ASIAN NOMAD LIFE

日本、香港、中国で生活・仕事をしてきてシンガポール在住8年目。
<< シンガポールは華人最南端の国 | main | 増え続けるシンガポールのインド人 >>
日本の国家公務員給与は本当に高すぎるのか?
0

    JUGEMテーマ:経済全般

    ■「日本の公務員給与が高すぎる」という偏見に対する私の見解

    森友学園問題にからみ国税庁長官を退職した佐川氏の退職金が4,999万円と公開され(一般個人の退職金額を公開するのもいかがなものかと思いますが)、高すぎると一部で批判の声が上がっています。

     

    また、国家公務員全体の給与が高すぎるという声も根強いのですが、トップ官庁の財務省で2,3位のポジションにある国税庁長官の年収が1,700万円程度が本当に高すぎるのか、森友学園問題や佐川氏の証言内容はまったく別として、私は大いに疑問に思います。その理由を挙げてみます。

     

    1.公務員賃金が比較的高いのは男女差が基本的にないから

    公務員といえば私が学生の頃から、一生働き続けたいと考える女性たちの憧れの職業でした。なぜなら、民間企業と違い基本的に男女差がない男女平等の賃金体系であり、産休制度なども民間企業と比べ格段に女性が優遇されていたからです。

     

    このまとめ記事は、日本と海外の平均給与と公務員給与を比べたもので、「公務員 年収 高すぎる」というキーワードでググるとトップに出てきます。各国を比較した上で日本の国家公務員給与は高い、ということになっているのですが、元になっている数字がよくわからず(出典サイトをあたってみても「地球の歩き方」などよくわからないサイトが出てきて数字は確認できません)、OECDの統計数字とはかけ離れています。

     

    <まとめ記事の公務員平均年収と国民平均年収> アメリカ合衆国 357万円(国民平均給与額325万円)イギリス 275万円(国民平均給与額240万円)フランス 198万円(国民平均年収180万円)ドイツ連邦共和国 194万円(国民平均年収205万円)

     

    <OECDデータの国民平均年間給与額> アメリカ合衆国 60,200ドル(644万円) イギリス 42,800ドル(458万円) フランス 43,000ドル(460万円) ドイツ 46,400ドル(496万円) 日本 39,100ドル(418万円)

     

    日本の場合は平均給与が他国と比べて低くなっていますが、これは女性の平均賃金が男性に比べて低く、また女性被雇用者の多くを占める非正規雇用のパートタイマーが平均賃金を押し下げているため。

     

    この記事によれば、2014年の男性正規被雇用者の平均賃金は532万円。基本的に公務員には男女差や労働時間が短い非正規雇用(臨時職員を除く)はないわけですから、元となる数字はこれを使わなければおかしいと思います。

     

    その上で、この総務省の統計をまとめたこの記事の一般職員の平均給与を見ると557万円で、民間とほぼ変わりません。これは当たり前の結果で、国家公務員の給与は民間と均衡するように人事院が勧告を行うからで、あまりにも高すぎれば引き下げられ、低すぎれば引き上げられるので差がつくわけがないのです。

     

    2.東証一部上場企業の役員と比べるとキャリア官僚の報酬は半分以下

    こちらの記事は、デロイトトーマツが調べた東証一部上場企業の役員報酬額の中央値を紹介しています(2017年)。

     

    それによると、会長が5743万円、社長が5435万円、副社長が4399万円、専務が3780万円、常務が3009万円。

     

    これに対し、政府発表のこちらの資料では、キャリア国家公務員の最高到達点である事務次官の年収が約2,270万円、次の局長クラスで約1,730万円。会長と事務次官、社長と局長を対比させると、民間に比べると事務次官で半分以下、局長クラスでは1/3以下で常務クラスにも遠く及びません。

     

    各省庁のトップも東証一部上場企業トップも、多くは東大や京大という最高学府で机を並べた同期でしょう。その中でも優秀な人ほど国家の将来を担うキャリア官僚としての道を目指したはずです。

     

    ところが、30年もするうちに一般企業の道を選んだかつての同窓生たちとこれだけ給与面で差がついてしまうのです。これでも果たしてキャリア国家公務員の給料は高いといえるのでしょうか?

     

    また、退職金(一般企業の場合は役員退職慰労金)については最近も廃止している企業も多いですが、役員になる前に一般社員としての退職金はきちんと支払われますし、残している企業(比較的役員報酬が低い企業が多い)では、

     

    役員報酬月額×在任年数×功績倍率+功労加算金=役員退職慰労金

     

    この公式を使うと(通常の功績倍率は会長・社長が3.0倍、専務2.5倍)、例えば月収300万円(年収3,600万円)で6年間社長を務めた場合、役員退職慰労金が5,400万円と局長クラスの退職金とほぼ同額となり、さらに会長職になればまた慰労金が支払われることになります(前述したように役員になる前の退職金は別勘定です)。

     

    佐川氏の約5,000万円の退職金が高いと思うか、と聞かれたら「一般サラリーマンの平均に比べたら若干高い。しかし、彼らと同程度の能力や職歴をもつ一般企業の役員と比べたら非常に低い」と私でしたら答えます。

     

    ■公務員の汚職を防ぐには給与を高くするのが最善策

    アジアの中でも非常に公務員の汚職が少ない国(地域)として認識されているのが香港とシンガポール(アジアでは1位シンガポール、2位日本、3位香港)。その理由は第三者機関による徹底した汚職の摘発によるところが大きいですが、もう一つは国家公務員の給与、特に汚職が可能な立場にあるキャリア官僚などの給与が高いのも挙げられると思います。

     

    これは旧イギリス植民地全般にいえることですが、もともと植民地経営にあたる役人には母国から派遣されたイギリス人が多かったため、公務員は給与体系もその他福利厚生も非常に恵まれていることが特徴でした。

     

    私が香港に住んでいた中国返還の1997年以前には香港政庁にも多くのイギリス人が勤務していて(ほとんどは返還前にイギリスに帰国しましたが)、民間とはケタが違う高給をはじめ、ヴィクトリア湾を見下ろす高給アパートメントの官舎、子どものイギリス留学費用などさまざまな特権を付与されており、香港人の高級官僚も同じ特権を享受していました。

     

    シンガポールはそこまで極端ではないですが、この投稿サイトでもわかるように民間に比べて給与が悪いことは決してなく、中途で民間から公務員になって高給をはんでいる人もいます。また、キャリア官僚では数千万円から億という民間に負けずとも劣らない金額の人も珍しくありません。そのくらいの給料を払わないと優秀な人材を惹きつけられないのです。

     

    逆に、アジアの多くの国で公務員の汚職が非常に多いのは、公務員の給料が民間に低すぎるため汚職をしないと(例えば交通違反の切符を切る代わりに賄賂を渡すとか、通関書類の間に札を挟んでおくとか)普通の生活が成り立たないせいだと言われます。彼らにとって、賄賂のお金はアメリカのウェイトレスのチップのようなものなのです。

     

    日本では通常の汚職が少ない代わりに非常に長い期間にわたって、公務員の天下りが行われてきました。この天下りによって、役所と強いパイプをもつキャリア官僚たちの民間との賃金格差をある程度埋めることができていたわけです。

     

    この制度は正式に廃止されにもかかわらず、実質的には継続されていましたが(前川元文部省事務次官はこの責任をとって辞任)、年金支給年齢が繰り延べられる現在、今後はキャリア官僚たちの天下り以外の再就職先をどう確保していくかが議論されなくてはならない状況になっていると思います。

     

    汚職がなくクリーンで、しかも有能な人を公務員として私たちが雇用したければ、当然、そういう人々を惹きつけられるだけの給与や退職金、福利厚生を含めたパッケージが必要なわけで、政治の問題でも公務員が個人攻撃され、プライバシーにかかわる退職金額まで公開され、退職後も再就職先がない、というような職場では誰もそこで働きたいと思いたくなくなります。

     

    今後日本の困難な時代を乗り切るために粉骨砕身して国家のために働く公務員(Civil Servant=公民の召使)が安心してその職務に専念できるように、「公務員の給与が高すぎる」などという根拠レスなバッシングはぜひやめてほしいと思います。

    | 後藤百合子 | グローバルビジネスと人材 | 18:40 | - | - |
    スポンサーサイト
    0
      | スポンサードリンク | - | 18:40 | - | - |
        12345
      6789101112
      13141516171819
      20212223242526
      2728293031  
      << May 2018 >>
      + PR
      + SELECTED ENTRIES
      + CATEGORIES
      + ARCHIVES
      + MOBILE
      qrcode
      + PROFILE