場です)がトルコ系アシスタントを「ドイツ人」と呼び、ドイツ人社長がイラク移民の若者を有力な幹部社員候補として育てているのを見たとき、彼らにとって重要なのは「ドイツ語を話し、ドイツの文化を理解できること」であって、民族や以前の国籍ではないということです(もちろん現在の国籍は彼らにとっても重要です)。

       

      また、日本でもごく一部の人々を除き、現在では、ソフトバンクの孫さんのような日本で生まれ育った在日韓国・朝鮮の方々が帰化した場合、受け入れられない人は多くないでしょうし、日系南米人の親に連れられて来日し、日本の学校を卒業して日本に帰化した方々が差別されるということも少ないのではないでしょうか?

       

      であれば、ドイツと同じく、日本でも、第二世代、第三世代となれば移民も自然に日本人として同化していくと思います。移民を阻む最大の障壁は、第一世代の「言葉が通じない」「文化が違う」人を受け入れたくない、という現在のアメリカ・ファースト主義にも通じる排他性ではないでしょうか。

       

      そしてその感覚は、上野千鶴子さんの世代だけでなく、これからの超少子高齢化社会で上野さん世代を担う役割を背負わされている(現在のところは)世代も共通してもつものだと感じます。

       

      ■移民なしの経済成長を求めるのなら、真剣に具体的な議論を

      私は移民を拒否するのも、経済成長を諦めるのも、日本国民がこれから日本という国の将来をどう作っていくかの合意形成をしたうえで行うのであれば、まったく問題ないと思います。

       

      上野さんは「移民は拒否するしかないだろう、だから経済成長を諦める必要がある」というスタンスであり、私個人としてはかなり納得しました(一部の批判的な議論では治安の問題に力点が置かれすぎている難があり、この問題を持ち出す必要はなかったのではないかと思いましたが)。

       

      逆に、「移民は拒否しても経済成長は諦めたくない」のであれば、どうやってそれを実現するかを真剣に議論する必要があります。「最後まで頑張ろう」などという精神論/感情論だけではこれほど二律背反する困難な目標は決して達成できないのです。

       

      前人未踏の厳しい状況下でなお、あくまでも「経済成長」にこだわり、「次の世代」の将来を真剣に慮るのならば、アベノミクス(特に第三の矢)の再検証も含め、国会やメディアの場で真剣かつ冷静、具体的、詳細な議論をする時期として、まったなしの状況が到来していると私は思います。

      | 後藤百合子 | 高齢化社会とビジネス | 06:23 | - | - |
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