ASIAN NOMAD LIFE

日本、香港、中国で生活・仕事をしてきてシンガポール在住8年目。
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高校教育に複式簿記選択科目制を!
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    ■石原元都知事の最大の功績
    石原元東京都知事が在任中に行った政策の中で意外と知られていないのが、一部では絶賛されている東京都会計への複式簿記の導入です。石原元都知事は一橋大学時代に公認会計士を目指していただけのことはあり、税金の無駄遣いをやめて東京都の財政を健全化するには複式簿記導入しかない、と長い準備期間をかけて単式簿記から複式簿記に変えたそうで、本人も「自分の一番いい仕事だった」とこの会計制度改革を評価しています。

    複式簿記は営利団体である会社の会計に広く使用されている会計処理方法で、複式簿記を使って作成される決算書は会社の状態を非常に明確に表してくれますので、「経営者の成績表」とも言われます。

    複式簿記の損益計算書(P/L)、貸借対照表(B/S)、キャッシュフロー計算書(C/F)の3表を使ってさまざまに導き出される数字を見れば、その会社が現在、どんな状況にあるのかが一目でわかり、また、時系列で数年分を見れば経営者がどのような経営をしてきたのかがよくわかります。なぜかというと、複式簿記にはごまかしがきかないからなのです。

    「人類最大の発明の一つ」とも呼ばれる複式簿記はルネッサンス期のイタリアで広まったとされますが、当初の使用目的は使用人にお金をごまかされないためだった、という説もあるくらい完成度が高いシステムです。私自身も経営者になってすぐに日商簿記3級の講座に通いましたが、慣れないうちは表を作るのにたいへん苦労しました。少しでも間違えると数字が合わなくなってしまうのです。

    ■複式簿記を使えばお金のことは何でもわかる
    会計をごまかそうと思っても下手に操作すると必ずおかしいところが出てきますので、税務署が脱税の調査に入るときもまずこの財務諸表を細かく見てから、不審なところのある数字があるとその元となっている総勘定元帳や伝票などを当たり徹底的に調査しておかしいところを洗い出します。複式簿記システムというのはそのくらい厳正さを要求されるものなのです。逆に単式簿記では、金銭の出し入れやその結果としての財産目録だけの内容になってしまうので、多少ごまかされていても気がつかずやり過ごされてしまいます。

    以前、横領事件が起きたある任意団体の会計報告を数年分まとめて見たことがありますが、多くの任意団体の例に漏れず単式簿記を採用しており、これでは横領が見抜けなくても仕方ないなと思いました(実際には監査人が銀行通帳さえ確認しない杜撰な監査しかしておらず、複式簿記でも見抜けるはずはなかったのですが・・・)。

    香港やシンガポールには政府の中に汚職を摘発する専門の独立機関があります。同じ中華系の国民でありながら中国と違い香港やシンガポールに汚職が非常に少なく、クリーンなイメージが強いのはこの機関の働きによるところが大きいのは衆目の一致するところです。

    私の友人にこの香港の廉政公署(ICAC)に勤務するキャリア女性がいるのですが、非常に控えめで無口な女性で、一見するととても敏腕捜査官には見えません。実際の彼女の仕事は映画のアクションスターのように銃をもって犯人と対決するのではなく、毎日オフィスに籠って膨大な数の書類の中から不審な数字をみつけだし、それを検証することです。彼女は会計のプロフェッショナルであり、汚職のような問題も複式簿記会計のシステムがあれば部屋から一歩も出なくても手に取るようにわかってしまうのです。

    ■これからの生活に不可欠な複式簿記の知識
    現在では日本でも国や自治体のほとんどが複式簿記を採用しているようです。私たちはタックスペイヤー(納税者)として国や自治体がどのようにお金を使っているのか、ムダはないのか、成果がどれだけ出ているのかを把握し、選挙やパブリックコメントなどで意見を表明していく責任があると思いますが、それには会計諸表を読めるスキルが必要不可欠です。

    個人の生活では、経済が右肩上がりで年金資金も潤沢だった時代に家計を考える際には収支(損益計算書)だけを見ていればよかったのですが、前回も書いたように収入が定期的に見込まれる現役引退後、20年〜30年以上も生きてしまう可能性が高くなり、少子高齢化で年金も当てにならない時代に生きる私たちには、減価償却(もっている財産の価値が目減りしていくこと)も含めた資産と負債のバランスを知る貸借対照表の知識も必要になってきます。

    さらにこれからの社会では年金を含めた公費による生活保障が大幅に削減されていくことが想定されますので、その時代を生き抜くためには若い頃から始める投資活動も必要になってくるでしょう。「オマハの賢人」と呼ばれて投資の神様と崇められるウォーレン・バフェットが言うように、投資でお金を貯めるために最も重要なのは時間です。できるだけ早くから投資をすればそれが最大の自衛手段になります。そして投資にも求められるのはやはり、投資する企業や国の財務状態を読み解くための知識なのです。

    ■複式簿記を高校の選択科目に!
    このように、これからの非常に不安定な時代を生き抜くためには会計諸表を読む力、つまり複式簿記の知識が必ず必要になってくると思われます。しかし、どういうわけか日本の学校教育ではほんの一部の商業学校を除いてほとんどこの複式簿記を教える学校はありません。

    私は高校卒業以降、微積分やフレミングの法則を仕事やプライベートで一度も使ったことはありませんが、複式簿記の知識は毎日のように使っています。「この知識をもっと早く身につけていたら私の人生はずいぶん違ったものになっただろうな」と思うこともしばしばです。自分の子供にはできるだけ早いうちに学んでほしいと思います。

    簿記3級程度の複式簿記は高校の授業で15〜20時間ほどあれば十分身につく知識ですし、それほど習得が難しいわけではありませんので、これからの高校教育には、ぜひ選択科目の中に入れてほしいと思います。
    | 後藤百合子 | 家計管理 | 15:26 | - | - |
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