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マレーシア映画『光 Guang』にみる障がい者と健常者の共存の秘訣とは?
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    昨年公開された(シンガポールでは先月から公開)マレーシア映画『光 Guang』を観てきました。

     


    電影《光》正式預告 11/29 全馬上映 "GUANG" Official Trailer // In Cinemas 29 Nov 2018

     

    こちらはこの映画の元になった2011年の同名のショートフィルム。監督自身が主人公の兄を演じていて、あらすじがわかります。


    Guang (光) - A musical tale about Autism, based on a true story. // Viddsee

     

    主人公、文光は自閉症の27歳。母と死別後、故郷から首都クアラルンプールに出てきて、弟と一緒に暮らしています。しかし、自閉症をもつ彼は何度面接しても仕事が決まらず、何とか弟が知人に頼みこんでもらった仕事も同僚とコミュニケーションができないため、すぐに首になってしまいます。

     

    そんな彼が憑りつかれたのが、グラスやガラスの器の収集。これらを叩いたときに出る音をメガヘルツ単位で言い当て、その音で幼い頃の母との思い出の音楽を再現することに固執していきます。

     

    しかしその熱中によってさらに兄弟2人の日常生活は危機に瀕し、ある事件をきっかけにたまりかねた弟が日頃の憤懣を文光にぶつけ、文光は家から姿を消してしまいます。

     

    必死に兄を探し回る弟。その捜索の旅の中で、弟は母との思い出をたどり、兄がかけがえのない家族だということを再認識。そしてある日ひょっこり家に戻った文光が、グラスを使って創り上げたものを見てとめどない涙を流す弟…。

     

    自閉症をもつ兄と弟の物語はダスティン・ホフマンとトム・クルーズが演じた『レインマン』が有名ですが、この映画ではさらにアジア的な濃密な家族愛を描き、また、彼らに寄りそうように手を差し伸べるクアラルンプールの華人コミュニティーの様子が語られます(実際にこの映画は自閉症の兄をもつクエ監督の半自伝的作品であり、映画の終わりには実在の兄が撮影現場で楽しそうにキャストやスタッフたちと過ごしている様子が加えられています)。

     

    「兄の笑顔にいつも癒されてきた」というクエ監督ですが、この映画を作った目的について、

     My biggest wish is that this film can really touch the audience and raise public awareness on the issue of autism

    このフィルムが観客の心に届き、自閉症問題に関心をもってもらうことが最大の願い。

    https://www.asiaone.com/entertainment/guang-award-winning-malaysian-film-even-it-hits-cinemas

    と語っています。

     

    例えば、あるシーンに兄を「白痴 retarded」と呼ばれて怒り狂う弟の様子が描かれますが、恐らくこれは実際にあったことではないかと推察します。というのも、以前、ADHDの我が家の娘が家に帰ってきて「今日、友達から"retarded”と言われた」と報告したときに夫が怒り狂ったのをよく覚えているからです。

     

    また、シャツのラベルをすべて自分で切ってしまうところとか(体にあたったときに不快と感じるためだろうと思います)、他の人と弟が会話しているときにいきなり会話に入ってきて関係ない話をしてしまうところとか、自分がどうしても欲しいと思うものがあると、悪いとわかっていてもそれを黙ってもってきてしまうところとか、あまりにも共通点が多く、やはり自閉症とADHDは根本的には同じ障がいではないかと感じざるをえませんでした。

     

    (もう一つ、自閉症児の特徴の一つと言われているものに、幼児時代のつま先立ち歩きがありますが、ADHDの我が家の娘もつい2年ほど前まで、何度注意してもつま先立ち歩きが治りませんでした)

     

    このように、自閉症やADHDなどの障がいをもつ人々が、どうしてそのような行動をしてしまうのか? そして家族として、隣人としてどう彼らを理解し、彼らとどのように共存していけるのか、その答えを模索したのがこの映画です。

     

    物語は、文光がその音に対する鋭敏な才能を活かしてぴったりの職場に就職してハッピーエンドとなるのですが、残念ながら、現実の世界ではそのような幸福な結末を得られる人々は稀だと思います。

     

    先日、中高年の引きこもり61万人というかなりショッキングな内閣府の調査結果が発表されて大きな問題となっていますが、おそらくこの中には少なくない数の自閉症やADHDなどの障がいをもつ人々が含まれているはずです。文字通り、障がい者本人とその家族は、一生涯障がいと共に生きていかなければならないのです。

     

    しかしそのような状況の中でも、障がいをもつ家族のメンバーとそうでないメンバーが助け合い、さらにその家族を周囲の人々が見守り、励まし、必要があれば力を貸すという社会の実現こそが、この映画の伝えたいメッセージではないでしょうか。

     

    失踪した文光を探しに旅に出る弟のために車を出し、仕事を休んで何日も捜索につき合って「なぜ自分だけが犠牲にならなくてはならないんだ?」と怒りをぶつける弟を「でも文光はかけがえのない兄じゃないか?」とこんこんと諭す職場のボス。

     

    兄弟だけの物語でなく、彼や兄弟をとりまくその他の周囲の人々の存在もまた、この映画の重要な伏線になっているのです。障がいを家族だけの問題ととらえるのではなく、周囲が積極的に障がい者がいる家族を支えることも、この問題を考えるうえで非常に重要なファクターなのだと思います。

     

    最後になりましたが、健常者(100%健康な人などいませんのでこの呼称が妥当であるとは思えませんが、他に適当な言葉が思いつかないので便宜的に使います)にはわかりにくい自閉症の人々の思考回路、彼らが実際にどんなことを考え、どのように世界を認知をしているかの一例がわかる本をご紹介します。

     

     

     自閉症やADHDなどの障がいをもつ人々が決して「白痴 reterded」などではなく、私たちとまったく同じ人々であること、ただそのinputとoutputの仕方が若干異なっているだけだということがとてもよくわかる本です。

    | Yuriko Goto | 映画評 | 11:13 | - | - |
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