ASIAN NOMAD LIFE

日本、香港、中国で生活・仕事をしてきてシンガポール在住8年目。
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Japanブランド海外進出の死角
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    JUGEMテーマ:海外進出

     

     

    先週末のイースター3連休、義父母も一緒にマレーシア有数の観光地、マラッカに家族旅行をしてきました。

     

    マラッカはマレーシアの首都クアラルンプールから約150辧ポルトガル、オランダ、イギリスの植民地として文化的影響を受けた歴史をもち、ペナンと並び華人が多いことでも知られます。フランシスコ・ザビエル教会などエキゾチックな街並みが評価されて2008年にユネスコ文化遺産に指定されて以来、マレーシアを代表する観光地にもなっています。

     

    我が家では6年前に初めてマラッカ旅行をしてからいたく気に入り、年に一度は必ず訪れています。特にマレー半島に古くから住みつく華人が作ったパラナカン文化の華、パラナカン料理が食べたくなると「この週末に行こう!」とさっと車で向かいます。さしずめ東京人が伊豆半島に行くような感覚です。

     

    ■「北海道ベイクドチーズタルト」は日本ブランド?

    マラッカ市街は近年再開発の動きが著しく、毎年訪れるたびに新しいマンションや商業ブロック、ホテルやお店などが雨後のタケノコのようにできています。昔ながらののんびりしたマラッカもよかったのですが、新しくオープンしたお洒落なお店を見てまわるのも楽しみの一つです。

     

    そんなマラッカに今年は新しくチーズタルトのお店が2店オープンしていました。

     

    1店はマラッカ屈指の観光街”ジョンカーストリート”入口のお土産屋さんの店頭に、もう1店はマコタ・パレードという大きなショッピングモールの1Fです。

     

    商品は一種類、一口サイズのチーズタルトのみ。ずらっと並べられたおいしそうなチーズタルトに、「あれ、これってひょっとしたら日本の会社のお菓子じゃない?」と思い至りました。

     

    日本でお洒落なチーズタルト店が全国展開していて話題になっている、という話は数年前から聞いていましたし、「Hokkaido Baked Cheese Tart」と北海道が店の名前についている他、パッケージにも日本語で「ベイクチーズタルト」とあります。特にマコタ・パレードはタミヤやファイテン、エドウィンなど日本のブランドを以前からテナントとして多く迎えていたので、次は食品ブランドも進出か、と嬉しく思ったのです。

     

    ところが、ホテルに戻ってネットで調べてみても、このお店が日本ブランドであることを証明するサイトがみつかりません。逆に、私が「このブランドでは?」と勘違いをしていた日本の本家「BAKE Cheese Tart」はシンガポールやタイには出店しているもののマレーシアには店舗がありません。「Hokkaido Baked Cheese Tart」のホームページを見ても会社情報はまったくありませんし、いったいこの会社の正体は何だろうと訝っていたときに、この記事を見つけました。

     

    ■実はマレーシア企業だった「Hokkaido Baked Cheese Tart」

    記事によると「Hokkaido Baked Cheese Tart」の運営母体はマレーシアのSecret Recipeという会社。

     

    もともとケーキメインのカジュアルフードレストランとしてマ東南アジア全域で展開しており、マレーシア最大のカフェチェーンでもあるそうです。そして「Hokkaido Baked Cheese Tart」の店舗は2016年10月時点ではマレーシアに11店舗、シンガポールに2店舗、インドネシアの1店舗となっていました。

     

    記事中でも商品のみならずパッケージもそっくりなためコピーキャットではないかと疑念を呈していますが、本家の「BAKE」が進出していないマレーシアでの躍進ぶりはすさまじく、現在は46店舗とわずか半年の間に4倍以上に店舗数を拡大。シンガポールでは1店舗増やしたのみですが、インドネシア、ブルネイと、やはり本家が出店していない国に進出した他、タイ、上海にも本家を追うように出店済みです。

     

    そして昨年末にはアジアを飛び出してオセアニアにはばたき、現在はオーストラリアに8店舗、ニュージーランドにも進出予定だそう。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの出店攻勢と言えるでしょう。

     

    オーストラリアのHokkaido Baked Cheese TartのHPによれば、

    Inspired by the distinct cheesy taste of Hokkaido dairy, and using a traditional recipe from Japan’s dairy heartland, it is not surprising that the famed ‘Hokkaido Baked Cheese Tart’ has been a huge hit throughout Asia having successfully launched in Shanghai, Singapore, Indonesia, Brunei, and Malaysia. After tireless taste testing using local ingredients, the Hokkaido Baked Cheese Tart has succeeded in recreating a Hokkaido cheese flavour perfectly.

    北海道酪農独特のチーズの味にインスパイアされ、日本酪農の中心地の伝統的なレシピを使いつつ、高い評価を受けた「Hokkaido Baked Cheese Tart」は上海、シンガポール、インドネシア、ブルネイ、マレーシアとアジア全体で大きな成功をおさめてきました。地場の素材を何とか使おうという地道な努力により、「Hokkaido Baked Cheese Tart」は北海道のチーズのフレーバーを完璧に再現することに成功しました。

    まるで北海道を発祥の地とする本家「BAKE」を挑発するような文章で、コピーキャットにもかかわらず、あまりにも堂々とした態度に逆にあっぱれ感すら感じられます。

     

    ■コピーキャットに先を越された「BAKE」

    この間、本家の「BAKE」も決して指をくわえてライバルの動きを見ていたわけではありません。

     

    日本では有名デパートなどを中心に14店舗しか出店していないいっぽう、現時点で海外店舗は韓国、香港、タイ、シンガポール、台湾、中国に18店舗。着々と海外展開の歩を進めている他、商品の品質保持にもぬかりはなく、上述の記事中でも「BAKE」のほうがチーズが滑らかで美味しい、と高評価を受けています。

     

    しかし、新興国のマーケットでは両者の製品の約20%の価格差は大きく、また、市場シェアやブランド力を比べたら現時点では圧倒的に後発の「Hokkaido Baked Cheese Tart」に成功の軍配は上がるでしょう。

     

    しかも、「Hokkaido Baked Cheese Tart」は「BAKE」がまだ出店していない国々にも積極的に出店していることから、今後、「BAKE」が新たにそれらの国に出店しようとしても、今度は「後発ブランドで高価である」という二重の弱みを克服していかなければならないのです。

     

    そのような状況を総合的に判断すると、今後の「BAKE」の海外展開の要はいかに本家としてのブランドイメージを高め、「Hokkaido Baked Cheese Tart」とは一線を画したオリジナル商品を投入していくかにかかっているのではないかと思われます。

     

    ■海外展開の死角

    これまでも中国に進出したものの、すぐにコピーキャットが現れてあっという間に市場を席捲されてしまい、やむなく撤退したという苦い経験をもつ日本企業は少なくないと思います。

     

    一部の中国企業のように商号や商品をそっくりそのまま模倣するようなただのコピー商法は論外ですが、今回の「Hokkaido Baked Cheese Tart」のような場合は著作権や商標権で取り締まれるような種類のものではなく、マネをされても法的手段に訴えることはまず不可能でしょう。

     

    さらに恐ろしいのは、地元企業であるという強みを活かして短期間のうちに一斉に出店してシェアを押さえ、あたかもコピーのほうが元祖である、というようなイメージを作り上げられてしまうことです。(ブランド名に「Hokkaido」が入っていたりパッケージに日本語が入っていたりすることにより、消費者のブランド信認度は元祖より恐らく高いと思われます)

     

    せっかく苦労して商品やブランド作りを行い、満を持して海外進出を始めた道半ばでこのような被害にあってはたまりません。

     

    それを未然に防止するためには、とにかくスピード感をもった販売戦略をたてて実践すること、もしくはニッチに特化して他社に簡単にマネできない商品や販路を作ること以外にないのではないかと思います。

     

    日本式ビジネスの美徳である「じっくり」「着実に」「堅実に」のモットーが、海外展開では却って足元をすくわれる弱点になりかねない、ということを忘れるべきではないと思います。

    | 後藤百合子 | グローバルビジネスと人材 | 19:38 | - | - |
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