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    「老い」のマーケティング
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      ハフポスト日本版に「水着になった60歳のモデルは、本当のセクシーを教えてくれる」という記事が掲載されていました。

      記事によると、オンライン専門店の「ザ ドレスリン」と下着メーカー「ランド・オブ・ウーマン」がコラボ水着の広告に、60歳の現役モデル、ヤスミーナ・ロッシさんを起用。白いワンピースタイプの水着を着たヤスミーナさんをさまざまな角度から撮影した写真を紹介しています。

      記事は「セクシーとは必ずしも露出が多くする必要はなく、若くなければいけないわけでもないと、あらためて思い出させてくれる。」と結ばれていますが、残念ながら、私にはとてもそう思えませんでした。おそらく、ほとんど修正を施していないであろう写真には、60歳の年齢を正直に映すロッシさんのシワやたるみに覆われた肌がこれでもかというくらい写されていたからです。

      ■閉経は「もうセクシーでなくてもいい」という女性の体のシグナル
      女性なら誰でも知っていることですが、年齢が一番はっきりと出るのは肌です。

      シワやシミ、たるみを防ぐために、紫外線から肌を守ったり、高価な美容液を塗ったり、さらには数万円もするプラセンタ(胎盤)を飲んだり注射したり、外科的に皮膚を引っ張り上げて伸ばしたりと、世の多くの女性たちは肌の若さを保つため、涙ぐましい努力をしています。

      しかし、どんなに努力しても、肌のツヤやハリは、20代半ばをピークにどんどん衰えてきます(昔「25歳はお肌の曲がり角」という化粧品会社のキャッチコピーもありました)。卵巣機能が低下し、女性ホルモンの分泌量がどんどん減少していくからです。これにより皮膚中のコラーゲン量が減少し、角質層の水分量が少なくなり、ロッシさんのように乾燥してシワやたるみの多い肌に変化していくのです。そして、この変化が最も劇的に表れるのが更年期以降です。

      ロッシさんは60歳ということですので、更年期を経てほとんど女性ホルモンの分泌がなくなっている状態だと思いますし、私もまた、現在更年期の真っ最中ですので、身をもって女性ホルモンがどんどん少なくなっているのを感じています。それはつまり、体が「もう子供を産もうとがんばらなくてもいい」「もう女性ホルモンの力を借りて男性にアピールしなくていい」と伝えているのではないか、妊娠できる年齢のうちは動物として異性にアピールするセクシーさが求められてきたけれど、もうそれをしなくてもいい、という自分自身の肉体からのメッセージではないかと思うのです。

      そして、ロッシさんもそのことを十分わかった上で、あえて60歳のありのままの自分の肉体をカメラの前に置いたのではないでしょうか?

      ■女性にとっての50代は人生最大の転換点
      性に対する欲望は、食欲や睡眠欲と同じく、人間として当たり前かつ根源的なものです。妊娠可能年齢のうちは意識的にせよ、無意識的にせよ、男女ともに自分をよりセクシーに見せ、異性(一部の人には同性かもしれません)を惹きつけたいという欲求があるのが普通でしょう。

      逆に、妊娠できなくなる年齢になると、男性ホルモンや女性ホルモンが減少し、そのような欲望も激減します。男性には大きな個体差があり、高齢でも子供を作れる人もいますが、女性の場合はその期間が閉経まで、と非常にはっきりしており、時期も大部分が50歳前後とほとんど同じ。女性にとって50代後半以降は、肉体的にそれまでの人生とは大きく変わり、同時に価値観も大きく変わる大きな節目といってもいいと思います。

      経営者として社員や就職希望する方を多数見てきましたが、女性にとっての50代というのは、生き方を変えたり、新らしいステージにさしかかった自分の人生を見つめ直す最大の転換期といってもいいと思います。老親の介護や若夫婦に代わって孫の世話をするなどの理由で会社を辞めたり転職したりする人は多く、中には熟年離婚を決意する人もいます。理由はさまざまですが、私には彼女たちの背中を押す最大の要因は、ホルモンバランスの変化ではないかと推測しているのです。

      ■そごう柏店の閉店に見るシニア・マーケティングの難しさ
      セブン&アイ・ホールデイングスは今月、そごう柏店を9月いっぱいで閉店することを発表しました。この記事によると、そごう柏店では高齢者にターゲットを絞り、シニア向けのカルチャーセンターを設置するなど差別化を図っていましたが、近隣のショッピングセンターに家族連れでシニア顧客が流れてしまうなど思うように売り上げを伸ばすことができず、閉店の決断に至ったということです。

      これを読み、シニア消費者、特に家計を握る女性シニア消費者のマーケティングはつくづく難しいと思いました。

      若い女性消費者の心をがっちりつかみたければ、ファッションや化粧品など異性にアピールするセクシーを全面に押し出すことはできますし、ファミリー層であれば子供や家庭用品の品揃えを強化すればいいでしょう。しかし、シニア女性消費者は、人生の第二ステージを迎えて、その多くが「自分らしく」生きたいと思っているはずです。もちろん子供や孫のための消費もあるでしょうが、それは一部でしかありませんし、そごう柏店が用意したように、ダンスや短歌のクラスを開いても、みながみなそれに興味をもつわけでもありません。何よりも、当の本人たちがどうしたら自分らしく生きていけるのかを、必死に模索しているのではないでしょうか? その選択肢を思うように提供できていないのが、現在の日本のシニア・マーケティングなのではないかと思うのです。

      ■女性の人生95年時代の消費とは?
      4人に1人が65歳以上となった現代の日本社会で、多くの女性の推定寿命は95歳ともいわれます。病気で自分の思うように動けない人もいますが、巷には後期高齢者と呼ばれるようになっても、元気いっぱいの女性たちがあふれています。

      更年期を50歳としても、残りの人生が45年間。女性の人生の第二ステージは第一ステージとほぼ同じくらいの年月があり、日々の生活の中で、ただ生きるためだけではない消費は豊かな人生を送るための重要な要素でもあります。

      このことを考えるとき、「セクシー」や「ファミリー」だけではなく、もっと多様な価値観に応えることができるマーケティングが求められているのだと思います。そしてそれこそが、超高齢化社会における「日本再生」の鍵になるのではないかと思うのです。
      | Yuriko Goto | 高齢化社会とビジネス | 18:45 | - | - |
      インフィニット・ループ1番地から始まる果てしない戦い
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        米TIME誌の特集、アップル社CEOティム・クック氏のインタビューを読みました。

        すでに報道されているように、昨年カリフォルニア州で起きたテロ事件の容疑者(死亡)のi-phoneロック解除をめぐり、米司法省が暗号を解除するソフトの開発をアップル社に命令。アップル社CEOクック氏はこれを拒否し、今月、両者による法廷闘争が始まる予定でしたが、先週22日には司法省側が独自に暗号解除ソフトを開発できる可能性があるとして審理を延期。本日になって、FBIが情報抽出に成功。アップルい対する提訴を取り下げたとのニュースが入りました。

        カリフォルニア州クパティーノ、インフィニット・ループ1番地にあるアップル本社の自室で、i−padにかがみこむようにして頬ずえをつくクック氏のモノクロのカバー写真が与える印象は、彼がこの問題を単なるビジネス上のマターとしてではなく、人類そのものの将来を決定するような問題であると考えているかのようでした。

        ■すでにプライバシーはどこにもない。
        ちょうど今月、5年近く使ってきたモバイルパソコンの調子が悪くなり、私は買ってあった新しいHPのパソコンにデータを移行する作業をしました。

        新しいといっても型落ちで安くなっていたモデルを買ったため、まずWindows10にバージョンアップするところから。HPのパソコンは初めてだったのですが、指紋認証やら秘密の質問やらにさんざん答えさせられたあげく、バージョンアップにはこれらのセキュリティソフトをすべて解除しなければならないことがわかり、ほぼ丸1日かけて作業を行いました。

        やっとデフォルトのセキュリティソフトのアンインストールが終わり、ソフトやアプリをインストールし始めた途端、今度は衝撃的な事態に直面しました。ソフトやアプリがほぼほぼすべて、個人データへのアクセスを求めてくるのです。

        ウィルス駆除ソフトマカフィーはもちろん、インターネットやメールなど、私がアクセスしたり保存している情報すべてにアクセスする許可を求めます。Facebookは知らない人からの検索をシャットアウトすることはできますが、ログインした途端、数百人に上る「この人と知り合いではありませんか?」というリストを送ってきます。スカイプにいたっては、仕事で数回会ったきりもう何年も会っていない、これから会うこともないだろうという人の写真つきのアドレスを送ってきました。

        私はもともと会社の代表という立場ですので、一般の方のようなプライバシーはないものと覚悟していましたが、それにしても怒涛の洪水のような個人情報にいきなりさらされ、文字通り、息が詰まるような思いをしました。

        ■個人情報はどこまで守られるのか?
        さらに驚いたのは、クラウド上の蓄積データの状態です。

        しばらく前から写真の保存用にi-phoneでGoogle Photoを使用していたのですが、パソコン上のGoogleと同期し、何かの操作をした途端、顔認証ですべての写真が人物別にソートされたのです。場所と時間の情報入り。たまたまパソコンの写真フォルダに父の写真を保存していたら、一度もあったことがない父の友人たちも一瞬のうちに並べ替えられました。6歳になる娘や姪の赤ちゃん時代から現在に至るまでの写真もほぼミスなくソート。分類された写真を見れば、誰がいつ、どこで、誰と、何をしていたのか、一目瞭然です。

        Ten years ago, if I went for a jog, any and all information relationg to that jog would evaporate as soon as it happened. It woud go uncaptured. Now that information is not only preserved -- where I went, how far I went, how fast I went, what I listened to, what my heart rate was -- it gets uploaded to the cloud and propagatted across my social networks.
        10年前、私がジョギングに行っても、ジョギングに関する情報はしたそばから消えていった。情報をつかむことさえできなかっただろう。現在、行ったことが記録に残るだけではない。どこへ行ったか、どのくらい遠くまで行ったか、どのくらいの速度だったのか、何を聞いていたのか、心拍数はどれだけだったのか・・・すべてクラウド上にアップロードされて、SNSを通じて共有されるのだ。


        現在のインターネット社会には、もはやプライバシーは存在しえないといっても過言ではないのではないでしょうか?

        ■ビッグ・ブラザーとハッカーの登用
        とはいえ、クック氏をはじめとするアップル社の重役たちも決して最初から捜査に非協力的だったわけでなかったようです。FBIはたった一度きり、この容疑者の電話をアンロックするためにのみソフトウェアを作ってほしいと要請し、実際にアップルでは検討もしました。しかし、これがもしも前例となり、「解読してほしい電話が175台ある」と言われたケースに直面した場合、もはやそれがたった一台の例外ではなくなってしまうというのです。

        これに対し、大統領選共和党候補のドナルド・トランプ氏は「あいつら何様だと思っているんだ?」と攻撃し、アップル製品のボイコットを呼びかけ。シリコンバレーとは長年、良好な関係を築いてきたオバマ大統領でさえ、「たかが電話のために多くの人の命を犠牲にするのは正しい答えではない」とアップルを非難したといいます。

        コンピュータによる情報管理を語るとき、欧米メディアが必ず引き合いに出すのがジョージ・オーウェルの『1984』に登場する独裁者「ビッグ・ブラザー」です。ビッグ・ブラザーが統治する世界では、人々の生活のすべてが監視・管理され、個人のプライバシーや自由は徹底的に排除されます。この近未来小説に描かれた状況が、今すでに始まりつつあるのではと感じるのは、決して私だけではないのではないはずです。

        例えば、ここ数年、私はほぼすべての本や雑誌をアマゾンに頼っています。生鮮食品以外は、やはりほとんどの買い物をネット上でしています。私が読んだ本、食べた物、着ている服などの情報はすべてどこかのコンピュータに蓄積され、写真やSNSを調べれば、いつ、誰と、どこに行って、何をしたのかも一目瞭然。この情報に囲碁チャンピオンを破ったAIを加えれば、次に私が何を考えてどんな行動をするかは簡単に予測可能でしょう。

        いっぽう、米国政府や米企業は、サイバー攻撃に立ち向かうため、すでにハッカーたちをも積極的に活用し始めました

        動機はよしとしても、使い方を一歩間違えば、個人の思考や行動を知らず知らずのうちに監視し、操作し、権力維持のために使う、という実際に『1984』の世界で描かれていることがいつでも現実になりうる時代に、すで突入しているのです。

        ■インフィニット・ループ1番地から始まる永遠の戦い
        ちょうど10年前の3月、私はアップル本社を訪れました。サンフランシスコからクパティーノに向かう路上には色とりどりの春の花が咲き乱れ、まるで大学のキャンパスのような緑あふれる広大な敷地の中のオフィスでは、社員たちが生き生きと働いていました。社員の方に勧められ、敷地内のショップで「私はクパティーノに来た!」と書かれたTシャツを買い、一緒に軽い食事をした後、彼女は「来週のトライアスロン大会のために走るから」と、仕事を早めに切り上げ、明るいうちに自宅に帰っていきました。

        当時、まだバリバリの現役だったスティーブ・ジョブスはオフィスを歩き回っては社員たちに激を飛ばしていましたが、実際にクパティーノに行って初めて、私は彼が目指していたものが何だったか少しわかったような気がしました。

        FBIが今回成功したように、ロックをはずすソフトはアップル以外の誰かにも開発可能です。人間の作るるものに絶対はありませんから、どれだけ頑丈にロックしても、いつか必ず、そのロックは解除されるでしょう。そしてジョブスが遺したDNAが働いている限り、アップルはまた、より強固でプライバシーを守るためのシステムを開発していくことでしょう。

        「無限のループ」という名前が示す通り、この堂々巡りは永遠に続くのかもしれません。しかし、その円環に綻びが生じたとき、人類は次のステージに向かって後戻りのできない一歩を踏み出すことになるのではないかと思います。
        | Yuriko Goto | 企業経営 | 12:00 | - | - |
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