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ASIAN NOMAD LIFE2016.09.09 Friday
納税回避に我慢できなくなってきたEU諸国
JUGEMテーマ:国際社会 i-phone7の発表で世界から注目を集めるアップル。このところ低迷していた株価も若干持ち直し(昨日また下がっていますが)、ここ数日はナスダック指数を引き上げるなど米国株式市場にも貢献しています。
時価総額が2位のグーグル(アルファベット)と約400億ドル、3位マイクロソフトとは1000億ドル以上の差をつけてダントツ世界一の大企業アップル社ですが、これもまた巨額の純利益の源泉となってきた本業以外の財務活動に現在、黄信号が灯っています。先月、EUがアップルのアイルランドでの事業に対し130億ユーロ(約1.5兆円)の巨額の追徴税を命じたのです。
EUコミッショナーのマーガレッテ・ベステガー氏はこのインタビューで、ドイツ、フランス、スペインなどEU諸国での売り上げすべてをアップルはアイルランドのペーパーカンパニーで申告している、その理由はアイルランドの法人税率が12.5%と圧倒的に低いからであり(ちなみにフランス34.43%、ドイツ30.18%、スペイン25%)、納税回避目的であることは明白、と語っています。
確かに、売り上げが発生した国で納税するというのは税務の常識であり、EU側の言い分はわかりますが、アイルランドは2010年の財政破綻以降、この極端な低税率を武器にアップルをはじめグーグルやフェイスブックなどの米企業を誘致し経済再生を図ってきた実績があり、もしこの判決に従ってこれらの企業が国外に出てしまったら国家として死活問題となりますので、即座にEUに提訴しました。しかし、判決次第では、EUのみならずアメリカ企業の業績にも甚大な影響は避けられないでしょう。
同じく、多国籍企業の納税問題については、2日、オーストリアのケルン首相が「スタバなどの多国籍企業の納税額は屋台より少ない」と批判しました。ここでも名前が挙がっているのは、やはりスターバックスやアマゾンというアメリカの巨大企業です。
いっぽう、英ガーディアン紙によると、7日、デンマーク税務大臣が一部のパナマ文書購入に対し9百万クローネ(約1億4千万円)を支払う予定であることを公表しました。まだ支払いは実行されていないようですが、関係する全文書を入手の暁には、パナマのモサック・フォンセカ法律事務所を通じて税逃れをした、数百人のデンマーク人についての脱税調査を行うとされます。
政府がパナマ文書に関する情報を直接購入するのはこれが初めてということですが、ヨーロッパ各国政府に同様の動きが広がっており、企業ばかりか個人の海外への資産フライトにも非常に神経質になっている様子がうかがわれます。
ドイツやイタリアなど代表的なEU諸国は、日本と同じく少子高齢化により社会保障コストが増大しているのに加え(フランスは出生率が回復していますがそれにかかるコストはまた膨大なものになっています)、中東や北アフリカ諸国からの難民の受け入れコストや頻発するテロに対抗する安全対策費用など、国家負担が年々重くのしかかってきています。表向きはテクニカルな納税地問題に聞こえますが、実際には「アメリカ覇権主義の結果起こった問題の尻拭いをさせられているのに、さらに米国企業の利益を上げるために利用されているだけなのか」という本音が透けてみえるような気がします。
ブロック自由経済、通貨統合という歴史的な実験に踏み切ったEU諸国ですが、ギリシャ経済危機問題やイギリス離脱問題のみならず、根本的にそのシステム、のみならず存在理由自体が見直される時期に来ているのかもしれません。
2016.09.06 Tuesday
国籍を選ばなければいけないとき
JUGEMテーマ:国際社会 ■二重国籍が当たり前の香港 今から20年ほど前、香港で暮らしていたときのこと。ある機会に一人の日本人女性に会いました。当時、30代後半から40代くらい。自由業の方でしたが、香港にかなり長期間暮らされていて、しかもカナダのパスポートを持っているというので、とても驚いたことを覚えています。
ちょうどその時期は香港がイギリスから中国に返還される直前で、たいへんな数の香港人が、イギリスやカナダ、オーストラリアや南アフリカなどに移住してそれぞれの国の「パスポート」を取得していました。イギリスは返還前に大盤振る舞いで香港人にイギリス・パスポートを発行していましたが、カナダ、オーストラリア、南アフリカなど一部のコモンウェルスの国(旧英植民地)では、一定期間移住して暮らせばパスポートが発行されました。そのため、数年それらの国で暮らしてから香港に戻ってきたり、97年直前に引っ越していったりということが日常茶飯事だったのです。
パスポートを持っているということはイコール、その国の国籍をもっているということです。ビザなしで居住することはもちろん、投票もできますし、政治家として立候補もできます。何よりも、世界中どこに行ってもそのパスポートを発行した国が守ってくれるということがパスポート保持の最大のメリットです。日本人が事故や犯罪などに巻き込まれたときに真っ先に安否確認をするのは各国の大使館の義務ですし、昨年のネパール地震の際にはシンガポール政府は航空機をチャーターして希望するシンガポール人を全員、帰国させました。
中国返還前の香港人が将来を不安に思い「何が起こっても自分と家族を守ってくれる国の国籍がほしい」と考え、仕事を辞めるなど相応の覚悟で移住した気持はよくわかります。実際、昨年にはスウェーデン国籍の香港書店主がタイで中国政府によって拉致され、現在も明らかに冤罪とわかる罪で拘束されていますが、スウェーデン政府は現在も粘り強く中国政府と交渉を続けているようです。
このように二重国籍(多重国籍も含む)は香港ではごくごく普通のことなのですが、香港に限らず、ヨーロッパや中南米を中心に、他重国籍者を認めている国は決して少なくありません。
■抜け道だらけの二重国籍禁止 ただ、日本の法律では成人してからの二重国籍は法律で認められていないので、冒頭の女性の発言は非常にショックでした。
彼女の話によると、カナダでパスポートを申請するときに日本の国籍を放棄するかどうかは確認されず、日本政府にも自ら届け出をしなければわからないため、実際に多くの二重国籍者がいるということでした。確かに、パスポートを取得した国から直接連絡がいかなければ日本政府にはわかりませんし、出生地や外国人との婚姻により20歳までは認められている二重国籍でも、22歳までに国籍離脱の届け出をしなければ「自動的に日本国籍を選択した」とみなされるとありますので、やはり二重国籍状態を続けることは可能です。罰則もありません。
ペルーのフジモリ元大統領が2000年に日本の事実上の亡命をしたとき、日本政府はフジモリ元大統領を日本国籍保持者として認め、ペルー政府からの身柄引き渡し要求をすべて拒否しました。これも「国民を守る」という観点から行われたことですが、もしもフジモリ元大統領を二重国籍者として日本国籍をはく奪していたら、とっくにペルーに強制送還されていたことでしょう。
また、シンガポール人と結婚してこちらで暮らしている日本人女性と将来の子供の国籍について話すことがありますが、女の子のお母さんはどちらを選んでもいいという人が多く、実際に日本大使館に届け出をしないでずっと二重国籍のままの人も少なからずいるようです。
シンガポールは国籍に対しては非常に厳しく、シンガポール国籍を放棄した場合は、永住権が与えられず、ビザも一般の外国人と同じ扱いになります。その元にあるのは「教育や福祉をはじめ、国にはコストをかけて国民の生活を守る義務があるのだから、国民も国に対して義務を果たし、国に貢献すべき」という精神です。
■国民の義務と国に貢献するということ ただし、シンガポールと日本の二重国籍の男の子をもつ日本人の母親は、この問題についてまた違う考えをもっています。兵役があるからです。
シンガポール政府は皆兵制度をとっており、17歳になると男子は全員徴兵されます。また、2年間の兵役義務を終えてもその後、13年間は予備役となり、毎年訓練に戻らなければなりません。これがシンガポール政府の考える「国民の義務」なのです。実際に国連軍に参加するなどで海外に派遣されるのは職業軍人ですので、徴兵されたらすぐに命の危険があるわけではありませんが、有事の際にはシンガポール国籍をもつ兵役年齢にある男子は全員、軍務につくというのがこの国では当たり前で、その事実を前にしたとき非常に悩み「やはり日本国籍を取らせたい」と思う日本人母も少なからずいるようです。
私自身の子供は女の子ですし、シンガポール国籍しかありませんので悩む必要はありませんが、男の子をもつ母親としては当然の苦しみでしょう。ただ個人的には「国民としての権利を行使するには、きちんと国民としての義務を果たすべき」というシンガポール政府の断固とした姿勢には好感をもちます。皆兵制に賛成かどうかはさておき、納税や選挙権の行使をはじめ国民としての義務をしっかりと果たし、国家に貢献して力を合わせてよりよい国を作って行こうという精神に健全な民主主義を感じるからです。
■政治家は国民のために自らの人生を捧げてほしい 現在、民主党党首選に立候補した蓮舫氏の二重国籍疑惑が話題になっていますが、この産経新聞のインタビューを読む限り、私見ですが、蓮舫さんが台湾で国籍放棄の手続きをしているのかどうかはかなり疑わしいのではないかと思います。
いっぽう、彼女の気持ちは、海外在住者として痛いほどよくわかります。その国に根を下ろして暮らしていこうと決意しても、やはり自分の出自を考えれば、できるものなら国籍を残しておきたいという気持ちは、自分の心の故郷を捨てたくない、帰れる場所を確保しておきたいという、人間なら誰しももっているものではないかと思うからです。また、上述のフジモリ元大統領やカナダ・パスポート保持者の日本人女性の例にもある通り、二重国籍問題はグレーゾーンが広く、これをすぐさま法律違反として弾劾するのもどうかと思います。
しかしやはり最終的には、政治家として、その国の将来を決定していくという仕事を職業として選んだのならば、自らの郷愁に決別し、国民の生活を守るためにすべてを捧げてほしいと、一国民として思います。
厳しい決断ではありますが、蓮舫さんには、ぜひこの問題をはっきりとさせて、新たな気持ちで日本国民のために全力を尽くして働く覚悟を決めてもらいたいと願っています。 2016.09.04 Sunday
老後に備え「サステイナブル」に働くための自己管理法
JUGEMテーマ:幸せなお金と時間の使い方 ■日本橋で見たノー残業デーの過ごし方 8月下旬の水曜日、お客さんと日本橋で待ち合わせをして食事に行きました。
地下鉄日本橋駅とJR東京駅に挟まれた一角はサラリーマン向けの繁華街になっていて、大手チェーン店から個人経営の店まで飲食店で埋め尽くされています。お客さんが焼肉を食べたいというので、6時半くらいにここで焼肉屋さんを探し始めました。
特にこだわりはないので行き当たりばったりで入ってみましたが、どの店でも即座に断られます。お店はがらがらで人っ子一人いないのに、予約で満席だというのです。4軒目でやっと「予約で埋まっているけど1時間半くらいなら」と条件つきで店に入ることができました。時間はすでに7時ちょっと前。この店もお客は最初、私たちだけでした。
7時を回った頃からやっとぽつぽつお客さんが入り始め、8時前には言われた通り店は満席になりました。たまたま一番端の店全体を見渡せる席に座ったので客層を見ていたのですが、中年の男性ばかりの6〜10人くらいのグループが3組、20代男女の6人グループが1組、そして女性ばかり、いわゆる女子会の8名グループが1組でした。男女ともほぼ全員が白いシャツか薄い色のブラウスに濃色のズボンかスカートという同じような服装で、一見して近くで働いているサラリーマン&サラリーウーマンだということがわかります。裏原系インディーズブランドのデザイナー兼社長のお客さんと私の存在は、服装からして明らかに店の中で浮いていました。
最初に言われた通り、8時過ぎにはラストオーダー、8時半には「もう時間なので」と言われて店を出されましたが、他のグループのサラリーマン&ウーマンたちはまさに宴たけなわ状態で、その後1〜2時間くらいは店にいたのではないかと思われます。逆に私たちはそのままお開きで、私は9時過ぎには家に着きました。
水曜日は多くの企業でノー残業デーに指定されているため飲み会も多いのでしょうが、この晩の様子を思い起こすと、どう考えても週の半ばに早く帰宅して家族と過ごしたりゆっくり休養して疲れをとる、というノー残業デー本来の目的が達成されているとは思えません。百歩譲って飲み会でストレスを発散するとしても、スタートが遅すぎます。会社が5時から6時の終業時間であれば、遅くとも6時から6時半までに飲み会を開始すれば、一次会は9時前にはお開きになるでしょう。しかし、7時すぎから7時半のスタートでは最低でも9時半、二次会でも行こうものなら終電コースです。これではせっかくの充電日である水曜日も睡眠不足に陥り、週の半ばですでに疲れ切ってしまうこともじゅうぶん考えられます。
■「気力を起こすための体力」を支える睡眠時間 元トリンプジャパン社長で、就任してから19年連続増収増益、売り上げを5倍にするという偉業を達成した吉越浩一郎さんは、私がたいへん尊敬する経営者の一人です。吉越さんが提唱してこられた「ノー残業」や「がんばるタイム」など、私の会社でもマネをして実践していることは少なくありません。
その吉越さんの近著『気力より体力』では、日本人がなぜ長時間労働に陥り労働生産性が低いのか、という問題を、「気力では補えない体力が根本的に不足しているから」という切り口で語っておられます。やるべきことが山積している責任感の強いビジネスマンが何とか仕事を終わらせようとして睡眠時間を削って長時間残業をする、また、家に仕事を持ち帰ってまで仕事をする。これにより、仕事を完璧な状態で行う能力がじゅうぶん発揮できず、生産効率が下がってさらに長時間にわたり作業をしなければならなくなる。何とか「気力」で乗り切ろうとするが、「気力」を支える「体力(運動)・体質(食事)・体調(睡眠)」管理が欠けているため、ツルハシで穴を掘っているような状態になり、満足のいく仕事ができるどころか、仕事は中途半端になり、ますます自分自身の体力を消耗する悪循環に陥る、という主張です。
上記の自己管理の中でも、これまで特に吉越さんが強調してこられたのが「8時間睡眠」です。
睡眠は疲労から体と心を回復させるための最善の方法です。
以前の記事にも書きましたが、睡眠時間6時間を切る日が続くと、脳の機能が低下し、酎ハイ数杯を飲んだ後と同じような状態になってしまうという研究があります。また、わずか5日の睡眠不足でも抑うつ状態に陥りストレス耐性が低くなるそうです。さらに、自殺する人の7割以上は睡眠時間が不足していることを自覚しており、寝つきが悪かったり、いったん寝ても途中で目が覚めてしまったりすることが多いというデータもあります。
仕事をしていれば当然、ストレスもありますし、仕事量が一度に大量に増えることもあります。それを平常心でムリなく乗り切るためには、日頃から睡眠をしっかり取って、ストレスや疲れから自分自身を守る習慣をもつことが必要なのです。
■「バリバリでなくさくさく」仕事をし「サステイナブル」な生活を送る 「残業は『百害あって一利なし』」と吉越さんは言い切っておられますが、気力だけで長時間労働をして時間あたりの生産効率を下げるより、労働時間をできるだけ短くし、体と心に余裕のある状態で仕事を「さくさく」こなす。がむしゃらに精神論で働く「ばりばり」ではなく、スマートに、軽やかに仕事をすることの重要性がこの「さくさく」という言葉につながっています。
また、吉越さんは「サステイナブル(持続可能な)」という言葉を使われていますが、仕事は毎日が真剣勝負でありながら、スポーツの試合と違い、それが何十年にもわたって続いていきます。当然「サステイナブル」に長期にわたり真剣勝負を続けるためには、じゅうぶんな精神的、体力的な余裕をもたなければいけません。
特に、少子高齢化社会で65歳まで、今後は67歳や70歳まで働かなければ引退して生活できるだけの年金を受け取れない時代にあっては、効率の悪い働き方や生活習慣で自分自身の体や心を損なうのではなく、いかに働くためのコンディションを整えて職業人としてサステイナブルな生活を送るかということを一人ひとりが真剣に考えなければならない時期にきていると思います。
「老後を過ごすのにじゅうぶんなお金がないから死ぬまで働かなくてはならない」ではなく、「60代になっても生きがいをもって毎日楽しく充実して働くことができる」とポジティブに考えられる将来を迎えるために、まだ若いうちから、このような意識で自分自身を管理する習慣を身につけることこそが必要なのではないでしょうか。 |
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