ASIAN NOMAD LIFE

日本、香港、中国で生活・仕事をしてきてシンガポール在住8年目。
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子どものプレゼンテーション能力を高める“Show and Tell”授業
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    JUGEMテーマ:国際社会

    先週末、日本政府の青年交流プログラムでシンガポールを訪れていたある国立大学の工学部の学生さん2人をホームステイ受け入れしました。

     

    ホームステイ受け入れボランティアは日本に住んでいたときからずっと続けていますが、男子学生さんは初めて。子供がなつくかどうか少し心配しましたが、2人とも初めての海外とは思えない流暢な英語で話しかけては遊んでくれ、滞在していたホテルに戻った後には娘が「今度はいつ遊びに来るの?」と聞くくらいまでなついていました。

     

    ■内容は素晴らしいのに伝え下手な日本の若者

    3日間のホームステイも無事終わり、プログラム最終日の昨日、学生さんたちによる総括プレゼンテーションがあるというので、他のホストファミリーと一緒に聞きに行きました。

     

    日本、シンガポールの各政府関係者、交流プログラムを行ったシンガポールの大学の学生さんたちなどを招待して行われたプレゼンテーションでは、40人ほどの学生たちがそれぞれ、プログラム中の気づきや、今後のアクションプランなどを紹介。さすが大学生だけあって短期間にしっかりと国家システムや文化などを理解すると同時に、今後、どのようにこの経験を活かしていくかなどがデータや写真と共に英語で説明され、こんな若者たちが頑張ってくれるのなら日本の将来はまだまだ捨てたものじゃないな、と大変心強く思いました。

     

    ただ一つだけ残念だったのが、プレゼン能力です。

     

    メモを片手に棒読みしてしまったり、強調したいポイントをせっかく大きな声で話しているのにスクリーンのほうを向いたままだったり、会場から質問をもらっても照れ隠しのためか笑ったまま話すのでよく聞き取れなかったり・・・。

     

    英語の文法はしっかりしていますし、発音も悪くない。話の構成もきっちり整えられているので、言葉や内容の問題というよりは、「伝える」という技術の未熟さのせいではないかと感じました。

     

    ■思わず舌を巻いたシンガポール小学生のプレゼンテーション

    日本の若者たちのプレゼントは対照的に、思わずうなるほど素晴らしいプレゼンを受けたのは昨年の10月のこと。シンガポールのアート・コンテストで入選した作品を観にいったとき、実際に制作にあたった小学4年生の子供たちからでした。

     

    私の娘が通う小学校のあるクラスの作品(個人ではなくクラスごとの制作です)もこのコンテストに入選したため学校から案内があり、家族でシンガポール国立美術館まで観に行ったのですが、そこには生徒たちが大勢詰めていて、観にきた人々に「作品を説明させてください」と自分たちからアピールしていたのです。

     

    「環境にやさしい生活方法をどう啓蒙するか」や「他民族国家シンガポールに必要な人々の団結」などかなり高度な概念を、それぞれ5分ほど作品を示しながら、また「自分はこう思う」などと個人的意見も織り交ぜ、こちらの目を見て伝わっているか確認しつつ、堂々と語ってくれました。

     

    展示は10校ほどでしたが、このようにいろいろな生徒からプレゼンされたため(ときには1作品何人もの生徒からアプローチもされ!)、決して広くない会場を回りきるのに1時間以上の時間がかかってしまいました。それにしてもたった10年しか生きていない子供たちの見事なプレゼンぶりには、思わず舌を巻かされました。

     

    ■プレゼン能力を高める“Show and Tell”教育

    このように堂々と自分の意見や考えを表現できる子供たちが特別かというと、決してそうではありません。その秘密は教育にあることが最近わかってきました。

     

    生徒たちのプレゼン能力を向上させているのは、小学校低学年の英語(つまり国語)の時間に行われる“Show and Tell”というカリキュラムです。

     

    例えば、「私の好きなもの」というタイトルの場合、自分の好きなおもちゃを見せながら、どうして手に入れたものなのか、なぜ好きなのか、それを使ってどう楽しんでいるか、などを数分かけて説明します。本番は一度だけですが、家やクラスでリハーサルを何度も行い、いかに効果的に、わかりやすく、「伝える」かという技術を習得していくのです。

     

    シンガポール人はふつうに付き合っている分には自己主張の強さをそれほど感じませんが、人前でスピーチしたりプレゼンしたりするのが苦手という人は決して多くありません。それは、子供の頃からこのような授業を通じて、論理的な話の組み立て方や、効果的な伝達方法という技術を学んできているからではないかと思います(幼稚園のカリキュラムに”Show and Tell“を取り入れているところもあるようです)。

     

    産業の発展に不可欠なイノベーションは、さまざまな考え方やバックグラウンドをもった人々がそれぞれ異なるアイディアやシステムを共有・蓄積することによって起きていくものであり、個人間の伝達力は必須です。

     

    反対に、今回の日本の学生さんたちのように、シンガポールという異文化に触れることによりせっかく素晴らしい経験や気づきを得られても、表現力が未熟だと、相手に感銘を与えたり、共感してもらうことが困難になってしまいます。

     

    また、ビジネスでなければまだ「残念」ですみますが、競争社会では大きなマイナスポイントになることは必至。日本のビジネスが現在のグローバル環境の中で一歩遅れをとってしまっているのも、一つはこのあたりに原因があるのではないかと思います。

     

    Show and Tell”はもともとは欧米由来の教育法のようですが、ぜひ日本でも小学生のうちから採用してはどうかと思います。シンガポールの小学校では、今年から、日本の伝統的な教育方法の一つである「生徒による掃除」が採用され、親たちに好評です。

    | 後藤百合子 | グローバルビジネスと人材 | 19:00 | - | - |
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