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ASIAN NOMAD LIFE2016.02.18 Thursday
Rakutenの躓きとReebonzの快進撃にみるマーケティング戦略の違い
JUGEMテーマ:経営のヒントとなるニュースを読み解く
■東南アジア全域でのショッピングモール事業撤退を決めた楽天2月いっぱいで楽天が運営する「Rakuten」がシンガポール、マレーシア、インドネシアのサイトを閉鎖、電子ショッピングモール事業からの撤退を決めました。楽天はインドネシアで2010年に地元財閥企業と合弁で事業をスタートしましたが、思うように事業が成長できず13年には合弁を解消。今回はそのインドネシアも含め、東南アジアでのプレゼンスを一挙に縮小するといわれています。 撤退の理由は明らかにされていませんが、おそらく売り上げ不振が最大の原因でしょう。 シンガポール地元紙『The Straits Times』によると、昨年末の時点でRakutenへの出店社は約500社だったといいます。そのうち1社への取材では、年間出店料はSGD4,000以上(約33万円)で、他に売り上げコミッションが10〜20%。小規模事業者には出店料他のコストが高すぎて思うように出店社を集められなかったからという分析も紹介されていましたが、不動産価格や家賃が東京の2〜3倍が当たり前、人件費が高いため、自前でまともなサイトを作るにはかなりの投資が必要なシンガポールでは、私はむしろ安いと感じます。 例えば、売り上げが50万円あって粗利率を40%とすれば粗利益が20万円。そこから出店料の3万円とコミッション10%を引いても利益12万円が残ります。これがもし実店舗であれば、どんなに小さな店であっても家賃が10万円以上、ショップスタッフの人件費が10万円以上ですでに赤字。逆に小規模事業者にこそRakutenのメリットはあったはずなのです。 しかしそうならなかったのはやはり、それだけの売り上げを上げられない事業者がほとんどだったということではないでしょうか。 ■ブランディングが残念な楽天のウェブサイト まだ見られるうちにと思い、楽天のシンガポールサイトを覗いてみました。 トップ画面のイチオシはSEIKOの腕時計、ハローキティーの雑貨、ASICSのスポーツシューズ、スナイデルのドレス。どれも知名度が高い日本ブランドですが、いま旬真っ盛りで、行列を作っても買いたい商品かというと・・・・微妙です。 下にスクロールするとピックアップ商品。KATANAのゴルフクラブと並ぶのはインバウンド需要を狙ったのか、アツギのタイツとムートンブーツ。さらにその下にはコラーゲンやスムージーといった健康食品から、補正下着、キャラクターグッズまで。日本の楽天市場と同様、脈絡なくさまざまなカテゴリーの商品が所狭しと並びます。 しかし、日本と同じくこのような商品を求めて検索し、このサイトにたどり着く消費者がどれだけいるのでしょうか? 日本のテレビ番組で「コラーゲンが流行っている」という情報が流れれば、数千人から場合によっては数十万人の人々がネット検索をかけて楽天市場に流入するでしょう。雑誌の商品紹介記事や有名人ブロガー記事でも同じです。しかしここは人口500万人強の小国。日本のような商品紹介の情報番組はほとんどありませんし、情報誌やブロガーの数も極めて限られています。また、シンガポールでは新製品をPRするとき、メディア媒体に強いPR代理店に頼んでマーケティングをしてもらうのが普通ですが、よほど露出を多くしない限り、たまに広告や記事広告を出すのではまず大ブレークは期待できません。 Rakutenの場合、知名度の高い日本ブランドを目玉商品に据えれば集客できると踏んでいたのかもしれませんが、”Rakuten”そのもののブランディングとマーケティングを怠ったため思うように集客=売り上げ増につながらなかったと思われるのです。 ■有名ブランドに絞って自らのブランディングを確立したReebonz いっぽう、シンガポールのeコマースで大成功をおさめている地元企業があります。その名は"Reebonz”。 CEOのサミュエル・リム氏を中心に3人の若手企業家が立ち上げた会社で、ブランド品(主に女性用バッグ)のフラッシュセールを軸にオンライン販売を行ってきました。このサイトでは、コーチ、マイケルコース、ケイトスペード等々、正規の店で買うとそこそこの金額がするブランドのシーズン落ち商品を買い付けてきて、10〜60%程度の割引率でブランド品が大好きな女性たちに販売しています。 扱うものがブランド品ですから商品説明は最低限でかまいません。消費者は自分で調べていろいろな情報をもっています。宣伝も不要です。ブランドホルダーがこれでもかと金に糸目をつけず宣伝してくれるからです。後は旬のブランド、人気があるブランドの情報を集めて仕入れてくるだけ。そのブランド名で検索で流入してくる人々が自動的に顧客になっていくのです。 こうしてReebonzは2009年の設立以来急成長を続け、現在はシンガポールのみならず、マレーシア、インドネシア、台湾、香港、タイ、オーストラリア、韓国で事業展開をしています。 ■ブランド力がない商品を売ろうとして失敗したReebonz そんなReebonzにもRakutenと同じく撤退の過去があります。 それは2年ほど展開していた”Kwerkee”というブランド品ほど高額ではなくアートな雑貨類を扱っていたサイト。若手デザイナーや新興ブランドのインキュベーターになるという志もあったのだと思いますが、結局、よく売れたのはキャス・キッドソンなど、お手頃価格でもやはりブランド力のある商品のみで、ほとんどのブランドが不発に終わってしまいました(実はこの中に私が扱っているブランドも含まれていました)。 そこでReebonzはこの事業に見切りをつけて他社に売却。同時に始めたのが、ルイ・ヴィトンやエルメスなど、ディスカウント販売できない超高級ブランドの中古品を仲介するサイトです(Reebonzの中にセクションを設置)。これがヒットし、現在は個人からの委託出品のみならず、日本の中古販売店と組んでさまざまな超高級ブランドの商品を販売しています。 つまり、Reebonzはブランド商品のブランド力を自社ブランドとするマーケティングに特化したといえるのです。 ■日本のマーケットより断然厳しい海外マーケット 日本とシンガポールの両方で営業活動をしていて思うのは、日本はつくづく恵まれている国だということ。その最大の要因は人口です。 例えば、20代女性の100人に1人が「この服好き」と買ってくれる商品があったとします。20代女性が1,000万人いる国であれば、ターゲットは10万人です。しかし、30万人しかいない国ではわずか3,000人しかいないのです。まずマーケット規模が違うのと、そのターゲットにアプローチする手段が日本では非常にいろいろと用意されている一方、シンガポールのような小国では上記のように限られているため、ターゲットを捕捉することさえ難しいのが実情です(インドネシアは国の人口は多いですが、クレジットカードを持っている人が極端に少ないうえに、物流にも非常に高いハードルがあるためeコマース人口はシンガポールより少ないといっても過言ではありません)。 その中でどのようなマーケット戦略を練って実践していくのか、そしてどのように消費者を集客していくのは、eコマースにとって最大の課題であり、生命線ともいえるでしょう。Rakutenを含む多くのeコマースサイトは、そこで躓いてしまっているのではないかと思うのです。 シンガポールでは旧正月の今月、社員の解雇を行ったRakutenに対し、若干感情的な批判もないことはありませんが、そこは現実主義者たちの国。好きな商品、魅力的な商品があれば「日本のお店では今後いっさい買い物はしない!」などと断言する人もいないでしょう。 シンガポール在住者としては、Rakutenに限らず、日本のeコマース事業者のみなさんがが捲土重来を期して再びしっかりとマーケティングを行い、近い将来、シンガポールでは絶対に買えないアイディアや機能あふれる素晴らしい日本製品を販売してくれることを切に望みます。 2016.02.11 Thursday
超学歴社会のシンガポールでつくづく「職業人生において学歴はさして重要でない」と思う。
■小学校6年生で進路が決まるシンガポールの学歴社会
シンガポールの受験戦争は、小学校6年生がピークです。 6年生の後半に行われるPSLEと呼ばれる全国共通テストで行ける中学が決まり、さらには大学受験そのものができるかできないかがほぼ決まってしまう(中学を4年で終わらせるExpressコースか、5年かけて卒業するNormalコースに分離)ため、少しでも大学進学(全体の約25%)の可能性を高めようと、就学前から必死のお受験対策が始まります。 2,3歳でアルファベットや数字がすべて書けるのは当たり前、小学校入学時にはほぼ全員が英語のみならず母国語(中国語やマレー語など)の簡単な読み書きや、一桁の足し算引き算はできるようになっています。小学校ともなればスタートから同級生全員がライバル。多くの親たちは何とか子供たちをトップ25%の中に入れようと、塾や家庭内学習を含めありとあらゆる対策を講じるのです。 トップ25%にはいれなかった子供たちがどうなるかというと、多くは高等専門学校(ポリテクニック)か職業専門学校へ。中学卒業資格をもつOレベル、卒業後大学入学資格取得するためのジュニア・カレッジ卒業資格のAレベル、高専卒業資格のディプロマなど、それぞれのもつ資格によって就職先が違ってきます。日本のように「学歴・専攻不問」というような求人はほとんどなく、Oレベルでも応募できるのかAレベル以上でないとだめか、高専や大学を卒業しているとしても、どの科目の学位をもっているか、中途採用の場合はさらにどの分野で何年以上の経験が必要かが細かく指定されるのが普通です。大卒、高専卒、高卒、中卒とそれぞれで職業人生の入り口がはっきりと分かれるのがシンガポールの厳しい現実なのです。 ■中卒でも大成功をおさめたあるシンガポール女性 では、受験戦争で落ちこぼれてしまった子供たちは、一生、職業的成功への途を絶たれ、低収入に甘んじなければならないのでしょうか? 決してそうではないところがこの国の素晴らしいところで、私の身近にも好例がいます。 彼女の名前はPさん。シンガポールの私の会社のお客様で、シンガポール政府が出資する大きな観光施設のギフトショップ部門の責任者で取締役です。私とほぼ同年輩の彼女の職業人生の出発点は、シンガポールのデューティーフリーショップの店員。「あの頃は日本人観光客といえばみんなハンティング・ワールドのバッグを肩から下げてたからすぐにわかったわよ」と笑うくらいですから、おそらく中卒ですぐに働き始めたのだと思います。組織の中では一番下のランクからのスタートです。 しかし、彼女はその後いくつかの職場でありとあらゆることを自力で学んでいきます。デューティーフリーショップも観光施設のギフトショップも、専門店とは違い、食品から衣料、雑貨まで非常に広範な商品知識が必要とされる店舗です。のみならず、商品ディスプレーの設計方法や並べ方、消費者へのセールストーク、レジでの消費者の扱い方、さらには数千点もある商品の会計処理まで、すべてに精通していなければスタッフの指導ができません。Pさんはそれらを全て自分でこなせるだけでなく、数十人のショップや仕入れスタッフを教育し、まとめあげているのです。 これだけの能力の人ですから、スタッフに対しても非常に厳しい態度で接します。傍で聞いていても震え上がってしまうくらいの恐ろしい剣幕で怒鳴りつけているのを数回目撃したことがありますし、彼女がかけている中国語の電話で、中国語を勉強したときに「これは非常に悪い言葉だから絶対に使っちゃいけない」と先生にくぎをさされた言葉を何度も繰り返し使って相手を叱っているのを聞いたこともありました。 しかし、ほとんどのスタッフは彼女に心酔しており、「確かにPさんは厳しいけれど、彼女のおかげで本当にいろいろなことを勉強させてもらっている。彼女の下で働けて本当に幸せ」と口にします。私もまったく同じで、商品選択について彼女から厳しい指導を受けたこともありますが、ディスプレイの仕方や商品補充のタイミングなど、小売り業界は初めての私としては本当に多くのことを学ばせてもらいました。 ■仕事をやり抜く強い意志と積み上げた実績があれば学歴は関係ない そんなPさんですが、この観光施設のウェブサイトの取締役紹介のページを見ると、他の政府関係の大卒、大学院卒のぴかぴかの超エリート取締役たちと並び、にこやかに笑っています。 スタッフの話によると、Pさんはこの観光施設ができる前は、北京のショッピングモールで数店舗あるチェーン店を経営していたそうで、たまたま親の介護が必要になって帰国する際にこの施設のオープンと重なり、ぜひにと乞われてこの観光施設を運営する会社の取締役に就任したとのこと。Pさんにとってもタイミングはよかったかもしれませんが、会社にとってもかけがえのない人材を得られたことは間違いなく、3年ほど前に私が初めて商品を納品していた頃の仕入れスタッフはPさん以外に1人しかいなかったのが、現在は10人を超える大所帯になっており、シンガポールを訪れる観光客が減少する中、反比例するようにこの施設のショップ売り上げは右肩上がりで増加しています。 Pさんを見るたびに、自分の娘も彼女のようにたくましく生き抜ける力をぜひ身につけてほしいと思います。シンガポールの知人の中には彼女以外にも、学歴はなくても自ら起業して成功している人々が何人もいますし、逆に、イギリスの大学院卒の学歴で、経営学や生産管理方法などあらゆる手法を駆使して自分のアパレルブランドを立ち上げたものの、業績が泣かずとばずでショップスタッフに賃金を払えず、毎日、自分で店頭に立っている人もいます。彼らみていると、つくづく、ビジネスの成功には学歴は関係ないと思わざるをえません。 小学校卒業程度の読み書きソロバンは人生を生き抜いていく上で不可欠だと私は考えますので、自分の娘には何としてでも叩きこむつもりですが、それ以降は自分が完遂できる意志をもてる業界や職種をみつけ、自分が満足できるペースで一生涯、続けていけるような仕事をもつことこそが、職業人生における最大の成功ではないかと思います。 超学歴社会のシンガポールでも、大学に行けなかった子供たちのために、高専や専門学校の職業教育が非常に充実しているのは、それを政府がわかっているからこそなのではないでしょうか。 2016.02.11 Thursday
100年企業のつくり方 -- 「売れる」ものを売ってはいけない。
JUGEMテーマ:ビジネス
経営をしていると、いろいろな新規ビジネスの話が舞いこみます。例えば、自社で作っていなくても他社から仕入れれば売れるもの。自社では現在作れないけれど、新たに設備を導入すれば作れそうなもの。これまで他社から買っていたけれど、次からぜひおたくから買いたいといわれるもの。 このようなお話に関しては、ほぼすべてお断りするか、その商品を得意としている同業他社をご紹介してきました。 ・自社では作っていなくても他社から仕入れれば売れるもの 私の会社は製造業で、商社ではありません。製造業には製造業なりのコスト計算や生産管理システムがあり、商社には商社の利益率計算や在庫管理ノウハウがあります。それらは全く違うもので、製造業が適当に商社の真似事をしたり、商社が十分な準備もないままメーカーになろうとしても、たいていの場合うまくいきません。ましてやクレームが起こったりしたら、解決方法もわからずに右往左往することになります。しょせん餅は餅屋。異業態の仕事を簡単に考えて手を出すのは禁物です。 ・自社では現在作れないけれど、新たに設備を導入すれば作れそうなもの 製造業で一番よくもちかけられるのがこの手の話です。「これだけ設備をすればこれだけ儲かる」と聞くと「こんな案件はめったにない」とついつい欲を出してしまいがちですが、このような成り行きで最悪の結果に至った例をいくつも知っていますし、そこまで至らずとも大きな痛手を負った話もよく聞きます。ここで問題なのは、新たに挑戦する市場での販売の主導権が自社にないことです。「売ってやる」と口約束した相手に逃げられても誰にも文句は言えません。後には設備に費やした借金だけが残るのです。設備に限らず新規に投資をするときには、販売主導権も自社が握っている必要が絶対にあります。 ・これまで他社から買っていたけれど、次からぜひおたくから買いたいといわれるもの 世の中、儲かる仕事は誰も自分から手放そうとはしません。従来の仕入先があるにもかかわらず新たに仕入先を開拓したいというからには、必ず理由があるはずです。例えば、市場での価格競争が激化し、従来の仕入先にコストダウンを依頼したが受け入れられなかったケース(自社製品だったらすぐにコスト計算できますが、そうでない場合、後でとうてい合わないことに気がついたりします)、ロットや納期などでこれまでの仕入先ともめて仕入れられなくなったケース(最近よくある「海外製から日本製に換えたい」話)、あまりにもスペックや条件が厳しすぎて従来の仕入先がギブアップしてしまったケースなど・・・。さらにひどい場合は、支払いが原因で仕入れられなくなり、苦労して挑戦して納品しても結局支払ってもらえなかった、というようなケースさえあります。 いずれにせよ、すでに自社のラインナップに入っている製品や、新規開発品でも自社の得意分野の製品であれば、万が一、後でもめたとしても他社に販売することができますが、相手からもちかけられ、十分な知識やノウハウがないまま手を出してしまった場合には、一旦たちゆかなくなったときの出口をみつけるのが至難の業です。 新たな市場や製品に挑戦するときこそ、必ず入念な準備の上に自信をもって投入できる自社製品を用意し、販売も主体的に、自社で全責任をもってできるようにしなければなりません。そのためには、買ってくれる会社があるから、「売れる」から売るという安易な姿勢は禁物です。 2016.02.10 Wednesday
祝日を減らして有給取得促進が社員も会社もトクする理由。
JUGEMテーマ:国際社会
来年度の会社カレンダーの打ち合わせをしていて、遅ればせながら今年から8月に「山の日」という祝日ができたのを知りました。海の日に続いて山の日という創設根拠希薄な祝日!? 今年は振替休日こそ少ないものの、1年間で16日も祝日があります。これを確かめようと、夫が会社からもらってきたカレンダーを見ていると、アジア・オセアニア諸国の休日一覧に目がいきました。ここで二度目のびっくり。日本の休日が異様に多いと思っていたら、中国とインドは若干少ないものの15日、マレーシアと韓国は17日、イギリス領だったときの祝日と中国の祝日が混在する香港では18日、タイにいたってはなんと22日もあり、いつの間にかアジア諸国の祝日が大インフレになっています。 いっぽうシンガポールの祝日はわずか11日、ニュージーランドは12日、オーストラリアにいたってはたったの9日しかありません。2月8,9日は旧正月でシンガポールは土日と合わせると4連休でしたが、このくらいでもシンガポール人は大喜び。ゴールデンウィークやお盆休み、お正月休みに慣れ切って「今年はお正月休みが6日しかない」と不満が続出する日本から見ると雲泥の差です。 一方で、祝日の多い国と少ない国を比較すると、有給休暇の取り方の差が歴然とあります。 シンガポールでは有給をすべて消化するのは多くのサラリーマンにとってしごく当然。数少ない連休は自宅で家族とゆっくり過ごすか、近隣のマレーシアへのドライブくらいがいいところで、ほとんどの人は子供の学校の長期休暇中にまとめて1週間、10日といった家族旅行を楽しみます。その他にも子供の学校行事で休みを取る人は多く、先日も小学校の参観日に行ったら、半分以上が両親揃って参加していました。日本で学校行事に参加したことはありませんが、通常の参観日に父親が有給休暇を取って参加するケースはきわめて少ないのではないでしょうか? 実は会社にとっても、このように社員が個別に休みを取るのは経営上、好都合です。ローテーションで少しずつ入れ替わりで休んでくれれば営業日が減ることはなく、さほど売り上げに影響を与えません。いっぽう、社員が一斉に休む祝日となると1日の売り上げが丸々なくなってしまうので、その分、他の営業日で必死に挽回しなければならないのです。 社員のほうも、祝日が多くなればなるほど仕事がこなしきれなくなり、どんどん有給休暇がとりにくくなります。その結果、交通機関も宿泊施設も人であふれ、割高な料金になっている連休にしか休みが取れず、懐にも打撃を受けているのです。 星野リゾートなどが祝日分散を提唱して政府に働きかけていますが、私はそれよりもまず祝日を大幅に減らしてシンガポール並みにすること、そして有給取得を事業主に対して義務化させ、使いきれずに残ってしまったら3倍で買い取る、というようなペナルティを課したほうがよいのではないかと思います。結果的に、祝日と有給休暇を合わせた総休暇日数は増えて社員がゆっくり休むことができ、効率的に仕事をこなせるようになって生産性が上がるのではないかというのが私の読みです。 祝日削減と有給休暇取得の義務化をセットとして政策に掲げる政治家が出てきてくれるのを待望します。 2016.02.09 Tuesday
100年企業のつくり方 -- 9敗1勝から99敗1勝へ
JUGEMテーマ:ビジネス
ファーストリテイリングの柳井さんに「九敗一勝」という著書があります。この本の中で柳井さんは失敗してもその失敗から学び、挑戦し続けることによってヒット商品が生まれるようになるとおっしゃっていますが、実にその通りだと思います。私がユニクロの名前を初めて知ったのは1996年でした。当時、香港で仕事をしていたのでユニクロの製品が日本の消費者からどんな受け止め方をされていたのか詳しくは知らず、どちらかというと香港発の低価格カジュアルブランド「ジョルダーノ」の二番煎じのようなイメージが強かったと記憶しています。また、繊維業界の友人・知人たちからさまざまな噂は入ってきましたが、その多くは大成功している企業というより、低予算による生産段階でのクレームや納期遅れなど、どちらかというとネガティブな情報の割合のほうが多かったものです。 しかしこの時期に続くフリースの大ヒットを踏み台に、柳井さん率いるファーストリテイリングはぐいぐいと力をつけてきて、ついには繊維業界の最重鎮企業ともいってもいい東レとがっぷり組んで日本のみならず、世界の繊維業界に影響を及ぼす常識破りの企業に成長していきました。いまや日本を代表する企業の一つといって誰も異論はないでしょう。 しかし、ユニクロの創生期を知る業界人としては、やはり柳井さんの「九敗一勝」という言葉を額面通り受け取ります。それだけ負けた経験の上に、ここまでの成長が築かれてきた歴史を目の当たりにしてきたからです。 翻って我が社の歴史を振り返っても、やはり一握りのヒット商品の裏には、死屍累々の廃番商品や開始後すぐにひっこめざるをえなかったサービスや製品もありました。その中には大クレームにまでなってしまったものもありましたし、事後処理で日本や海外までハンドキャリーしたことも一度や二度ではありません。 いっぽう、これらの失敗の経験の上に、現在の我が社の屋台骨を支えてくれているヒット商品やサービスが築かれてきたことも事実です。逆説的に言えば、何度も失敗しない限り、成功する商品やサービスは決して生まれてこないのです。 新商品の企画開発をするとき、私が自分にもスタッフにもよく言うことがあります。それは「10作って1そこそこ売れればいい、100作ってやっと1つ大ヒットが生まれる」という私の信念です。99であきらめてしまっては大ヒットは生まれてきません。たとえヒットに恵まれなくても根をあげずに作り続けること、これこそが商品開発と企業存続の神髄だと私は思います。 2016.02.09 Tuesday
老舗企業の倒産増加とネスレ社に見る「変われる力」。
JUGEMテーマ:経営のヒントとなるニュースを読み解く
■増える老舗企業の倒産割合ネスレ日本の高岡浩三社長が、日経新聞の広告企画インタビューで、環境適応=マーケティングであるとおっしゃっています。その意味とは、顧客が現状で感じている問題を解決し、満足させる(イノベーション)ことを突き詰めていき、商品やサービスを変化させることにより、企業がマーケティング(販売促進)を行っていくというものです。 「環境の変化に適応する」と多くの方が当たり前のように言いますが、ほとんどの場合、それはできていないのではないでしょうか。環境の変化が激しい時代であれば、自社の中も激しく変化していなければならないのですが、本当にそれができているのでしょうか。 と、高岡社長はかなり厳しい発言をされていますが、それを裏付けるのが、2/5東京商工リサーチが発表した倒産件数に占める老舗企業の割合の増加です。
このデータによると、業歴30年以上の老舗企業の倒産に占める割合は増加基調にあり、企業の平均寿命も2003年についで、24年強となりました。
2016.02.06 Saturday
100年企業のつくり方 -- 事業不調のときに大変革を行ってはいけない。
JUGEMテーマ:ビジネス
そんな冬の時代に長寿企業の経営者はどうするでしょうか? 私だったら、ただただじっと耐えます。冬眠中の熊のように穴に閉じこもり、春に向けて商品開発や内部組織改変など、地味な方策を静かにかつ着々と行い、大きく事業内容を変革するような起死回生の一手は絶対に打ちません。それは、もしも失敗したらゼロ、すなわち倒産につながるからです。 大きな事業変革はすべてがうまくいっているとき、万が一失敗してもすぐに引き帰せるときに行うべきであって、そうでないときに断交しても焼け石に水がいいところ、ほとんどの場合は失敗につながります。人間は切羽詰まると捨て鉢になって冷静に確率を判断することができず、「こうありたい」という願望が「こうなるはずだ」という読みに直結してしまうことが多いのです。逆に従来の事業がうまくいっているときには「金持ち喧嘩せず」で無理な背伸びはせずとも、自然にこれから伸びていく新事業が見極められますし、十分な人や資金も充てられます。逆に、ぎりぎりの瀬戸際に追い詰められて目が血走っている状態のような経営者は、新事業を行ったとしても、お互いに信頼でき、長く商売が続けられる取引先をみつけるのは難しいでしょう。 私の会社も100年の歴史の中では「あの会社はもう終わりだ」という噂をたてられたことが何度もありました。 そんな時、何を言われても馬耳東風でしっかりと足元を固め、じっと時を待って飛躍のための準備を怠らなかったことが、現在まで生き残ることができた最大の理由だと思っています。 2016.02.05 Friday
100年企業のつくり方 -- 大企業もスモールをめざす。
JUGEMテーマ:ビジネス
敏速に環境の変化に対応し、長く生き残っていくためには、組織は小さいほうが都合がいい。大企業もこのことを熟知しています。ですから、扱う事業や品目ごとに数十人からせいぜい数100人程度の子会社を作ったり、事業部制にしてそれぞれを独立採算制にして疑似分社化したりするのです。 変化のときにはボトムアップ型で、みんなでさまざまな可能性を検討し、上にあげていくようなやり方は通用しないことがほとんどです。それは時代の潮目が急激にやってきて喫緊の変革を求められる場面が多数あるからです。こういうときには鶴の一声で強力なリーダーシップを発揮し、トップが矢継ぎ早に会社を対策を講じていく必要があります。その際、組織が大きければ大きいほど対応スピードは遅くなります。逆に小さければ変革の意義や内容、方策などを社員一人ひとりが理解するためのが早く、費やされる時間を節約できるのです。 また、最悪の場合、その事業を本体から切り離し、よみがえらせることのできる会社に売ることもできます。例えばある大企業が最先端のITやバイオなどの部門に進出したけれどうまくいかなかった場合、その事業部や子会社だけをそれ専門の会社に買ってもらうというような話はいくらでもあります(いま話題の鴻海のシャープ買収の話も、鴻海が買いたいのは液晶事業であって家電部門ではないはずです)。また、最悪の場合、その部門だけをやめて本体は生き残り、従業員は業績がいい本体や別の子会社(事業部)に吸収するという対策もとられています。 「スモール・イズ・ビューティフル」。就職活動をするときに「大きければ大きいほどよい」と思っている人はまだまだ多いようですが、経営者の本音はここにあります。 2016.02.02 Tuesday
100年企業のつくり方 -- 小さいほうが変化に強い。
JUGEMテーマ:ビジネス
「大きい会社ほどよい会社だ」と考えている人は多いと思います。就職先でも大手企業は人気。年商○千億円、従業員○千人と聞けば無条件で素晴らしい会社のような印象を受けがちです。しかし本当にそうなのでしょうか? たくさんの従業員がいるということは、それだけ会社がたくさんの給料を払わなければいけないということです。もちろん給料だけでなく、社会保険料や厚生福利費、退職金などそれに付随する費用も大きくなってきます。反対に、従業員が多くなったからといって売上高が必ずしも多くなるとは限りません。商品寿命がきてこれまで売れていた商品がぱったり売れなくなることもありますし、リーマンショック時のように世の中全体が瞬時に不景気になってまったくものが売れない時代もあります。 このようなとき、無理な借り入れをして事業を拡大し、従業員を増やしてきた企業は会社を維持していくために大変な苦労をすることになります。とにかくお金が必要なのです。倒産の原因のトップに「販売不振」がありますが、この状況に陥ったとき、出費が大きい企業ほど再建が難しいのは自明の理でしょう。 また、よく見るケースで、規模を追求して経営が苦しくなることが多いのは、小売業の多店舗展開です。一店舗あたりの売り上げが減少していても次の店舗、次の店舗と次々と新しい店舗を作っていくと売り上げは当然上がります。どんどんお店が増えるので、周囲からも「あの小売店は儲かっているようだ」と見られます。また、店舗を作っても出店にかかった費用の多くは「資産」になりますので、バランスシート上でも一見、優良企業のように見えるのです。しかし、帳簿上は「資産」でも、実際には現金化することは難しい資産であり、出店を続け、店舗を維持するためには、初期経費や販売員の給料など莫大なキャッシュが必要です。そして最終的に資金繰りに窮して倒産するケースが決して少なくありません。 きら星のように輝くカリスマ経営者が一代で大事業を築き上げたときも、後継者は苦労することになります。 天才的な商売の勘と剛胆さを兼ね備えた経営者は、時代の変化の波に乗って世間に華々しく登場します。この場合、タイミングというのは最も大切です。「経営の神様」松下幸之助は「商売の90%は運」と言ったそうですが、カリスマ経営者というのは間違いなく時代の変化に乗じる形で事業を成長させるのです。もし孫さんがIT時代に生まれなかったら、もし柳井さんがデフレ時代に商売を始めなかったら、今のソフトバンクやユニクロはなかったでしょう。 しかし、後継者の代になれば時代の節目はすでに終わっていて、世の中の潮流も変化しています。また、何世代もの後継者がみなカリスマ的経営資質をもっていることはほぼありません。そんな逆境にたったとき、やはりその企業や事業に適した規模を超えて大きくなってしまっていると会社自身の存続が危うくなるのです。 わが社も、私が入社した18年前と比べて売り上げ規模は半分強、従業員数も2/3程度に減りました。しかし、その間、借り入れはゼロになり、毎年の経常利益も当時の数倍になっています。社員には「うちの会社は絶対に倒産しないから大丈夫」と冗談で言うのですが、以前の規模を保とうとしていたらおそらく生き残ることはできなかったでしょう。 もちろん、規模のメリットというのはありますからただただサイズダウンすればいいというものでもありませんが、「スモール・イズ・ビューティフル」といわれるように、その業種や業態に合った分相応の適正なサイズを保つというのも、100年企業になるための一つの方法だと思います。 2016.02.02 Tuesday
「完璧じゃなくていいんだよ」と高島屋女性代表取締役肥塚専務に励まされる。
UGEMテーマ:ビジネス
日本を代表する百貨店、高島屋初の女性代表取締役となった肥塚見春専務のインタビューが昨年末から繊維業界紙「WWDジャパン」に連載されています。 MAMA's TEORYというこのコーナーでは、古くから女性たちが活躍してきた繊維業界の旬なワーキングマザーたちが登場し、毎回楽しみに読んでいますが、肥塚高島屋専務の回になってからの、彼女の太っ腹でストレート、かつ型破りな発言には毎回度肝を抜かれる思いです。 その愁眉が1月25日号での発言。 「仕事と子育てでパンクしそうになることなんて年中でした。自分の時間なんて、無いのが普通だと思っていたのですが、人間って限界があるんですよ。突然何もしたくなくなる時があるんです。で、会社には子供が病気と言って休み、家は普段通りに出て、1日中喫茶店にいるんです。これですっきりするんです。『1年に1日くらいさぼったっていいじゃない』って自分に言い聞かせてね」 現役で1万人以上の部下を抱えるトップが「若いころには自分もズル休みしてた」と公に告白。どれだけ懐の深い人か、どれだけ人間に対する理解にあふれた人かがわかるというものです。 完璧を演じることはそれほど難しいわけではありません。自分は特別、あなたたちとは違うのよ、というスタンスも時にトップには必要かもしれませんが、裸の自分をさらけ出し、苦しかった思いや悩みもすべて明らかにしながら、等身大のワーキングマザーの姿を捨て身で表現しておられるのではないかと思います。 「それでもね、どんなに黒い母親でもそばにいてあげた方がよかったっていうのはあるんですよ。たまに電話がかかってくるんです。泣きながら。『何々ちゃんが遊んでくれない。仲間はずれにされた』って。でも私は会社にいて、どうしようもないんですよ。その時に子どもがしてほしいことは、『分かった、分かった』って抱きしめてやって、泣かせてあげることで、そうしてやることが一番大事なんです。でも、それができない。そばにいたら最悪な子どもになっちゃうかもしれない。それでもそばにいて、『よしよし、ママと遊ぼう』って抱きしめてやることに大きな意味がある。このはざまに立ったのが小学生の時なんですね。だからよく分かるんです。休職してそばにいてあげなきゃいけないっていうのは。でも私はしなかった。しなかった分だけ子どもが犠牲になっている部分があったのではないか? そう聞かれれば、私は否定できないな、と思います。」 この身を裂かれるようなジレンマこそ、ワーキングマザーの悩みの根本だと思いますが、ここまでストレートにそれを語ってくれたのは、私が知る限りでは彼女が初めてです。 こんな女性リーダーにもっと早く出会いたかった!と思っている読者も多いはず。 まだまだこの連載から目が離せません。 |
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