ASIAN NOMAD LIFE

日本、香港、中国で生活・仕事をしてきてシンガポール在住7年目。
<< 障がいがわかって改めて感じた子どもへの愛 | main | 「好人物」経営者が辞めるとき〜ローソン玉塚CEO引退にみるボトムアップ経営の限界 >>
もう一つの”LaLaLand"〜フランス映画「アーティスト」
0

    JUGEMテーマ:ビジネス

     

     

    現在、シンガポールではフレンチ・フェスティバル・シンガポール「Voilah!」が開催されています。

     

    先週末のオープニングの土曜日には、我が家でも家族そろってGardens by the Bayでのファンタジックな大道芸に続き、「アーティスト」野外映画上映会に行ってきました。

     

    「アーティスト」は、2011年製作のフランス映画で、作品賞、監督賞、主演男優賞など第84回アカデミー賞で五冠に輝いた作品。舞台はハリウッド、スターをめざす駆け出し女優、ミュージカルなど、昨年大ヒットした「LaLaLand」を彷彿とさせる内容で、鑑賞後もやはりとてもポジティブで温かい気持ちになれる、というところでも共通点が多いと思いました。

     

    しかし、フランス映画ならではのひねりも登場します。

     

    ●主人公である人気スターの俳優ジョージの活躍の場が「サイレント映画」であり、新しいテクノロジーであるトーキー映画台頭の波に乗り遅れてあれよあれよという間に成功の階段から転げ落ちてしまうこと。

     

    ●大スターのジョージに憧れて田舎から出てきた女優の卵ペピーはジョージによって映画界の扉を開けられ、ジョージの人気凋落に反比例して、トーキー映画時代の寵児として大スターにのし上がっていくこと。

     

    ●そして最後は、すっかり落ちぶれて自殺未遂まで起こしたジョージの再起をかけて、ペピーとジョージが2人で協力して新しい映画の可能性を開く、という結末に終わるということ。

     

    映画「LaLaLand」では、主人公2人とも従来通り「努力して成功」パターンを手に入れますが、「アーティスト」では、産業構造の変化の流れに乗ったり、逆に落ちこぼれてしまったりする主人公たちが、2人で知恵を絞って工夫しながらイノベーションを創造する、というストーリーになっているのです。

     

    もう一つ、忘れてはならないのは、この映画がフランス人監督による、フランス人俳優(主人公2人)のための映画だということでしょう。

     

    1950年代から60年代にかけて世界の映画界を席巻したフランス映画ですが、国際マーケットの中ではここのところずっとハリウッド映画に押され、一時の輝きはありません。その最大の理由は「フランス語」という言語の壁でしょう。過去数十年間のうちに英語は間違いなく世界の共通言語となり、英語を使って製作されるハリウッド映画が映画界のスタンダードとなってしまったのです。

     

    例えば、今週金曜日に日本でも公開される予定の、チャン・イーモウ監督、マット・ダイモンを主演に中国や香港の大スターをキャストし、巨額の製作費をかけて製作された(でもさんざん酷評された)米中合作映画「グレート・ウォール」も、メインターゲットの市場は中国にもかかわらず、言語は英語です。

     

    そのような映画製作環境にあって、英語のネイティブスピーカーでない国出身の俳優たちは、世界の檜舞台に立ちたいと思ってもなかなか活躍の場が広がりません。それを逆手にとったのが「アーティスト」のサイレント映画という設定なのです。

     

    主人公2人は生粋のフランス人ですから、英語はたいしてうまくないか、たとえ話せてもアクセントがあり、通常の映画だったらアメリカ人俳優の役は絶対に演じられないはず。それがサイレント映画という設定により、言語の壁を超えて主役2人がアメリカ人を演じきったところにこの映画のもう一つの醍醐味があります。

     

    最後に、この映画の見どころをもうひとつ。「時計仕掛けのオレンジ」の怪優マルコム・マクドウェルが出演。思わずにんまりしてしまうシーンもあり、「さすがフランスのエスプリ!」と唸らせてくれること間違いありません。

    | 後藤百合子 | 映画評 | 14:45 | - | - |
    スポンサーサイト
    0
      | スポンサードリンク | - | 14:45 | - | - |
       123456
      78910111213
      14151617181920
      21222324252627
      28293031   
      << May 2017 >>
      + PR
      + SELECTED ENTRIES
      + CATEGORIES
      + ARCHIVES
      + MOBILE
      qrcode
      + PROFILE