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    憧れのメイドつき生活の厳しい現実
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      日本でも最近、外国人家政婦が解禁されましたが、ここシンガポールや香港では外国人の住み込メイドを雇い、女性が出産後も外で働き続けて、家事や子育ては丸投げするというライフスタイルがこれまで一般的でした。

       

      しかし、シンガポールをみる限り、最近この流れが少しずつ変わってきており、子供は保育園に預けて家事は家事代行サービス会社に、という人が周囲で多くなってきています。彼女たちがなぜメイド付き生活を止めたのか、また、止めないまでも非常にストレスフルな生活を送っているのか、いくつかケースをご紹介します。

       

      <ケース1>ミャンマー人メイドに変わって自分がメイドになってしまったケース

       

      フィリピン人メイドは英語が話せるのでメイドの中では最上ランク。給与が高いのにもかかわらず引っ張りだこでしたが、最近は小売店の販売員やレストランのウェイトレスなどの需要が高まり、なかなかメイドとして雇うことができません。

       

      ある日本人主婦のお宅でも長く働いてくれていたフィリピン人メイドが帰国してしまったためミャンマー人メイドに替えたのですが、この女性はミャンマーの田舎育ちで、和食など生まれてこのかた食べたことがなく、いくら教えても和食とは似ても似つかぬ味つけに。その上、掘立小屋のような田舎の家で育ったため清潔の概念がまったく違い、やはり何度掃除を繰り返してもあまりに汚くて我慢できないほど。

       

      結局、食事はすべて妻が作り、掃除も自分でせざるをえなくなったため、メイドの仕事がなくなりました。しかし契約は残っているため何もしないメイドの食事まで自分で作ることになり、自分がメイドのメイドになってしまった、という話。彼女は「もう二度とメイドは雇わない」と断言していました。

       

      <ケース2>マンションから一軒家に引っ越してメイドがいつかなくなってしまったケース

       

      以前同じマンションに住んでいたフランス人駐在員夫婦。夫が出世して住宅手当が上がり、念願のテラスハウスに引っ越したのですが、掃除面積が大幅に増えたため、これまで勤めていたメイドが「契約が違う」と辞めてしまいました。

       

      その後、メイド・エージェンシーから何人もメイドを紹介してもらったのですが、小学校低学年と幼稚園の子ども2人の世話に加えて料理・洗濯、3階建ての庭付きテラスハウスの掃除はのんびりペースの東南アジアメイドには荷が重すぎたらしく、次々と辞めてしまったそうです。

       

      結局、妻は仕事をパートタイムに切り替えて子供の面倒は自分でみることにし、掃除は外注サービスに。当初の目論見より収入が減ってしまい家計が大変だと嘆いていました。

       

      <ケース3>メイドに料理を教えるために自分で料理の勉強をしなければならなくなった超リッチファミリーのケース

       

      親が超リッチな夫婦。親からもらったシンガポールの高級住宅地の大邸宅に住んでいて、メイドは2人。

       

      建築雑誌に出てきそうなモダンなデザインの家で家具調度にもこだわっていますが、あまりにも大きすぎて2人のメイドが一日中掃除をしてもあちこちに汚れが目立ち、庭の手入れも行き届きません。さらにタイル張りの屋内プールまで掃除する余裕がないため飼い犬専用プールに。

       

      近所に住んでいる親夫婦がしょっちゅう遊びに来るので食事を作ってもてなさなければならないけれど、外国人メイドは親の口に合う中華料理を作れないため、自分が必死で料理を勉強して教える毎日。もともと料理などしたことなかったけれど、今になって「子供の頃おばあちゃんに教わっておけばよかった」とこぼしていました。

       

      これ以外にも、何を頼んでも反論してくる超反抗的メイドのためにストレスがたまって円形脱毛症になってしまったケースや、家族で旅行中にメイドが恋人や友人を連れ込んで連日パーティーをしていたことがわかりクビにするも逆恨みを恐れて家の鍵をすべて替えなければならなかったケース、契約満了で帰国時に「国の家族にもっていってあげたいから」と自分でケーキを焼きその中に貴金属を入れて盗んでいったメイドなど、メイドへの不満・愚痴話は尽きません(そしてこれがけっこう面白い)。

       

      シンガポールのみならず、香港やマレーシアでもメイド虐待の話がときどきニュースになりますが、ひどいなーとメイドに同情するいっぽうで、ここまでするからにはよほど腹に据えかねることでも続いていたのだろうか、と雇い主の心情にも思いをはせることがあります。

       

      いずれにせよ、メイドとはいっても給料という対価をもらって働いてくれる被雇用者であり、メイドを雇用する際は自分が雇用者としての責任を負い、メイド側も労働者として権利の主張をするのが当然と考えると、やはり、できるだけ家事も育児も家族で協力してやっていこうという方向が今後のシンガポールのトレンドかもしれません。

      | Yuriko Goto | シンガポール子育て | 11:57 | - | - |
      日本のデフレ状態をH&M子供服の値段で知る。
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        JUGEMテーマ:経済全般

        来週末から日本に帰国するにあたり、小3の娘の服をH&Mのネット通販で買うことにしました。

         

        もちろんシンガポールでも同じものは買えるのですが、こちらから持っていくと荷物になりますし、まとめて新しく買うことによりくたびれた服を捨ててワードローブを新調できます。去年は途中立ち寄った香港でまとめ買いをして「さすが消費税がない国はシンガポールより若干安いわ」と思ったものですが、サイズ感もわかったので今年はすべて日本のネット通販にしたところ、驚くほど日本の価格が安いことに気がつきました。

         

        比べてみたのは、10種類以上のバリエーションがあってシンガポールでも人気の「ジャージーノースリーブワンピース」。

        日本で買うと内税で599円。消費税8%ですので、商品価格はわずか556円です。

         

        これを各国のウェブサイトで比べてみると価格はばらばら。(税込み価格()内は日本円、消費税率、日本円での商品価格の順)

         

        シンガポール $8.95(737円)7% 689円

        香港 $49.9(702円) 0% 702円

         

        香港は安いと思っていましたが、消費税分を控除すると商品価格はシンガポールより高くなっています。不動産価格が高く販売経費がかかりますから、当然かもしれません。

         

        他のアジアの国々もみてみました。

         

        台湾 $199(736円) 5% 701円

        韓国 W9000(900円) 10% 818円

        中国 ¥39.9(690円) 17% 590円

        マレーシア RM24.9(692円) 6% 653円

        タイ B199(685円) 7% 640円

         

        なぜか台湾は香港、シンガポールと同じくらい高く、韓国は断トツでアジア一の高さ

         

        中国、マレーシア、タイでは税込み価格はほぼ横並びですが、やはり日本より高い。賃金を考えると中〜高級品の位置づけだと思います。また、消費税分を引くと中国の商品価格はだいぶ安くなっています。それでも日本より高い。

         

        一般的に世界の物価を比較するときに引き合いに出されるのは「ビッグマック価格」ですが、食品の場合、国によって農産物価格が違うためあまり参考にならないケースもあります。その点、ファストファッションの衣料品は生産コストはすべて同じですし、海上運賃も世界中それほど変わらないので、価格設定のキーになるのはその国の人々の購買力&販売コストに絞られてきます。

         

        そして上記の結果をみる限り、アジア主要国で一番物価が安いのは日本ということになります(アジアで人気のユニクロや無印良品もアジア各国では基本、日本国内よりかなり高い価格設定です)。

         

        アジア人観光客が買い物天国の日本をめざすのは当然ですが、このようなブランドと価格競争していかなければならない日本国内メーカーの利益が出ない→従業員の給料が上がらない→購買力が下がってさらにデフレに、というデフレ・スパイラルが解消されていないどころか、さらに悪化している現状にも目を向けざるをえません。

         

        もう一つ気がついたのは、欧米では日本並みの低価格だということ

         

        米国 $4.99(550円) ※州により税率異なり決済時に付加  550円

        スウェーデン Kr49.9(633円) 12% 565円

         

        恐らく世界最大の市場であろう米国とH&M発祥の地であるスウェーデンでは、日本と商品価格がほぼ同じ。

         

        しかし、これらの国ではGDPも順調に伸びており、特にスウェーデンは2015年4.52%、2016年3.24%、2017年2.4%と非常に高い成長率をキープしています。つまり、物価も賃金も下がっていくデフレ・スパイラルとは無縁な経済状況であるということです。当然、この成長にはH&Mの企業業績も寄与しているでしょう。

         

        「日本にはユニクロがあるじゃないか?」とおっしゃる方もいるかもしれませんが、スウェーデンの人口は990万人。日本の人口の10分の1以下で、H&Mの売上はユニクロの1.4倍。

         

        また、この表を見るとわかりますが、アパレル業界4位以下には米国企業が多数入っており、日本の約2.6倍の人口をもつ米国企業の売上合計は約3倍。順位を下げればこの差はさらに広がっていくでしょう。

         

        結論を言うと、日本の経済低迷最大の問題は、ユニクロやMUJIのような世界で稼げるブランドが人口規模に比して非常に少ないということではないでしょうか?

         

        私はアベノミクス第三の矢はここにこそ的を当てるものと考えていましたが、そうでなかったことが明確になった現在、早急に経済対策の抜本的見直しが必要だと思います。

        | Yuriko Goto | 高齢化社会とビジネス | 12:43 | - | - |
        ユニクロのリラコをちょっとエッジーに着てみる。
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          前回に続き、ユニクロのリラコをシンガポールでヘビロテして着まわしているお話。

           

          50代になってきちんとした服やそれなりの値段のする服を滅多に買わなくなりました。

           

          一つは仕事で日本でお客さんに会う機会がほとんどなくなったこと(シンガポールではお客さんも日本のようにきちんとした服装はしていません)、もう一つはこれまでに買った服がたくさんあるので、それを着まわせば十分ローテーションできるからです。

           

          ただ、やはりたまには普段と違うお洒落もしたくなりますので、ちょっとしたものを買い足したり、着回しを変えたりしています。

           

          そこでもリラコ大活躍。

           

          この長めのチュニックはちょっと前にマラッカ旅行したときに買ったもの。ガーゼタイプのコットンでとても着やすいのですが、1枚で着るには短すぎ、スパッツを合わせると野暮ったくなってしまうので、リラコを合わせています。

           

          この赤いタンクトップはずいぶん前に買ったデザイナーズもの。鮮やかな朱赤は旧正月などに重宝。ただし重ね着用なので、牛模様のやはりユニクロのブラトップと黒のリラコでちょっとエッジを効かせつつ涼しく着ます。

           

          こちらは柄on柄。随分前に買ったシルクの花柄タンクトップにリラコを合わせて、薄手のカーディガンでまとめます。

           

          以前は1つ何か気にいったトップスを買ったとき、コーディネートするスカートやパンツを併せて買うのが普通だったのですが、それを続けているとどんどん服が増えてしまいますし、ちょっと体重が増えたり減ったりすると着られなくなってしまったりします。

           

          その点、重ね着・着回しができてゴムウエストのリラコはとっても便利。まだまだいろいろ使えそうです。

          | Yuriko Goto | 身軽な暮らし | 08:00 | - | - |
          年中真夏のシンガポールでユニクロのリラコがとても使えるというお話
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            JUGEMテーマ:幸せなお金と時間の使い方

             

            「お洒落なステテコ」として数年前からユニクロのラインナップに加わったレーヨン素材のリラコ(一部コットンもあり)。

             

            「ルームウェア」という、どちらかというと下着に毛が生えたようなコンセプトの商品ですが、とにかく着ていて涼しいので、年中真夏のここ、シンガポールで私はけっこうヘビロテで外出着として使っています。

             

             

            こんな感じで、1年に2枚くらいずつ買い足してきたリラコを着回し。

             

            ポイントは2つ。

             

            カラフルなものに目がいきがちですが、こちらに視線がいくとステテコなのがばれてしまうので、できるだけ地味でシンプルなデザインなものを選ぶこと。

             

            もう一つはユニクロのTシャツを合せないこと。ユニクロのTシャツはコットンの質は悪くないですがデザイン性に欠けるので、私は通常、オーストラリアのCotton Onというファストファッション・ブランドのTシャツを合せます(ユニクロだったらUTのアーティストデザインはいいかも)。

             

            一応アイロンはかけていますが、引き出しにしまっておくだけでシワになりますし、着てもすぐにシワが寄るのであまり気にしません。

             

            近所の買い物や子どものお迎えだけでしたらこれで済ませますが、ちょっと街まで行くときはスカーフをプラス。

             

            南国らしく戸外は蒸し風呂、ビルの中は冷房強すぎが普通なので、けっこう実用的です。写真のスカーフはコットン製ですが、シルクのスカーフを合せても面白いです。

             

            Tシャツとリラコ併せても2,000円しないウルトラ・プチプライスで、50代の私が着てもたいしてみすぼらしく見えないのは、素材がそこそこいいからだと思います。ユニクロ最大の強みはやっぱり素材ですね。

             

            東京や大阪など、日本の大都市の真夏はシンガポールより暑いですから、リラコ、もっともっと活用してもいいんじゃないでしょうか。

            | Yuriko Goto | 身軽な暮らし | 12:16 | - | - |
            シンガポールの景観がこれから20年くらいで全く変わってしまいそうであること。
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              JUGEMテーマ:経営のヒントとなるニュースを読み解く

               

              ここのところシンガポールの住宅地で頻繁にみかけるようになったが、この電動ヴィークル。​(写真はFalcon Mobility社HPより)

               

              ちょうど1年前にご紹介した立ち乗りするタイプの電動スクーターは若者向けにますます増えていますが(一部の大学キャンパスではシェアサービスも始まっているようです)、こちらは座るタイプで主として高齢者向け。

               

              車椅子のように押してくれる人が要らないだけでなく、バスや地下鉄などの公共交通機関でも補助板さえあれば簡単に自分で乗り込めます。

               

              けっこうスピードも出るので青信号の時間が短い交差点でも高齢者が安心して渡れますし、コンパクトなためマーケットなど人ゴミの中にも平気で入っていけます。価格も日本円で10万円強とリーゾナブル。

               

              高齢者ががくっと老けこむのはやはり足腰が弱って自力で外出ができなくなる時ですので、このようなヴィークルの出現で行動制限がなくなれば健康維持のためにも良いと思いますし、買い物代行サービスなどを使わなくても自分で買い物に出かけられるのもメリットです。

               

              私もまだ高齢者ではないですが、食料品の買い出し後10分ほど歩いて家に帰るのがつらいなーと常々感じていますので、そのうち買い物用に1台買ってもいいかなと考えていました。

               

              そんな時に読んだのが、中島聡さんのこの記事

               

              「シェアリング・エコノミー」と「パーソナルな空間の両立」を考えると、今後の交通機関は、小型のパーソナル・モビリティが大型のパブリックな大型の自動車に入れ子のように入っていく形態になっていくのでは、というアイディアでした。確かに、上記のような座席型の乗り物が椅子がないバスのような乗り物の中に入っていくことを考えると非常に自然な感じがします。

               

              シンガポールでは将来的に地下を何層ものトンネル構造にし、車や交通機関は地下に、歩行者や自転車などは地上にという都市計画をもっているのですが、例えば、このような電動ヴィークルがバス停のようなスポットに据え付けられた穴から地下に降りていき、スマホであらかじめ設定しておいた目的地に行く大型の自動車に自動的に乗り込んで乗り換えスポットもすべて自動的に選択。また穴を通って地上に出て少し距離を移動して目的地に到着、というようなイメージが非常にリアルに浮かびます。

               

              シンガポールのような小さな都市国家ですと比較的簡単にこのような実験が始められ、あっという間に現在の車社会からこのようなパーソナル・ヴィークルの社会に変わってしまうような気がします。

               

              アメリカの都会で自動車が普及し始めてから馬車が消えるまでの時間はわずか10年余りだったと言われます。

               

              地下道路整備などの時間も考えると10年というわけにはいかないかもしれませんが、少なくとも20年後にはシンガポールの地上を現在占拠している車やバス、そして道路は消えているような気がしてなりません。

              | Yuriko Goto | テクノロジー | 15:09 | - | - |
              高齢化社会の星、マハティール次期首相(もうすぐ93歳)の健康の秘密は小食と生涯現役でいること。
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                JUGEMテーマ:経営のヒントとなるニュースを読み解く

                 

                マハティール元首相が率いるマレーシア野党連合が、昨日行われた総選挙で勝利しました。

                 

                マハティール元首相は1925年7月10日生まれなので、ちょうどあと2か月で93歳。1981年から22年間首相を務めて「Look East」政策下、日本に倣って経済政策を進めマレーシアを近代国家にした人物であり、80年代90年代を通じてマレーシアの顔だった人物です。親日家としても有名であり、三菱自動車と組んで国民車「プロトン」を立ち上げたのもマハティール元首相でした。

                 

                2003年には禅譲により首相の座を降りますが、その後も活発に発言。汚職疑惑が絶えないナジブ現首相を痛烈に批判し続けて今回の選挙には高齢を押しての出馬。選挙期間中は現政権の嫌がらせを受けたり暗殺計画の噂も流れましたが、与党政権から過半数の議席を奪取する結果に終わりました。

                 

                それにしても92歳といえば、たいていの人は政治活動どころか自分自身の生活をまかなうことすら覚束ない年齢です。その中で熾烈な選挙戦を勝ち抜いて激務の首相職復帰へ。並みの人間のできることではありません。マハティール元首相の活力の源泉はどこにあるのでしょうか?

                 

                昨年のこのインタビューによると、マハティール元首相は自分自身の健康の秘密について、心臓病や肺炎を患ったこともあり100%健康ではないと前置きしながらも、「煙草を吸わない、お酒を飲まない、食べ過ぎない」生活をしていると話しています。過去30年間体重はほとんど変わっておらず、30年前の服が着られるとのこと。

                 

                また首相を引退しても人に会って話をすることはずっと続けており、「完全リタイア」という状態からはほど遠い生活をしていることを語っています。

                 

                こちらの記事は今年になり、選挙への出馬が報道されてからのものですが、ここでもやはり非常に細い食と寸暇を惜しんで選挙民に会う生活が紹介されています。実際にマハティール元首相と会ったことがある知人に聞いたことがありますが、非常に気さくで温かい人柄で、会った人は魅了されるといいます。

                 

                いずれにせよ世界的に高齢化が進む社会の中、92歳で一国の首相に再登板という事実は快挙には違いありません。

                 

                マハティール、もうすぐマレーシア首相、もうすぐ93歳。今後の活躍に期待します。

                | Yuriko Goto | 国際社会 | 09:00 | - | - |
                映画評『ペルセポリス』:もしも今、宗教革命が起きたら。
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                  JUGEMテーマ:政治

                   

                  シンガポールでは今週末まで仏大使館主催によるフランス文化振興フェスティバル「Voilah!」開催中。エスプリの国フランスだけあって気のきいた催しが目白押しなので、毎年楽しみにしています。

                   

                  今年はフランスのアニメ映画数本が上映されたので、そのうち2本を観てきました。1本目は娘と一緒に楽しんだ『パリの猫』という映画。そして2本目が今回ご紹介する『ペルセポリス』です。

                   

                  『ペルセポリス』はイラン革命勃発のちょうど10年前、1969年生まれのコミック作家、マルジャン・サトラピによるフランス語による自伝コミックを映画化したもの。

                   

                  前国王から続いた王政下、お酒や西洋文化の流入はあり、ヒジャブはなしの自由な生活を謳歌していたイラン人の一般庶民たちが、革命をきっかけにイスラム原理主義に生活をすべてコントロールされていく様子が描かれます。

                   

                  主人公マルジはブルース・リーが大好きな活発な小学生。インテリらしき両親と筋金入りの進歩主義者の祖母の元伸び伸びと育ちますが、革命を境に生活は激変。前体制で共産主義者として投獄されていた大好きな叔父が解放されて喜んだのも束の間、獄死。

                   

                  また、女性はすべてヒジャブ&体のラインを隠す衣服が義務づけられ、お酒はもちろんご法度。男女交際や欧米文化もすべて禁止されます。そしてイラン・イラク戦争が勃発。テヘランの街は爆撃に晒され、数十万人の若者や市民が死んでいきます。

                   

                  型にはまらない発想と信念を曲げない頑固さを併せ持つマルジは体制や戦争に疑問をもって教師や宗教警察にマークされるようになり、心配した両親はマルジをオーストリアに留学させることに。

                   

                  しかし、そこでもイラン人という自分のアイデンティティを消化できないマルジは行き場を失くしていったん帰国。テヘランの大学に入学するもやはり自分の居場所をみつけることができず、再度フランスにわたって新たな人生を始める、というところでお話は終わります。

                   

                  アニメーションは最初と最後を除き、ほぼ全編がモノクロで描かれます。これは人種や国の違いに関わらず、こんな状況に人々が追いやられる可能性がいつもある、ということを知ってほしかったためだといいます。この作者(兼監督)の希望通り、ペルセポリスのコミック単行本は世界各国で出版されて累計150万部の大ヒット作となり、映画は2008年のアカデミー賞候補にもなりました。

                   

                  パンク音楽が大好きで、ピュアな恋愛に憧れるちょっと反抗的で理屈っぽいけれどいたって普通な思春期の少女のマルジの姿は、まるで私自身の子ども時代を見ているようで、もしも自分が日本でなくイランで彼女のように育ったらどうなっていただろう、と本気で考えてしました。

                   

                  もう一つ、映画の中で最も印象に残ったのは、困難の中で奮闘するマルジを温かく見守る祖母の存在。

                   

                  結婚したものの夫婦仲がうまくいかず悩むマルジを「1回目の結婚なんてただの練習。分かれてからのほうが本番よ」と誰も離婚などしなかった時代に離婚した過去を話して励まし、夫や息子が投獄された話を淡々と語るいっぽう、宗教警察に隠れて密造酒を作って販売したりとしたたかな面も見せてくれます。

                   

                  マルジが自分の身を守るためにまったく関係ない見知らぬ人を悪者に仕立て上げ、宗教警察に通報したという話を聞いた時には激昂し、「人生で一番大切なのはインテグリティ。そんなことをするなんて恥を知れ!」と叱り飛ばし、マルジが一人で異国に旅立つ前の晩には一緒に寝て「これから人からひどい扱いを受けることもたくさんあるだろうけれど、そんな人たちに関わっていてはだめ。自分のことだけを考えなさい」とやさしく諭します。

                   

                  映画の中でたびたび描かれるジャスミンの花のモチーフはこの祖母の象徴であり、たとえ傍にいなくても常に祖母が守ってくれているという安心感がマルジの心の支えでもあるのです。

                   

                  ヨーロッパに残ることを決意したマルジはこの作品により成功を収めて初心を貫きますが、イラン政府が上映を決定した映画祭に抗議するなど、作者にとっても決して問題のすべてが解決した、というわけではありません。

                   

                  しかし、2016年のオバマ大統領による米イランの核合意により、現在のイランの政治状況は体制派と開放派の勢力がせめぎ合っています。その中で、ヒジャブを脱ぎ捨てる女性の写真が海外メディアのニュースに掲載され、イラン庶民の生活も変わりつつあることが推察されます。

                   

                  戦争や政治状況によって私たち庶民の生活はいとも簡単に大きく変えられてしまいますが、そんな中でも「インテグリティ」を保ち、常に正しいと信じることを勇気をもって行い続けることこそが最終的には絶対に変わらないと思われる政治の変化にもつながるのだ、ということをこの作品が教えてくれるような気がします。

                  | Yuriko Goto | グローバル社会と宗教 | 19:19 | - | - |
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