ASIAN NOMAD LIFE

日本、香港、中国で生活・仕事をしてきてシンガポール在住8年目。
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    『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』が中国でヒットしなかった理由
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      JUGEMテーマ:経済全般

       

      先月中旬公開になった『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』が中国でまったくヒットせず、打ち切りにする映画館が続出しているそうです(中国では今年1月5日から公開)。

       

      Forbesの記事によると、中国では公開1週間後の12日にはスクリーン占有率が2.6%という前代未聞の苦戦となり、シンガポールのテレビニュースでも取り上げられました(シンガポールでは公開1か月が過ぎた現在でも、ほとんどの映画館で上映されています)。

       

      『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』は、北米では公開から10日間で3億6500万ドル(約413.2億円)、北米以外でも3億8030万ドル(約430.6億円)の興行収入があったと発表されており、世界的には決して悪い成績ではありません。しかし、中国に限っては、配給元のディズニーが、大規模な宣伝や上海ディズニーリゾートでのイベントなど大々的なマーケティング・キャンペーンを行ったにもかかわらず惨敗。ある調査によると「公開された最初の週末の興行収入は推定2870万ドル(約32億円)。トップに立ったのは中国のコメディー映画の7870万ドルだった」と、低予算のコメディー映画にも遠く及ばなかったようです。

       

      「最後のジェダイ」はなぜ中国で受け入れられないのか? 対照的に、一昨年の12月に世界公開され、中国以外ではまったくヒットせず赤字に終わった超大作映画『グレートウォール』(『HERO』のチャン・イーモウが監督、ハイウッド・スター、マット・ダイモン主演。香港の人気スター、アンディ・ラウをキャスティングするなど1億5千万USドルの巨額製作費をかけて製作された米中合作映画)と比較しながら考えてみたいと思います。

       

      1)映像が地味

      最新作の「最後のジェダイ」は、最初から最後までひたすらレジスタンス軍が劣勢で逃げ回る、という他のエピソードに比べてもストーリー的に地味な設定。映像は全体が暗いトーンで、派手な戦闘シーンも比較的少ない感じがしました。主要人物たちもほとんど着たきりスズメで、衣装的にもあまり目を引くシーンがありません。

       

      これに対し『グレートウォール』は、巨額の製作費をかけただけあってエキストラの数も数万人といわれ、戦闘シーンの迫力が凄まじいのに加えて、衣装も鎧兜などに赤や青など原色の目を引く色が使われています。とにかく派手。中国人が好きな、大きくて、カラフルで、ぴかぴかしている。衣装は常に新品のようで、リアリズムの片鱗も感じさせません。

       

      中国で「最後のジェダイ」の興行成績が振るわなかったのは、公開1週間後に同じハリウッド映画の『ジュマンジ』が公開され客を奪われたからとも分析されていますが、『ジュマンジ』はジャングルが舞台で、色とりどりの動物やアクションが売りの映画。アイキャッチという点では、こちらのほうが「最後のジェダイ」に勝っています。

       

      やはり、中国人の共感を得るためには、くたびれた衣装や陰鬱な映像は難しいと感じました。

       

      2)中国人が出演していない

      最近はハリウッド製作映画も中国市場を意識し、中国人俳優をキャスティングするケースが増えてきているそうですが、「最後のジェダイ」では主要登場人物に中国人俳優の登用はなし。

       

      アジア系女性が姉妹役で2人出演してはいるものの、2人ともベトナム系。しかも、大活躍する妹役のローズはビジュアル的にいまひとつ(熱演もさることながら、とてもきれいな声と英語の発音の持主で私はファンになりました)。

       

      『グレートウォール』では、主演こそハリウッド俳優マット・デイモンですが、中国系俳優が圧倒的多数を占めており、マット・デイモンも作中ではいま一つ影が薄く、中国以外での惨敗につながったと言われます

       

      やはり、中国人は自分たちの同胞がヒーローやヒロインとして活躍してくれないとストーリーにシンパシーをもてないのではないかと思いますが、逆に、白人の俳優を主役級に何人も起用しなければ北米はじめ世界的な興行成功は見込めない、と考えると、これからのハリウッド映画のキャスティングは本当に難しいと思います。

       

      3)勧善懲悪がはっきりしていない

      『グレートウォール』は、怪物群から国を守るために戦う軍(と傭兵のマット・デイモン)という、敵と味方が非常にわかり易いストーリーで、お約束通り正義の味方の軍が最後に勝利を収めて終わります。

       

      対する「最後のジェダイ」では、悪の帝国vsレジスタンス軍という基本的な構図はあるものの、悪の帝国のリーダーを殺した主人公の1人が迷った末に帝国の次の支配者になってしまったり、レジスタンス軍は敗退に敗退を重ねて、ヒーローが次々と死んでしまったりと、「正義は必ず勝つ」という単純な勧善懲悪の論理が機能していません。

       

      『スター・ウォーズ』も最初の三部作までは勧善懲悪セオリーがはっきりしていましたが、ソ連崩壊後はアメリカ自身が仮想敵国を失い、『スターウォーズ』シリーズも徐々に単純な勧善懲悪映画から家族の物語に変容していきます。今回も親子や姉妹の感情のやり取りが描かれ、物質的に豊かになり、成熟した社会で最大の問題の一つとなった家族の問題が主要テーマとなっているのです。

       

      中国は豊かになったとはいえ、まだまだ成長の真っただ中にある国。文芸映画で家族が描かれることはあっても、娯楽大作に期待されるものはやはり観終わった後にカタルシスを感じられる「正義は必ず勝つ」ストーリーなのだと思います。

       

      世界的にヒットしているとはいえ、興行収入(ビジネスの成果)を考えると中国市場での惨敗は今後の『スター・ウォーズ』シリーズの成り行きに影響を与えかねません。

       

      ファンの1人として、次回作が中国でも商業的成功を収められ、同時に世界中の『スター・ウォーズ』ファンを満足させてくれるものになるよう期待しています。

      | 後藤百合子 | 世界経済 | 16:41 | - | - |
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