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    シンガポールが世界一高コストな都市である理由
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      JUGEMテーマ:シンガポール

      ■世界一生活コストが高い都市、シンガポール

      シンガポールが5年連続で世界一生活コストが高い都市に選ばれました

       

      2位はパリとチューリッヒがタイ、4位香港、6位ソウル、10位シドニー。東京は前回7位から11位に。ドル安の影響でニューヨークも13位と順位を下げました。

       

      そんなものなのかなとも思いますが、シンガポールで日常暮らしている身からすると、シンガポールと東京の生活費にそれほどの違いがあるとは思えません。それどころかシンガポール人には、東京は何でも高くてとても旅行になんか行けないと主張して譲らない人が少なくありません。

       

      このギャップはどこからくるのか? 

       

      シンガポールで最もコスト高なのは、記事中にもある車の価格。

       

      シンガポール政府が台数を厳しくコントロールしているため、マイカーをもつには関税や登録料、車をもつ権利などの費用を支払わなければならず、日本と比べるとだいたい3〜4倍の費用がかかります。

       

      我が家も8年前に4年落ちの中古日産サニーを購入しましたが、約450万円もしました。

       

      もう一つは住居費。

       

      東京23区内ほどの面積しかない国に世界中から人が集まってきますので、土地は貴重な資源です。シンガポールはアジアでは香港に次いで不動産価格が高いと言われますが、私の感覚ですとだいたい東京の2倍くらい。

       

      例えば、日本人駐在員にも人気のオーチャード通りに近い新築マンションですと、3LDK90屬1億7千万円くらいから。ちょっと郊外でダウンタウンまで1時間弱程度のマンションでも1億円くらいから。田園調布に似た高級住宅街の一戸建てになると、20億円、30億円の物件はざらにあります。

       

      外食や買い物も同様。

       

      不動産価格が高いので家賃も高く、ショッピングモールや飲食店などのテナント料も当然高くなります。家賃分は商品やサービスに転嫁されますので、いま人気の日本のラーメン店でもラーメン1杯食べるだけで1,000円以上します。日本からの輸入食材には運賃もかかるので割高なのはわかりますが、さすがに明治屋でみかけた400円のおかめ納豆には手がでませんでした。

       

      このように見ていくと、シンガポールで東京と同じような暮らしをしようとすれば非常に高くつくことがわかります。それもそのはずで、この調査は外国人駐在員がその都市で暮らした場合のコスト比較をしているのです。

       

      駐在させる会社も事情はよくわかっていて、例えばある欧州企業では、アジア統括部門をシンガポールとマレーシアにおき、一定ランク以上の管理職はシンガポール勤務になるけれど、それ以下は同じ部署でもクアラ・ルンプールに駐在という規定だそうです。

       

      ■駐在員とシンガポール人の生活コストはこれだけ違う

      ところが、一般のシンガポール人の生活コストはとなると、まったく話は違います。

       

      まず、住居。

       

      シンガポール人の8割が住むHDBという公団住宅はシンガポール人であれば購入できます(高級マンションに住んでいるシンガポール人もほとんどがマンション以外にHDBを所有しています)。

       

      その価格はというと、90〜93屬裡LDKで約2千万円〜3千万円程度といっきに東京より安くなります。

       

      HDBには、ホーカーという屋台のフードコートが必ず併設されています。政府の持ち物なので家賃は安く、ここでローカルなラーメンなら300円もあれば食べられます。フードコートの隣にはウェットマーケットと呼ばれる市場もあって、朝は魚や肉、野菜などを買う人でごった返します。

       

      また、大規模なHDBの中心地(ハブと呼ばれます)には地下鉄の駅や大きなバスターミナルがあり、公共交通機関は格安。地下鉄であれば片道100円前後、バスで短距離であれば2,30円で乗れますので、HDBに住む人の多くが通勤や通学に利用しています。

       

      さらに駅ビルにはたいていFairPriceという政府傘下のスーパーマーケットがあり、シンガポール家庭料理に必要な食材はたいてい日本より安く(お隣のマレーシアやインドネシアからの輸入品が大半ですが、野菜や魚、調味料などシンガポール産も少なくありません)手に入ります。主食の米の価格も政府がコントロールしているので、いつも安定しています。

       

      同様に、HDBハブの駅ビルやショッピングモールなどには個人営業のテナントが多く入っていて、食品以外の日用品や衣料品、その他の商品やサービスも手頃な値段で手に入ります。衣料品の価格はユニクロなどのファストファションよりも安い店が大半です。

       

      要約すると、駐在員のような生活をすればシンガポールは世界一高コストな都市になりますが、公団住宅に住むシンガポール人の生活コストは東京よりもずっと安くあがるというのが実態なのです。

       

      ■外国人にお金を使わせて国民に還元するシンガポール方式

      なぜこのようなダブルスタンダードがシンガポールで可能なのか?

       

      それはひとえにシンガポール政府の政策のおかげです。

       

      車の取得や維持にかかわる税金、土地のリース代(シンガポールはイギリス植民地でしたのでほとんどの土地が政府による99年リースになります)、固定資産税などなど、毎年政府には莫大な税収が入ります。外国人が高級マンションのテナントになれば、オーナー(たいていシンガポール人ですが外国人がマンションを買う場合には取得税が非常に高額)の家賃から所得税が入ります。

       

      外国人がシンガポール国内で働くと所得税が納付されますし、外国人用のスーパーで買い物をしたり高級レストランで食事をすれば、お店の利益からも税収があります。

       

      このように政府は所得が高い外国企業の外国人を呼び込んでシンガポールで働いてもらい、かつお金を使ってもらうことにより、国内産業を発展させかつ税金も得ているのです。そうして得た税金をもとに、政府は公団住宅や地下鉄などを整備してシンガポール国民に安価に提供。

       

      つまり、外国人にとっては非常に生活コストが高いシンガポールでも、一般庶民にとっては物価が安くて暮らしやすい街になっているのです。

       

      シンガポール国民の人口は2017年で344万人。これに対して、建設労働者やメイドなどを除く外国人労働者は37万人。

       

      シンガポール国民の1割程度の数の外国人がシンガポールで働いて生活することにより、シンガポール国民の生活向上に貢献しているという非常に興味深いシステムの結果が、「世界で一番生活コストが高い都市シンガポール」の実情です。

      | Yuriko Goto | シンガポール社会 | 18:18 | - | - |
      2018幸福度ランキングでシンガポールと比較した日本の「寛容度」のレベルアップ法
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        JUGEMテーマ:国際社会

         

        先週、2018年度の世界幸福度ランキングが発表されました。

         

        フィンランドが1位になった他、北欧の国々が上位を占めましたのは既報の通りで、全体的な傾向をみると大まかに、

         

        ・北欧の国々と一部ヨーロッパの国々

        ・オセアニアとカナダ

        ・その他ヨーロッパの国々とアメリカ+中東のお金持ち国

        ・南米の国々+台湾と一部ASEANの国々

        ・ロシア含む東欧の国々+日本と韓国

        ・中国、インド含むアジアの発展途上国

        ・紛争国とアフリカの国々

         

        というグループ順になっています。

         

        日本は昨年の51位から54位に順位を下げ、お隣の韓国57位、ロシア59位、中国86位と、東アジア地域は全体にふるいません。

         

        シンガポールもやはり26位から34位に下落しましたが、台湾26位、マレーシア35位、タイ46位と、アジア地域でそれなりに経済発展している国は日本よりもかなり順位が高くなっています。

         

        こちらの記事では、順位の基準になった下記の条件ごとのポイントを詳述しています。

         

        (1)人口あたりGDP(対数)
        (2)社会的支援(または困ったときに頼ることができる親戚や友人がいますか)
        (3)健康寿命
        (4)選択の自由度(あなたの人生において何らかの選択する自由に満足していますか)
        (5)寛容さ(過去1か月の間に慈善団体に寄付をしたことがありますか)
        (6)腐敗の認識(政府や仕事上で腐敗が蔓延していませんか)

         

        日本とシンガポールを比べてみると、(1)はかなり日本が低いですが(シンガポールはアジア地域1位で、17位のルクセンブルグ、32位のカタールなどに続き世界トップクラス)、(2)と(3)はほぼ同じ。ヨーロッパの国々ほど高福祉ではないけれど、そこそこ社会的な支援を受けられて健康寿命も世界トップレベルなのがわかります。

         

        反対に大きく差がついているのは、(4)から(6)の3項目。

         

        (4)の選択の自由度はシンガポールは北欧の高順位国並み(タイもシンガポールとほとんど変わりません)なのに対し、日本はドイツやフランスなどその他の欧米諸国並みにとどまり、中国より低くなっています(韓国はこの項目が極端に低くフィンランドの半分程度にとどまっているのも目を引きます)。これは日本で拡大する貧困層の固定化や女性の地位が低いことなどが原因ではないかと思います。

         

        (6)の腐敗の認識は、日本はタイはもちろん、韓国やイタリアと比べてもポイントが低く悪くないのですが、シンガポールはフィンランドを抜いて断トツの1位で、政府をはじめいかにクリーンな社会かがわかります。

         

        そして、最も違いが際立ったのが、(5)の寛容さ。

         

        シンガポールの指数が0.12に対して日本は-0.22(韓国は0.00、中国は‐0.19、インドは-0.05)と他国に比べて極端に低くなっており、寛容さに大きく欠ける社会が幸福感を押し下げていることがわかります。

         

        シンガポールもイギリスの0.28やタイの0.2という指数と比べると、決して寛容さの項目がずば抜けて高いわけではありません。それどころか、もともとシンガポール人気質を表わす「Kiasu(キアス)」=自分だけが良ければ他は気にかけない、という言葉に代表されるような利己主義的な風潮が強いお国柄。

         

        これに対して日本人といえば、震災のときの行動を見てもわかるように、上から命令されなくても困難なときには自然に助け合い支え合う国民性が印象的で、当時はシンガポール人も非常に感銘を受けていました。

         

        しかしそれが仇となり、苦難の時期を通りすぎてしまうと、自然に自分や自分の身うちだけが良ければいい、という風潮に戻ってしまうようです。

         

        少し前に小さいお子さんがいるシンガポール駐在日本人妻の方と話をしたのですが、「一人で外国で子育てするのって大変じゃないですか?」と聞いたら、「いや、こちらの人はみな赤ちゃん連れのお母さんに優しいですし、東京だとベビーカーで地下鉄に乗っただけで舌打ちされたりするので怖いです」とおっしゃっていたのが印象的でした。

         

        この違いは何かといえば、やはり社会の寛容さであり、その基礎は教育や政策の違いによる、「意識された」寛容性の涵養にあるのではないかと思います。

         

        その最たるものが、草の根運動。シンガポールでは市民ボランティアによるグラスルーツ・アクティビティ(草の根活動)は、役所の仕事に準じた評価を受けています。

         

        例えば、学校のカリキュラムで休日の寄付集めなどのチャリティが義務化されていたり、コミュニティでのボランティア活動が点数制になっていて報奨制度があったりと(外国人がシンガポール永住権や国籍をとりたい場合、ボランティア実績は評価の対象になります)、政府の生活保障、国民の自助努力、そして国民同士の互助努力が3つの柱として社会を支えているのです。

         

        シンガポールは1人あたりGDPベースで見るとアジアで最も豊かな国ではありますが、反面、日本と違い最低時給やキャピタルゲイン課税、相続税がなく所得税も低いため、貧富の差は拡大傾向にあります。また、移民政策によって自国民だけでなく外国人との競争プレッシャーにも晒されています。

         

        そんな厳しい日常の中でも他人への寛容さや思いやりを忘れないよう、政府も国民も協力して活動するというコンセンサスがあるために、シンガポール人の幸福度は高水準にとどまっているのだと感じます。

         

        日本人が本来もち続けてきた寛容さへの社会的な回帰こそ、日本人として生まれて良かった、という幸福感を感じる近道ではないでしょうか。

        | Yuriko Goto | シンガポール社会 | 12:34 | - | - |
        政府財政が健全だといいこともあるよ、という話。
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          JUGEMテーマ:シンガポール

          先週後半からの旧正月疲れと、あちこちで新年会がありまだまだお正月ムードが続いたおかげで、今週はなんとなく終わってしまいましたが、そんな中でもシンガポール政府のみなさんは精力的にお仕事されていて、2018年度予算が発表されて財務大臣はその説明にあちこち駆け回っていました。

           

          2017年の世界的好景気を受け、シンガポールのGDPは前年比3.7%増。税収も大幅に伸びて、来年からと大方が予想していた少子高齢化対策に伴う消費税増税(現行7%を9%に)も、2021年から2025年の間に景気動向をみながら行うということに。

           

          いっぽうでたばこ税は即日10%増税のほか、地球温暖化対策の一酸化炭素税の導入や過熱気味の不動産購入税などの増税の他、国境を越えたゲームダウンロードや音楽ストリームなどへの新たな課税も公表されました。

           

          大幅な予算措置としては地下鉄システムの整備や公団住宅の新たな建設費など、インフラ関係がメインで「まだまだ成長するぞ」との強い決意がにじみ出る内容。教育にも力を入れていて、昨年から本格的に始まったリカレント教育予算継続の他、貧困世帯の教育補助も大幅に増額するとしました。

           

          中でも羨ましいなーと思ったのは、21歳以上のシンガポール国民全員にSG$100〜$300(約8,000円〜24,000円)の特別ボーナスを配るとの発表。以前も選挙前などに実施していたこともあるようですが、今回のように「大幅にお金余ったから」と国民に還元するのは私が知る限りでは初めてです。

           

          財政が健全で、必要なところにしっかりと予算配分ができ、その結果経済もうまく循環している状況がよくわかり、国民も「いろいろ言いたいこともないではないけど、この政府だったら安心して政治を任せられる」と信頼している様子。私は国民ではないのでボーナスもらえませんが、ずっと税金を払ってる日本政府にも将来ぜひこんな政策を期待したいものです。

          | Yuriko Goto | シンガポール社会 | 18:56 | - | - |
          シンガポール国民の職を確保し給料を押し上げる外国人労働者クォータ制
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            JUGEMテーマ:シンガポール

             

            昨日のブログ記事に、シンガポール人の叔母が80歳過ぎても飲食業で働き続けているという話を書きましたが、シンガポール人が高齢でも比較的簡単に職をみつけられるのには理由があります。

             

            それは、約3割の外国人労働者(実際には人口の4割が外国人ですが、私のようにシンガポール人と結婚したり長年シンガポールで働き続けて永住ビザをもつ外国人が1割おり、この層はシンガポール国民に準ずる扱いを受けます)の雇用に際し、シンガポール国民の雇用を義務づけるクォータ制をとっているからです。

             

            シンガポールの労働ビザは、高度人材ビザから家政婦ビザまでいろいろな種類がありますが、この中で最も多いのが「Work Permit」と呼ばれる比較的単純な労働に従事するためのビザで、昨年6月時点で975,800人の外国人がこのビザを支給されています。

             

            うち、建設労働者が約3割を占めますが、その他にも、ホテルや運輸、ビジネスなど就業職種は多岐にわたっており、叔母の働いている飲食業界も含まれます。

             

            特に飲食などのサービス関連業種につける労働者は出身国も決まっており、マレーシア、中国、北アジア(香港、マカオ、台湾、韓国)限定。中国人についてはビザ延長の年数も最初から決められています。

             

            もともとサービス業、特に小売店員や飲食店店員などはシンガポール人に人気がある職種ではありません。そのためマンパワーを外国人ワーカーに頼らざるを得ないのは日本のコンビニなどの現状と同じですが、大きく違うのは、政府によってシンガポール人の割合が一定以下にならないようクォーター制が強制されていることです。

             

            このビザでは、外国人労働者は職場での全体人数の40%を超えられないため、より多くの外国人労働者を雇うためには、さらに多くのシンガポール人労働者を雇う必要があります。また、外国人の割合が多くなればなるほど税金が上がりますので、雇用者としてはシンガポール人を多く雇ったほうが得なのです。

             

            とはいえ、ほぼ完全雇用状態のシンガポール。シンガポール人求職者の供給は限られているため、高齢者でも採用されやすく、賃金も決して悪くないという状況が続いています。

             

            私と同い年のあるシンガポール人の友人(独身女性)は、長年ホテルの客室係として働いていますが、趣味の旅行を楽しむためにときどき勤務先を辞めたり、数年前に母親を自宅で最期まで介護していたときはパート勤務になり、容体が悪くなる度に仕事を辞めていました。それでも次の仕事に困ることはなく、すぐにみつかるため、30代で買った公団住宅のローンもすでに払い終えたようです。

             

            日本では建前上は外国人労働者を受け入れていないことになっていますが、外国人就学生や研修生など、実際には外国人労働者なしでは一部の産業は成立しないのが現状です。この日経の記事によれば、リーマンショック後に増えた就労者の4人に1人は外国人というところまで外国人労働者の数が増えています。

             

            少子高齢化社会で外国人労働者に労働力を頼るのは仕方ないと思いますが、それにより、真剣に働きたいと求職している中高年層や高齢者の働き口が少なくなったり、外国人労働者に比べて賃金水準が低くなってしまうのであれば本末転倒だと思います。

             

            日本国民、特に求職弱者である中高年以上の就職率をどのように向上させ、賃金を上げるのか、シンガポールの国民クォーター制は一つの参考になると思います。

            | Yuriko Goto | シンガポール社会 | 14:28 | - | - |
            「高木ラーメン」で考えた、炎上してしまったビジネスの活かし方
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              JUGEMテーマ:ビジネス

               

              ■本格的日本ラーメンを手頃な価格で、を掲げる高木ラーメン

              今週、所用でシンガポール老舗の工業団地Ang Mo Kioを訪れた際、かねてから気になっていた「高木ラーメン」に行ってきました。

               

              シンガポールではここ数年、日本のラーメンが大ブーム。

               

              草分けの味千ラーメンはもとより、麺屋武蔵、らーめんけいすけ、らーめんまる玉、一風堂など日本の有名ラーメン店が大量に出店してしのぎを削っています。もちろんシンガポール在住の日本人だけでなくシンガポール人にも大人気で、人気店にはお昼時に長蛇の列ができるほど。

               

              この高木ラーメンも「本格的日本ラーメン」が売りですが、他店との最大の違いは、最初から日本人を客として想定しておらず、メインターゲットを「平均的なシンガポール人」に絞っていることです。

               

              この戦略は、現在ある3店舗が、南洋工科大学、南洋理工学院、シンガポール国立大学に近い立地で若者が立ち寄りやすいこと(シンガポール国立大学はキャンパス内にあります)、また、価格が他の日本ラーメン店の税・サービス料込価格に比べて半分程度、替え玉に至っては日本円にして50円以下など、徹底した低価格戦略からも明らかです。

               

              私が立ち寄ったのは月曜日の13時過ぎでしたが、学生さんはまだ授業中のせいか、比較的年齢層が高い30代から50代くらいの男女が多く、女性1人だけで食事をしている人も4,5人みかけました。Facebookページによると、週末には長蛇の列ができることもあるようですが、この時間帯としてはまあまあの客入りと回転率。

               

              肝心の味はというと、スープは豚骨ベースのこってり系でいまどきの日本ラーメンっぽいのですが、自慢の自家製麺はかんすいが入っておらずコシがない中国の拉麺に近いもので、本格的日本ラーメンと呼ぶには少し躊躇するところ。私がリピートするかどうかは微妙ですが、もし店の近くの学校に通う学生だったら気軽に立ち寄れる価格とボリュームだと思いました。

               

              ■高木ラーメン、オーナー夫妻の前ビジネスとその挫折

              さて、ここまででしたら「へー、シンガポールに安い日本ラーメン店があるのね」で終わってしまうのですが、このお話には前振りがあります。

               

              というのも、高木ラーメンの20代のオーナー夫妻、アイ・タカギ氏とヤン・カイヘン氏には、過去“The Real Singapore”というサイトを運営し、人種差別的発言やフェイクニュースを流布した「Sedition(扇動罪)」に問われてシンガポール政府に逮捕され、服役した経歴があるからです。

               

              2015年に逮捕され、2016年3月までかかった裁判後、10か月の実刑判決を先に受け入れた日系オーストラリア人のタカギさんは、逮捕時に若干22歳。判決が下りたときには妊娠8週間め(その後流産)でした(ヤンさんもその後、8か月の実刑で服役。2人とも刑期短縮で出所)。

               

              裁判中は、イスラム教徒のペンネームを使って多くの記事を書いていたとされるタカギさんがシンガポール人ではなくオーストラリア人であること(もともとは日本国籍だったようです)、名門クイーンズランド大学に通いながらセンセーショナルな話題でビューを稼ぎ、莫大な広告収入を得ていた事実が次々と明らかになり、連日、新聞やテレビで報道されました。

               

              特に、年上の夫(当時は婚約者)のヤンさんがしじゅううなだれ気味なのに対し、タカギさんは毅然とした態度でポーカーフェイスを貫徹。しかも、裁判の真っ最中に「高木ラーメン」の開店を準備してマスコミに情報を流す、というビジネスに徹した姿勢にただ者ではない感を漂わせていました。

               

              このインタビュー記事によれば、最初は大学の授業が少なく暇をもてあましていたタカギさん1人で始めた無名サイトは、閉鎖に追い込まれる直前の4か月には月4万オーストラリアドル(約340万円)以上をコンスタントに稼ぎ出し、その収入でヤンさんの学費の他、2人の生活費やアシスタントたちの給料を支払い、30年ローンで購入した家の購入代金もすべて払い終えていたそうです。

               

              さらにこれに続く記事によると、タカギさんは有罪判決を受けて収監された前歴を隠すどころか、

               

              “If there’s a story you can link to it, you’re more familiar with it, and you’re more likely to eat it.”

              「もしもそのお店につながるストーリーがあったら、お店は身近なものになって、そこで食べてみたいという気が起きるわ」

               

              と、積極的にアピール。本来であれば消し去りたいはずの過去をオープンにすることによって、ビジネスの拡大を図り、このような取材にも積極的に応じていたのです。

               

              ■ネガティブな経験もビジネスのステップアップに

              オープンから3年あまり。高木ラーメンは順調に業績を伸ばしている様子で、Ang Mo Kioの本店もこれまでのホーカー(屋台村)から出て独立したお店を構えていました。また、Facebookページの投稿を読んでみると、若い夫妻が試行錯誤を繰り返しながら経営者として着実に事業を育てている様子がよくわかります。

               

              ”The Real Singapore”時代には朝9時から真夜中までずっと記事を書いてはアップし続けたというタカギさんですが、現在はラーメン店の発展に全力を傾けているのでしょう。このように私がタカギさんを身近に感じるのも、前述の彼女の言葉「ストーリーがあった」からに違いありません。

               

              20代前半という若さにして、普通の人が一生かかってもできないようなさまざまな経験を経たタカギさん夫妻の、今後のビジネスの行方が非常に楽しみです。

              | Yuriko Goto | シンガポール社会 | 14:56 | - | - |
              「シングリッシュ」と侮るなかれ。シンガポール人が英語ネイティブの理由
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                JUGEMテーマ:シンガポール

                 

                ■シングリッシュと揶揄されるシンガポール人の英語とは?

                シンガポールを旅行したことがある方なら聞いたことがあると思いますが、シンガポール人の英語は往々にして「シングリッシュ」(シンガポール・イングリッシュ)と揶揄されます。

                 

                語尾につける「lah」(中国語の「了」(完了状態を表わす)や「啦」(強調や相手に同意を求める)などいろいろな意味がある)を筆頭に、中国語の直訳形である「also can」(都可以=どっちもOK)など慣用表現や、中国語やマレー語の単語を英文に混ぜてそのまま使うこともあり、英米英語しか聞いたことのない人にはほとんど意味がわからないセンテンスも少なくありません。

                 

                特に1965年の独立以前に教育を受けた人には、英語で正規の学校教育を受けていない人も多いため、文法めちゃくちゃの英単語を並べただけの英語を話す人もいますし、私の義母のように相手の話している英語は何となく理解できるものの、自分が話す言葉は中国語のみという人もいます。

                 

                そのため、シンガポールは英語が標準語だけれども、シングリッシュという特殊な三流英語を話す人たちばかりで、半分外国語みたいなものと誤解する人も多いのですが、実情は決してそんなものではなく、非常に高いレベルの英語の素養をもつ人が大半です(その教育は学校の授業で行われます)。

                 

                今月から小学校3年生になった娘と宿題を一緒にしていて、シンガポール英語教育の底力に唸らされたので、少しご紹介したいと思います。

                 

                ■家庭で使っていない言葉をネイティブ並みにする英語教育

                Q: Let's put this  ______  table in that counter.

                1) wooden, nice

                2) round, wooden

                3) wooden, brown

                4) round, nice

                この問題は、娘の宿題の文法問題集の中の「形容詞」パートの1問です。

                 

                使われている言葉は簡単ですし、何となく2)のような気もしますがいまひとつ確信がもてません。そこで回答を見てみると(回答に詳しく説明がつけられていてわからない場合は参照できるようになっている)次の通りでした。

                When we use adjectives together, we usually use them in this order; opinion, size, age, shape, colour, origin, material.  Therefore the answer is "round, wooden"(shape, material).

                形容詞をつなげて使うときは、通常、次のような語順にします。「意見、大きさ、古さ、形、色、由来、材料」。ですから「丸い、木製の」(形、材料)が正解です。

                まるでオックスフォードの英語学習者向け文法書に書いてあるような説明。

                 

                娘と比べると私のほうが英語の読書量の蓄積は多いため、不確かではあるものの正解しましたが、日本で大学まで英語教育を10年受けてきたにもかかわらず、小3の娘にこの文法を説明することはかないませんでした。

                 

                これは恐らく、英米など英語ネイティブの国々でも同じではないでしょうか。日本人が「が」や「は」の使い方を教わらなくても自然に使い分けができるように、英語だけを使っている人々にはこの説明は不要です。経験から判断できるからです。

                 

                しかし、シンガポールの場合は家庭や日常生活の中で前述のように間違った英語を使う人たちが多く、家庭では(特に移民の場合は)中国語やマレー語、タミル語しか話さない、という人々も少なからずいます。そのため、英語だけで育った人たちと対抗できるよう、理論を加えて不足する分を補っているのです。

                 

                ■香港とシンガポールにみる英語の違い

                英語に比べると「mother tongue(母語)」と呼ばれる科目は比較的易しく、それなりの内容です。それでも授業は英語と同じくほぼ毎日あり、中国語を選択している娘の場合も、小2までで習得していなければならない漢字はすでに数百を超えています(書き取り必須の漢字はそこまで多くありませんが、読めないと文章が理解できないので、読めなければならない単語の中には私が知らない漢字もけっこう入っています)。

                 

                シンガポールと並んで英語でビジネスができる国(地域)として香港には根強い人気がありますが、英語と中国語(母語)の比率からすると、香港とシンガポールの教育は対照的です。

                 

                そもそも学校からして、中国語(広東語)で教える学校と英語で教える学校に分かれますし、シンガポールでは家庭でも英語を話す人たちが少なくないのと反対に、香港の一般家庭ではほぼ100%広東語を使うので、英語はあくまでも外国語。

                 

                私は香港の中国返還の年の1997年まで香港で4年弱暮らしていましたが、日常生活は完全に広東語で、普通に英語が話せる人は多かったものの、ネイティブ並みの正統派英語を使う人は一部に限られていました。

                 

                その1人が、苦学しながら大学からロンドンで教育を受けて会計士の大学院まで卒業したある友人です。

                 

                彼は自分で会計事務所を立ち上げて、欧米の会社向けに中国での会社設立支援やコンサルティング事業を手がけ、完璧な英語と中国語、そして誠実な人柄で事業を拡大していました。私が中国工場を立ち上げたときも彼のお世話になり、その後もずいぶん助けてもらったものです。

                 

                そんな彼が一昨年、ニューヨークでの国際会議出席の際に脳梗塞で倒れ、半身不随になってしまったのです。本人と連絡が取れなかったため昨年になって知ったのですが、半年ほど前に訪れたときには意志力の強い彼らしくリハビリに励み、杖をつきながら一人で歩けるようになるまで回復していました。

                 

                しかし驚いたのは、あれほど堪能だった英語も、普通語(北京語を基礎にした中国の標準語)もまったく話せなくなってしまったことです。たどたどしいながら彼の口から出てくる単語はすべて彼の母語である広東語でした(この時ほど広東語が理解できて良かったと思ったことはありません)。

                 

                翻って我が家の場合はどうか? 私の夫は親との会話は福建語で(兄弟間では英語)、仕事や日常生活で使うのはすべて英語です。大学まで中国語(普通語)を勉強したはずですが、日常会話や台湾ドラマなどを観て理解はできるものの、漢字はあらかた忘れてしまっているので中国語の新聞や本はほとんど読めませんし、もちろん長い文章を書くこともできません。

                 

                そんな夫がもし彼と同じ状態になったら、口をついて出てくる言葉は、間違いなく福建語ではなく英語でしょう。彼にとっての母語は、家庭で親と話している福建語ではなく英語なのです。

                 

                ■老後に備えて「うんこ漢字ドリル」と英単語学習に励む。

                私の場合はどうか? 絶対に日本語です。

                 

                以前、倍賞美津子さん主演の映画『ユキエ』を観たことがあります。

                 

                戦争花嫁としてアメリカ軍人と結婚し、アメリカにわたって家庭を築いた日本人ユキエが認知症を患い、夫や子供たちが介護を通して結びつきを強くするというストーリーですが、最も鮮明に記憶に残っているのは、認知症を発症したユキエが、40年以上も日本に帰っていないにもかかわらず、日本語しか話せなくなってしまうシーンです。

                 

                私も英語、中国語と外国語を勉強し、生活や仕事でこれまで随分使ってきましたが、最後に自分の言葉として残るのはやはり母語である日本語であることは間違いありません。

                 

                もしもユキエや香港の友人のようになってしまったらと考えると、日本語が通じないシンガポールで家族と最低限の意思疎通ができる担保として、娘には日頃からできるだけ日本語で話すようにしていますし(といっても理解してくれないことが多いので、たいてい英語でも説明をつけ加えています)、「うんこ漢字ドリル」を使って日本語も教えています(漢字はほとんど中国語で習っているので、ひらがなと文章を覚えさせるのが目的です)。

                 

                いっぽう、これからどんどんレベルが上がっていく娘の英語学習に備えて、自分の英語学習も並行させています。

                 

                あるオンラインテストを試してみたところ、私の日本語の語彙は約35,000語だったのに対し、英語は11,000語程度しかありませんでした。これが母語と外国語の違いかと再認識させられましたが、娘が義務教育を終える頃までには、何とか2万語くらいまで英単語の数を増やし、娘の勉強についていきたいと学習意欲を燃やす毎日です。

                | Yuriko Goto | シンガポール社会 | 12:20 | - | - |
                落ちこぼれてわかった、落ちこぼれた生徒を見放さないシンガポールの教育
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                  JUGEMテーマ:幸せなお金と時間の使い方

                   

                  かれこれ一年前に、去年小学校に入学した我が家の娘がいきなり落ちこぼれた記事を書きました。

                   

                  最近、シンガポールの教育がNHKの番組でも取り上げられ、公立小学校の勉強がどれだけ大変か報道されたようですが、娘の勉強をみながら一緒に勉強している親としては、日々、これを実感しています。

                   

                  先月、娘が小2の期末テスト(英語、母国語、算数の3教科でペーパーテストと面接テストがある)を終えて成績を持ち帰りましたが、相変わらず英語を辛うじてパスしただけで、母国語(中国語)と算数は合格の60点に遠く及ばず赤点。相変わらず落ちこぼれています。パスした英語も、担任に「読解問題ができないから、休みの間ちゃんと勉強させるように」としっかり釘を刺されました。

                   

                  ■ADHD診断を受け、カウンセラーが授業に付き添い

                  今年5月、我が家の娘はADHDと診断されました。保育園の頃から疑いありとは指摘されていたのですが、授業中、席にじっと座っていられず勝手に教室を出ていってしまったりするので困り果てた学校が文部省に要請をして専門家の診断を受けたところ、重度のADHDであることが判明しました。

                   

                   

                  これはADHDの子どもと普通の子供の脳の働きのイメージ図です。

                   

                  普通の子供が脳全体を使っているのに対し、ADHDの子供の脳は特に前側がほとんど機能しておらず、活動している範囲が非常に狭いのが特徴です。このため集中力を持続することができず、多動障害や学習障害が起こるのです。

                   

                  以前から学習に限らず問題行動が多く、保育園を何度も退園させられたりしていたり、小学校入学以後もたびたび学校から呼び出しを受けたりしていたのですが、ADHDと正式に診断されてからは、担任の他に担当カウンセラーがつきました。

                   

                  担当カウンセラーのMrs.Gは、我が家の娘の他にもADHDの子どもやディスレクシア(識字障害)の子どもなど数人の面倒をみています。

                   

                  娘の場合は、Mrs.Gや他のカウンセラーが授業中に横に座ってくれ、集中力が続かなくなったなと判断したら教室内を歩かせてリフレッシュさせたり、朝と放課後にMrs.Gの部屋に行って朝はしてはいけないことを復唱し(衝動性が高いため同級生にひどい言葉を投げつけたり、同級生の持ち物を欲しいと思ったら勝手に持って帰ってきたりしてしまう)、放課後にはそれができたかどうかを一緒にチェックして、できたらカードにシールを貼ってくれます。また学期の終わりには、部屋でアイスクリームを作ったり、ビデオを見せたりしてくれるので、娘も喜んでMrs.Gの部屋に通っています。あまりによく面倒をみてくれるので、他の生徒がやきもちを焼くくらいだそうです。

                   

                  また、親や他の先生への連絡も非常に緊密にしてくれ、気になることがあるとWhat’sappというLINEのようなアプリですぐに私や夫に連絡をくれたり、ADHDに対する理解が浅い先生方にもいろいろな面でアドバイスしてくれるので、以前のように娘の問題行動に困った先生方が直接親に連絡してくることも非常に少なくなりました。

                   

                  ■補習授業と家庭学習指導

                  カウンセラーによる指導とは別に、小2になって始まったのが、週1度の補習授業です。

                   

                  落ちこぼれている子どもを集めて、いろいろな教科の先生方が勉強をみてくれるのですが、高学年になるにつれてさらに補習授業が増えるようです。また、学期末の親との面接では、各教科の先生方が「ここが弱い」というところを教えてくれ、家庭でそれを補うよう厳しくプレッシャーをかけられます。

                   

                  娘の場合は週に2,3回、休みの間は週末を除く毎日、私と夫が1年生の教科書に戻って勉強させ直していますが、同じく落ちこぼれている娘の友だちのママ友は3人の子供を抱えてそこまでは手が回らず、週2回公文教室に通わせて家で勉強させていると言っていました(公文はシンガポールでも大人気で80教室以上あります)。

                   

                  英語、算数ともに、さすがPISA最高点のシンガポールならではの小学校低学年でも非常に高度なカリキュラムを課されていますが、特に母国語の中国語に関しては、小2ですでに中級中国語程度の難易度の学習をしており、私も毎日必死に辞書をひきながら勉強に付き合っています。

                   

                  なかなか娘が理解できないときは「なんでこんなこともわからないの?」と頭をひっぱたきたくなりたい衝動に駆られることもありますが(実際、ときどき手がでることもあります)、娘もずっとできなかったことが繰り返しやっているうちにできるようになると達成感があるらしく、泣いたり笑ったりしながら毎日親子で勉強を続けています。

                   

                  ■アートやクラブ活動にも力を入れる学校教育

                  これは、先日、娘が学童から借りてきた小学校4年生の美術のクラスの教科書です。

                   

                  私も最近絵を習い始めたのでよくわかるのですが、絵をリアルに描くために必須なのが影のつけ方です。それを子どもにもわかりやすく、しかし本格的に解説しています。この教科書では他にも、立体工作のさまざまな方法や平面デザインの構図の取り方、色相と補色の解説と具体的調色方法の他、マンガのコマ割りの仕方まで登場します。

                   

                  小3からはクラブ活動も必修となり、サッカーや水泳などの運動科目の他、ダンス(モダンダンスの他民族舞踊もあり)や武術、合唱など、幅広いコースの中から選べるようになっています。

                   

                  コンピュータによる授業も小1から普通に行われており、勉強が得意でない子どもにも何とかして得意なものをみつけさせたいという文部省の執念を感じます。

                   

                  ■変わる試験制度とシンガポール政府の意図

                  先月末に発表されたPSLE(Primary shool Leaving Exam)という小学校卒業時の統一試験結果は、受験者38,942人中、66.2%がエクスプレス(中学課程を4年で履修するコース)、21.4%がノーマル/アカデミック(同じく中学課程を5年で履修するコース)、10.7%がノーマル/テクニカル(技術専門課程を4年で履修するコース)となりました。

                   

                  エクスプレスコース以外の子どもは国立大学入学への道は事実上ほぼ閉ざされてしまうため、PSLEで高得点を取って何とかエクスプレスコース、それも成績上位の中学に入れるように親たちは必死で子供を教育します。

                   

                  この親の期待に応えられず、ノーマルコースに進学した女子中学生の悲劇を描いた「Normal」という芝居が2015年に初演され、大きな評判を呼びました。私も今年観ましたが、家庭にも学校にも見放されて行き場のなくなった多感な少女たちを必死でサポートしようとする新任教師との交流と、それが現実の前に無残に打ち砕かれていく様子が描かれており、涙が止まりませんでした。

                   

                  いっぽう、保育園・幼稚園から始まる英才教育と過熱する受験戦争(エクスプレスコースに進んでも2〜3割程度の国立大学進学枠に入るためのサバイバル競争は継続します)に対し、文部省も手をこまねいているわけではなく、2021年からは4科目(英語、母国語、算数、科学)の点数だけではなく、達成レベルや他の科目の達成度も考慮して総合評価とするなど、新しい制度が始まる予定です。

                   

                  我が家の娘に関して親が望むのは、どのコースに行ってもいいけれど、とにかく中学卒業レベルの学力だけは確実に自分のものにして卒業してほしいということです(今でもできれば小2をもう一年やり直してくれればいいと思っているくらいです)。九九や簡単な分数の計算ができない(=社会人になっても仕事以前の問題でつまずいてしまう)うちに自動的に卒業してしまうくらいなら、ノーマルコース進学でさらに落第し、もう一度同じ勉強をやり直してくれてもいいと考えます。恐らくシンガポール政府も同じ考えなのではないでしょうか。

                   

                  ■「最貧困女子」を再生産しないために

                   

                  鈴木大介さんの『最貧困女子』は、現在の日本で最底辺のセックスワーカーとして働く女性たちの多くが、知的障害、精神障害、発達障害の3つの障害のどれかをもつという現実を教えてくれる迫真のドキュメンタリーです。

                   

                  自分の子どもがADHDという発達障害をもっているということがわかり、改めてこの問題をさらに身近なものとして感じるようになりました。

                   

                  社会の安定と持続的な発展は、決して一部の有名大学出身のエリートだけで達成できるものではありません。小企業の経営者として長く仕事を続けてきて一番感じたのは、社会の基礎を支える中流以下の人々が最低限必要な知識を教育によって身につけ、職業生活を通じてそれを発展させていくことにこそ、社会全体の成長と発展が期待できるということでした。

                   

                  その意味で、シンガポール国立大学をアジアNo.1の大学にし、エリート教育に成功したシンガポールが、今後、落ちこぼれ教育にさらにどのように取り組んでいくのか、娘の成長を見守りつつ、非常に期待しています。

                  | Yuriko Goto | シンガポール社会 | 17:06 | - | - |
                  人生100年時代に「稼げる国民」を作る「Skills Future」というシンガポールの社会実験
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                    JUGEMテーマ:シンガポール

                     

                    2015年予算で、シンガポールは政府は、『「経済体として次なる未知の領域に到達しなければならない」とし、技術革新、労働者の技術力向上を所得増のけん引役とする方針を示した。』として、​非常に大胆な予算案を編成しました。

                     

                    まず、政府傘下の投資会社テマセクからの歳入を大幅に増やして財源を確保し、東南アジアのハブ空港であるチャンギ空港の新ターミナルなどインフラ事業に重点投資(この効果はすでに出始めており、昨日のニュースではオーストラリアのカンタス航空が今後、チャンギ空港をベース空港とすることが発表されました)。

                     

                    賃上げ補助や企業への海外販売支援金の増額、年金制度(政府管掌の個人年金)の上限引き上げと柔軟化、高額所得者への税率引き上げ(といっても最高税率22%ですので世界的水準と比較するとまだまだ低い)、低所得者高齢者に対する恒久的支援制度の創設などが大きく変わったところですが、なんといってもこの予算案の白眉は「Skills Future」プログラムの創設にあります。

                     

                    ■生涯教育と技術習得

                    Skills Future(未来のスキル)プログラムは、生涯を通じて国民が職業スキルをアップしていくためのプログラムです(創設当初は25歳以上が対象でしたが、現在は修学中の学生にも対象が拡大しています)。

                     

                    このプログラムに登録されている講座を受講するため、全国民にSGD500(約4万円分)のポイントが授与され、コースによっては受講料も9割以上が政府補助になるため、驚くほど安価で職業教育を受けることができます。

                     

                    しかも政府系職業訓練校のみならず、民間の専門学校にも委託した講座数はオンラインも含めて10,000以上あるとも言われ(すべて数えたことがないので正確なところはわかりませんが)、とにかくありとあらゆる分野、初心者向けで1日で終わるコースから、シンガポール国立大学や南洋理工大学のMBAコース、さらに非常に高度な専門技術を教える(部外者がタイトルを見ただけでは何のことだかわからない)長短の各コースまで多種多様。

                     

                    2015年には35万人、2016年は38万人がこのプログラムを利用していますので、シンガポール国民約390万人のうち約10%が毎年何らかの勉強をしたということになります。しかし政府担当者は「まだまだ端緒についたばかりで、これからさらにプログラムを拡大し、生涯学習していくというマインドセットと技術の習得をシンガポール国民に周知していく」と語っています。

                     

                    シンガポールの失業率は2%程度と世界でも最低レベルですが、特に中高年においてスキルのミスマッチングのため職探しが難しくなっているという背景もあり、政府としては、すべてのレベルの労働者において、知識やスキルのアップデートを図り、職業カウンセリングも交えながら就労させていくという方針です。

                     

                    ■人生100年時代の国民の働き方を変えるポテンシャルをもつ壮大な社会実験プログラム

                    私も今年に入って、政府から受託してSkills Futureのコースを開設している専門学校で、5日間のコースを2回受講しました(私はシンガポール国民ではありませんが、永久住民ビザをもっているためこのプログラムが利用できます)。

                     

                    5日間の基礎的な実技を中心としたコースでしたが、政府補助が9割だったため、受講料は8,000円程度。4日の実技、1日の実技及び理論のアセスメント(テスト)の期間、20人弱のクラスメートは1人も欠席することなく、真剣に受講していました。

                     

                    クラスメートの中には転職を考えているため有給休暇をとって参加したという中高年や、軍隊訓練中(シンガポールは皆兵制のため高校卒業後にNational Serviceに2年間従事する義務がある)だけれど今後の進路を決めるためにいろいろなコースを受講しているという若者もいました。いっぽうで、特に職業にする予定のない人が趣味のために、という目的で参加していたりもしていましたので、将来、受講者のうちどれだけの人がここで学んだスキルを仕事に結びつけられるかは未知数です。

                     

                    しかし、そこは政府もわかったもので、専門学校での講座終了後アンケート以外にも、個別にオンラインでサーベイ要請があり(数回は無視したのですが何度もしつこくメールが送られてくるので仕方なく回答)、PDCAをしっかり回している様子がうかがえます。

                     

                    Skills Futureプログラムは、現在、インドネシアなど周辺諸国でも注目を集めていますが、もしもこの制度が軌道に乗り、国民が職業人生の中で段階的にスキルアップして高度人材を輩出し、失業率を低減させ、就業期間を延ばして年金に頼らず生活していける期間を延長する実力を身につけることができれば、生活保護などの社会保障費を大幅に削減することができます。

                     

                    「転ばぬ先の杖」と言いますが、まだ学習能力があるうちに企業が求める人材を育て、将来かかる可能性のあるコストを未然に削減するという意味で、コンセプト的にも規模的にもこれまでどこの国も行ったことがない、壮大な社会実験であると思います。

                     

                    人生100年時代、常に厳しい国際競争を生き抜くための国としてのスキルを磨いてここまで成長したシンガポールの、現在進行形の実験を、注意深く見守っていきたいと思っています。

                    | Yuriko Goto | シンガポール社会 | 12:06 | - | - |
                    電気自動車時代の先駆けで利用広がる電気スクーター
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                      JUGEMテーマ:幸せなお金と時間の使い方

                       

                      テスラを筆頭にガソリン車から電気自動車への転換が世界中で一気に進みそうな昨今、都市国家シンガポールではその潮流に先駆けるように電気スクーターが流行中です。

                       

                      そもそも国土面積が東京23区内程度しかなく、渋滞や環境悪化を避けるため自家用車所有にはクォータ制、輸入には高い関税をかけるなど、国民に自家用車を極力保有させない政策をとってきたシンガポールですが、いっぽうで、ヨーロッパの諸都市と違い、南国特有のスコールが多く1年を通じて高温多湿な気候ゆえ、リクリエーション用バイク以外の自転車はあまり普及していませんでした。

                       

                      ところが、ここにきて一気に広まる様子を見せているのが、電動スクーター。といっても中国のようなバイク型ではなく、スケートボードにハンドルがついていて簡単に折りたたみができるものや、取っ手がついていて片手で持ち上げて運べる一輪車型など、軽量でコンパクトなものが主流です。

                       

                      価格はスーパーマーケットで気軽に買える3万円程度から、専門店で販売する高級品の10万円ほどまで。時速は普及品で15卍度、高価格帯のものになると50勸幣綵个襪發里發△蝓下手にバスや地下鉄を利用するより目的地に早く着ける可能性もあります。降雨時は公共交通機関やタクシーの利用も可能。折り畳み自転車のように他の乗客の邪魔になることもありません。

                       

                      さらに、この流れを加速するかのように「パークコネクター」という歩行者専用道路網の整備が進んでいます。

                       

                      もともとは国民の健康増進のため、国中に散らばる公園をジョギングやウォーキングコースとサイクリングコースでつないで余暇の利用に役立てる目的で始まったものですが、この地図で見る限り、各住宅地から都心までだいぶネットワークが広がってきていて、通勤にもじゅうぶん使えそう。

                       

                      シンガポール政府も電気スクーターのトレンドには注目しており、一部のコミュニティセンターにスクーター用のロッカーを整備したり、将来的には各地下鉄の駅に共用できる電気スクーターを配置して通勤や通学に使えるようにするという計画もあるようです。

                       

                      日本では法律上、私有地以外でこのような電気スクーターに乗ることはできないと思いますが、私が見る限り、高齢者の乗り物としても電動カートよりはずっと手軽ですし、歩道で走行できる分自転車より安全だと思います。

                       

                      高齢者の運転による交通事故の増加や、逆に、運転免許を返上して日常生活の足を失ってしまう高齢者も今後増える中、ぜひ電気スクーターの合法化を考えてみてはどうかと思います。

                      | Yuriko Goto | シンガポール社会 | 19:11 | - | - |
                      シンガポールの普通預金金利が暴騰中
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                        JUGEMテーマ:国際社会

                        昨日の土曜日、近所の大きなショッピングモールに家族で出かけました。

                         

                        そこで見たのは、ローカル&外資大手のコンシューマー銀行の窓口に、口座開設のため並ぶシンガポールの人々(一部はどこでもやってた無料アイスクリームの列に並ぶ人たち)。夫もあるイギリス系銀行で口座を作ろうとしていたのですが、一時間待ちと言われて、アイスクリームだけ食べて口座開設は諦めました。

                         

                        現在、シンガポールの各銀行は普通預金の金利利上げ合戦の真っ最中。

                         

                        給与振り込みにすると1%、クレジットカードで月2000ドル(16万円くらい)使うと1%などなどを積み重ねていくと、最高で普通預金金利が4%近くまで跳ね上がります。適用される預金額も最初は200万円弱などが多かったらしいですが、現段階では競争激化で1,000万円を超えそうな勢い。アメリカの政策金利引き上げの波及効果です。

                         

                        ヨーロッパの金融緩和政策もそろそろ終わりに向かいつつあり、今後長期金利が漸増していく方向性が見えてきました。

                         

                        日本は? マイナス金利政策に終焉が訪れたときにどうなるのか?

                         

                        国会での黒田日銀総裁は「時期尚早」としてこれまで出口戦略について言及するのを避けてきましたが、そろそろ政府とともに日銀が今後の国家財政をどう考えるのか明確に語ってほしいものです。

                         

                        | Yuriko Goto | シンガポール社会 | 12:37 | - | - |
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