ASIAN NOMAD LIFE

日本、香港、中国で生活・仕事をしてきてシンガポール在住7年目。
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育休がふつうになってもなぜ働くお母さんが増えないの?
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    ■育児休暇取得は30ポイントの伸びにもかかわらず、ほとんど変わらない出産後女性の就労状況
    一部に「マタハラで女性が育児休暇を取りにくい」というという声があるようですが、私の聞く限りではまったく逆で育児休暇取得率は大幅に上がっており、大企業や中堅企業でも少し大きい企業になると職場の中で常に誰かが育児休暇を取っているような状態だそうです。今年8月の「日経ビジネスオンライン」では、三菱東京UFJ銀行に、今年3月末時点での産休・育休取得者が1300人以上おり、およそ10人に1人が取得していたとレポートしています。

    平成24年度の厚生労働省の「雇用均等基本調査」では、女性の育児休業取得率は15年前の1999年には56.4%だったのが、リーマンショック後でピークの2008年には90.6%となり、直近の2012年度でも83.6%と約30ポイントも上がっています。

    しかし、「国土交通白書2013」によると第1子出産後の退職率は2000年〜2004年の40.6%と比較して2005年〜2009年では43.9%と逆に増えているのに、同時期で育休利用して就業継続している女性は14.8%から17.1%とわずか2.3%しか増加していないのです。

    いったいこの差は何なのでしょうか?

    私には答えは1つしか思いつきません。それは、多くの女性が第一子出産後、育児休暇を取得してから退職している、ということです。

    ■増える保育園数と定員充足率
    逆にこの間、保育園数と定員充足率は増加の一途をたどっています

    2005年に22,000強だった保育所の数は、2013年には24,000を超えまし
    た。また、定員充足率は97.2%と定員が入所児童数を上回っており、「保育園の数が不足しているので働けない」という声は一部の都心など人口が集中して保育園が不足している地域のみにしか当てはまらないと言えます。

    これは横浜市を代表として各地自治体が本気で待機児童の問題に取り組んできた成果であり、実際に、保育行政が充実している自治体は人口流入が起こっているなど、よい意味で社会インフラが整いつつあるといっていいでしょう。

    このように育児休暇は8割以上の女性が取得し、保育園も増えている、それなのに多くの女性が第1子出産後に退職している。これが「マタハラ」社会日本の現実です。

    ■厚い育児休暇中の手当
    現在育児休業を取得すると育児休業給付金という制度があり、取得者は厚生年金と健康保険の支払いを免除される(支払ったとみなされる)ほか、育児休業前に12か月以上その会社で働いていれば休業前の所得の約50%の給付金が交付されます(当初半年は2/3、67%)。

    さらに育児休業後、自己都合退職をすれば、失業給付金も受給が可能。驚くべきことにネットでは「退職するつもりでも育児休業はぎりぎりまで取得して、失業給付金の受給資格の日数が不足ならば数か月だけでも復職しよう」と指南するサイトまであります。

    このように現行の育児休業制度は、育児休暇後働く気がない人でも、育児休暇を取得しなければ損をする、というものになっています。

    ■他の社員が支える育児休暇取得中の職場
    いっぽう育児休暇取得者を待つ職場の状況はどうでしょうか?

    女性事務職の多くを派遣労働者に切り替えている大手企業や有期雇用者を大量に採用する公務員は別かもしれませんが、企業全体の90%を占め、労働者の70%を雇用する多くの中小企業ではそんなうまい具合にはいきません。

    「育児休業中期間のみの雇用」で求人を出して応募してくる人はまずありませんし、一人何役もこなさなくてはならない業務を派遣社員に教える手間もかけられないことが多く、いきおい多くの中小企業では育児休業取得者の仕事の穴埋めは他の社員が負担することになります。そして、ただでさえ忙しい業務の中、1年以上も協力しあいながら何とか頑張って仕事を回しているのが現状なのです。

    いまかいまか、と育児休業取得者の帰りを待ち続け、やっと復職してくれたと思ったらすぐ辞めてしまう。こんな現状が続けば雇用者も他の社員も「どうせ退職するつもりなら育休前に退職してほしい」と思ってしまっても仕方のないことではないでしょうか?

    ■子供と働く女性はかけがえのない社会の宝
    一昔前、「子供は家の宝」でした。しかし、少子高齢化が進む現在、子供は社会全体の宝になっています。同様に、子供がいてもいなくてもがんばって働いてくれる女性たちも、これからの日本社会を支えてくれるかけがえのない貴重な社会資産です。

    多くの真面目な経営者や管理職たちは、女性たちがこれからもどんどん会社の中で活躍し、会社を支えてくれる人たちになってくれるのを期待すると同時に、子供をもつ女性たちが無理せず自然体に働けるような職場作りに日々、腐心しています。

    しかし、現行の育児休業制度では、あまりに職場側に負担がかかりすぎる、ということがしっかりと検証されていないのが実情です。

    ■育児休業制度の検証と改革を
    まず国には、育休後に退職する人たちの追跡調査を行い、この制度が十分に機能していない原因を把握し、それに対する改善策を至急検討・実施してほしいと思います。きちんと職場復帰している人にとっては当然の手当でも、そうでない人にもばらまきをしているのであれば、返還も含めて貴重な公費(育児休業手当等は雇用保険から支給)の使途の改善が必要です。また、復帰したいと思ってもできない人がいるのであれば、その理由をつきとめて改善するべきです。

    また、前述の三菱東京UFJ銀行やダイキン工業をはじめとして、一部企業の中に、育児休業期間短縮の動きがあることにも注意を払ってほしいと思います。現行では1年ですが、本当にすべてのケースで1年の休業が必要なのでしょうか? 女性の社会進出が進んでいる香港やシンガポールはもとより、女性の正社員比率が全国最高の福井県でも私の知る限りでは産後休暇は6か月程度が普通で、1年間も育児休暇を取る人はほとんどいません。また、アメリカでは出産休暇が3か月しかないそうです。休業が長引けば長引くほど職場の負担が大きくなるのと同時に、本人の復帰も難しくなっていきます。休業期間についてもぜひ再考してほしいと思います。

    最後に、育児休業取得中の代替要員を補充する人材バンクなど、中小企業への人的な補助もぜひ検討してほしいと思います。地方自治体レベルで子育て後の再就職支援を積極的に行っているところもありますが、例えばそのような人材を活用して短期間ブランクを埋めてもらい、その後、他の企業に就職できるようにするなど、やり方はあるはずです。

    本来、女性にとって女性は敵ではなく、強い味方であったはずです。妊娠中、子育てで大変なとき、「お互い様」と自然に助け合ってきたのが日本の伝統的な美徳でした。「マタハラ」と声高に叫ぶのではなく、ただすべきはただし、足りないところは新たに制度を作って補い、もっともっと多くの女性が自然体で働き、産み、育てられる社会になってほしいと願っています。
    | 後藤百合子 | 女性の働き方 | 18:18 | - | - |
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