ASIAN NOMAD LIFE

日本、香港、中国で生活・仕事をしてきてシンガポール在住8年目。
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トヨタ自動車空前の黒字でも日本人の給料が上がらない理由
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    ■トヨタ値下げ要請見送りで下請け企業の給料アップ!?
    10月25日付の日経新聞にトヨタ自動車が2014年度下半期の下請け企業への値下げ要求を見送る、という記事が掲載されていました。
     トヨタ自動車は継続して調達する部品の購入価格について、2014年10月〜15年3月分は取引企業に値下げを求めない方針を固めた。年2回の価格交渉で一律に値下げを見送るのは初めてとみられる。数万社に及ぶトヨタの全ての取引先に値下げ見送りの恩恵が広がれば、国内の景気回復を後押しする賃上げなどにつながる可能性がある。

    「国内の景気回復を後押しする賃上げなどにつながる可能性がある」と書いてありますが、本当にそうなのでしょうか?

    記事はさらに続きます。
    足元の円安で輸出採算が改善することなどに伴い、トヨタの14年4〜9月期の連結営業利益(米国会計基準)は1兆3000億円程度と過去最高を更新したもよう。15年3月期も2期連続で最高益を更新する見通しだ。
     一方、電気料金の引き上げや円安による資材費の上昇などに苦しむ中小企業の業績は低迷している。14年10月〜15年3月分の部品の価格を決める交渉では9月時点で平均1%を切る値下げを求める計画だった。この値下げを見送ることで本来生じるはずの数百億円の収益改善分を取引先に還元する。


    ■トヨタ空前の黒字でも上がらない下請け企業の部品価格
    トヨタの値下げシステムは業界では有名で、毎年2回必ず部品を納入する下請け企業にコストダウンを要求するものです。つまり、下請け企業はトヨタに対し同じ商品を納品しているにもかかわらず、販売価格は毎年2回ずつ確実に下がっていくのです。値下げ要求はその車種が販売中止になるまで続きますので、5〜7年程度は同じ品質の同じ商品であるにもかかわらず、下請け企業の部品価格は下がり続けることになります。

    もちろん販売価格は日本円ですから、下請け企業は円安の恩恵はまったく受けません。逆に円安により円ベースでは樹脂や金属などの原料価格、そして電気料金が大幅に上昇していますので、その分のコストアップも含めて決められた価格の中でやり繰りしていかなければなりません。

    記事には「この値下げを見送ることで本来生じるはずの数百億円の収益改善分を取引先に還元」と書いてありますが、これはトヨタの立場にたってみた話で、下請け企業にしたら「製造原価は上がっているのに販売価格は上がらないどころか下がっている」状況に変わりはないのです。こんな状態で、下請け企業が賃上げできるはずがありません。

    ■円安と海外生産拡大で過去最高益に
    もう一つ、トヨタ自動車の最高益ですが、実はこちらもほとんど日本には関係ありません。

    トヨタ自動車のHPによると、トヨタ、ダイハツ、日野を合わせたグループ全体の自動車の輸出台数は、過去5年間一貫して減り続けています。

    2010年 484万台
    2011年 446万台(地震の影響で生産台数減)
    2012年 480万台
    2013年 467万台
    2014年 372万台(1〜10月までの合計)

    いっぽう、海外でのトヨタ車の生産は増加の一途をたどっています。

    2003年には海外生産台数256万台、国内生産台数352万台と国内のほうが100万台ほど多かったのですが、2007年には海外431万台、国内423万台と逆転。この傾向は猛スピードで進み、わずか5年後の2012年には海外524万台、国内349万台と海外生産が国内の1.5倍となっているのです。

    ですから、トヨタの最高益も国内で稼いだものではなく、海外での利益が大部分を占めるといっても過言ではないでしょう。この場合も、国内のトヨタ社員の給料が大幅に上がるとはとうてい考えられません。稼いでいるのは日本の社員ではなく、海外のトヨタの社員なのですから。

    ■国は原点に帰って国内産業育成を
    トヨタ自動車1社をとってみても、現在の日本の産業構造では「円安→輸出増→従業員の給与アップ」という図式が当てはまらないのは明らかです。過去20年近くにわたり国内での産業育成をないがしろにし、「企業の海外生産を後押しする」政策を続けてきた結果が現在の国内不況につながっているのです。

    昨日の報道によると、官民ファンドのクールジャパン機構はラーメン店の一風堂に10億円以上の資金提供を決めたそうですが、非常に残念だと思います。なぜなら、サービス業の輸出は日本国内での雇用を産まないからです。同じ税金を使うのであれば、ぜひ日本国内での安定した雇用を創出し、かつ輸出につなげられる企業に使ってほしいと願います。
    | 後藤百合子 | 日本経済 | 18:35 | - | - |
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