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ASIAN NOMAD LIFE2015.10.31 Saturday
黒字企業の設備投資強要より、赤字企業の業績改善を重点政策に
JUGEMテーマ:経営のヒントとなるニュースを読み解く
■成果上がらぬアベノミクスに苛立ちを隠せない安倍政権安倍政権の目玉政策であるアベノミクスの成果がなかなか上がりません。 日銀の黒田総裁は30日の記者会見で物価上昇率2%の政策目標(もともとは13年4月から2年という目標だったのですでに期限切れ)を2016年前半からさらに繰り延べして「来年後半」としました。いっぽう「物価が上がらないのは賃金が上がらないから」と、政府は昨年と今年、2年連続で企業に賃上げを要請。多くの企業が賃上げに踏み切りましたが、それでも目標達成にはほど遠く、新たなターゲットとして、黒字企業に内部留保を取り崩して設備投資に回すよう圧力をかけ始めています。
10月28日付J-CASTニュースではこのように伝えられ、安倍政権と財界の蜜月時代も終焉を迎えるのでは、との危惧を示しています。 ■「ダム式経営」で内部留保を推奨した松下幸之助と感銘を受けた稲盛和夫 甘利大臣に先立つ9月には、麻生財務大臣が、企業は法人税減税による増益分を「配当、賃金、設備投資に回さなければおかしい。内部留保に回したら意味がない」と述べています。2月には企業の内部留保が増加していることについて「まだカネをためたいなんて、ただの守銭奴にすぎない」とまで発言しました。 どうも安倍政権からみると、企業も国民もとにかくどんどんお金を使い、貯蓄(内部留保は企業の貯蓄です)も節約もしないのが美徳のようですが、日本の多くの経営者はそう考えてきませんでした。その代表ともいえるのが「経営の神様」パナソニックの創立者松下幸之助氏です。 松下氏が提唱した「ダム式経営」は、資金、人材、技術のダムを作って蓄え、不測の事態が起こったときにはダムの水を少しずつ使うように蓄えを取り崩しながら経営をしていかなければならない、という経営哲学です。企業の内部留保とはまさしくこの「資金」にあたります 京セラの創業者、稲盛和夫氏は創業間もなくのまだ資金繰りに苦労していたころ、松下氏の講演を聞き、どうやってダムを作るかという参加者の質問に対して「まず願うことですな。願わないとできませんな」という松下氏の回答に深い感銘を受けたといいます。 パナソニック、京セラ、トヨタ自動車をはじめ、日本の「優良企業」といわれる企業の多くには、ムダや贅沢を慎み、貯蓄(内部留保)に励み、雇用を大切にする、というDNAが綿々と受け継がれているのです。 実際、2008年のリーマンショック時や、それに続く民主党政権下の超円高期、2011年の大震災からの混乱期などを振り返ると、企業にとっていつまた大変な経営危機が訪れるかわかりません。そんな非常時に従業員の雇用を守り、給料を払い続けるためには内部留保というダムは必要不可欠なのです。 ■内部留保を積み上げる企業は設備投資や賃上げをしていないのか? 冒頭の甘利大臣や麻生大臣の話では、内部留保を増やしている企業はまるで設備投資を行っていないような言われようですが、実際にそうでしょうか? 内部留保というのは、税金を払った後に(配当をする会社であればさらに配当をした後に)残ったお金のことを指します。つまり、内部留保を積める企業は「税金を払っている=黒字企業」だということです。では、黒字企業はどれくらいあるのでしょうか? 国税庁の2013年度分の調査結果によると全国に法人数は、258万5,732社。このうち、資本金1,000万円以下と1,000万円から1億円未満の中小企業が全体の99.1%を占めます。つまり、法人のほとんどが中小企業ということになります。そして、欠損法人と呼ばれる、いわゆる赤字で法人税を納めていない(外形標準課税等は除く)会社は、176万2,596社で、全体の68.2%にものぼるのです。逆にいうと、内部留保ができる黒字企業は全体のたった3割くらいしかありません。 利益が出ている企業は10社に3社程度。その3社に入るためには当然、ただコストを下げるだけでなく、他社と差別化するための技術開発や、設備投資も必要です。また、売り上げを増加させて利益を出すには人材への投資も必要不可欠です。何十年も前の設備を使い続け、社員を安く使い捨てにし、研究開発にもお金をかけなかったら、とても内部留保ができるだけの利益など上がらないでしょう。 実際、利益を上げて納税している会社の社長さんたちは、みな新しい設備投資や人材の採用、商品の研究開発に熱心です。また、優秀な人材の確保や社員の生活の保証という点からも、ベースアップや賃上げに積極的な会社が大半なのです。 しかし、バブル時代と違うのは、銀行からやみくもにお金を借りて計画性のない投資を行うのではなく、将来を見据えてしっかりと経営計画や資金計画をたて、無理な背伸びをせずに、自社の身の丈に合った投資や内部留保をしている会社が増えていることです。そんな堅実経営者が「守銭奴」などと呼ばれてしまったら、それこそ身も蓋もありません。 ■本当に設備投資が必要なのは内部留保ができない赤字企業 グローバル競争社会の中で、人件費の低い発展途上国と互角に戦っていくために先進国の企業が必ず行わなければならないのは、付加価値の高い商品を作って販売することと、社員1人あたりの労働生産性を向上させることです。この2つがなければ、決して競争に勝って利益を出すことはできません。 高付加価値商品の開発には地道な研究開発が必要ですし、労働生産性アップには生産やサービスの機械化や情報化が必須です。ただ「がんばれ!」と掛け声をかける精神論だけで達成できないのはもちろん、一言でいえば「とにかくお金がかかる」のです。 例えば、私が経営する会社は製造業ですが、だいたい7年ごとに生産管理システムを入れ替えています。その費用は年商の17%程度に上りますので、1年あたりにすると売上げの2.4%をソフトウェアを含む情報関連の設備に投資していることになるのです。本業の生産とは直接関係のない、情報投資だけでもこれだけの資金が必要です。 しかし、企業全体の2/3を占める赤字企業にはそれができません。利益が出ていないのですから売り上げから設備投資に回せる資金余力がほとんどなく、内部留保も作れないのです。また、赤字企業には銀行も融資をしてくれません。いきおい、古い商品や設備で事業を続けることになり、国内や海外製品との競争に負けて業績は先細りになっていきます。 最大の問題はここにこそあるのです。 内部留保ができる黒字企業は設備投資ができ、内部留保ができない過半数の赤字企業こそ設備投資が必要なのにそれができない。この状態を改善しない限り、日本経済全体の底上げと未来へ向けた活力は期待できないのではないでしょうか? ■必要なのは赤字企業に対する支援 このように、いま真に日本経済を再生させるために必要なのは、経営不振スパイラルに陥っている赤字企業をソフト、ハード両面から支援し、再生させるための政策ではないかと思います。 ただ、補助金をばらまいたり、公共工事を増やすような一時しのぎでは意味がありません。まず、問題点を分析し、確実に売り上げをアップさせていくための方針を策定するコンサルティングと教育。また、すでに少子高齢化で縮小が始まっている国内マーケットだけでなく、今後も拡大が続くアジアを中心とした海外マーケットの開拓支援。時代のニーズに即応する商品開発と製造方法の改良へのサポートなど。考えられる支援は多々あります。 政府に言われなくてもしっかりと投資も内部留保も行ってきた黒字企業より、行いたくても行えない赤字企業に対する支援こそ、いま最も求められているのではないでしょうか。 2015.10.29 Thursday
トヨタ社長「成長より継続」こそ、これからの日本の経営哲学
10月29日付ロイターニュースに『トヨタ社長、「最大」より「最高」に将来性・自動運転に自信』という記事が掲載されました。
この記事によると、豊田社長は取材に応え、今後も数値目標を設定せず、規模よりクオリティを追求する経営方針を貫くという趣旨の発言をされました。 言うまでもありませんが、トヨタ自動車グループは世界最大の自動車メーカーであり、今年3月の連結決算では最終利益が2兆円を超えた初めての日本企業となりました。また、過去10年では売上高を47%も拡大して27.2兆円と、30兆円に迫る勢いとなっています。今年度の日本国の税収が約54兆円ですのでその半分となり、いかにその規模が大きいかがわかると思います。 そんなメガ企業トヨタの豊田社長をして「規模の追求はしない」と言わしめるのは、いったいなぜでしょうか? その秘密をとくカギは、豊田社長が深く尊敬し、学んでいるという伊那食品工業の塚越寛会長が提唱する「年輪経営」にあるのではないかと思います。 塚越会長はマスコミにはめったに登場されないのでご存じない方も多いかと思いますが、中小企業経営者の中ではカリスマ的な人気を誇ります。経営危機に陥っていた寒天製造会社の伊那食品工業の経営を任されて以来、「いい会社を作りましょう」の社是と「急成長は敵」の社訓のもと、48年間増収増益という驚異的な記録を作られ、無借金経営を貫かれてきました。 そんな塚越会長の薫陶を受けられていることがはっきりわかるのが、今年5月の豊田社長の決算報告です。
就任直後、「トヨタのプリンスが全アメリカ国民の前で謝った!」と言われた2010年の豊田社長のアメリカ議会公聴会での謝罪という試練を乗り越え、企業の存在意義を真剣に考えたとき、豊田社長が行きついた先が「年輪経営」だったのではないかと思うのです。 じゃんじゃん投資して、どんどん儲けて、ボーナスや昇給で社員にも大盤振る舞いをすれば一瞬はバラ色の幸せに浸れるかもしれません。しかし、経営環境は常に動きますし、人生と同じく、会社もいい時ばかりではありません。特に業績のいい時こそ、しっかりと気を引き締めて最悪のときに備えることこそ経営者の仕事。「成長」より「持続」することこそが、企業が社会的責任を果たし、雇用を守るための最大の目標であるはずです。豊田社長の言葉は、まさにそのことをおっしゃっているのだと思います。 「永続こそ企業の最大価値」と帯に書かれている塚越会長のこのご著書は、8年前、私がこれからの会社経営をどうしていくか悩んでいたとき、経営者仲間たちと訪れた伊那食品工業本社工場の売店で購入し大変なショックを受けた一冊です。 経営者のみならず、人生の大半を会社で働く会社員の方々にもぜひ読んでいただきたい本です。 2015.10.12 Monday
映画『ハンナ』に学ぶ、どんな状況に置かれても生きていける能力とは?
JUGEMテーマ:自分探し
シンガポールのテレビ局で映画『ハンナ』を放映していたので、久しぶりに観ました。これは2011年に封切された映画で、機内映画で観て気に入り何度か観たのですが、改めて、自宅のテレビ画面で観て、非常によくできた少女の自立の物語だと思いました。 ■敵と戦いながら自立していく少女ハンナ 主人公の少女ハンナは元CIAエージェントの父に、氷に閉ざされたツンドラの中の一軒家で育てられ、徹底的にサバイバルする技術を叩きこまれます。鹿を狩り皮を剥いで食べ、予告なく襲ってくる父からの襲撃訓練に耐え、数か国語の言葉と偽の記憶を操り、たった1人で危険に満ち溢れる世界に立ち向かい、生き残っていく技術です。これらをマスターし「もう準備ができた」とハンナが宣言したとき、ハンナは父を離れ、一人立ちして敵だらけの世界に向かい、宿敵であるCIAエージェントのメリッサに執拗に追われることになります。 ジョー・ライト監督らしい美しくシャープな映像、イギリスのダンスバンド、ケミカル・ブラザーズのヒップでコミカルな中にも哀愁を含んだサウンド、メリッサ役のケイト・ブランシェットの鬼気迫る演技など、見どころ満載なのですが、やはり何よりもすばらしいのは、主役シアーシャ・ローナンが敵と戦いながら成長していく姿です。 ハンナが旅をしていく中には、親切な家族や自分と同じ年頃の女の子、自分を待ち続けてくれていた大人との出会いもありますが、同時に、多くの敵に命を狙われ、絶体絶命の局面を一つずつクリアしていかなければいけません。その過程で、会うことのできなかった祖母も父も殺され、ハンナは天涯孤独の身となります。しかし彼女は自分自身の力を信じ、決してあきらめません。そして、実母を殺した最大の敵、メリッサを自分の手で殺したときに、ハンナの自立は完成するのです。 ■いったんエリートコースに乗ったからといっていつ何が起きるかはわからない。 先月、久しぶりに高校時代の同級生たちと会い、子供の教育の話になりました。同じ兄弟でも勉強のできる子、何度教えてもなかなか覚えない子、要領のいい子、立ち回りが不器用な子など子供たちの性格の話になり、子供にどんな教育をしたらいいかが話題になりました。そのときに私が自分の娘に身につけさせたいと思ったのは「どんな状況に置かれても一人で生きていける能力」です。 私たちが高校を卒業して大学、就職という人生の大きな節目を過ごしたのは80年代。日本の高度経済成長の最後の輝きが80年代後半から90年代初頭のバブル経済期だったとすれば、80年代の初めから中盤にかけてのこの時期は「まだまだ日本はこれからよくなる」と誰もが考えていた時代でした。そんな中、女性に求められたのは、ただ単に良妻賢母になるだけでなく(すでに名門の良妻賢母女子大学はそれほど人気ではなくなっていました)自分自身も教養を身につけ、社会的な価値観をきちんともってから家庭に入ること。そのため、女性はできるだけ偏差値の高い大学に入り、大手企業の事務職として就職し、20代半ばまでには職場結婚をして専業主婦になるのがエリートコースだったのです。(男女雇用機会均等法が80年代後半に施行されましたが、キャリアウーマンをめざしたのはごくごく一部の女性だけで、多くは従来型のエリートコースを理想としていました) しかし、それから30年。当時、一流企業の筆頭とされていた日本の銀行は合併に合併を重ねる中多くの銀行がなくなり、世界中に輸出をしていた家電メーカーの花形企業は経営不振に。以前は国有企業だったJALは経営破たんし、NTTはソフトバンクやKDDIなどの新勢力に押されてシェアを落としています。その陰には無数の希望退職や、リストラにあった人がいるのは言うまでもないでしょう。男女とも、いったん有名大学に進学し、有名企業に就職してエリートコースにのったからそれからの人生が安泰、というわけにはいかないのが現実なのです。 ■どんな状況においても人生を切り拓いていける能力とは? では、どんな教育をしたら「どんな状況に置かれても一人で生きていける能力」がつくのでしょうか? 私はたった一つ「意志力」を磨くことだと思います。 人生、思うようになることばかりではありません。いえ、思うようにいかないことが大半といってもいいでしょう。 しかし、どんな状況でも決してあきらめず、初心を貫徹すること(もちろん朝令暮改で臨機応変に対応することも大変ですが、絶対にやり遂げると決心したことをやめないという意味で)こそ、ハンナのように次々と現れてくる敵=立ちはだかる壁を打ち砕き、自分の進むべき道から障壁を取り除きつつ生き延びるための、唯一の力であるのではないでしょうか。 ■「決して負けるな」の父の言葉 18歳の春、私は大学進学のために東京で親元を離れて暮らし始めました。いよいよ出発という日の朝、私の父は私に向かってこう言いました。 「これからいろいろなことが起こると思う。家から離れてお父さんも守ってやれないことが多いと思うが、決して負けないでがんばりなさい」 父は自分の言った言葉をすっかり忘れてしまったようですが、50歳を過ぎた今でもこの言葉は私の胸に強く焼きつき、困難に突き当たって「もうダメかもしれない」と感じたときに何度もよみがえってきました。そして私は改めて「負けない」「あきらめない」と気持ちを新たにし、何とかここまでやってこれたのではないかと思うのです。ハンナの父のように究極のサバイバル技術ではありませんが、私の父もまた、男親として、厳しい世の中の中で生き延びるための方法を、この一言に込めて私にくれたのだと解釈しています。 最後にもう一つ、『ハンナ』とちょっと似たヒロインのTVシリーズ。 『ニキータ1997』はもともと映画の『ニキータ』のリメイクとして作られましたが、こちらも美貌のスパイ、ニキータが上司のマイケルに惹かれ、導かれながら成長していく物語です。天涯孤独のニキータがマイケルに頼ろうとして何度も突き放され、自立していく姿がたくましくも哀しく描かれていて、人間ってやっぱり一人で生きていかなければならないのだということがよくわかります。 2015.10.06 Tuesday
「女性の活躍」には130万の壁が最大の障壁
アベノミクス政策がめざす「女性が活躍」する社会で、注目されているのが配偶者控除の撤廃です。
前哨戦として、すでに1年後の来年10月からは、従業員501人以上の企業で週20時間以上働くパート社員は厚生年金加入が義務づけられます。それに対応して、大量にパートを雇用している大手小売業などでは、パート社員に労働時間の短縮を求めるケースも出てきているようです。また、安倍首相の指示で年収130万円未満の配偶者がいる公務員の配偶者手当の撤廃も検討されていましたが、こちらはひとまず、見送りとなりました。 ■女性全体の時給を引き下げるパート社員の時給 日本の女性の賃金平均は、男性の約7割程度といわれますが、この記事によるとパート・アルバイト社員に限っていえば、男女の時間給の差はわずか10%程度で、男性1120円、女性1012円です。 いっぽう、こちらの記事によると、正社員の男女の平均賃金はそれぞれ、33万1000円と23万4400円。これを年52週、週40時間換算にすると、男性正社員の時給平均は1,913円、女性は1,355円となり、女性社員の時給は男性の約7割となります。 問題は、女性労働者の46%、およそ半分近くがパート労働者であることです。男性労働者のパートは約14%にすぎませんから、いかにその割合が多いかがわかります。 そしてこの時給と正社員・パート比率をもとに計算すると、男性の時給平均は1802円、女性は1197円となり、女性の時給は男性の約66%と、さらに下がることになるのです(派遣や契約等の非正規社員については計算に入れていません)。 ■パート社員の時給や賞与を上げられない経営者のジレンマ 私の経営する会社にも、パート社員が多くいます。ほとんどが勤続数年から10年近くになる人たちで、仕事は確実、安心してまかせられ、入社まもない正社員よりずっと頼りになります。多くの日本企業がこのようなパート社員たちに支えられているといっても過言ではないでしょう。経営者としてはぜひ彼女たちに正社員になってもらい、もっともっと活躍してもらいたいと思うのですが、子育てや介護など、それぞれの事情があり、なかなかフルタイムの正社員になることは難しいようです。 それならせめて、昇給や賞与で報いたいと思うのですが、そこに立ちはだかってくるのが130万円の壁です。 以前、わが社では非常に利益が出た年があり、正社員ともどもパート社員にも相当額の夏のボーナスを支給しました。「これでみんなの努力に報いられた」と喜んだのも束の間、年末が近づくにつれ、ベテランのパート社員たちが次々と欠勤し始めたのです。理由は「このまま働いていると年収が130万円を超えてしまい、扶養の枠からはずれてしまうから」でした。年末の繁忙期に重なり、会社はパニック。結局、パート社員の仕事を正社員が肩代わりしなければならなくなり、正社員にも大きな不満がたまりました。 この経験から、現在では、パート社員の昇給やボーナス支給額には非常に慎重になっており、正社員とパート社員の時給にも大きな開きがあります。先日、ちょっと計算してみたのですが、入社2年目でそれなりの仕事しかできない女子正社員の賞与も含めた時給と比べ、入社5年程度で技術も責任感もあるパート社員の時給が65%程度にとどまり、保険や年金など法定福利厚生費まで計算すると実に半分程度になってしまうことがわかりました。 会社の業績に貢献してくれているパート社員の待遇を上げられず、正社員というだけでパート社員分まで正社員が利益配分を受けることに経営者として大きな矛盾を感じますが、これが現実ですので受け止めざるをえません。 ■パート社員の待遇改善にはまず130万の壁の撤廃を 「同一労働同一賃金」が叫ばれてますが、経営者としては、同じ仕事をしているから同じ時給という考え方には抵抗があります。同じ仕事をしても、効率よく多くの成果を上げられる人もいれば、そこそこの仕事しかできない人もいます。会社の収入は社員の仕事の成果からしかもたらされませんから、ある程度までは、成果が時給に反映されるべきだと思います。 また、仕事量にはどうしても波がありますので、残業や休日出勤をして仕事をしなければならないときもあります。家庭の事情で残業や休日出勤がまったくできないパート社員と、命じられたら行う正社員との間に、相応の賃金格差があってもしかるべきだと思います。 このようないろいろな条件を勘案したうえで、やはり、私は日本のパート社員の賃金水準は低すぎると思いますし、さらにいえば企業の内部留保が増えている原因の一つには、このパート社員の賃金の問題もあるのではないかと思うのです。 多くの会社で、優秀で勤勉なパート社員たちに日々の業務が支えられています。現在、負担を増やさずに130万の壁を撤廃する夫婦控除などの案が検討されているようですが、真に「女性が輝く」社会にするためには、まず、日本の経済に貢献し続けてきたパート社員の待遇改善こそ、まっさきに着手されるべきではないでしょうか。 |
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