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    「クッキーを焼く女」に嫌われた元大統領の「妻」ヒラリー・クリントン氏と 「一人前の政治家」になって叩かれる元大統領の「娘」パク・クネ大統領
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      JUGEMテーマ:国際社会

       

      世界中の人々が固唾をのんで見守っていた米大統領選が終わりました。

       

      大方の予想に反して共和党ドナルド・トランプ氏の勝利。私的メールアカウント使用問題をFBIが訴追しないと投票直前に発表し、ヒラリー氏がトランプ氏を大きく引き離したかと思われましたが、実際には多くの選挙区で接戦が繰り広げられた末、トランプ氏が逃げ切りました。

       

      ■注目されなかったトランプ氏の「女性」侮蔑発言

      トランプ氏が選挙運動中に発した冒険は枚挙にいとまがありません。アルジャジーラがまとめているこの動画では、「イスラム教徒を入国させない」とか「(メキシコ国境に壁を作って)彼らに壁の費用を支払わせる」とか「(メキシコ人は)レイピストだ」というような、まさに目が点になるような発言を重ねてきました。

       

      中でも私が最も驚いたのは、ヒラリー氏との第三回目、最後となったディベートの中での「なんて嫌な女だ(such a nasty woman)」の一言でした。お互いの政策について討論の最中、ヒラリー氏がトランプ氏の富裕層の減税政策について批判をした際にまだ彼女が話している最中にこの一言をトランプ氏がマイクに向かってつぶやいたのです。トランプ氏は昨年にも、共和党女性候補だったキャリー・フィオリナ氏について「あの顔を見ろよ。あんな顔に投票するか?」とコメントしています。

       

      さらに驚くことに、このような「女性」を対象とした個人攻撃に大きく反応したのは一部メディア(多くは女性のコメンテーター)のみで、イスラム教徒やメキシコの移民に対する暴言や、女性を口説き落とせるというビデオ流出のときのような大きな批判の嵐に発展はしませんでした。多くの面で世界トップに君臨するアメリカ大統領を選ぶにあたり、アメリカ国民はトランプ氏の女性侮蔑的発言にさほど注意を払わなかったと言ってもよいと思います。

       

      ■「クッキーを焼く女」に負けてクリントンになったヒラリー

      ニューヨーク在住のジャーナリスト北丸雄二さんが、11/1のブログ記事の中でこう書かれています。

      これは一体どういうことなのでしょう? よく言われるようにヒラリーが既成社会・政界の代表だから? 違います。だって女なんですよ。代表でなんかあるはずがない。

      嫌う理由はむしろ彼女が女にもかかわらず、代表になろうとしているからです。ヒラリーを嫌うのは彼女が強く賢く「家でクッキーを焼くような人間ではない」からです。嫌いな「女」のすべてだからです。「女は引っ込んでろ!」と言われても引っ込まない女たちの象徴だからです。違いますか?

       

      ヒラリー氏がビル・クリントン氏の妻として初めて政治の表舞台に現れたとき、彼女は夫と別姓の「ヒラリー・ロドハム」と名乗っていました。そして「私はクッキーを家で焼くような女ではない」と宣言し、夫とともに積極的に政策について発言しました。当時そんなことをいう大統領候補者夫人はいませんでしたので、私も鮮明に覚えています。

       

      しかしその結果、夫のビル・クリントンは選挙に負け、彼女はヒラリー・ロドハム・クリントンに改名。さらには旧姓を捨ててヒラリー・クリントンになりました。「クッキーを焼く女」たちとその夫たちの反感を抑えて票を獲得するためには、「クッキーを焼く女」と同じく夫の名字を名乗る以外に選択肢はなかったのです。

       

      そして今回の大統領選の敗北。

       

      アメリカ合衆国の多くの男性のみならず多くの女性たちもまた、大統領の「妻」であったにもかかわらず、「家でクッキーを焼かない女」を自分たちの国のリーダーにすることに賛成しませんでした。

       

      ■トップの「娘」がトップになったときに

      いっぽうお隣の韓国で2013年、パク・クネ氏が女性初の大統領になったとき、私はかなりの違和感を抱きました。有能な政治家らしからぬぼそぼそした物言いに加え、社会的な女性活躍度でいえば日本に負けずとも劣らない国際的低評価の韓国国民が、日本より先に初の女性国家代表を選んだからです。

       

      しかし最近になって、パク・クネ大統領のこの自伝を読んで「ああ、そういうことだったんだ」とたいへん納得しました。

       

       

       

      パク・クネ氏は有名なパク・チョンヒ元大統領の長女。まだ20代の若さで大統領夫人だった母を暗殺され、学者になるという夢を捨てて、急きょ母の代役で「ファーストレディー」を務めることになります。

       

      この間、ファーストレディーとして内政・外交の顔となるのみならず、大統領の父が提唱するセマウル(新しい村)運動や、現在問題となっているチェ・スンシル氏との関係の始まりであるセマウム(新しい心)運動の中心となって働きます。

       

      数年後に父も暗殺された後、クネ氏は政治の舞台からは遠ざかり、失意のうちに30〜40代を過ごしますが、40代半ばに請われて政界入り。抜群の知名度を活かしてハンナラ党代表となり、暴漢に襲われて60針も顔を縫うという試練も乗り越えて、韓国初の女性大統領となるのです。

       

      ところが、ここにきて俄かに勃発したチェ・スンシル氏への国家機密漏えい問題を契機に支持率が急落。一部報道では5%まで下がったといわれていますが、大統領個人や親族の汚職問題でもなく、また中国、ロシア、アメリカ、日本、そして何より北朝鮮との複雑な利害関係の中で翻弄される韓国の政治・経済をここまで何とか無難にやりくりしてきた実績をもまったく顧みられない状況で、国民のクネ大統領へのこれだけの冷酷な仕打ちにはやはり驚かされます。

       

      その原因もまた、ヒラリー氏と同じく、クネ氏が元大統領の「娘」から、一人の「女性」の大統領になったことによる、人々の拒絶反応ではないかと思うのです。

       

      ■ミソジニー(女嫌い)は男だけではなく、女にもある

      このブログ記事には大邱の女子高生がパク・クネ氏の退陣要求集会で演説する様子が動画入りで紹介されています。

       

      訳文を読む限り、内容に関しては、チェ・スンシル氏事件に対する直接的非難というより、国内外問題のすべてをパク政権の失政に帰している嫌いがあります。日本でいえば、安保法案に反対するあまり、安倍政権のすべての政策にノーといっている若者のようなもので、現在の韓国国民のヒステリックな状態を象徴するようです。また、その拒絶反応の源流をたどると、女性のパク・クネ氏を自分たちが大統領に選んでしまったことへの怒りがあるのではないかと思うのです。

       

      両親を暗殺されても健気に生きてきた可哀想な「娘」であったパク・クネ氏が一人の自立したリーダーとなったときに受ける攻撃と、クリントン元大統領を聡明な「妻」として支えてきたヒラリー氏が「分を超えて」国家の長になろうとしたことへの米国民の明確な「ノー」には、根底に同じ種類のミソジニー(女嫌い)があるのではないかと思えてなりません。

       

      また、そんな否定的感情をもつのは、決して女が自分の上にたつのが面白くない男だけでなく、自分と同じ「妻」や「娘」である女が自分の上にたつことに耐えられない女ではないのでしょうか。

       

      「女性の敵は女性」という言葉がありますが、女性が初めて参政権を得てからまだ100年あまり。ただのポピュリズムではなく、真に国家の政治を任せられる実力と人気をあわせもつ女性トップを男性も女性も公平に判断し選べるようになるまで、まだしばらく時間が必要なのかもしれません。

      | Yuriko Goto | 女性の働き方 | 08:58 | - | - |
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