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「高木ラーメン」で考えた、炎上してしまったビジネスの活かし方
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    JUGEMテーマ:ビジネス

     

    ■本格的日本ラーメンを手頃な価格で、を掲げる高木ラーメン

    今週、所用でシンガポール老舗の工業団地Ang Mo Kioを訪れた際、かねてから気になっていた「高木ラーメン」に行ってきました。

     

    シンガポールではここ数年、日本のラーメンが大ブーム。

     

    草分けの味千ラーメンはもとより、麺屋武蔵、らーめんけいすけ、らーめんまる玉、一風堂など日本の有名ラーメン店が大量に出店してしのぎを削っています。もちろんシンガポール在住の日本人だけでなくシンガポール人にも大人気で、人気店にはお昼時に長蛇の列ができるほど。

     

    この高木ラーメンも「本格的日本ラーメン」が売りですが、他店との最大の違いは、最初から日本人を客として想定しておらず、メインターゲットを「平均的なシンガポール人」に絞っていることです。

     

    この戦略は、現在ある3店舗が、南洋工科大学、南洋理工学院、シンガポール国立大学に近い立地で若者が立ち寄りやすいこと(シンガポール国立大学はキャンパス内にあります)、また、価格が他の日本ラーメン店の税・サービス料込価格に比べて半分程度、替え玉に至っては日本円にして50円以下など、徹底した低価格戦略からも明らかです。

     

    私が立ち寄ったのは月曜日の13時過ぎでしたが、学生さんはまだ授業中のせいか、比較的年齢層が高い30代から50代くらいの男女が多く、女性1人だけで食事をしている人も4,5人みかけました。Facebookページによると、週末には長蛇の列ができることもあるようですが、この時間帯としてはまあまあの客入りと回転率。

     

    肝心の味はというと、スープは豚骨ベースのこってり系でいまどきの日本ラーメンっぽいのですが、自慢の自家製麺はかんすいが入っておらずコシがない中国の拉麺に近いもので、本格的日本ラーメンと呼ぶには少し躊躇するところ。私がリピートするかどうかは微妙ですが、もし店の近くの学校に通う学生だったら気軽に立ち寄れる価格とボリュームだと思いました。

     

    ■高木ラーメン、オーナー夫妻の前ビジネスとその挫折

    さて、ここまででしたら「へー、シンガポールに安い日本ラーメン店があるのね」で終わってしまうのですが、このお話には前振りがあります。

     

    というのも、高木ラーメンの20代のオーナー夫妻、アイ・タカギ氏とヤン・カイヘン氏には、過去“The Real Singapore”というサイトを運営し、人種差別的発言やフェイクニュースを流布した「Sedition(扇動罪)」に問われてシンガポール政府に逮捕され、服役した経歴があるからです。

     

    2015年に逮捕され、2016年3月までかかった裁判後、10か月の実刑判決を先に受け入れた日系オーストラリア人のタカギさんは、逮捕時に若干22歳。判決が下りたときには妊娠8週間め(その後流産)でした(ヤンさんもその後、8か月の実刑で服役。2人とも刑期短縮で出所)。

     

    裁判中は、イスラム教徒のペンネームを使って多くの記事を書いていたとされるタカギさんがシンガポール人ではなくオーストラリア人であること(もともとは日本国籍だったようです)、名門クイーンズランド大学に通いながらセンセーショナルな話題でビューを稼ぎ、莫大な広告収入を得ていた事実が次々と明らかになり、連日、新聞やテレビで報道されました。

     

    特に、年上の夫(当時は婚約者)のヤンさんがしじゅううなだれ気味なのに対し、タカギさんは毅然とした態度でポーカーフェイスを貫徹。しかも、裁判の真っ最中に「高木ラーメン」の開店を準備してマスコミに情報を流す、というビジネスに徹した姿勢にただ者ではない感を漂わせていました。

     

    このインタビュー記事によれば、最初は大学の授業が少なく暇をもてあましていたタカギさん1人で始めた無名サイトは、閉鎖に追い込まれる直前の4か月には月4万オーストラリアドル(約340万円)以上をコンスタントに稼ぎ出し、その収入でヤンさんの学費の他、2人の生活費やアシスタントたちの給料を支払い、30年ローンで購入した家の購入代金もすべて払い終えていたそうです。

     

    さらにこれに続く記事によると、タカギさんは有罪判決を受けて収監された前歴を隠すどころか、

     

    “If there’s a story you can link to it, you’re more familiar with it, and you’re more likely to eat it.”

    「もしもそのお店につながるストーリーがあったら、お店は身近なものになって、そこで食べてみたいという気が起きるわ」

     

    と、積極的にアピール。本来であれば消し去りたいはずの過去をオープンにすることによって、ビジネスの拡大を図り、このような取材にも積極的に応じていたのです。

     

    ■ネガティブな経験もビジネスのステップアップに

    オープンから3年あまり。高木ラーメンは順調に業績を伸ばしている様子で、Ang Mo Kioの本店もこれまでのホーカー(屋台村)から出て独立したお店を構えていました。また、Facebookページの投稿を読んでみると、若い夫妻が試行錯誤を繰り返しながら経営者として着実に事業を育てている様子がよくわかります。

     

    ”The Real Singapore”時代には朝9時から真夜中までずっと記事を書いてはアップし続けたというタカギさんですが、現在はラーメン店の発展に全力を傾けているのでしょう。このように私がタカギさんを身近に感じるのも、前述の彼女の言葉「ストーリーがあった」からに違いありません。

     

    20代前半という若さにして、普通の人が一生かかってもできないようなさまざまな経験を経たタカギさん夫妻の、今後のビジネスの行方が非常に楽しみです。

    | Yuriko Goto | シンガポール社会 | 14:56 | - | - |
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