ASIAN NOMAD LIFE

日本、香港、中国で生活・仕事をしてきてシンガポール在住7年目。
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「好人物」経営者が辞めるとき〜ローソン玉塚CEO引退にみるボトムアップ経営の限界
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    きちんと刈り揃えられた短髪。

    ラグビーで鍛えあげた長身にすっきり着こなしたダークスーツ。笑顔からこぼれる真っ白な歯。

    言葉を慎重に選びながらも、率直で嫌味のない受け答え。

     

    ローソンの玉塚CEOを一目見て好印象をもたない人はいないのではないでしょうか? その証拠に、これまで玉塚氏は現在の日本を代表する経営者たちに人柄を見込まれ、経営を任され、実業界の表舞台を歩いてきました。

     

    ■数々の有名企業の経営を任されてきた玉塚氏の経営者人生

    玉塚氏の名前が一躍全国区になったのは、ユニクロブランドで知られるファーストリテイリングの社長を任せられた時。しかし、残念ながら志半ばで退任。そして今回もまた、「永遠の好青年」玉塚氏は、業界再編の渦中にあるコンビニ業界3強の一角、ローソンCEOの職を辞することになりました。

     

    引退発表に先立つ3月、玉塚氏はダイヤモンド・オンラインで4回にわたりこれまでの経営者人生を振り返られていました

     

    この連載の中で彼は、証券会社の家業を父の代で失い、捲土重来を期して自分自身が事業を興そうという思いをずっと抱いてきたと告白しています。幼稚舎からの慶応ボーイという経歴ながら、心の中では「このままでは終わらない、いつかきっと」という闘志を密かに燃やし、大学卒業後メーカーに就職するも熾烈な勉強を重ねてMBA留学。そしてユニクロの創業者柳井氏との出会い・・・。

     

    丁稚になるつもりで入社したというファーストリテイリングで柳井氏に見込まれ、2002年には社長に就任。就任時にはどん底に陥っていた売り上げを回復させたものの目標には到達せず、わずか3年で辞任することになります。しかし、当時の一般の受け取り方とは異なり、柳井氏とはまったく確執のない、互いに納得しての社長退任でした。

     

    辞任後もすぐに複数の会社の取締役に就任し、翌年にはファストリ時代からのパートナーだった澤田貴司氏と設立した会社、リヴァンプの事業の一環としてロッテリアのCEOに就任。ここでも一定の成果を上げたものの、4年後の2010年には契約解消。リヴァンプの資本も引き上げます。

     

    さらにその年の秋には三菱商事出身で、当時ローソンCEOだった新浪剛史氏に乞われてローソン顧問就任。2011年には副社長に取り立てられ、2014年には新浪氏のサントリー転任を受けて社長に。そしてまたその3年後の今年、ローソンが三菱商事の子会社となったことを機に退任を決めたといいます。

     

    さっと経歴を振り返っただけでもプロ経営者としてそうそうたる企業の経営に携わってこられたことがわかりますが、同時に、どの会社も数年で志も業績も半ばのうちに辞めざるをえない状況に追い込まれており、毀誉褒貶の激しい経営者人生と断じざるを得ません。

     

    ■下剋上時代のボトムアップ経営には限界がある。

    ダイヤモンド・オンラインの連載や、今回の引退記者会見の記事などを読んで感じる玉塚経営の真髄は、ビジネススクールで教えられているような「教科書通りの経営方針」と、社員やフランチャイザーなどのステークホルダーとのコミュニケーションを徹底的に行った上での「ボトムアップ経営」であると思います。

     

    加盟店側からも「玉ちゃん」と呼ばれ人気もあった。地方のローソンの視察に行くと「玉ちゃん」の周りには店長や従業員が自然と集まってきた。高級スーパーの成城石井も買収し成長戦略の基礎も築いたほか新浪ローソン時代の拡張路線も一部、修正して社内と加盟店をまとめてきた。 http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ12HEJ_S7A410C1000000/

     

    部下や取引先に誠心誠意耳を傾け、やるべきことを一つずつきちんと行い、決して派手ではないものの着々と順序だてて物事を進める。このような玉塚氏の経営手法は、進むべき方向があらかじめ決まっていて、足元をしっかり固める時期には非常に有効であると思います。

     

    しかし、まだ成長途上にはあるものの成熟期を迎える中、3強による業界再編が進み、業界の先駆者、セブンイレブンの鈴木氏が引退に追い込まれるなど、コンビニ業界全体が熾烈なサバイバル競争を繰り広げる中、昨年には筆頭株主の三菱商事から社長を送り込まれ、今年2月にはローソンが三菱商事の子会社に。この時点で玉塚氏は引退を決めたと言われます。

     

    ――2015年からは「1000日実行プラン」と銘打った改革を実行してきた。その成果を見届けてから、退任する選択肢もあったのでは。

     

    正直、迷った。ただ、強い組織というのは、強いトップダウンと強いボトムアップがぶつかる組織だと思う。竹増社長は強いトップダウンの素養があるし、この3年でものすごく成長された。これから先、私も意見を言って、竹増さんも意見を言ってしまうよりは、シンプル化した方が組織として健全だと思った。 http://toyokeizai.net/articles/-/167538?page=2

     

    志半ばで自ら引退表明せざるをえない状況に追い込まれた無念さが言葉尻ににじみ出ている反面、CEOの座にしつこくこだわったり、執着したりすることがない玉塚氏の素直さ、性格の良さがよくわかるコメントだと思います。

     

    ■これからの時代に求められる理想の経営者とは....?

    もし私がユニクロやローソンの社員や加盟店の店主であったなら、玉塚氏は思い描ける限り最高の、理想の経営者だと思います。

     

    決して一方的に無理な要求をつきつけてくるようなことをせず、どんな些細なことにも穏やかに耳を傾け、チームワークを大切にして地道に着実に結果を出していく。3年前の社長就任時、玉塚氏は「これからは”みんなのローソン”にしていく」と語ったそうですが、「自分が、自分が」というリーダーではなく、「ともに作っていこう」と呼びかけるリーダーに対して、「この人と一緒にやっていこう」と共感した社員や加盟店店主は決して少なくないと思います。

     

    しかし、逆に、自分が株主であったらこのような経営者をどう思うでしょうか?

     

    確かに社員もフランチャイザーも大切な経営資源です。経営状況が安定期に入っていて低成長でも当分は今走っている路線を手堅く守っていけば相応の利益が見込まれるとなれば、株主はボトムアップ型の経営者も支持するでしょう。

     

    ただ残念ながら、現在のローソンも、当時のファーストリテイリングもそのような幸運な時期にはなく(どんな会社でもたいていはそんな時期は長続きしませんが)、下剋上の生存競争の真っただ中にありました。そんな時期に会社を存続させるために求められる経営者とは、確固としたビジョンをもち、どんな障害にも負けずにトップダウンでそのビジョンを素早く実行して結果を出していく「強い」経営者であり、そのような経営者像こそ、身銭を切ってその会社に投資している株主が待望するものなのです。

     

    そして会社は、「株主のもの」であり、経営者を選ぶ最終的な決定権は株主にあります。

     

    玉塚氏はこれまでの実績を拝見しても非常に優秀な経営者であり、あるべきリーダーの姿を体現しておられる、心から尊敬できる人物だと思います。

     

    しかし、反面、玉塚氏のようなタイプの経営者がこれから産業革命以来の大変革を迎えるであろうビジネス界で果たして株主に選ばれ続け、活躍していける場があるのかどうか? ひいては、MBA経営者へのニーズ自体への変化が出てくるのではないかと、今回の玉塚氏引退の一部始終を見ていて強く感じました。

    | 後藤百合子 | 企業経営 | 01:02 | - | - |
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