ASIAN NOMAD LIFE

日本、香港、中国で生活・仕事をしてきてシンガポール在住7年目。
<< 転職を繰り返す人を採用したくない3つの理由 | main | 上川陽子新法相にみる女子校力 >>
転職をすると給料が下がる理由
0
    ■アジアで一番転職が多い日本女性
    前回経営者が転職を繰り返す人を雇いくない理由を書きましたが、転職、特に女性の転職についてリクルートワークス研究所が重要な研究成果を公表しています。

    この論文、荻原牧子氏の「彼らは本当に転職を繰り返すのか」は、アジア8か国と日米の20代、30代のビジネスマンの転職に関するアンケート結果をもとに書かれています。これによると、日本でもアジアでも、転職を繰り返す人は一部で、彼らが何度も転職を繰り返すために全体としての転職率が上がっている、という結果が出ています。日本は終身雇用制度があるけれど、海外では転職でステップアップが当たり前、という通説は実は間違っていて、海外でも転職をまったくしない、ほとんどしない人が多いことがわかります。

    逆に注目すべきなのは、30代日本女性の転職率が調査対象国中最も高いことです。転職経験がまったくない人はわずか22%にとどまり、インド女性の50.4%、アメリカ女性の41.7%、韓国女性の39.4%と比べると約半分しかいません。また、転職を繰り返す人が多いタイ(25.4%)、インドネシア(24.1%)、マレーシア(27.9%)の女性と比べても日本女性の転職率の高さが目立ちます。

    ■転職で給料が下がっていく現実
    転職の理由は何でしょうか?

    発展途上国ではインフレ率が高いことが多いため、生活のために少しでも給料が高い会社に転職する人が絶えません。日本を除くアジア8か国とアメリカの転職理由の一番は「賃金への不満」で、インドの37.1%を筆頭に中国、タイ、マレーシア、インドネシア、ベトナムでほぼ30%前後、比較的割合が低いアメリカ(18.1%)や韓国(14.8%)と比べても、日本ではわずか5.1%にすぎず、突出して低くなっています。つまり、給与に不満がないのに転職する人が非常に多いということです。

    逆に日本人の転職理由で多いのは、「人間関係への不満」(10.2%)です。他国は1.8%〜5.2%ですから一番低い国の5倍、高い国とも2倍の開きがあります。

    私が最も問題だと思うのは、他国では半数以上、特に中国女性では約85%が転職により給与が増えたと回答しているのに比べ、日本女性では転職して給与が10%以上減った人が平均で41.4%と非常に多く(10%以上給与が増えた人は28.3%)、特に転職2回目以上では増える人よりも減る人のほうが圧倒的に多くなることです。

    ■妊娠・出産の好機を転職で逃す可能性も
    もう一つ気になるのが、転職する人のほとんどが6年以内に最初の会社を離職していることです。6年以上勤めてから転職した人は全体のわずか10%に過ぎず、大卒ですと23歳〜29歳という、仕事を一番覚えていく時期、また女性にとっては妊娠・出産の一番望ましい時期に転職していることになります。

    この時期に転職することのデメリットは何でしょうか?

    20代というのは職業人としての基礎を作る非常に大事な期間です。「石の上にも3年」と言いますが、3年あれば一つの仕事をだいたいマスターし次のステップに進むことができます。これを数回繰り返し、30代になってやっと学んできたことを実際に応用し自分自身の仕事スタイルを創り上げる時期に入るのです。

    しかし調査の結果では、70%近くもの女性がこの時期に転職を経験しています。会社を変われば仕事のスタイルや仕事に対する姿勢も新しい会社に合わせていかなければなりませんので、一つの会社でステップアップしていく以上の負荷がかかります。さらに同僚や上司など社内の人間関係やお客様との関係など、新しく人間関係を築いていくストレスやプレッシャーも加わるでしょう。つまり仕事そのものだけでなく、それ以外のことでも大変になるということです。

    また、転職をしてすぐの妊娠・出産を躊躇する女性も多いと思います。

    例えば6年以上勤務した会社で「妊娠しましたので育児休暇を取らせてください」と上司や同僚に伝えるのはそれほど苦にはならず、祝福されるケースがほとんどだと思います。しかし、転職して1,2年しか経たないうちに育児休暇を申請したら同僚や上司からの風当たりがきつくなるのは目に見えていますので、つい先送りになってしまうのではないでしょうか。実際、私も面接時には出産適齢期の女性に今後の人生計画を聞くようにしてますが。ほとんどの方は「数年間は子育ての予定はありません」と即答します。

    ■安心して仕事と子育てが両立できるのは長く勤めている職場だからこそ
    以前の記事にも書きましたが、女性が正社員として働くのが当たり前の北陸では、多くの女性が同じ職場で長く働き続け、転職はまれです。私が直接知っている女性たちは平均で2〜3人の子供を育てており、何度も出産・育児休暇を取得しては元の職場に復帰し着実にキャリアを積み重ねています。

    海外でも同様です。例えば私が20年ほど前に働いていた香港の会社のオフィスでは、当時の女性スタッフの8割が今も同じ職場で働いていて、その半数は仕事をしながら子育てをしています。安定した職場と仕事があれば、キャリアアップをしながらの子育てもぐんと現実味を帯びてくるのです。

    ■転職は自分のライフプランの中で慎重に考えて
    「もっと自分に合った職場があるのではないか」「自分が人生で求めているものはこの仕事ではないのではないか」と20代の女性が焦る気持ちは、私自身も経験したことがあるのでよくわかります。しかし自分の可能性を求めて転職を繰り返すことによって給与は下がり、出産のチャンスも逃してしまうのであれば、本末転倒ではないでしょうか?

    昔は男女限らず「一つの職場に長く勤め続けること」が美徳とされました。「会社を辞めたい」と親や年長者に相談したら必ず「どこに行っても同じなのだから、今の職場に勤め続けなさい」とアドバイスされたものです。

    しかし1980年代にリクルート社が発行する『とらばーゆ』が創刊されてから、転職は何かカッコいいことのように捉えられ、転職したら現在の問題がすべて解決されるような風潮が生まれてきたのではないかと思います。果たして本当にそうなのでしょうか?

    すべての転職が悪いとは言いませんが、もしも「もっと違う世界を知りたい」「ここではない違う会社で働いてみたい」というような漠然とした理由で転職を考えるのなら、もう一度立ち止まって転職によるメリットとデメリット、今の職場にとどまるメリットとデメリットをよく考えてみてほしいと思います。

    転職は一瞬ですが、人生は何十年も続きます。刹那的に会社を辞めて後で後悔しても後悔先にたたず。辞めるのはいつでもできますが、まずその前にもう一度自分のライフプランを再考し、最も自分の人生にプラスになる選択をするのが賢明な女性だと思います。
    | 後藤百合子 | 転職 | 18:08 | - | - |
    スポンサーサイト
    0
      | スポンサードリンク | - | 18:08 | - | - |
       123456
      78910111213
      14151617181920
      21222324252627
      28293031   
      << May 2017 >>
      + PR
      + SELECTED ENTRIES
      + CATEGORIES
      + ARCHIVES
      + MOBILE
      qrcode
      + PROFILE